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アトツギベンチャーサミット -オンライン-(全6記事)

大企業が参入できない「空白のマーケット」がある コロナ禍の変化がもたらす、小さな市場の勝機

新規事業開発を志す野心あるアトツギが自発的に自ら機会を創出するためのコミュニティ、一般社団法人ベンチャー型事業承継が主催する「アトツギベンチャーサミット」。今年は先輩アトツギをゲストに迎え、コロナ新時代にアトツギだからこそ実現できる新規事業の可能性、アトツギならではの門外不出のリアルな体験談やホンネ「アトツギリアルあるある」を赤裸々に語り合います。本パートでは、コロナ禍がもたらした急激な変化がビジネス環境にどんな影響を及ぼしたかを語りました。

乗り物メーカーの世界でも、新たなベンチャー・スタートアップが登場していく

入山章栄氏(以下、入山):じゃあ、次に村井さん。このコロナの後で結局、アトツギのビジネス環境にどういう大きな影響があるとご覧になっているのか。先ほども大事なことがはっきりしてきたというお話だったんですけれども、改めていかがでしょうか?

村井基輝氏(以下、村井):ポジショントークにはなるんですけど、乗り物のビジネスをしていますので、その軸でお話をさせていただきますと、トヨタがエコカーのプリウスを出していること自体が、嘘だという話になってくるんですよね。

入山:おお、それはどういうことですか? 

村井:いや、エコなビジネスをしていたら、そんなに儲かってへんやろという話なんですよね。今のエコカーは全然エコじゃない。そもそも自動車という乗り物は、移動に対して生産性が低んです。ちょっと話がずれましたけれども、例えば車の渋滞を人間に置き換えたら、(1台に)1人しか乗っていないわけですよね。スペース的に効率が悪い。

入山:なるほど。

村井:それで、車の税金でまた道路を作っているわけですよね。これにすごく違和感がありまして。そこからさらにラストワンマイルの乗り物が出てくると。ラストワンマイルも、ホンダ・ヤマハ・スズキ・カワサキが牛耳っている世界があって、それ以外の乗り物メーカーがほとんどないんですよね。

これは90年代にパソコンがコンパックが互換機を出したり、ここ10年ではマウスコンピューターといった新しいメーカーが出てきたように、乗り物も新しいベンチャー・スタートアップがどんどん出てくる。そういう時代になってくると思います。

狙い目は、大企業が入って来られない「空白のマーケット」

入山:なるほど。つまりいわゆる既存の大手プレイヤーが、いよいよ本当に苦しくなって変化に対応できなくて、むしろそれに代わるスタートアップがどんどん出てくる。まさにアトツギにとってもビッグチャンスなんじゃないかという。

村井:はい。そうですね。苦しくなってくるというよりは、空白マーケットがわりとすかすか空いてきますので。マーケットサイズは狭いんですけど、狙える市場が出てきやすくなると思います。

それに対して、大企業のイノベーションはそこを狙っていけないので。先生がおっしゃっている“知の探索”ですか。それに対して細かなマーケットで行くと、大企業はそこに入っていけないんですよね。

例えばマイクロモビリティーの世界。その中でもキックボードというのは前例がないモビリティーなので、トヨタやホンダはたぶんやらない、やれないんですよね。そこに対して我々はチャンスがあるかなと思っています。

話が変わりますが、この背景の写真が今日まさに展開されている上海の展示会の模様ですので。

入山:へー。これなんだ。

村井:こちらは掲載OKいただきました。

入山:ありがとうございます。うわ、こんな感じなんですね。

村井:今日で500社ぐらいは出しているそうです。

入山:貴重な情報ありがとうございます。

村井:「密です、密」って言ってました。

入山:(笑)。村井さんは、なんか毎回毎回おもしろい爪痕を残そうとする。

奥村真也氏(以下、奥村):生粋の関西人ですよね。

入山:生粋の関西人ですね。

村井:行っているうちのスタッフは「全員コロナになっても知らん!」と言っています。以上です。

共感を得られれば、手順を踏まなくても話を聞いてもらえる

入山:ありがとうございます(笑)。今の村井さんのご指摘もすごくおもしろいポイントだと思うんですけど、いよいよこれからは既存のレガシー企業じゃなくて、スタートアップのアトツギだからこそ、ニッチなところがどんどん取れていくんじゃないかというお話なんですけど、村岡さん、いかがでしょうか。

村岡浩司氏(以下、村岡):既存の仕組みやレイヤーをあまり気にしなくてもよくなってきたことはあるかもしれないですよね。この2~3ヶ月、完全にロックアップされた状態の中で、実は僕自身も九州のいろんな工場のみなさんにアポを入れて、Zoom会議をやっていたんですけど。

今まではある程度、例えば銀行さんに紹介してもらうとか、規模感が違えばそこの経営者の方と面談するのにいろいろと手順を追っていかないといけなかったと思います。ところが、そういった煩わしさがなくなりましたよね。

本当に何を表現しようとしているのかという核心や、やっている事業そのもののコンテキストが重なっていれば、大きい小さいに関係なく共感を得られて、話を聞いてもらえる。そういう流れはあるんじゃないですかね。

入山:おもしろいですよね。それはすごく大きな変化ですよね。コロナ前は銀行などを通さないと偉い人に会えなかったんだけれど、今は例えばそれこそメールを出してZoomなどでパッとコミュニケーションができる。それがコロナになって大きく変わったということですね。

日本のローカルなビジネス儀礼は崩壊

村岡:それはすごく大きく変わったことだと思いますね。だいたい担当者同士はすぐにつながるじゃないですか。ただ、「うちの社長はアポイントが取れない」「うちの役員はちょっとなかなかみんな揃わない」という言い訳は今できないですよね(笑)。

