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第1部セッション「投資したい若手起業家の特徴」(全3記事)

セガサミー里見社長「起業のきっかけは、なんだっていい」 投資したくなる若手起業家の特徴

2019年5月9日、セガサミーグループ本社にて「第2回 UNDER 30 CEO CONFERENCE」が開催されました。10〜20代の若手経営層を対象に行われたこのイベントでは、若くして大きな価値を生み出すことに成功した先輩経営者を多数招き、“成功するためのキャリア”をどう作っていくかについてのトークセッションを実施。本記事では、セガサミーホールディングス株式会社の里見治紀氏が登壇した第1部セッション「投資したい若手起業家の特徴」より、自身が投資したいと思う起業家像やM&Aについての考え方などについて語ったパートをお送りします。

会社・個人で投資したいと思う若手起業家の特徴とは

一戸健人氏(以下、一戸):本日はお忙しいなか、お集まりいただきましてありがとうございます。株式会社ドゥーファの一戸と申します。

簡単にうちの会社の紹介をまずさせていただきます。まだ2期目のスタートアップなんですけど、セールスの働き方改革をやりたいということで、来週13日にまさにリリースになります。副業の営業マンを活用したい会社はぜひご連絡ください。

私の会社も、ちょうど夏くらいにシリーズA(シリーズAラウンド)の調達に動きたいなと思っていますので、投資先という目線で突っ込んだ質問をさせていただければなと思います。

では、里見さんの経歴はみなさんご存知とは思うんですが、会社の紹介だったりご挨拶を一言いただければなと思います。

里見治紀氏(以下、里見):あまり時間がないようなので、会社の紹介や自己紹介はセガサミーホールディングスのホームページを見ていただければと思います。

一戸:じゃあ進めさせていただきます。最初のテーマなんですけど、「会社または個人で投資したいと思う若手起業家の特徴とは」というところなんですが、せっかくなんで今日は投資先が一社でも見つかればなとは思ってます。

実は会社と個人のところで、里見さんも実は個人としてエンジェル活動をされているとおうかがいをしております。具体的に会社で入れるのか、個人で切り分けているポイントとか実際にあるんですかね?

主にストラテジックなバリューが出せそうな会社へ投資

里見:そうですね、当社では世界で25社くらいのベンチャーキャピタルのファンドに、現在投資しています。プラス、彼らから紹介してもらった案件が中心となりますが、ストラテジックパートナーになれるということがあれば、直接投資をするというのを過去にはかなり積極的にやってきています。

そのなかで40社以上に投資して、18社くらいイグジットしています。なかには上場やM&Aを行ったというもののほか、我々が結果的にグループに取り込んだ、もしくは仲間になってもらったというケースも何社かあります。

なので、セガサミーグループ内でビジネス的になにかご縁がありそうだったり、ストラテジックなバリューが出せそうな会社を主に投資をしています。個人レベルでは、競合とか、ゲーム会社には投資しないということ以外は、ある程度いろんな業種には投資してますね。

一戸:突っ込んだ質問をさせていただければと思うんですが、公表してるものしてないものも踏まえてなんですけど、過去に一番バリュエーションが高かった会社さんはどれぐらいだったんですか?

里見:例えばですね、グリー株式会社さんと業務提携を行ったポケラボという会社があるんですけれども。これはグリーさんに高く評価していただきました。

当時取締役会に出席したりはしていたんですが、我々が加わるというのではなく、グリーさんが株を取得して、我々は合弁会社を作って、ビジネスとしてお付き合いしていたとかもあります。

まあメタップスさんとか、マネーフォワードさん、gumiさんなんかは、上場前に投資してIPOされたというのがありましたね。

一戸:なるほど。最近でいうと海外の会社にも投資されているというのは、先ほどおうかがいさせていただいたんですが。比率でいうとどれぐらいの割合なんですか?

里見:たぶん日本が7割くらいですかね。そのほか、VCやファンドではアメリカやヨーロッパ、アジアとかのファンドにも投資してますね。

一戸:そうなんですね。ちなみに最低バリュエーションというか、どれぐらいのステージから出資検討しているんですか?

里見:まあだいたい、我々のところに話がくるのはアーリーなり、ファーストラウンド、セカンドラウンドが多いですね。知り合いとかを連れてきて、シードとして1,000万円を投資する会社もあるんですが、そういうところは本来、エンジェルでやってもいいかなというのも若干ありますよね。

ミレニアル世代に顕著な特徴

一戸:わかりました。じゃあちょっと次のスライドへ行っていただいて。続いてのテーマなんですけど、周囲で伸びている若手経営者の共通点なんですが、実際20代とかでつながりがある経営者はいらっしゃるんですか?

