2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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今野:はい。それでは45分間が経ちましたので、会場からQ&Aを取りたいと思います。1、2、3……。3つまとめていきましょう。
質問者1:ありがとうございました。先ほどシリコンバレーの話も聞かせていただいて、今回いかにユニコーンを日本の中で作り、生態系を作っていくのかといったところだと思いますが。今、20社30社作っていこうと政府が言っている、グロービスが100社作っていこうと言っている、などがあると思うんですが。
逆に、今の日本でユニコーンと言われているのはプリファードネットワークスぐらいしかないと思いますが、どうして今は1社しかないのかという、その辺の課題について聞きたいと思います。
今野:はい。ありがとうございます。3つまとめていきます。
質問者2:はい。ありがとうございました。堤さん、今野さんに質問です。VCの数が増えた、大きくなったという中で、投資家の育成というのがイシューになってくると思います。いい投資家を育てるために「背中を見て学べ」ではなく、お二人がふだん何を教えているのか、どう教えているのか。
私はVCではなくコンサルなんですが、育成で苦労しているので教えてください。
今野:もうひとかた。はい。
質問者3:ありがとうございます。ユニコーンを輩出していくことを考えたときに、すごく難しいことがたくさんあるので、実際にその事業に本当に熱狂ができるかどうかということがものすごく大事だと思っています。
逆境の中でもすごく熱狂できるぐらいの、若干頭のねじが外れているような人たちを取りこぼさないようにするために、みなさまが考えていること、できそうなことがあればうかがいたいです。
今野:なるほど。1つ目が、事実上でユニコーンがまだ1社しかない理由と課題。2つ目が投資家、VCの育成。3つ目が熱狂の作り方、もしくはそれをちゃんと拾う、拾い方。好きなテーマを拾っていただいて。各務さん、いきます? どなたか。
各務:1つか、2つ。1つはユニコーンの話。これは制度的補完性の話で言えば、今、グロービスさんのように先ほどの400億なんて話になると違いますが、やっぱりファンドサイズが小さいということは、その範囲の中で上場させるということと、日本の市場が世界中でとくにたやすく上場できる市場だったことにあります。
したがって、こぢんまりと上場するということなんですね。本来ならば、大学のような技術の場合には、谷を深くぐっと下がって、よっぽど投資をして……1桁オーダーが違う投資をしたうえで、大きく花を咲かせるということになるんです。その前の間にキャッシュをとにかく出すというところにいくので。
しかも「海外に出るんですか!?」となり。投資家はそれよりもまず、キャッシュフローを出そうなんて話になる。
今野:「リスク上がりますよね」というような話になっちゃってね。
各務:そう。上場したとたんにアップアップになっちゃう。そこからやるとやっぱり、上場会社さんで増収増益のゲームに入ると、いつまで経っても投資をできないと。では、またマネージドバーンアウトするんですかといえば、話が違うというようなことになってくる。その制度補完上、そうだったんですが。
ただ、今野さんから先ほどご説明いただいたような、ファンドサイズがかなり大きくなったり、グローバルなベンチャーキャピタルがそこに入り込む余地が出てくると、大きくなる。
それからスパイバー(株式会社)や、一部プリファード(ネットワークス)などもそうですが、大企業からお金をインジェクションするということになってくると、必ずしもVC全体のモデルではなくて、そこそこ深堀ができるという。
これが今出てきたものですから、私はユニコーンの芽というのは今後出てくると思います。今までは制度補完上そうならざるを得なかったというのが、ことによってはあるんじゃないでしょうか。
今野:僕もポジショントークではなく、まったく同感です。時間の問題だと思っています。あまり、それでいうマザーズのところまで含めた1,000億をきちんと見たほうが業界にはいいとも思っていますが、正直。未公開で1,000億だけではなく。間尺がアメリカとは違いますから。
