2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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今野穣氏(以下、今野):こんにちは。このセッションは、ユニコーンというキーワードと生態系ということに関して好きなことを話してくださいというセッションですから、僕から3つか4つほど大きな質問をします。
まずは、今、何をやっているか。それから、過去5年間を見たときに、どんな変化が起きているか。最後に、今後どういったことをやっていくべきだと考えているのかというようなことで、一つひとつ切っていきたいと思っています。さっそく各務(かがみ)さんのほうから、今はどんなことに志を向けてやられているのか。KPIなどもどのような目標を持ってやっていますかというところも含めて教えてください。
各務茂夫氏(以下、各務):はい。よろしくお願いします。私(の肩書きを)見ていただくと、教授とありますよね。形ばかりかもかもしれませんが、教員として、東大でいわゆるアントレプレナーシップ教育というものをやっているんですね。
東大にはビジネススクールというものがありませんから、今、工学研究科といったいわゆるバイオメディカル医学部などなどに、我々が出張して教えに行くということをやっています。私自身もう16年目で、15年前に「アントレプレナーシップ道場」というものを始めました。
今は単位が出せるプログラムになっています。今年は約500名ぐらいの東大学生が参加しています。こうした教育に携わる一方で、イノベーション推進部長という、大学教員という立場からするとおもしろい、大学運営に関わる実務をやるようになりました。一つにはインキュベーション施設などを運営しています。
東大には今、2つ大きなインキュベーション施設があります。私が全部やったわけではありませんが、ここには、ユーグレナ(注:世界で初めてミドリムシの屋外大量培養に成功したバイオベンチャー)、ペプチドリーム(特殊ペプチドを応用した医薬品の研究開発を行うバイオベンチャー)、そしてパークシャテクノロジー(学習、言語解析技術を用いたアルゴリズムソリューションを提供するベンチャー)、プリファードネットワークス(IoT分野での活用を中心にディープラーニングの研究と開発を行うベンチャー。2019年時点では日本で唯一のユニコーン企業として知られている)がいます。
こうした、いろんなところがインキュベーション施設に入っておりまして、集積していると。今、急拡大しており、2018年10月に約3,600平米をかけて新しいものを作ったんですが、こちらも満室になっています。それだけ需要がずいぶん高まっているんですね。
また、東大にはベンチャーキャピタルファンド、株式会社東京大学エッジキャピタル(以下、東大エッジキャピタル)というものがあります。2004年に私が作ってから、10年間ほど役員を務めて、1号・2号・3号ファンド、トータル543億円のファンドを設立しました。それから、2016年に、国からお預かりした417億円でもって、東京大学協創プラットフォーム開発株式会社という会社を作りました。
そこからファンドファンズで、東大エッジを含めた他のいくつかのベンチャーキャピタルさんと、東大のエコシステムを拡大するにあたって、民間ベンチャーキャピタルの拡大をしていくということも一方でやっています。
ただ、もう一つの私の顔は、東大の研究者コミュニティと大企業の連携をどのように活性化するかという役割です。大風呂敷に聞こえるかもしれませんが、昨年(2018年)12月にはダイキンと、10年間100億円というディールをやりました。
そうなってくると、大企業、スタートアップ、大学のコミュニティをつなげて、この3つのトライアングルが形成されるときに…… 今、にわかに大企業とベンチャー企業との間の関係論も取り沙汰されていますが、このあたりもどうするのかということも私の仕事です。3つのプレーヤーの間を取り持つというのが私の役割ですので、後ほどさらに突っ込んだ議論をしたいと思います。
今野:はい。なにか通底するKPIはあるんですか?
