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一般社団法人日本スタートアップ支援協会 代表理事 岡隆宏 氏(全3記事)

ピボットをするときは「撤退基準」を設けよ 日本スタートアップ支援協会代表理事が説く、起業家の心得

経営者マッチングアプリCOLABOが運営する、ライブ配信スタジオ「COLABO LIVE CHANNEL」。さまざまな起業家をゲストに迎え、仕事への想いを定期的に発信しています。今回は2019年4月4日に公開された、一般社団法人日本スタートアップ支援協会 代表理事の岡隆宏氏のトークをお届けします。本パートでは、1,000人の起業家のメンタリングを通してわかった、伸びるスタートアップの共通点や、中高年層の起業家が増えてきている背景について解説しました。

1,000人の起業家のメンタリングでわかった、伸びる会社の共通点

及川真一郎氏(以下、及川):岡さんもすごくたくさんのスタートアップ、起業家の方とお会いすると思うんですけど、「いいな」という言い方をするとアレかもしれないんですけれども、なんだかこう「伸びそうだな」とか「なにかセンスがあるな」とか。

そういうことって、岡さんのほうでどういうふうに思われたりするんでしょうか。なにか(見ていらっしゃるポイントは)ございますかね。

岡隆宏氏(以下、岡):今、一般社団法人 日本スタートアップ支援協会の会員は100社いますけれども、この2年ぐらいで会った子は、おそらく1,000人近いかな。今、協会で伸びている子ですごいなという方が、20人ぐらいいますので。まあ1,000分の20か。だいたいメンタリングを1時間するんですけれども、そのスタートアップの共通点は、最初の15分くらいでわかります。

「こいつはすごいな」とか、これは巻き込み力もあるし事業運もあるし。なんといっても素直だし。誠実な感じまでいけば、これはもう最高です、と。だから、その辺の目利きは我々ができますので。

及川:確かに素直さといったことも、やっぱりすごく大事ですよね。

:最後は“やり切り力”とか言いますけれども、そこはもう当たり前で。ただ、やり切っても無謀なことをやり切ると死んじゃうので、どこかでベストを尽くしてピボットというものを立てて。ピボットは、中途半端なことをしたら絶対にだめなんですけれど。

寝食を忘れて死に物狂いで3ヶ月、もしくは半年やって、だめだったらもうやめる。ちゃんと撤退基準を設けてやれば周りも納得するし、大きな内紛とか組織が壊れることもないかなと思いますね。ピボットもね、10パターンぐらいあるので(笑)。

ピボットをするときは、事前に撤退基準を設けておくことが重要

及川:それはもう岡さん、たくさんピボットをしていらっしゃるので(笑)。でも、そのピボットをやる時もけっこうな勇気というか、いろいろとすごい判断があったんじゃないかなというふうに思うんですけれども。

:撤退基準さえ設けておけばね。でも、やっぱり大変ですよ。

及川:そうですよね。

:かっこ悪いしな。周りから「ブレてる」とか言われるしな。「どこに向かってるんですか」とか(笑)。ぼろくそに言われるけど、でもそれがないとね。スタートアップは死んじゃったら終わりなので、ある程度資金があるうちにピボットせんとね。資金がなくなって、周りのコアなメンバーもいなくなった後は、ピボットできないからね。

及川:そうですよね。この強いチャレンジができる段階になったら計画を立てて。

:だから、人と物がある間にしないと。まず人が辞めていくので。

及川:なるほど、そうですね。確かに「これだ」というのも大事ですけれども、当然そこには柔軟な姿勢も大事だということなんですね。

:だから撤退基準を設けて、3ヶ月とか6ヶ月とか、資金繰りによりますけど、1年とか決めて、ある程度のKPIを3つぐらい設定しておけば、周りも納得するしね。社長もやめやすいじゃないですか。

僕もそうですけど、やっぱり社長はプライドもあるし、メンツもあるので。なかなかやめにくいんですけど、そういった撤退基準というのがあれば胸を張って(笑)。

及川:確かにギリギリになると、なかなか言いづらくなったりもしそうですしね(笑)。メンバー間を含めて。

:周りからもいろいろ言われるしね。ミスリードされちゃうんでね。

及川:ですよね。変な話ですけど、「なにか隠してたんかい」みたいな話も含めて、ありそうですよね。

:少なくともCxO(Chief x Officer)、周りの幹部連中には、撤退基準は事前に言わないといけないね。

自分よりも少しステージの高い仲間に出会えることの価値

及川:確かに、なるほど。スタートアップの経営者が、日頃どういうふうに情報を集めて、先ほど言ったように、岡さんのような方に相談するということもあるんですけれども、やっぱり人から得るものが一番良さそうですか? 正しい言い方かどうか、ちょっとわからないんですけど。