世を変えるようなリーダーを育てられるかという話でいえば、僕は課題感というか時間の問題だと思っています。それはグロース・レイター、グローバルマネーが入ってきているという前提において、というところですね。では、鈴木さん。どれか質問を拾ってもらってもいいですか。
鈴木:私も実はまったく同じで時間の問題だと思っていますが。マザーズができたときも同じような雰囲気があって、いわゆる小型株で、早めにIPOできるような環境を作ろうという流れを作ってきた。その流れが次は違う潮目に変わっているだけなので、時間が解決するだろうということが1つ。
もう1つは、僕はグロービスにも期待したいのですが、たぶん多くの人が「なんでユニコーンがいいんだっけ?」といった素朴なことにきちんと答えられない状態だと思っています。いわゆるユニコーンは、資金調達した先の形態の1つにしかすぎないわけですよね。
それでどうしてハッピーなことがあるんだ、と。世の中を変えるためにそのプロセスを踏むことが本当にいいんだということを、やっぱり広く伝えていくのが、僕がグロービスに期待する役割だと思っています。すみません。勝手に言っていますが。
今野:(笑)。
鈴木:そういうことが1つですね。あとはすみません。熱狂者の問題なんですが、たぶんそこを拾おうとしているのが、アクセラレーターの1つだという気がしています。
今野:そうですね。
鈴木:もともと日本では「ねじが外れた」と僕らもよく使いますが。目がいっちゃっているなど。
(会場笑)
鈴木:それを許容しない文化があります。島国だからしょうがないんですよね。やっぱりそういう人たちを、いわば許容できるような環境を作らなければいけない。
僕も15年前に起業したんですが、やっぱりVC回りをしましたよ。ほとんど無視ですよ。だから、そうしたものをVCの中では拾えないという宿命があるんですよね。当たり前ですよね。経済効率を上げなきゃいけないので。
アクセラレーターはそうでもなくて、いわゆる裾野から「ちょっと目がいっちゃっているようなやつも、肩組んで一緒に狂おうぜ」というような世界観が成り立つので。そうした活動を、実は高原さんがグロービスで一生懸命やってくれている。
今野:(笑)。
今野:はい。ありがとうございます。では、高原さん、熱狂の作り方、拾い方を中心に。
高原:熱狂の作り方でいくと、いるんですよ。いるんです、いっちゃっている人は。拾うのをどうするかといえば、過去にはメディチ効果というものがあって、メディチ家がそうした異端児をしっかりスポンサードするということですね。
今は誰がスポンサードするかというと、いっちゃって1,000億超えた起業家が「やっぱりこの起業家がいいんだ」と言えば、バリュエーションもぐっと上がるんですよね。そうした人がしっかりとカバーする。そういった出会いを「G-STARTUP」のアクセラで作っていければいいと思っています。
アクセラの立場でいくと、やっぱり寛容性や勉強ですね。いっちゃっている人がよく考えてやるんです。私よりはるかに考えていて「なにか新しい宗教をビットコインを使って作ります」なんていう人がいるんですよ。
「なんだこれは!?」と思いながらも、それを拒絶するんではなくていったん受け止めて。なんだろうなと一生懸命自分で勉強するし、他の人にも聞いてみるということも、がんばって私自身はやっております。
今野:場としてのアクセラと、あとは今までは出ていませんが、エンジェルが生態系にとってはすごく大事な役割だと思います。
高原:そうですね。いいエンジェルにしっかりつかんでいただくといいと思いますね。
今野:はい。では堤さん、とくに投資家の育成。
堤:そうですね、まず2点。最初にユニコーンはみなさんがおっしゃっていたとおりなんですが。やっぱり根本的には、僕はユニコーンという言葉はあんまり好きじゃない。何が大事かといえば、結局「お前たちがなんの課題を解決したいのか」というところが、一番大事なんですが。そこがわりとちっちゃいので、結果的にユニコーンのような規模感にならないだけなんですよね。
