2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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一戸健人氏(以下、一戸):続いてのテーマは「今、20代で起業するならどんなビジネスを狙うか」です。
以前「独立したかったけどできなかった」みたいな内容の記事を拝見したんですが、今20代だったらこんな事業をやりたいというのはありますか?
里見治紀氏(以下、里見):祖父や父親も自分でビジネスをやっていたので、自分もやりたいなと思っていました。でも学生時代にビジネスアイデアが思い浮かばなかったので、証券会社へ探しに行こうと。
ちょうどITバブルが弾けた瞬間で大変だったんですけども、IPOのコンサルティング部隊に配属してもらって、いろんなベンチャーを担当していました。
じゃあどの分野を狙うのか。社内のビジネスプランコンテストでもよく言っているんですが、今流行りのマッチングにはまだまだチャンスがあるんだろうなとは思っていますね。
売上2兆円ぐらいの大企業ですけども、リクルートはマッチングの会社ですからね。人材のマッチング、飲食店と顧客のマッチング、ヘアサロンと顧客のマッチングを紙でやっていたのを、今どんどんデジタル化しようとしている。
Indeedはまさにマッチングに特化しています。UberやAirbnbもマッチングですし、そのほかにも恋愛のマッチングアプリなど、まだまだ世の中にはマッチングしたいニーズがあるんだろうなと思います。不動産仲介業もまさにマッチングです。
このように、スマホ × 4Gでこういうのが出てきた。じゃあ次はスマホなのか、もしくは違うデバイスが出てきて、それに5Gを掛けたらどんなマッチングができるんだろうかというのは次のチャンスで、新しいサービスがそこから出てくるかもとは思っていますね。
一戸:ありがとうございます。じゃあ続いてのテーマに移ってまいります。どんなスタートアップのサービスがあれば使いたいかという部分で、こちらの会場に集まっている20代のかたも、実際にがんばって営業されている方もいると思います。
こんなサービスを売り込みたい、という人もけっこういると思うんですね。どんなサービスだったら、検討したいとかこんな提案ほしいみたいなメッセージはありますか?
里見:似たようなサービスは出ているようなんですが、5年前ぐらいにうちの子会社の1つでビジネスプランコンテストを開催しました。夏休みの宿題企画で、監査役、取締役、新入社員も含めて、1人1個以上ビジネスプランを提案してもらったんです。
厳正な審査のもと匿名投票で選ばれたのが、なんと自分が出した企画でした(笑)。これ、忖度はないんですよ。そのとき考えたサービスが、旅行のマッチングアプリだったんです。
例えばローマに行こうと思ったら、まず飛行機を予約します。そしてホテルもどこかを取ります。でも、そこで何をするのかを決めるのって、めちゃくちゃ面倒くさいなと僕はいつも思っていて。
それをマッチングとかレコメンドでバーッと埋めてくれて、行程表を簡単に作れるサービスがないのかなと。なので、ガイドブックや旅行代理店ではなく、マッチングスマホ旅行アプリという企画を書いたら、それが優勝したんです。
選ばれた人は、担当を外れてそっちをやっていいよということで始めたんですけど、僕は社長を外れられなかったので、その企画は起ち上がらなかったんです(笑)。
一戸:今日来てらっしゃる会社の方で、このビジネスモデルを持っていけば通るかもしれません、というところですね。
一戸:では続きまして、若手経営者に投資する際に重視しているポイント。この先資金調達を考えられている方も会場にいらっしゃるんじゃないかなと思います。例えば性格や人物像など、逆にこんな態度をした起業家には投資しないみたいなことはありますか?
里見:嘘をつく人には投資はしないですね。投資してほしいからといって嘘はついちゃいかんです。大げさはまだ許すけども、嘘と大げさは違うんですよね。
採用面接で経歴に嘘をついたり、実績で嘘をついたりしても、話せばすぐに分かります。やっぱり誠実な人がいいですよね。やんちゃなやつというか、グイグイくる子の方が応援したいなと思うのはありますよね。
うちの社内を見ていても、型にはまらずグイグイくる子の方がいろんなアイデアを持ってきて、新しいことにどんどんチャレンジします。そういう子は応援したいなと思いますよね。
一戸:最近投資されたとお聞きしたんですが、株式会社FUN UPの山口さんでいうと、どんなところが投資の決め手だったんですか?
