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『起業の科学』著者が語るアフターコロナ時代でスタートアップが勝ち切る極意(全7記事)

新たな事業を始めるときは「なぜ今やるのか」を問うべき ゲームチェンジの時代の勝ち筋

コロナ禍により直近にどのような変化が起こっているか、With/Afterコロナ時代にどう変化していくかを、『起業の科学(スタートアップサイエンス)』著者の田所雅之氏が読み解きます。豊富な事例をもとに、スタートアップ経営者や社内起業家が持つべき考え方や施策を紹介するほか、厳しい状況に置かれているスタートアップ経営者に役立つよう、コストダウンや生産性向上など実務的な方法論についてもアドバイスします。本パートでは、ニューノーマルの需給の変化やイノベーションのアイデアを考えるための「10のフレームワーク」について解説しました。

ニューノーマルで減る需要は何か

田所雅之氏:ニューノーマルで減る需要としては、まあ印鑑は要らないですよね。法務省もクラウドサインを導入するというのを出していたじゃないですか。

そもそも後ほどちょっと解説したいんですけれども、みなさんがこの状況で改めてサービスを作る際に大事な視点としては、いわゆる自分たちのやっている仕事であったりとか、自分たちのやっている行動の本質を考えることなんですよね。

考えていただきたいのが、そもそもなぜ印鑑を押すのという話なんですよ。改めて考えてみると、別に印鑑を押す行為が好きな人っていないじゃないですか。

印鑑を押すのは、自分がある事案に対して賛成の意を示すことなんですよね。でも、それが形骸化してしまって、印鑑を押すことが目的化してしまっていると。そしたら、無心で印鑑を押すために仕事に行っているのがおかしいというのがあってですね。

どこの国かわからないですけど、対立せずと言っていたんですけれども。実は役所自体が一番三密じゃないかと言われていて、そこからなし崩し的に必要ないじゃないかと。

あと、そもそも通勤もオフィスも必要ないじゃないかと言うところですよね。そういったところで、いろいろピボットが行われているんじゃないかなと思っています。

新しい行動様式に慣れると元には戻らない

ですので、やっぱり生活必需品というものが必要になってきたら、いわゆるマズローの5段階欲求で言うと、なかなか贅沢品が買えなくなってきたんじゃないかなと思います。

ここも見直す必要があるのかなと思っています。必需品の不足。つまり人間は安心安全の生理的欲求を満たせなかったら、その上の欲求は満たせないですよね。マズローが言いたかったのは、階段は下から上がっていくということなんですよ。

あと、言いたいことをまとめるとしたら、人間は新しい行動様式に慣れると戻らないということかな。これはマクロの話をしているんですけれども、まさにソサエティと言ったときに、一人ひとりの指向性や行動が、Afterコロナで変わってしまったと思っています。

あと、テクノロジーですね。技術動向はどうなっているかと。2020年は5G元年と言われていて、もともとの5Gやクラウドが進んでいたということがあったので、やはり先ほど言ったバーチャルファーストかなと思っています。

スタートアップの本質は、少し未来の市場にフィットすること

あと、みなさんにもう1つ覚えていただきたい言葉としては、僕は「Product Market Fit」ということを『起業の科学』で紹介したんですけれども。これは今の市場に対してプロダクトをフィットさせることなんですけど、スタートアップでやるのは、Product Market Fitじゃないんですよ。

起業の科学 スタートアップサイエンス

スタートアップの本質は、僕はProduct Future Market Fitと言っていて、今のマーケットではなく、少し先の未来にフィットさせていくことなんですよね。何が起きているかというと、コロナ禍によって少し未来が加速したということなんです。

2023年、2025年に起きると言われていたDXやリモートが一気に起きたということなんですよ。そこで成功したのが、実はUberなんですけど。

Uberはコロナの前に生まれたんですけど、この2008年のUberのプレゼン資料の左下を見ていただきたいのが、「Future Optimizations」と言っているんですよね。Uberは、この資料だけで5億円集めたんですよ。

すごいなと思うのが、2008年というのはまだスマホが2パーセントしか浸透していないときだったんですね。スマホにGPS機能がなかったんですよ。でも、我々は未来に対して最適化すると。おそらく今の進歩の度合いでいったら、すぐにスマホにGPSが搭載されるし、右にあるようなDemand Forecastingですよね。

つまり、需要予測のが精度が高まってきているので、今のUberのコアプロダクトの1つである、いわゆる需要予測であったりとかDynamic Pricingですよね。需要によって価格を自由に変えていくことを実現する、という絵を描いたんですよ。

これがまさにProduct Future Market Fitかなと思っていて。これが2013年に起きたので、Uberは5年かかったわけなんですけれども、今まさにコロナ禍で未来に対して最適化することが加速しているんじゃないかと思っています。

つまりスタートアップは本質としてはCurrent Market、今の市場に対して最適化するのではなくて、少し先の未来に最適化することかなと思っています。

新規事業を成功させる一番の要因は、人でもアイデアでもお金でもない

そこで、今後のテクノロジープラットフォームが5Gに移る中で、(過去には)4Gに移る中でスマホが台頭してきて、いわゆるガラケーやモバゲーはやはり駆逐されてしまったと。

じゃあ、この4Gかつコロナ禍の中で、またゲームチェンジが起きるわけなんですよね。そのゲームチェンジのスタートラインに立つ中で、何を提供していくのかを考えることが大事かなと思っています。

その1つのヒントとして、こんな感じでプロットしてみたんですけれども、バーチャルファーストや、ここに書いているような領域が伸びるんじゃないかと思っています。

VRも伸びるかなと思います。クラスターというスタートアップはすごいですよ。この前、ここに投資している投資家と話したんですけれども、要はむちゃくちゃ伸びていると。これはソーシャルVRと言われていてですね。

