2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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山口公大氏(以下、山口):2つ目は、これ(日本法人立ち上げ時の採用のワナ)です。私はここにすごく苦い思いがあるので、このお話をもらったときにぜひ話したいなと思っていたトピックです。
次のスライドです。外資系の日本のベンチャー、日本の法人として立ち上げるときに一番感じていたことは、採用すべきではない人が来やすい構図になっていること。
これに気づいたときには、1社目のときには時すでに遅しでしたね。だいぶ苦労しました。何かというと、(スライドの)右側にリンクアンドモチベーションの麻野さんという方が出した『THE TEAM』という本があります。説明しやすいので、その中から抜粋しました。人には働いている動機が4つあると。
その4つのどれか、もしくはその中のバランスで仕事を選んでいる。1つ目はPhilosophyですね。これは会社の理念とか方針、ヴィジョン、目標です。それが素晴らしいからこの会社にいると。2つ目はProfession。これは活動、成長と書いてあります。業務内容などですね。なので、自分のスキルが活かせる領域の話です。
3つ目は人、風土ですね。人が好きなんです。「あの人がいるから」というモチベーションで入ってくると。最後が待遇、特権ですね。これは報酬とかお金、あとは役職といった、外から見えるハクですね。
外資のベンチャー立ち上げをやっていて、あとから気付いたんですけど、来やすい人は、職能や技術を活かしながら、成果が出たらめっちゃ金くれという人が集まるんですよ。やっぱり外資は職能文化があって、ジョブ・ディスクリプションを極めていくんです。
1つの職能の中で、どんどんどんどん深く入っていって、ある程度深く入ったら転職をする。そこで給料を上げて、また深く入っていって、給料を上げてということを繰り返していくんですね。なので、自分の能力を上げて、給与を上げて、転職してさらに伸ばしてという考えの人たちが多いんですよ。
けれども、外資のユニコーンのベンチャーといっても、日本法人を立ち上げるのはゼロからなので、最初は実際に業務の中で何があるのかわからないんですよ。なので、そのタイミングで採るべき人間は、スキルを活かしながら会社のヴィジョンや目標を達成するところに向かっていく人たち。右上(Profession)から左上(Philosophy)に向かっていく人たちが極めて大事だし、活躍するんです。
転職マーケットでは圧倒的に、右上(Profession)から右下(Privilege)を狙ってる人が多いんですよ。これがすごくわかりづらいところで、間違って右上から右下にいく人を採り過ぎると反乱が起きます。
当然スタートアップなので、急にやっていたことをピボットしたり、やめたりすることはあるんです。また、人事制度がしっかりしていなかったりもします。けれども、この来やすい人たちを採ってしまうと、実際に事業をする中で、「僕は成果を出したよ。だからこれだけお金くれ」というような話になるんですね。
事業上それがどうしてもできないときに、仲間を引き連れて村を作り始めるんですよ。実際に経営者批判をし始めて、そこから壊れていくということが、実際に起きていました。下に結果を書いています。ハクをつけてホッピングをしていくタイプだったり、「給料を上げろデモ」みたいなものが起きたり。
あとは権威の奪い合いが起きたりするんですね。(スライドには)沈静化まで1ヶ月と書いてあるんですけど間違いで、本当は1年かかったんですよ。大きなロスをしているんですね。なので、本当にここはすごく気をつけなければならないところです。
外資の立ち上げをしているときは、英語を話せる人に甘くなるんですよ。日本では英語が話せる人はマーケットに少ないので、上げちゃうんですよ。なので、そこで判断してしまって、来やすい人を採るということが、実はけっこう散見されます。そういうところが注意点です。
次のページに行ってもらっていいですか。私はだいぶこれで痛い思いをしたので、前職のときに本当にいろんな人に「こんな会社に入れやがって」とか「あなたがそういう意思決定をする人だとは思わなかった」とだいぶ言われたんですけど、それをなくしたいなと。
どうやったらそれがなくなるんだろうと、当時ずっと考えていました。出た答えが、結局私が最初に一緒に働いていたDeNAの南場さんがよく言っていたことに戻りまして、「エントリーマネジメント」でした。