里見:スタートアップの方とはいろいろな機会でお会いします。会社の中だけでは、世界が広がらないので、IVS(Infinity Ventures Summit)とかB Dashといったイベントなどにはなるべく顔を出して、最近のトレンドや、今どういうスタートアップが元気で、どういうジャンルが元気がいいんだろうかといったことを見ています。
そういうときに知り合って、その後に資金調達ニーズがあるとの話をいただきました。もちろんビジネスモデルがそこそこおもしろいというのは重要です。ただ、アーリーの段階になると人柄の方が重要だろうなと思います。なぜかというと、結局成功しているベンチャーって、ほとんどピボットするんですよ。
ビジネスモデルがいいと思って投資したけど、結局それがダメだったときににっちもさっちもいかなくなってしまう人よりは、途中でこのビジネスダメだなと思ったけどピボットして成功している人のほうが、おもしろい人が多いですね。
なので、ビジネスモデルはある程度見ますけど、それよりもやっぱり僕は人柄を重視していますね。
一戸:スタートアップ業界ではけっこう有名な話なんですけど、言える範囲で、里見さんはこんなところにいますよみたいなのはありますか?
里見:DMM.comの亀山敬司会長は自分でどんどん宣伝されていますが、僕は「いつもこの店にいる」とはあんまり言わないようにしているんですよね。
まさにここのTUNNEL TOKYOなど、いろんなイベントには出ています。みなさん本日はセガサミーまで来ていただいてありがとうございます。このTUNNEL TOKYO自体、我々のグループがオープンイノベーションをどんどん推進していくために作ったところなんですね。
トンネルの向こうには、我々が応援しているスタートアップにも入ってもらっていますし、個人単位で来ていただいている方もいます。
そして一番の売りは、社員食堂が使えることですね。あとは、すぐ横にセブン-イレブンのセガサミーホールディングス店もあります。もちろんセガサミーグループの社員があちこちでうろうろしていますから、会ったときにさまざまな化学反応が起きればいいなということで、イベントにも貸し出しているんです。
今のところ、かなり格安で貸し出しているので、こういうイベントを開きたいとTUNNEL TOKYOに言っていただいて、空きがあったらお貸ししています。逆に、いろんな人にどんどん来てもらえれば、どんどん出会いが生まれるかなと思っています。
一戸:ぜひイベントを開催したいという方は、「TUNNEL TOKYO」にご相談ください。
一戸:続いて、若手経営者と提携する際に重視しているポイントについてです。先ほどの営業ではないですが、興味を持っている事業や会社、領域などはありますか?
里見:提案をいただいてからこちらが気付くこともあるので、縛らないようにはしていますけどね。ただよくあるのが、トップに会えたらトップダウンで物事が決まるだろうと思いがちな人たちが多いですね。
とりあえず名刺交換をして、僕にメールをして1回会ってもらえれば、下に落としたときに忖度が働いてビジネスが進むに違いない、と思う方が多いんです。それは違っていて、大企業の方と接するのであれば、社長と名刺交換をしてもあんまり意味がないですよね。
大きな企業ほどいろいろな承認プロセスがあるので、現場でぐいぐい進めてくれるキーマンと知り合った方が、提携を具体化していくって意味では重要かなと思います。現場の人と会ってイメージをして、こういうことやれるからと提案された方が、僕としても承認はしやすいのかなとは思いますね。
一戸:セガサミーさんほど大きい会社であれば、そういう社内調整とかも大変だと思うんですが、事務局の方がいっぱいいらっしゃいますので、一人ひとりと仲良くなっていただければと思います。
一戸:では採用について、最後におうかがいできればと思います。幹部の採用をこれからしていく創業期の会社なんかも多いと思いますが、採用で重視しているところはどこですか?
里見:僕は、ステージによってぜんぜん違うと思っています。新卒採用ではなく中途採用の場合は経歴が出ているので、自分たちが求めているものとまず合うのは当たり前なんです。それ以上に僕が重視しているのは、やっぱり人間力ですね。
「この人についていきたい」と思える人物かどうかが、上に立つ人には求められています。例えばスペシャリストとかであれば、専門性に特化している人が必要かもしれないですけれども、部門長なり取締役なり社長なりであれば、やっぱり人間力の方が重要だろうと。
社内で里見塾というものを起ち上げて、30代40代のグループの役員クラスを集めて、徹底的に人間力を高めるという取り組みをやっているんですね。彼らに最初に言ってることは、みんなは仕事ができたからここまで出世したけど、ここから上にいくには今のままじゃ無理だよということです。
人間力を鍛えて、自分たちの部下、もしくは取引先、仲間たち、ほかの部署のメンバーなどに、「あの人が言うんだったら」とか「あの人の為だったら」と言われる人物にならないと、これ以上は出世できないぞと言っています。外から雇うときにもそれは意識していますね。
ただ、優秀なやつは冷たいんですよ。そういう人はそれで活躍してくれるんですけど、やっぱり人はついてこないですよね。だからそういう人には、子会社の社長も含めて任せづらいですよね。マックスでもナンバー2止まりなんですよね。
一戸:踏み込んだ質問をさせていただければと思います。実際に里見塾で人間力を上げる策は、いろいろな講座があると思うんですが、明日からでも簡単にできる人間力向上の鉄則みたいなものをいただけたりしますか?