要するに、みなさんの「どんな社会課題を解決したいんだ」という課題の設定が、もうそれこそがすべてなのに、そこはどうしてもこぢんまりしてしまっている。スケールが「なにか構想力が狭いね」ということになるので、やはりそこを大きく育てる。そういったものは、今のG-STARTUPさんや大学院、アクセラなどを通じて、いかに構想力を膨らませられるかという意識をしてほしいなと。それが結果としてユニコーンのような、もしくは先ほどのデカコーンのようになるのであって、そこがないと本当に小さいという感じで終わってしまうということがあります。
今野:なるほど。
堤:あとは投資家の育成ですが、これが本当に難しいです。コンサルティング、うちのファームでもコンサル出身の方がいらっしゃいますが。コンサルティングとVCは違うと僕は思っているので、それを念頭においてほしいんですが。
育成方法といいますか、ジョインしていただいている方は、みなさん非常に地頭が良くて、コミュニケーション能力が高くてということは当たり前なんですが。とくに僕が意識しているのは、その人なりのどういった世界観を持てるかということ。僕は起業家と投資家は「コインの裏と表」だと思っているんですよね。
起業家も投資家もある問題を解決したいと思っています。その問題を解決するためには、自分なりの世界観を持たないと、解決しようがないと思っているので、とにかく自分のどういう世界を作りたいのか。世界観ということをすごく意識させるような勉強といいますか。
変な話、僕は普通のビジネス書を読めなどというのは嫌いで。ビジネス書などは読まなくていいと思っている派なんです。本当にもっと歴史や世の中のことを、世界の歴史はどのようにに変わっているのかといったものをしっかりインプットしてほしいということがまずあります。
それ以外では、本当にハウツー的な部分でいえば、やはり自分の頭でどう考えさせるかということ。入社させたばかりの人は、なにかすぐに答えを求めたがる。「どういった本を読んだらいいですか」など、そうしたハウツー本があるように思われるんですが、VCにとってハウツー本というものはまったくありません。
よく言われるように、ファイナンスもある程度理解しなければいけないし、アカウンティング(企業会計)もそうですし、法律もそうですし、マーケティングもHR(人事機能)も。ほとんど一通りのことをわかっていなければいけないんですが、それができたからいいキャピタリストになれますかというと、まったく関係ないんですね。
それよりも僕は、もう少し古典を読んだり、歴史を読んだりしながら、自分なりの世界観をどう築きあげるかということが、本当にいいキャピタリスト。ロングタームで見たときの、いいキャピタリストになれる、一番遠回りのように見えて一番の近道なんじゃないかと思っています。
今野:まさにその、ユニコーンは目的ではなくそもそもの大きいお題をとらえましょう、ということが本質的で大事なところである。あとはVCとしても、人間性や大義といったところが大事、というお話ですか。
僕自身の育成でいうと、実は問いには答えていないかもしれませんが、育成しない形にしようと今回は思っています。今回は400億円、ユニコーンというキーワードを僕らがあげたときに、もう1つチャレンジしようと水面下で今しているのが、投資先支援に対しての仕組み化です。これはスケーラブルな事業にしていくために一人ひとりのキャピタリストが、自分の芸風の中でやっていくと足りないんですね。
それからもう1つは、勝負がつくまでの時間軸がどんどん短くなっている。垂直で立ち上げなければいけないとすると、もちろん僕らもバリアットしますが、それ以上のプラットフォーム的な支援機能をつくっていこうと思っています。
ですから、育成を今まで一人ずつ丁寧にやってきましたが、あえて刺激的にいうと、そこからも脱却しようとしています。これが、産業になる1つの過程だと僕は思っているので、かなりチャレンジングですが、今、取り組んでいます。
今野:あと1周ぐらいはできるでしょうか。3分ぐらいあるんですが、あと2、3(質問)ありますか? はい。1つ。他はいいですか? では最後の質問としてどうぞ。