各務:そうですね。私は、定量的なKPIについて、国からもいろんなことを言われておりまして。今日、このセッションに先立ってシリコンバレーのセッションがあったと思いますが、東大の中でも、それこそユーグレナの(代表取締役社長)出雲さんが典型ですが、やっぱりベンチャーキャピタルで、起業家でいらした方が、リアルテックのファンドをやるといったようなかたちです。
例えば、(シニフィアン株式会社共同代表の)朝倉さん。本日、前のセッションでやられていたアントレプレナー第1期生ですが、彼のような方が、実は東大で講師をしてくれるといったような、人の連鎖の度合いがどれくらい高まるだろうかが一番の関心事でございます。
今野:なるほど、おもしろいですね。まさに生態系のような感じですね。ありがとうございます。では、鈴木さんにお願いします。
鈴木規文氏(以下、鈴木):はい。ゼロワンブースターの鈴木でございます。我々の会社は事業創造、0→1に関することはなんでもやるという活動をしています。主に大手企業のいろんな資源をスタートアップに寄せていく活動。それを「コーポレートアクセラレーター」というツールを使ってやっています。あとは、大手企業に埋もれたタレントを掘り起こすというイントラプレナーの開発、「イントラプレナーアクセラレーター」というものもやっています。
もうひとつは、地方ですね。地方のスタートアップ。地方には、”スタートアップ”と言う言葉を使う人自体ほとんどいなくて、いわゆる”ベンチャー企業”という言葉のほうが合っているのですが、そうした人たちが、いわゆるスケール型のベンチャーに志を持てるような働きかけをするという地方型のアクセラレーターのようなものをやっています。
0→1にとにかくフォーカスしてやっている会社です。ですから、ゼロワンブースターという会社名なのですが、海外に行くとだいたいオーワンブースターと言われてしまいますね。
(会場笑)
鈴木:KPIという意味では、この世の中からいかに起業家を生むかということを目標に掲げています。具体的な定量目標はありません。今日は、(参加者は)大手企業にお勤めの方が大半だと思いますが、大手企業の人たちをいかに起業家にするかということを目標にしております。すでに、昨日のナイトセッションで1人起業家にしたつもりなんですが。
今野:(笑)。すばらしい。
鈴木:月曜日に辞表を出すと言っていたので。(聴講者の中に)いるかな? はい。そんな活動です。後で僕と会ったら「やめろ」と言いますので、よろしくお願いします。
今野:今日、このセッションから起業家が何人出るか、もう鈴木さん次第ですね。では、高原さんもどうぞ。
高原康次氏(以下、高原):高原です。グロービスの代表オフィスで、グロービスのベンチャーの生態系を培っていくという営みをしています。ちなみに、アンケートを取りたいんですが、この中で大企業に勤めていらっしゃる方はどれくらいいますか?
(会場挙手)
高原:あ、だいたい5割ですね。ベンチャーにいるという方は?
(会場挙手)
高原:けっこういましたね。ありがとうございます。
今野:7対3ぐらいでしょうか。
高原:そうですね。グロービスは今まで、キャピタルパートナーズをやっているところがあって、あとは大学院で起業家教育をやっていましたが、その間がけっこうありました。その間をいかに埋めていくかということで、2013年からグロービスベンチャーチャレンジというビジネスプランコンテスト。これを受賞された方には、500万円から1,000万円の投資をして、(会社を)辞めて、起業していただくというプログラムがありました。
この1年ぐらいの間に2つプログラムを立ち上げて、1つが『G-STARTUP』という100社のユニコーンをここから輩出していこうという、アクセラレーションプログラムを始めました。ここの目標としては、まず10社から20社程度を採択して、関係者に満足していただき、来年度はさらに豊かな形でやっていければということを、目標にしています。
もう一つのプログラムとしては『G-Growth』という、他のVCが投資されたところに対して、グロービス経営大学学院生の方が経営するところには、グロービスからも出資をさせていただくというプログラムを持っています。
この軸とはまったく別に、ソーシャルという文脈で、KIBOW社会投資というものをやっておりまして、今まで5社程度に出資をしております。社会に良きことをしていくと、スケールアップしていくというものに、ハンズオン型で入っていくと。そこで私は1社、社外取締役をやっています。そんな活動をしております。
今野:では、グロービスの生徒さんが起業したら、どんなものでも支援をするということ?
高原:心では最大限支援します(笑)。
今野:心ではって(笑)。
今野:では最後に堤さん、お願いします。
堤達生氏(以下、堤):はい。STRIVE(ストライブ)の堤です。STRIVEという名前自体は今年の5月からリブランディングしているので、まだご存じない、みなさんに浸透していないかもしれませんが、ベンチャーキャピタルファンドとしてはもう7年ぐらいやっております。今、3本目のファンドを運用しておりまして、トータル230億ぐらい、運用中という形になっております。
私自身は、もともとインターネット領域で、かなりいろんな投資をさせていただいていたんですが、今年KPIといいますか、チャレンジとしては、やはり今までやっていない投資をどんどんしていきたいと思っております。
やはり同じことをやっていると、みなさん同じだと思うんですが、飽きてくるんですよね。そうした意味でも、自分の得意なところから、得意じゃない、もしくは少しチャレンジングだと思うことを、どんどんやっていきたいと思っております。
例えば、日本の場合では、「ハードの投資はかなり大変ですよね」と、一般的には言われるのですが、あえてそうしたものにチャレンジする。そうしたチャレンジをこの3号ファンドから、リターンはもちろん、そうした定性的な部分でのチャレンジをしていきたいと思っております。
今野:はい。ありがとうございます。本流のVCとしては、もうインターネットの外にいっているぞと。
堤:そうです(笑)。
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