2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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杉山文野氏(以下、杉山):では、青柳さんにもおうかがいしたいのですが。青柳さんはわりと「お金をどこに使うか」というところで、ずっと関わられてきたという認識なのですが。
青柳光昌氏(以下、青柳):はい。
杉山:今までの話を踏まえ、ご自身のお立場から見えているお金に関わるお話を伺えますか?
青柳:はい。私は、登壇者プロフィールにもあると思いますが、長年、日本財団というところに勤めていました。財団畑が長く、約27年ぐらい働いておりました。でも財団というのは一般的ではないじゃないですか。みなさん、だいたい株式会社であったりしますから。
何をやるかというと、財団というのは「お金そのもの」に法人格を持たせて、そのお金で……昔は「寄付行為」と言うのですが、「お金を使いなさい」というのが仕事なんですよね。私の財団はもともと、お金の流れで言うと、「公営ギャンブル」と言われる競艇がありますね。ここだと浜名湖競艇場があるんですが。
そこの売上の2.7パーセントを自動的にいただけるという、すごく恵まれた法律があります。これでもう50何年、日本財団というところは……ボートレースの売上が今、年間1.2兆円ぐらいになっていますから、それの2.6パーセントとして300~400億円くらいのお金がフローで来るという。すごいんですね。それで、バブル……「バブル」という用語は知っていますか?(笑)。
(会場笑)
バブルの頃には売上が2兆円を超えていました。700億円ぐらいあったんですよ。僕が入ったのはちょうどそのバブルの終わりぐらいで、本当に年間500~600億円のお金を世の中の社会活動のために使っていたのですが。
だから、ちょうど宮城さんが起業をされたくらいの頃に僕も就職しているんですが、やっぱり使い手の顔がまったく変わってきていますよね。昔はやっぱり、いわゆる社会事業は、例えば福祉施設を運営されていたり。ドーンと何億円もお金がかかるような施設で、ハードからソフトから、すべてにすごくお金がかかるようなものですね。先ほどの米良さんの話で言えば、最近のクラウドファンディングは公的なところが増えてきたという。昔はそうした方々が使っていたようなところがあったんですよね。
今は逆に、本当にもう起業家の方々がすごく増えてきています。それこそ先ほどの宮城さんのお話ではありませんが、本当に今は「お金が集まらない」といった状況ではないということがありますね。それこそ、その方々のアイデアで、どんどん使えるような状態にはなってきていると思います。
こうした古い財団のタイプのようなものでも、(お金を)出す先もどんどん変わってきています。やっぱりNPOもそうですが、今は15年ぐらい前から、営利形態を持った、要は株式会社のかたちを持って社会課題を解決していこう、というところがすごく増えてきているんですよね。
青柳:これは別に分析したわけではありませんが、NPO法人というものがありますよね。全国にどのぐらいあるか、ご存知ですか? 実は5万団体ぐらいあるんですよ。本当に「ごまんとある」んですよ(笑)。
(会場笑)
それで、NPO法人 ETIC(エティック)はその中でもトップオブトップなんですが、やっぱり休眠的にもう活動をしていないようなところもあって、今、その5万という数が少しずつ減ってきているんです。むしろ株式会社の形態をとって「社会問題解決に向かおう」という人たちのほうが、増えている気がします。その影響もあるんじゃないかと思います。
資金調達のしやすさからしても、またお金を出す側のほうもただ出すだけではなくて、ちゃんとリターンも得たいというような方々も、エンジェルも含めて増えてきているからです。
形態としてNPOはお金を分配することができないので、会社形態にして、ちゃんとリターンも出せるようなかたちをとって、「より大きな資金調達をしていこう」というプレイヤーの方々が、ここ数年は増えているんじゃないかと感じていますね。
青柳:その中で私は、とにかくお金を出す側の立場なんです。昔であれば本当に「ちゃんと成果が出ますよね」というところだけで見ていたところが、成果も出て……今は別の財団をやっているのですが。投資財団というものをやっているので、「ちゃんと出したお金は戻ってきますよね」というところまで、一投資家の目線を持って出すように、少しずつ変わってきています。私などはその一部ですが、財団というポジションでは、非常にユニークなところでやらせていただいています。
