CLOSE

Global Keynote Series:本田圭佑(全3記事)

本田圭佑「日本人はもっと危機感を持たないと」 世界を股にかける男の日本進化論

2019年5月27~30日、「Advertising Week Asia 2019」が開催されました。マーケティング、広告、テクノロジー、エンターテイメントなどの幅広い業界が集い、未来のソリューションを共に探索する、世界最大級のマーケティング&コミュニケーションのプレミアイベントです。本セッションでは、サッカー選手で実業家の本田圭佑氏が登壇。ブロックチェーンファンドの設立の背景と、CryptoAge ファウンダーの大日方祐介氏と協働していく意向を明かしました。

日本のブロックチェーン事情を読み解く

本田圭佑氏(以下、本田):そのへん(ブロックチェーン)の状況を、僕もまだまだ理解してないんで、説明してもらえるといいかなと思うんですけど。

大日方祐介氏(以下、大日方):はい、そうですね。なのでちょっと簡単に、今じゃあ日本のブロックチェーン業界ってどういう感じかをざっと説明したいと思うんですけど。

これは、今の日本の大手企業とかを集めた図です。「Exchanges」と書いてるところがビットコインを買える取引所をやっている国内の大手企業が全体で今、17社ぐらいです。

本田:ここに載っている会社は、この分野にちゃんと真剣に取り組み始めてるということですね。

大日方:そうですね。ヤフージャパンも今週ですかね、今日かな? 取引所の運用をスタートしました。楽天も最近、仮想通貨の交換業のライセンスを取得して始めていますね。

本田:なるほど。

大日方:次、スライド右上の「POC/Product Development」と書いてあるところが実証実験などをやっているところです。

ブロックチェーンの技術を使って、既存の彼らのビジネスでどう使えるのかを実験しています。ここは本当にネット・テック企業に限らず、トヨタやテプコ、MUFG、みずほ銀行などがやっています。

本田:トヨタがね、この分野にね。

大日方:はい。トヨタとかは最近、東大と一緒に実証実験を始めるみたいな発表をしていました。ブロックチェーン業界、仮想通貨業界に特化したメディアで言うと、ヤフージャパンが「CoinDesk」という、グローバルでもたぶん規模が一番ぐらいに大きいブロックチェーン・仮想通貨メディアのライセンスを取得して、日本版を3月ぐらいから始めています。

本田:日経や電通もやっているんですか?

大日方:そうですね、日経は特別、「日経ブロックチェーン」みたいなものがあるわけではないですけど、けっこう頻繫に取り上げています。「日経フィンテック」とかでは、ブロックチェーン講座みたいなものをやったりしてますね。

本田:……すいません、これね、一応ちゃんと話しておきたいのが、僕はなんの打ち合わせもせず、ここに来てて。

(会場笑)

それは言っときます、僕は基本アドリブなんで。何話すか、まったく決めずにここ来てます。なので僕もちょっと「へー」みたいなとこあるんで!

大日方:(笑)。

本田:「お前らのやり取りちょっと怪しくね?」って思ったときは、「僕は何も知らない」っていう体で。

(会場笑)

それはわかっておいてほしいです(笑)。これはもう、事実なんで!

大日方:ぶっつけ本番です(笑)。

本田:この資料、僕初めて見てるんで。

(会場笑)

大日方:一応送りました(笑)。

本田:あぁ、僕が忙しくて見てないだけ? 俺のせいやな!

(会場笑)

すいません、ちょっと(笑)。どうぞ、続けてください。

大日方:はい(笑)。

専門メディアも登場してきた

大日方:電通さんも「GRASSHOPPER」という、ブロックチェーンに限らず、テクノロジーに特化したメディアをやっていたりします。幻冬舎さんとかは「あたらしい経済」というメディアを、かなり力を入れてやられています。

あとは投資。ブロックチェーン領域のスタートアップに投資してたり、もしくは直接トークン、仮想通貨みたいなものに投資をしてるところだと、リクルートとかはその特化型のファンドを建てて投資を行い始めています。

野村證券は、アメリカのブロックチェーン系のスタートアップ。本田さんも個人出資してる「Quantstamp」というブロックチェーンのセキュリティを監査してるスタートアップなんですけど、そこに投資をしてたりしました。