里見:何人かの若手経営者とはお付き合いしています。30代の人が多いですかね。この間、個人的にちょっとおもしろいなと思ったことがありました。僕はグロービスさんがやっている「G1経営者会議」というカンファレンスによく出ていて、このG1の40歳以下のU40や、「G1カレッジ」とか「G1ベンチャー」のアドバイザリーボードのメンバーとしても入ってるんです。

G1カレッジは残念ながら、去年で休止となったのですが、学生主体で運営していて、25歳ぐらいまでの子が参加していました。ほかのものは全部招待制なんですけれども、あれだけ応募制なんですね。

応募者800人の中から250人だけが招待される会議なんです。過去に応募してきた人たちに比べて、去年応募してきた人たちの特徴がガラッと変わったという分析を、その学生たちがしていたんですね。

僕自身もその分析を見て、ミレニアル世代といわれていた人とジェネレーションZ世代にあたる、この境目くらいで変化しているのかなと思いました。

ミレニアル世代は、社会起業家になりたいとか、もしくは起業家なんだけど、何らかのかたちで社会に貢献したいといったことが、起業のきっかけになっているという人が多くいました。

起業のきっかけなんて、どうだっていい

里見:delyの堀江くん(堀江裕介氏)なんかも、東日本大震災がきっかけで起業を目指そうと思ったとよく公言しています。一方、直近で応募してきた20歳前後の子たちの起業のきっかけや目的は、どちらかというと「金儲けしたい」「有名になりたい」といった声が多かったという分析だったんですよね。

それはなんでなんだろうと思ったときに、東日本大震災や9.11のテロを、いつ経験したかが影響しているんじゃないか、というのが学生の分析でした。

20歳の子たちでいうと、2011年は小さすぎて、あんまり自分事として捉えてなかったと。9.11においては記憶にない。ということが、ちょうどジェネレーションZの時代から変わってきているんだろうなと思いました。

ただ僕は極端な話、起業のきっかけなんか、なんだっていいと思っています。どっちがいいとか悪いとかじゃないと思うんですね。問題なのは、成功して、もしくはある程度軌道に乗ってからの会社のミッションの正しさ。それがないと、上手くいっていない人が多い傾向はあるかなと思いますけどね。

一戸:まさに元号も令和に変わったというところで、これからの起業家に関してはなにか一言ありますか?

里見:神田昌典さんが起業あるあるを小説風に書いた『成功者の告白』という本があるんですけれども、結局ほぼみんな同じような経験をすると書いてあるんですね。

ミッションの定義は存在意義

里見:例えば、最初は苦労していたけれど、上手くいきだすと創業した仲間に裏切られるとか(笑)。会計不正が起きたり、ライバル企業に転職されたり、もしくは同じようなビジネスを立ち上げられたりとか、仕事ばっかりやっていて家庭が上手くいかなくなるというのは、あるあるのことだと書いてあるんです。

それも、さっき僕が言ったことにも紐づいてるかなと思います。最初のきっかけ、起業のきっかけはなんでもいいですけれども、やっぱりそのバランスが大事ですよね。ただ金を儲けられればいいよというのでやり続けると、つまずく人が多いのかなと。

われわれも会社のミッションを定めていますが、このミッション、ビジョンを早めに固めることが大事だと思います。ミッションの定義は存在意義だと考えています。この会社が世の中にあって欲しいと思われる会社になるための定義は何かと。我々は「感動体験を創造し続ける」というミッションを掲げています。

我々が感動体験を創造し続けることで、世の中にあってよかった、なくては困ると言われる会社となることを定義しています。こういった考えは、起業した瞬間はなかなかないと思うんです。ある一定のところまで成長して、こういったことをきちんと定めている経営者は、その後も伸びていってる気はしますね。

勤め先がM&Aされた経験から学んだこと

一戸:先ほどからミッションが大事というお話がありました。里見さん自身も一度国際証券(現 三菱UFJモルガン・スタンレー証券)に入社してから、セガサミーの社長に就任されています。

最近学生起業が増えているなかで、企業勤めからの起業というキャリアと、いきなり起業するというのと、里見さん自身の良かった点、悪かった点、ご教示いただいてもよろしいですか。

里見:起業家ではないので、そんな生意気なことは言えないんですけれど。父親と比べると、父親は学生のころから自分で事業をいろいろやっていたので、人に雇われた経験がないというのが父親の自慢なんですね。