入山:確かに。そうですよね。

村岡:「それだったら、担当者のあなた方が設定してくださいよ」みたいな。社長は70代とかでZoomが使えないので、会議室の椅子に全部セッティングしてもらって、それで画面越しに「こんにちは~」なんてやったら、「おお、お前すごいな」と思うわけですよ。

入山:なるほどね! 逆に言うと、これを見てくださっているアトツギの方にも、大きなアドバイスとしては、もう忖度しないでどんどんやっちゃえよということですね。

村岡:僕はこの2ヶ月のうちに、たくさんのベンチャーからの相談や大学生からの連絡など、特にTwitterとかから何も関係なくいろいろメッセージをもらって「じゃあちょっと話そうか」というようなことがたくさん起こっているわけですね。

これまでの形骸化した日本のローカルなビジネス儀礼は、もう気にしなくていいんじゃないですかね。今までは、どの町でも既存の経済団体や財界の地方版みたいなものがあるじゃないですか。親がやっていたものを継いでどこかの団体に入るようなことで、まあ10年15年ぐらいそこで汗を流さないと、なかなかローカルヒエラルキーの中で上がっていけなかったものが、全部崩壊しましたよね。だから、今からはそれは関係ないですよね。

Zoomの画面の中では、肩書きに関わらず誰もが平等

入山:いいですね。先ほど村井さんももう、忖度や飲みがいらなくなって、とにかくメッセージだけをバンと伝えれば交渉できるという時代だと。

あとは、今日はちょっと違いますけど、ある人から言われて「なるほどな」と思ったのが、Zoomをやると画面の大きさは全員同じなんですよね。

村岡:確かに(笑)。

入山:実はこれは究極の平等性だという話を聞いて「なるほど」と。社長だろうが総理大臣だろうが同じ大きさなんですよ。なので、本当に自分たちの実力そのものが通用する時代になったということですよね。

奥村:今のお話に関連して、チャットの質問から1つピックアップしていいですか? 「村岡さんへ」ということでいただいているんですけれども。

「Zoom会議は既存顧客とコミュニケーションを取りやすい反面、新規の方とコミュニケーションを取るのが難しいと感じています。壁の突破方法などはありますか?」というご質問なんですけど、いかがでしょう? 

目的がはっきりしていれば、新たな出会いが生まれやすくなった

村岡:新規の方がこっち側なのか、それとも向こう側なのかによって、ちょっと答えは変わっていくと思うんですけれども。もう1回いいですか? ごめんなさい。

入山:おそらく向こう側ですよね? 例えば、我々が新しいお客さんを開拓するときに、既存顧客のリレーションがある会社さんなら、また連絡を取ればいいだけですけど、まったく新しいお客さんを開拓するのが難しいというご質問なんじゃないかと思います。

村岡:でも、僕の場合は、Zoomだとけっこう気兼ねせずにみなさんにお願いできちゃうというか。例えばみなさんに、「住んでいるところで九州パンケーキを仕入れてくれるところ、どこかないですか? 紹介してくれませんか?」と言いやすいじゃないですか。

だから、食品の営業だと、例えばこれまでは秋冬の棚割りのために今ぐらいに展示会をやっていて、秋冬の商品の開発を2~4月ぐらいにやっているわけですよね。

でも、半年以上先のトレンドを追いかけて、当たるかどうかわからないものを一生懸命推測してやって、展示会で何百万もかけてブースを作って。そこで何千人何万人もいらっしゃるバイヤーさんがたまたま目の前を通って、偶発的に名刺交換をした中から、さらに10パーセントぐらいの人たちとやり取りをして、その中の数パーセントが棚に置いてくれたみたいな。

偶発性を拾うのがものすごく難しかったんですけど、Zoomの場合は直接的なコミュニケーションなので、誰かの紹介などで、ちょっと密な偶発性を作りやすい気がしますね。

入山:おもしろい。やっぱり村岡さんは意図があるから、意図がある新規営業開拓ができやすいということなんですよね、たぶん。偶発的じゃない。

村岡:おっしゃるとおりです。目的がはっきりしていれば、友達の友達を伝ってつながりやすいという感じがします。

ニッチな商品を扱う企業の顧客とのコミュニケーションの取り方

入山:なるほど。さすがですね。ちなみに居相さんは今の村岡さんのお話を聞いていかがですか? 居相さんも顧客とコミュニケーションを取られていると思うんですけど。

居相浩介氏(以下、居相):そうですね。新規にどうやってPRするかというところでいうと、我々は本当にニッチなところなので、どちらかと言うと見つけてもらうことを主眼に置いています。ホームページなどに流入させて、「うちはこんなことをやっていますよ」とPRすると、それを見つけてお問い合わせしてくれるケースがすごく多いんですね。

そのときには、すでにだいぶハードルが下がっている状態なので、今度は相手方が求めていることをヒアリングしていけば、どんどん聞いてくれる感じがあって。最初からたくさんのことを言い過ぎると相手も吸収しきれないので、情報量だけ調整してあげれば、けっこう話は通じるかなとは最近感じています。

入山:Zoomになって特に変わった点がその辺りだということですね? 

居相:そうですね。情報量のコントロールはしやすくなったかなという気はしますね。

入山:なるほどね。居相さんはけっこう引き合いが来るタイプのお仕事だから、今はZoomだと、コンタクトしてくださったお客さんにどのくらいのレベルの情報を提供するかがポイントになっているという。

居相:そうですね。我々の商品は誰にでも買ってもらえるようなものではないので、選別しないといけないんですけど、逆にやりやすくなっている気はしますね。

入山:なるほど。おもしろいですね。やっぱりみなさんこのリモートワーク、Zoom時代をむしろポジティブに活かされていますよね。

奥村:おっしゃるとおりですね。

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