2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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石坂昌也氏:投資って、みなさんがやるときに、まず余ったお金でするじゃないですか。お金のある人が冷静にやる。外国の場合って、ちょっとクレイジーな投資の仕方をするというか、「もうこの会社に任せた」とか「なんかよくわからないけどヘリコプターが売れるんだろう」みたいな感じで、自分の生活費も全部投資しちゃう人がいるということです。
後先考えずに投資をするから、すごい脅迫とか送ってくる人もいるとか。「家を担保に入れちまったけどどうすんだ」みたいな。投資ってそういうもんじゃないだろうと思います。
(会場笑)
でも、そのくらいクレイジーな人がいて、少額だけどもたくさんの人が投資をしている。それって「投資文化」というと聞こえはいいんですけど、めちゃくちゃな投機をする人がたくさん住んでるだけなんです。
日本の人たちは冷静なんですよね。投資に使うのは余裕のあるお金だから、人数は少ないけどわりとリッチに投資をしてくれる。でも、そこを増やすというのは難しくて。やっぱり金持ちな人もいれば、金持ちじゃない人もいるのが普通の経済の構造なので。だから投資の総額は大きくないのかもしれません。
これは何が言いたいのかというと、身銭を切って応援をする人がたくさんいる国と、余ったお金を冷静に投資をする国があった場合、「どっちの方が起業のバリューって跳ねますか」というと、やっぱりアメリカなんですよね。
アメリカの方が人口は4倍くらい多いし、一応英語っていろんな国で使えるので。極端に恐ろしい期待が集まってるのは、応援の文化があるからなんです。まぁ応援というと聞こえはいいんですけど、身銭を切ってばんばん金を入れてくる人たちがいるのがアメリカの特徴なのかな。
それがアメリカというか英語圏の特徴なのかなというところです。とはいえ、今売上がないのに恐ろしいほどの期待を集めようと思えば、グローバルブランディングは不可避ですね。日本の人たちは冷静だし、日本語のコミュニケーションが得意ですから。
とはいえ、英語圏の中に恐ろしい投資をする人たちがいっぱいいるので、海外視点でタブーを踏まないように、自分のやりたいことをメッセージに載せていかないと、飛び抜けた期待を集めるのは不可能なんじゃないかなと思います。
一応彼らというか、Appleの言い分とかもそうで、機能とか価格競争を避ける文化というか考え方があります。Appleですら、広告は常に考え直すべきだと言っています。
「Keep talking to audience in their language」で、これって日本語に意訳するというか、いい感じに訳すと、「彼らの目線に合わせて言葉を喋ろう」という言い方だと思っています。Appleというブランドを築いているところですら、一応聞く耳に関しては目線を合わせ、しっかり聞こうというのをけっこう徹底しているというところです。
つまり、自分たちの伝えたいことを自分たちの言葉で言ってしまっていないか、ちゃんと伝えられてるかってことだと思います。
今、カスタマーエクスペリエンスを作りましょうとか言われていますけれど、(スライドの)1番下のところで、今も例えばこのスペースとかは、日本の中で女性とかが最近活躍をしてるのは、コミュニティデザイナーとかオウンドメディア構築みたいな感じですかね。
これに関しては、どんどん作っていきましょうとAppleですら言っているということです。一応ここまでいろいろお話をさせていただいて、つまり何が言いたいのかというと、おそらくみなさんは事業家だったりとか、社長だったりするときに、ブランドは不可避なはずなんですね。
なんでかというと、それはみなさんのせいじゃなくって、国自体が今シュリンクしてます。人口が減っていたりするなかで、平和だからこれ以上自分が戦う必要ってないような気もするんですね。
なにかしらの意思があって、あえて会社を立てているのであれば、ブランディングに投資をしないという、目を瞑った行為はヤバいと思います。
ただし、知った上で投資を回避するのはありだと思ってます。これがAirbnbとWeWorkです。これはおそらくみなさんはご存知だと思います。なぜあそこまでAirbnbのようなシェアリングエコノミーが成功してるのか。なぜWeWorkのブランドが立ってるのか。
創業者にブランドがあるということなんですね。イーロン・マスクの件もそうで、それ言っちゃうとお終いみたいなところもあるんですけど。ただ、国内でもたぶんあると思うんですよね。
「BIRD」ってご存じの方はいますか? これはモーターバイクです。運送の世界では世界中の人が「ラストワンマイルが重要だ」とめちゃくちゃ言っています。
ラストワンマイルって、その名前のとおり、ラスト1.6キロのことです。お客さんの手元に届けるまでの1、2キロの運搬がめちゃくちゃたいへんなんですよ。例えば今でいうと、運送屋の方が荷物を届けに来たのに留守だったから帰るみたいなところが1番大変なんですよね。
そこを解決するための電動バイクです。これが今ユニコーンになってて。ユニコーンになるまでにかかった時間は1.25年です。電動バイクの会社が、「ラストワンマイルやります」って、他の人と同じようですよね。しかも解決方法が「電動バイクかよ」みたいな感じなんですけど、1.25年で1千億円を集めていて、これは世界最速です。日本で日本語でやっても、絶対集まらないですよね。