杉山:お金を出すときのいわゆる「評価」は、どういったところを基準にされているのでしょうか。
青柳:評価ですか。究極に言えば、やっぱりそこの経営チームの方がどうか、ということだと思いますね。事業として何をやるかは、社会事業の場合は優劣がつけられないと思います。だから、何かの問題を解決しようと思ったときに、それがどれだけ解決に向かうか。要は成功するかどうかは、多少は事業計画云々もありますが、やっぱりその組織にどれだけコミットできる人たちがいるのかが、実は一番の評価ポイントになっていますね。
もちろん、事業そのものの評価もやりますよ。やりますが、それは書けばどうとでもなると言えば、どうとでもなります。書くぶんにはできるんですが、やっぱりそれをやれる方々が、どれだけそのチームにいるか。ネットワークを持っているのか。そういったあたりで成功率は変わってきますから。よく「申請書」と言うんですが、申請書や事業計画書に、キレイなことが書いてあるだけでは、実はやっぱり判断できないところが大きいですね。
杉山:はい、ありがとうございます。では、大吾さん。……どうですか?(笑)。
(会場笑)
佐藤大吾氏(以下、佐藤):雑な振り方を(笑)。
杉山:ざっくりと、どうですか(笑)。
佐藤:では雑に答えようと思いますが(笑)。
(会場笑)
「いいと思います」というような(笑)。今、青柳さんがおっしゃったことを、僕は猛烈に感じているのです。というのも、「NPOは」「株式会社とは」という議論を……例えば「あすか会議」は、もうかれこれ10年目ぐらいになるんでしょうか? 10回ぐらいお邪魔しているのですが。
みなさんも入学される前だと思いますが、その頃は「NPOとはね」というテーマで、こうしたセッションを。だいたい宮城くんと僕で毎度ずっと、10年も一緒にやっているわけなんですよ(笑)。
宮城治男氏(以下、宮城):地味なセッションをね(笑)。
(会場笑)
佐藤:やっているんですよ(笑)。地味なのに、こんなにたくさんの方に集まっていただいて。「NPOとは」というもので十分に成立した時代があるんですが、最近は「NPO」という言葉が、このセッションのタイトルにならなくなってきているんですよ。もう「ソーシャルベンチャー」「社会起業」じゃないと。
NPO法人格であれ、財団法人格であれ、株式会社という法人格であれ、もう(みんなが)見ている世界が共通している。「世の中を良くしましょう」と思っている、「この問題を解決しましょう」と思っている。法人格は、もう人それぞれの得意不得意があったり、山の登り方のようなものです。表六甲から登ります、裏六甲から……関西人なので、僕は六甲山で例えてしまいますが(笑)。その六甲山の登るルートによって違うだけの話というような気がしているんですね。
もうちょっと言えば、僕はせっかくこの中で入れていただいているので、「クラウドファンディング」というものが一応タイトルになっていますから。みなさんもわかっていると思いますが、類型としては寄付だけじゃないんですよね。インターネットでお金を出すパターンが何パターンもあって、1つは寄付です。戻ってきません。その出し先が大成功しても、お金は自分に返ってこないのが寄付。
それから「まだできていないものを買う」という、予約購入のようなもの。これもクラウドファンディングですね。別名「購入型クラウドファンディング」と言います。
あと、先ほど宮城さんが「2.7億円調達した人がいる」というのは投資型と言って、お金は出すんだけど、うまくいったらお金が戻ってくるかもしれない。もちろん、ダメになるかもしれません。紙くずになる可能性もありますが。そういった、いろんなパターンがある。
佐藤:僕は一応、それを全部チャレンジしてみようと思い、やってみたということでございます。僕は、先月でクラウドファンディング会社の代表を退任しましたので、たった今は僕自身はクラウドファンディングをやっていないのですが。2010年に「クラウドファンディング」という言葉が日本ではまだ言われていない、READYFORも生まれる前に、「寄付サイト」と言って始めたところから「投資サイト」というようなところまで、一旦眺めてきましたということです。