逆に僕はサラリーマンをやっていたっていうことで、父親と考え方が違うんですよね。例えばコストにしても、コピー代がいくらとか父親はまったく気にしないですけれども、僕は白黒はいくらでカラーコピーはいくらだみたいなとか。証券会社では、そういう細かいことも徹底的に仕込まれましたね(笑)。

一般社員の給料って、これくらいのレンジだよねというのは僕は知ってるけど、父親はあんまり気にしてない。大企業という組織のなかでサラリーマンをやったというのは、すごい経験にはなったなと思います。

僕の入った国際証券は、入って1年目に三菱グループに買われて、三菱証券に社名が変わったんですね。あんまり言うとあれですけども、国際証券買収のときに買われる側の一番末端にいたのは、今思えばすごくいい経験だったかなと。

だから僕は買収、M&Aするときには、やっぱり相手の気持ちに立つようにしています。買った会社だからって威張るんじゃないと、派遣する社員には絶対それを言いますよね。

なので、学生からすぐに起業して途中で伸び悩むというのは、会社運営の問題。売上は上がっているけど、会社の運営でガタガタするのは、あるあるの一つです。

会社運営がどういうことなのかをわかる仲間を見つけてくるのが、必要なのかなと思いますね。

注目しているのはドローン、VTuber、eスポーツ

一戸:ありがとうございます。私自身も学生起業よりかは、企業勤めを経て独立したんですけど、やっぱりそこで発見もありました。会場にいる人で、学生起業といったキャリアの形成もあるかなと思っています。

続いてのテーマなんですが、注目している分野、テーマは何かをかいつまんで、お聞かせいただければと思います。

里見:いろんな分野の会社には注目はしています。あそこにモックアップのドローンが置いてありますが、本物はもう浮くんですね。

何メートルも飛べるパワーはあるんですけが、航空法に引っ掛かっちゃう。でも、ちょっと浮くぐらいだと道路交通法の中で手続きができるので、そんなに浮かせないホバリングマシーンなんです、150キロくらいは出る予定です。

「東京モーターショー」でもたぶん出ると思いますけれど、ああいったドローンの会社とか、千葉さん(千葉功太郎氏)の「Drone Fund」にも投資してます。もちろんeスポーツなんかも我々としては今後の注目分野です。YouTuber、VTuberの分野もこれからますます伸びていくと思います。

今、若者はテレビを観ないですからね。僕の子どももテレビよりもYouTubeの方をよく観てます。アイドルよりもYouTuberの方が憧れの職業になっていく世代なんだろうなと思います。

すでになりたい職業ランキングでYouTuberが入ってきていますけれど、たぶん来年とか再来年にはeスポーツプレイヤー、プロゲーマーが入ってくるんだろうなとは思っています。今後5Gが出てきますから、そういった世の中のトレンドには注目はしていますね。

起業のハードルが低いのはソフトウェアビジネス

一戸:ドローンやeスポーツはわりと初期コストがかかるような事業だと思います。最近資金調達も積極的にしやすい環境ではあるものの、いきなり大型の調達というのが難しいなかで、我々のような20代の経営者が攻められるようなドローンやeスポーツの分野で、ヒントをいただけませんか?

里見:ハードウェアビジネスってものすごくお金がかかるんですね。我々もパチンコやパチスロ機、アーケードゲームを作っていますが、ハードはすごく資本が必要だと思います。いきなりベンチャーがやるというのは難しい。ソフトウェア会社の方が圧倒的に起業のハードルは低いんだろうなとは思います。

さっき言った5Gには結構注目していて、ゲーム業界でいうと、3Gのときにiモードが起ち上がって、ガラケーのサブスクリプションモデルのビジネスが起ち上がりました。3Gのときに「グリー」「モバゲー」もありましたね。

そして4Gになって、スマホのゲームが起ち上がってきた。今は動画コンテンツの勢いがある。5Gになったら、4Gより理論上100倍は速くなる。実際安定的に出るのは20倍くらいですけれども、今後はどういうサービスが求められているかを考えると、次のヒントにもなるんだろうなと思いますね。

一戸:成長分野をいち早くキャッチして、そこの領域でやっていくというところですかね。ブロックチェーンの領域でいうと、なにか取り組みをされてたりするんですか?

里見:うちはブロックチェーンを使ったゲームとかはまだやってはいないんですけど、ブロックチェーンに紐づいていろいろなサービスを付加するサイドチェーンの会社とかには投資はしたりはしています。

あとはうちのサービスのなかにブロックチェーンを使えないかという研究はしていますね。

一戸:最近はブロックチェーンのサービスをやっている会社も多いと思いますので、ぜひ連携があればなと思います。

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