最初にどういう期待値で入口をくぐってもらうかによって、圧倒的に変わる。私がずっとやっていたのは3つ。まず基本的にはリファラルで採用すると。紹介での採用ですね。
紹介で採用をすると、実際に勤続年数は圧倒的に長くなります。3倍くらい長くなるんですよ。かつ、組織が壊れるような動きをすることが限りなく少なくなる。なので、つらくても時間がかかっても、基本的にはリファラルでの採用。
2つ目は報酬。お金以外でも評価とか役職とかです。例えばマネージャーとディレクターとVP(vice president)の違いとか。そういうところで本当に喧嘩をするんですよ。なので、そういうところの期待値を合わせ続けると。
最後が大事だと思っています。会社を悪いメガネで見たときの話をするんですよ。なんの調査だったか忘れちゃったんですけれども、今歩いている町を、2人の目で見ろという実験があります。ケース1は「彼女ができたばかりの自分、結婚したばかりの自分の目で、この町を描写してください」というものです。
ケース2は「戦争で子どもを亡くした自分という状態でこの町を描写してくれ」というものがあります。人の気分とかマインドによって、同じ風景をめちゃくちゃいいように話す人と、めちゃくちゃ悪いように話す人に分かれるんですよ。
なので、面接のタイミングでも、実際に会社をすごく悪く見たときの話をするんですよね。候補者がこれを受け入れられるかどうかという。スタートアップは本当に大変で、荒波の中を進んで行くので、1回ひっくり返ったときに悪いメガネで会社を見ることが多々あるんですよ。
その状態を許容できるかどうかということを、すごく丁寧に見るようになった。なので本当にそういう描写をして、求職者が「うっ」て引いたり、「ちょっと考え直そうかな」という仕草が見えた瞬間に落とすということを気をつけていますね。次、行ってもらえますか。
3つ目ですね。「最強の武器を使うための、戦場のデザインが仕事」と書いてあります。私は外資のユニコーンのベンチャーで、立ち上がりがうまく行き始めたら仕事はほぼこれかなと思っています。何かというと、ゲームがスタートしたタイミングで大砲を持っているんですよ(笑)。
ユニコーンのベンチャーなので、海外ではもう成功しています。海外で成功するキャノン砲を持っているんですよ。ただし人員は2人とかで、2千人や1万人の会社と戦えと言われるんですよ。真っ裸で2人で大砲を持って、「大きな戦争に行くぞ」と言っているような感じですね。そのため、少数でも戦争に勝てるところに人を誘導するしかないんですね。
戦える戦場に移動させると、ゲームに勝てるようになるんです。(次のスライドを見せて)これですね。これはアメリカのSprinklrという会社です。何が言いたいかというと、これは全部サービスなんですけど、(見ただけでは)ちょっとよくわからないじゃないですか。
ソフトウェアの中ですごく種類がいっぱいあるんですよ。いろいろできますと言っています。「マーケティングもできます、広告もできます、リサーチもできます、eコマースもできます、カスタマーケアもできます」という商品なんですよ。
こういう商品を持って、2~3人くらいで戦いに行くわけですね。こういうときに何をやるかというのが、次のページです。どうやったら我々が勝てる戦場に入っていくのかという、道筋を作るんですね。(スライドの)左側は、我々がどうやって、勝ってきているのかというのを、抽象化していくんですよね。
ソフトウェアの会社なので、導入する部署の数と機能の数が増えていくと。そこの面積が一定に広がった瞬間にチャーン(解約)がゼロになるんですよ。それを狙って2~3人で企業の中に入り込んで、オセロのように相手の石をひっくり返すゲームを続けるんですね。
Sprinklrの戦い方は、当時は2部署3機能、もしくは3部署に機能を入れた瞬間に勝つというものがあったんですよ。そこが少人数でもキャノン砲をぶっ放せる領域だったので、絶対に3部署に横断で入れてもらえるような交渉をしたり、それを入れてもらえるんだったら価格を下げたりしながら、絶対に勝てるようなところへ誘導していくんです。
これ(スライド)は四半期ごとの1クライアントの売上の増分です。実際に誘導をしていくと、がんがん増えてくんですよね。なので、こういうパターンで、2、3人でキャノンを使って絶対に勝てるところまで誘導していくわけですね。
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