マーケットは間違いなく膨らんでいますし、先ほど米良さんもおっしゃっていたように、普通に若い子たちが使うようになって、ハードルがずいぶん下がっています。ECサイトをオープンすることがまだ珍しかった時代であり、クラウドファンディングをやることも珍しかった時代。今やECショップをやる方が普通じゃないですか。どんな商店街の靴屋さん、傘屋さんであっても、「ECもやっていますよ」ということが珍しくなくなっています。
クラウドファンディングでお金を集めることも、もうぜんぜん珍しくはないような状態になってきたというのは、やっぱり一つ地震(2011年3月11日の東日本大震災)が大きかったとは思いますが、すごく世の中が変わったと思います。
ですから僕も、同じことをこうした講演会のときに言わせていただくのは、「あなたの夢が実現しないのは、お金のせいにできませんよ」という話です。それはプランが悪いだけ。あなたの友達が少ないだけ。
(会場笑)
魅力がない(笑)。これね、寄付型と購入型は……まぁ購入型は違いますね。寄付型だけの話をすると、やっぱり友達が多い人が有利です。もうこれは言い訳はできませんよ。「いいプランならお金が集まるんじゃない」と思うでしょ? いや、集まらないから、寄付の世界は。
購入と投資は別の理由ができてくるので、友達が少ない人でもお金がバッと集まることもありえます。ありえますが、寄付は……米良さんにもご意見を聞いてみたいのですが、僕の実感としては「やっぱり友達が多い人が有利だ」という感じがしますから。ぜひここで、仲間をいっぱい作って帰ってください。
(会場笑)
チャレンジして(笑)。持ちつ持たれつでね、出すと出してもらえるし、出してもらうと「出しなさいよ」と思うしね、といったこともある(笑)。そうした返報性の原理も使いながらやっていくものが寄付っぽいといった気がしますね。
ざっくり答えましたが、どうですか? 大丈夫ですか。
杉山:どうぞ。
米良はるか氏(以下、米良):私?(笑)。「友達」というものをどう定義するかということもあると思いますが、やっぱり自分の志に共感しているコミュニティをちゃんと持っている、あるいはそのコミュニティに入っていることは、すごく大事なことです。
たぶんグロービスも一つのコミュニティだと思うんですよね。何かをやりたいときに、それを応援しようと思ってくれる人たちがたくさんいるという、それは一つのコミュニティだと思いますから。そうしたことを大事にしている人にお金が集まりやすいということは、(実際に)そうだなと思っています。
ぜんぜん違う話をすると……。私がクラウドファンディングから外そうとしているんですが(笑)。先ほどの法人格の話で言えば、私も最初に始めたときに「NPOにすればいいじゃん」と、かなり言われました。でも、私たちは、株式会社なんですよね。あえて株式会社を選びました。
私はやっぱり、NPOという法人格が、そのときはあまりしっくりこなかったんです。どうしてしっくりこなかったのか、その当時はよくわからなかったのですが、株式会社にしようと思ったんです。
今振り返ると、やっぱりファイナンスはすごく大事だったと思っています。株式会社だからこそ、本当に多様な資金調達の手段が選べる状態にある。
「世の中をこんなふうによりよくしたい」という気持ちがすごく(あって)。それはビジョンだと思うんですが、「そのビジョンを本気で実現して行きたい」と言うと、どうしてNPOでやるべきだと言われるんだろう」ということに、すごく違和感がありました。
何かビジョンがあって、そのビジョンに向けて法人格を作ることは、今まで絶対に歴史の中でもあったはずなのに、そういった理想を語るとどうして「それNPOなんじゃないの」と言われていたんだろうと。私が(READYFORを)始める5年前や6年前ぐらいは、そのように言われていたんですが。本当に今は変わったなぁと思っています。
自分ぐらいの年齢の人たちだと、逆に大義がない。つまり、ビジョンがないような会社は、人気が出ない。採用がうまくいかない、お金も集まらないから、ぜんぜん成長しないんですよね。ですから、NPOや株式会社とかではなく、ビジョンを持って経営をしていくということが、今の時代に……少なくとも自分の世代ぐらいの人たちは、みんな本当にそうなってきているのだろうと思っています。
そうした人たちに向けたお金の流れというものを、もっとうまくできないだろうかと思っているんです。今はまだ法人格によるお金の付け方になっている気がしますが、もうすこしその中間的な…。青柳さんがチャレンジされている領域だと思いますが、何かもっとうまくできたらいいなと……。
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