質問者4:ありがとうございました。今、私はベンチャー企業にいて、ちょうどシリーズAを完了したところです。ですから、まだまだこれからというところですね。ユニコーンもまさに社会にインパクトを与えるための状態や手段だと思っています。
ただそれを前提にしつつも、やっぱり目指しているところではあり。そこでお聞きしたいんですが、これからシリーズA・B・Cといって、ユニコーンを目指していくのが通常マニュアル上の流れだと思いますが、今、世の中のいろんな激しい変化の中で、その常識が変わりつつある。例えば期間などもですね。2~3年後には目指していきたいと思っていますが、そこの考え方自体も何か変えた方がいいなどがあれば、ぜひおうかがいしたいです。
今野:今、常識と思っているようなことで今後変わりうるようなところは何か。そんな質問でいいんですね。期間。とくに時間軸。はい。
質問者4:そうですね。時間軸ですね。
今野:どうですか。堤さん、どなたか。
鈴木:すこしだけコメントしておくと、おそらく堤さんが先ほど言われたとおりだと思っています。きれいなルールがあるとは思わないほうが、僕はいいと思っていますね。その答えはここにはなくて、事業と向き合いながらしか作れないので、そうした作り方をしたほうがいいと。
僕は0→1フェーズの人間だから思うのは、もっと偶発性や偶有性を信じたほうがいい。そんなに合理的に物事は進みませんから。的外れになるかもしれませんが、すみません。堤さん、サポートをお願いします。
今野:堤さん、どうですか?
堤:時間軸。持てるなら持ったほうがいいと思いますが、それよりもおそらくシリーズAが終わったとおっしゃっていましたが、本当の意味でのプロダクトマーケットフィットはできていないと思うんですね。
ですから、きちんとお客さんに向き合うという。ユーザーでもなんでも、クライアントでもなんでもいいんですが。とにかくそこに向き合って、自分たちの提供価値って何だったかと。まずそこをしっかり固めきるということが、大事だと思っています。
ファイナンスだけで先に進む会社はいっぱい見ています。僕も変な話、その片棒を担いでいるわけなんですが。例えば(ステージ)A・B・Cといって、成長の踊り場は何回も来るんです。必ず来ます。そのときに何でそうなるかというと、すごくシンプルで、結局自分たちの提供価値というものがぶれていっちゃうんですよね。
ですから、そうするとたぶんユニコーンも何もない。ファイナンスだけうまくいって、何か水膨れしていって、自分たちの提供価値がお客さんにきちんと伝わってないよね、というように。
そういうことがすごくよくある。ですから、とくに今のようなフェーズでめちゃくちゃいい、というかすごく大事なタイミングだと思っているので。もちろん経営者であれば、2~3年後にどうするのかということを考えなければいけないのですが。
やはり本当に自分たちの価値というのは何なのだろうということを改めて、たぶんお金も調達するんで、人もどんどん増やしていくと思いますが、人が増えるとそこの価値が伝わらなくなっていくんですね。
そうした意味では、そこの組織を含めて、そこを徹底的に追求していく、磨くということが、今やらなければいけない一番大事なことではないかと思います。すみません。回答とは少しずれてしまいましたが。
今野:自分自身の強みにフォーカスしようという話と、大きな課題にチャレンジしてユニコーンを目指そうという一見矛盾しているような気がしていますが、すべての起業家がユニコーンを目指す必要は正直ないと思っています。その一因になるということだってできるわけだとすると、一番価値があるところで、一番価値が出せる相手に売却するという方法も全然あるわけですよね。
ですから、僕は自分の強みに特化しながら、おそらくユニコーンの意味というのは「大きな課題に対して将来リーダーシップをとるべき存在になりましょう」。そうした話だと思っていますので、その一因になるのもそうだし、ニッチでずっとがんばり続けることでも別に全然その目的は達成できるだろうというように思いました。
以上です。1分を過ぎましたが、このセッションを終わりにしたいと思います。改めて、登壇者に拍手をお願いします。ありがとうございました。
(会場拍手)
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