とにかく恐ろしい速さでいきましたと。これ、確かにデザインとか表現が上手いんですよ。自分たちが何をしたいのかを表現するのが上手いんですけど、デザインが良くて説明が良いから金が集まったかというと、それはないと思っています。
実はこの会社の社長が、LyftやUberという旅客スタートアップの要職だった人なんです。つまり、この方がラストワンマイルに取り組めばライバルたちよりも大きな結果を出してくれるだろうという期待から、むちゃくちゃ金が入ってたみたいな感じでしょうねと。
つまり、これは残念ながらブランドデザイナーがどうこうできる問題ではなくて、その人の今までの生き様、キャリア、名声、人脈が思いっきり投資や期待反応をしてしまったということですね。しかし、しっかり整理すれば、起業家はブランディングの再現性が出てくるのかもしれません。自分のブランドを理解したグロースハックです。
これもすごく有名な話で、すでにご存じの方がいるかもしれないので、ちょっと恐縮ではあるんですけれども。Airbnbがサービスの開始直後にどうなったかというと、サイトのトラフィックが増えなかったんです。なぜかというと、まぁそれはほとんどのサービスが行き当たる当たり前の一つですよね。他にもいっぱいあるし、別に個性を強く売れているものではないじゃないですか。
つまりお金がなくなったんですね。先ほどのイーロン・マスクは有名人だからたくさんグッズが売れましたと。しかし、この人たちは無名でした。だから、Airbnbらしく、おもしろいモーニングシリアルを作りましたと。オバマとかマケインをあしらったカートゥーンのシリアルを作って、これが1個めちゃくちゃ高かったんですね。40ドルですね。
(会場笑)
で、800個。つまりクラウドファンディングみたいなもので、そこに対してクリエイティブ、ユニーモアを乗せています。なぜかというと、自分が有名じゃないからです。どっちかというと、オバマさんの方だけ売れたんですね。売れてる雰囲気を作るために、自腹でスーパーに買い占めに行きました。それを見て、母親から「いつからシリアル屋になったんだ」と言われたとか。
(会場笑)
つまり、この方たちのおもしろいところは、シリアルは売れたのに、シリアル屋にピボットしなかったということなんですけど。じゃあなんでシリアルを売ったのかというと、「Airbnbって朝食が必要じゃん。朝食ってブレックファーストじゃん、じゃあシリアルじゃん」ということです。
ですから、この人たちって、たぶんそこにこだわってたんですよ。金だけ求めてるんだったらシリアル屋になった方が売れてるわけじゃないですか。でも売上を使ってトラフィックのないところに突っ込んだんですね。それで、耐え忍んだわけです。
そうやってこだわって我慢をする。投資をする人が「人に投資する」と言ったりするのも、まさにそうかなと思っています。「なぜそんなことをやって我慢をしてまで」「あなたほどのタレントのある人が、あなたほど大企業から求められてる人が、なぜこんなボロいアパートでやってるんですか」みたいになると、やっぱりこだわりがあってやってるということになっちゃうのかなと思ってます。
おもしろいシリアルを作って、しかもAirbnbらしくブレックファーストにしたというところです。
続いて、自分のストーリーや生い立ちを背景にビジネスディベロップをした人が、WeWorkのほうですと。
この人もランドスケープデザイナーです。ランドスケープってぶっちゃけて言うと、建物というよりも公園全体みたいなことを示すことが多いんです。この方は、自分でもちょっと理解できないんですけど、5人の母を持つコミューンという特殊コミュニティで育ったらしいです。
つまり、母親をシェアしてるみたいな感じです。ドキュメントで見たことがあります。アフリカとかで100人くらいが1つの(場所で暮らす)。どこか別の地域とかにもあるらしいです。この人がニューヨークに来たときに、「あれ、ニューヨークってコミューンねえじゃん」みたいな。
あるわけないんですけど、そういうものに対して息苦しさとか新しいコミュニティの可能性みたいなものを、自分なりの経験を活かして作りたいと思って、そこから美術大学というか専門デザイナーになって、その後独立をしたということです。
これもまぐれかもしれないんですけれども、この方たちにはそれにこだわる理由があったということです。ちょっとやそっとでは止めなかったというか、他に儲かってる割にどういうわけかそこに戻ってきてるみたいな。
やっぱりこういうものを説明するときに、売上とか合理性でいうと、やっぱり普通に就職した方がいいと思うんですよね。自分もそう思うんです。でも自分で会社を持ってるのは、自分にやりたいことがあるからなわけなんです。
その場合、売上もすごく重要なんですけど、売上よりも先に自分たちが何をしたいのか発表をしないと、本当に箸にも棒にもかからないんじゃないですかねと。厳しい言い方をすると、存在意義を問われる。
なので、もうすでに良いプロダクトがあるのに、なんで似たようなものを、あとから使えないものを作ってるんですかとなっちゃう。「これは将来的には海外に行くつもりなんです」「これが上手くいけば、きっと自分の町を押し上げられます」「雇用を提供できます」とかって、ちゃんと言った方がいいんじゃないですかということです。
でも、言葉や情報はあふれています。だから、タイミングや表現方法のクオリティで、1000倍の効果ぐらいは平気で変わってしまう。その時にプロのブランドデザイナーなどが介在する余地があるのかもしれません。
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