みなさんは今はZoomを2次元でやっていますけど、たぶん来年ぐらいになったら、おそらくVRを使った会議やイベントが主流になるんじゃないかなと思っています。この2ヶ月ぐらい見ていると、VR内覧などのスタートアップが多く調達していてですね。いよいよVRやバーチャルファーストが進むんじゃないかなと思っています。

あともう1つ大事なことは、スタートアップや新規事業が成功する理由。これを見ていただきたいのが、ビル・グロスというTEDトークで有名な人が、統計数字を出したんですけれども、人でもアイデアでもお金でもないんです。

大事なことは「Why Now?」なんですよ。なぜ今やるのか。なぜ2018年でもなく、2022年、2年後でも2年前でもなく、今やるのか。このタイミングを捉えることなんですよね。

実はこのタイミングを捉えることが、まさにヴィンテージになれるのかなと思っています。みなさんも新たな事業をやるときに、「なぜ今やるのか」を問うてみるといいかなと思います。

イノベーションのアイデアを考えるための「10のフレームワーク」

ここまでマクロの潮流を捉えることを話してきました。ではここで改めて、こういったエコシステム全体に進化圧がかかっている中で、いわゆるニューノーマルになる中で、いかにして事業のアイデアや推進力へ変換していくか。

その考え方を10個ほど紹介したいなと思っています。

これは『起業の科学』でも紹介したんですけれども、スタートアップのアイデア、もしくはイノベーションのアイデアを考えるための10のフレームワークということで、見ていただきたいなと思っています。

まず1つめがDis-intermediationと言って、中間プロセスの排除ですよね。先ほどのハンコもそうじゃないですか。そもそも、ハンコを押すことが目的ではないですよね。

先ほどの事例でもお話ししたリモート診療もそうです。そもそも病院に行くのが目的ではなく、お医者さんに診断してもらって、適切な処方を受けるのが目的ですよね。実はそういうふうにBeforeコロナで、ぶくぶく無駄な贅肉がついてしまったプロセスがいっぱいあると。そこをDisintermediateできないかということなんですよね。

先ほど紹介したUberもそうなんですけど、もともと従来のタクシーはこんな感じで非効率だったことがあって、マッチングしたということですよね。

サービスや慣習の中間段階をいかに削れるか

コロナ禍、Afterコロナで何をDis-intermediateできそうですかというのが大事で、1つはリモート診療ですよね。

そもそも病院だって、皮肉なことにコロナでクラスター化している場合が多いじゃないですか。東京でも昨日、どこかホストクラブと病院がクラスター化してたんですけれども。病院に行くことが危険だということなんですよね。

リモート診療はまさにそういうことかなと思っていますし、このメドレーが出したCLINICSも非常に伸びていますし。

さらに、受診もリモート診療もいらんと。自分で診断しましょうというのも、これはシリコンバレーで8億調達したLetsGetCheckedというスタートアップなんですけれども、こういうところも出てきている状況ですよね。

某国のハンコ議連の会長は、IT相らしいんですけれども、役所は3密だというところで、まさにそこもDis-intermediateするという感じで、クラウドサインが爆伸びしていますよね。RPAを活用して、役所の手続き業務を効率化するようなことも出てきていると。これが1つめです。

本当に求めているもの以外の付帯サービスが省かれる

もう1つが、バンドルを解除して最適化すると言うことなんですけれど、これもいわゆるイノベーションのジレンマで、どんどんサービスがバンドルされて非効率になっているんですよ。

例えば、新聞などもそうですよね。新聞もワンバンドルされて読まれない記事、退屈なコンテンツ、コンテンツが高いということがあったので、それがUnbundlingされて、craigslist、GoogleADWORDS、Gunosyとなったわけなんですけど。

そこで、何がUnbundlingできそうですかというと、今はZoomもこういったセミナーには最適化しているかもしれないですけれども、実は飲み会とか誰か人に出会いたいとか、みんなで何か動画を見たりするところに最適化されたいんですよね。

実はこれもUnbundleされるんじゃないかなと思っていて。例えば「たくのむ」みたいなものだったり、RemoやNetflixPartyのような感じで出てくるかなと思っています。

eコマースの浸透がもたらした、選択肢が多すぎる問題

あとは、Defragment of Faragmentedなんですけど、これはわかりやすいですよね。

バラバラな情報を集約するということで、eコマースがどんどん浸透してきたときに、人ってやっぱり選びきれないんですよ。

そこで出てきたのが価格.comですよね。価格.comにさえ行けば、どこが最安値だかわかる情報が集約されているので、そこで意志決定しやすくなるというのがあったと。

「何がDefragment(集約)できそうですか?」というところなんですけど、これがTake Out Tokyoと言って、もともとコロナ前の状況では出前の情報なんてなかったじゃないですか。

そこを集めたり、中国のWeChatは国民的なアプリになっていますけど、そこだと誰がどこで感染したかという情報が集約されて、「ここに行かないほうがいいよ」という図面を出すようなものが出てきています。

使われていないリソースを活用する

あと使われていないリソースを活用すると言うことで、休眠資産ですよね。Airbnbなどもそうなんですけれど。使っていない部屋や家を活用することによって、マネタイズするというモデルでしたよね。

Uberもそうだったと。このコロナ禍、Afterコロナで何が活用できそうなんですかと言ったときに、例えば副業のマッチングサービスなどもこの前、調達しましたけれども。こういうものとかですね。

こういったスキルシェアのようなものもどんどん行われるんじゃないかなと思っています。

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