里見:役職に就いたときに、覚悟を決めるかどうかだと思うんですよね。じゃあ、初めて課長になります、部長になります、新しい部署を任せられましたと言っただけで成長していれば、誰も困らないんですよ。役職が人を作るとよく言われると思うんですけれども、それだけじゃ足りないと思うんですね。
そのときに覚悟を決める。腹を括っている人と括っていない人では、その後の成長がぜんぜん変わっちゃうと僕は思っています。じゃあ、どうやったら腹を括れるのかという話は、里見塾だけではなく、新入社員にも話をしてますね。
極端な話でいうと、毎朝家を出るときに鏡を見て、「よし今日もがんばろう」というだけでも覚悟なんですよ。覚悟を決めるのは、なにか重要な出来事が起きたときだと思うのですが、たしかに一番力が出るんです。
よく死生観っていう話をしますけれども、本当に死を意識した人、死にかけた人とか、大病を患った人とか、もしくは大親友や親族が亡くなってしまったときに、死生観を持った人は、「自分に残された人生でなにをやるんだ?」と振り返って、ものすごい力を発揮される方が多いという話があります。それはやっぱり覚悟ですよね。それは社内ではよく言ってますね。
一戸:人間力を高める上では覚悟が重要だということなんですが、もう少しお話を聞かせていただきたいです。20代の経営者の方で幹部採用を求めている方はいらっしゃると思ってまして、ナンバー2の見極め方だったり、「CFOはこういう人がいいよ」といったことなど、2点についてお聞かせいただけますかね。
里見:一番わかりやすい言葉でいうと、番頭というか、一番信頼がおける人じゃないかと思います。例えば金庫番も含めて、朝会社に行ったら預金が減ってましたとなったら一番困るわけです。やっぱり信頼を置ける人に一番側にいてほしいと思います。
イエスマンを置いてもしょうがないなと思ってるんですよね。イエスマンがいたら、ただの労働力でしかない。なんの価値も生まない。自分に常に苦言を呈してくれるくらいの番頭や金庫番なり、ナンバー2がいるのが一番いいんじゃないかなと思いますね。うるさいと思いますけども(笑)。
ましてや成功したりすると、どんどん人の傾聴ができなくなってくるというのもありますけど。それでも自分に苦言を呈してくれる人をいかに周りに集めていくかが、重要なんじゃないかなと思います。
一戸:最近でいうとHRテックのサービスがたくさん出ている中で、具体的に新卒採用はどういうかたちでやっていますか?
里見:新卒採用のところはまさに、毎年いろいろ苦労してやっています。どちらかというとサミーにしろセガにしろ、まずは会社のファンの子たちが申し込んでくれるんですよ。その子たちからは黙っていてもエントリーがくるので、そこじゃないところまでどう広げていくかという課題があります。
例えばいろいろなイベントに参加するとかですね。去年から「ボストンキャリアフォーラム」などの海外の学生なり外国人の方が集まるイベント参加して、けっこういい人材が採れましたと聞いています。
待っているだけだとファンしか来ないので、そうじゃない人材も採用するときには、積極的に行動していますね。
一戸:最近でいうとエンジニアの採用に苦戦されている会社さんは多いと思うんですが、具体的にこういう施策をやっているとか、されていることがあれば、ちょっと教えていただければと思います。
里見:エンジニア系の1Dayとか2Dayとかのインターンシップは、結構実施しています。そのあと「SEGA Game Jam」を開催して、採用見込みの子たちと一緒に1晩か2晩、みんなでゲームを作る経験をしています。
ゲームを作るのって、やっぱりおもしろいんだということを体験してもらって、ゲームの良さを伝えています(笑)。作ったゲームを楽しんでいる姿を見た方がうれしいでしょと。
一戸:ありがとうございます。
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