:協会の会員に、「会員になって何が良かったですか」と聞いたら、当然、僕とかメンターとかスポンサーの協力があったこともすごく良かったんだけど、やっぱり仲間(ができたことだと)。

ちょっと語弊がありますけれども、仲間も2種類あって。自分よりもステージの低い仲間と高い仲間がいるんですね。これはスポーツなどで典型的ですけれども、やっぱり強いチームと試合をすれば強くなるし、弱いチームと試合をして勝っても、天狗になるだけで意味がないので。

じゃあ、スタートアップもシードやったらシリーズDとか、2ランクくらい、2ランクか、3つくらい上がいいな。1つくらいだとあんまり差がわからないので。3つか、4つくらい、とにかくリスペクトできるくらいのスタートアップで良い仲間ができれば、その子たちも絶対に苦労しているので。

とくに資本政策やVCの付き合い方とか、CxOのリテンションマネジメントとかね。そういうもので苦労しているので。とくに組織マネジメントなどは一番大事なので。そこは僕らからも言いますけれども、同じスタートアップから聞いたほうがいいですよね。

及川:確かに。当然、マザーズ、一部上場も含めてですけれども、上場をしていらっしゃる経営者の方もすごくいろんな経験をされていらっしゃっているんですけど、やっぱり自分に近いかというと、ステージが上過ぎちゃう場合もあるのかもしれないですよね。将来の自分が目指す先なので、その方の話も当然すごく大事ですし、素直に聞かないといけないんですけど。

確かに、自分の半年後、1年後にどういうことが起きているのかを、なんとなく自分の身の丈で感じられるのは、そういう2つくらいステージが上の方なのかもしれないですしね。

心が折れそうになったときに経営者を支えてくれる存在

:そこでのコミュニティ、コミュニケーションってすごくいいみたいで、よく報告も来るんです。なので、そこは間違いないかなと。だから、良質なコミュニティが大事なんですよね。同じようなレベルで愚痴ばっかり言っているようなコミュニティもあるらしいので、そういうものは時間の無駄かなと。これは交流会もイベントも一緒で、やっぱり生産性の低いイベントも多いので。そういうものはどうかなと思いますね。

及川:確かに、今はインターネットも含めていろいろなものが普及する中で、情報は誰もが取れるようになりながら、ここから同じ目標を持つ人で集まるといったことが、やっぱり今後はすごく大事になっていくのかなと。そんなふうに思った時に、同じような課題を持っていそうな人たちで集まれるコミュニティとかですよね。そういうものはやっぱりいいですよね、なるほど。

:僕も上場するまでは2回くらい、心が折れかけて投げ出したくなった時期がありましたけれども、そういう時に支えてくれるのは、やっぱり仲間やメンターですから。とにかく経営者は、社内には相談できる相手がいないからね。

及川:確かにそうでしょうね。なかなか相談できないんですもんね。今、協会には100名近くの会員さんがいらっしゃりながら、今度3年目に入られるんですけれども、今後、教会として、どういうことをしていきたいと思われますか?

:それはやっぱり量より質なので。今、入会審査も先にホームページにアップしたけれど。

及川:そうですね、それも見ながら話しますか。

起業家が注意すべき資本政策の失敗事例

:(入会審査は)すごく厳しめにして、優秀なスタートアップが育つような。ここにも書いていますように、資本政策を失敗すると、もう我々の支援のしがいもないし、なんのためにエグジットするかもわからなくなっちゃうので。

やっぱり、CEOやCEO代理の場合は、過半数はCEO株を持っていないとダメだし。外部も3分の1以下じゃないと、やっぱり無理なM&Aとか、逆にやりたくないM&Aとか、いろいろ言ってきますのでね。株の指向性も然りですね。

及川:確かに、最初からここの基準が満たされていない経営者さんもやっぱりいらっしゃるということですよね。

:共同創業で、3人2人で均等割して、その後、すぐにエクイティしちゃって。とんでもない株価で動かしようがないとか。あとはエンジェルさんとか、VCさんに3分の1以上取られちゃって、もうエグジットM&A(会社売却)しかないとか。あるあるなので。これだけ情報があっても、そういう人が多いし。

会員でも、入会してからいろいろとそういったことになってしまう子もやっぱりいますので。リテラシーがないというのは、結果そういったことになっちゃうので。これは東京だけじゃなくて、今は地方でも、札幌とかM&Aもいろんなイベントをするんですけれども。どこにでもある問題なので、そういった資本政策の失敗は減らしていきたいなと思っています。

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