デジタルガレージもかなり積極的に投資してますね。SBIも150億円ぐらいの規模のAIブロックチェーンファンドをやり始めてます。

スタートアップもそれに呼応するようなかたちで、エコシステムが日本でもかなり拡大してきていて。本当に2017年ぐらいまでは、日本のマーケットは仮想通貨を扱うスタートアップや会社がほとんどいない状況だったんですけど。2018年の始めや2017年の終わりぐらいから、そういうデベロッパーミートアップみたいなものが定期的に行われ始めて。

細かいところは入らないんですけど、かなりコアな開発をやっているスタートアップだったり、ブロックチェーンに特化したコワーキングスペースとか、スタートアップとしてブロックチェーンメディア・仮想通貨メディアをやってるところもたくさんありますね。

本田:これ、僕含めてね、どれぐらい盛り上がってるのかってイメージが、あんまり伝わってこないんですよね。どれぐらい実際の熱量があるんですかね。数字とかも踏まえて、イメージをもうちょっと伝えてくださると助かるんですけどね。

大日方:と思って、次から写真を用意してます。

本田:なるほど、助かります!

(会場笑)

大日方:(笑)。

イーサリアム生みの親とも懇意

大日方:大学でも、東大、早稲田、慶應などで「ブロックチェーン講座」みたいなものをすでに始めています。学内で、東大とか早稲田の学生が中心になって、ブロックチェーンリサーチサークルみたいなものが、けっこう去年ぐらいから勃興してきてます。

そんな中、僕はどういうことをやってきたのかを言うと、去年の始めぐらいから、そういう開発者向けのブロックチェーンミートアップをやってきています。

去年の3月には、イーサリアムの考案者のヴィタリック・ブテリンっていうロシア人……今23歳ぐらいの開発者がいるんですけど、彼を日本で初めてオフィシャルに迎えて、ミートアップをやったりしました。

これを東大の講堂でやったんですけど、500人ぐらい、立ち見もでるくらい人が集まって。メディアもすごい取り上げていただきました。

本田:ヴィタリックって、僕はまだ会ったことないんですけど、何歳ぐらいでしたっけ?

大日方:今23~24歳ですね。ビットコインに次ぐ規模のイーサリアムというトークンのシステムを考案しました。最初考案したのは19歳ぐらいのときです。インターネットの世界で言うと、マーク・ザッカーバーグみたいな存在かもしれないですね。

本田:オビくん、何回も会ったことあるんです。

大日方:僕は、はい。

本田:何度かね、そういうパネルディスカッションみたいなのもやったりとか。

大日方:そうですね、先月は一緒に登壇させてもらったり。

本田:どれぐらいすごいかと言うと、ヴィタリックはプーチンとも会ってるんですよね。ロシア人なので、プーチンに呼ばれて会ってたり。ロシアがそれぐらい影響力のあるエリアであり、その中心人物だっていうことですよね。

大日方:そうですね。この来日では、外務大臣の河野(太郎)さんに呼んでいただいて、外務省行ったりとかもしてましたね。

本田:なるほど。これが数字ですね。

開発者向けのミートアップやハッカソンを開催

大日方:去年ぐらいから毎月ペースで、最低でも1、2件ぐらい、こういうブロックチェーン開発者ミートアップが行われてきています。僕もCryptoAgeという名前で、とくに若い人たち中心のコミュニティみたいなかたちで、イベントをやったりしています。今も毎月、3~4件、こういうワークショップやハッカソンなどがどこかで開催されていますね。

去年11月には「NodeTokyo」を僕が主催させてもらったんですけど。日本でちゃんと初めてテクノロジーにフォーカスした、ブロックチェーンカンファレンスです。これまでは、仮想通貨は投資家向けのイベントがたくさんあったんですけど。こういう開発者向けのカンファレンスがあんまりなかったんで、それをちゃんとやろうと思って、やりました。

これも来場者500名ぐらい来ていただいて、Microsoftさんや、ヤフーの子会社のZコーポレーションさん、メルカリさんやメタップスさんにもスポンサーいただきました。

これが去年の写真です。本田さんは……。

本田:ワールドカップのあとか。

大日方:プログラミングを学習されていた時に開催したミートアップですね。

たまたま、そのときに本田さんと、イーサリアムのファウンデーション・財団で、ヴィタリックと一緒にコミュニティというか……団体を率いてる宮口礼子という日本人の女性がいるんですけど。たまたま彼女も日本の滞在タイミングが合ったので。

大日方:この日も一週間前ぐらいに連絡した?

本田:うん。

大日方:「こういうイベントやりませんか」って感じで、ちょっと連絡させてもらいました。

本田:出ましたね。

大日方:これは、25歳以下の学生が中心で、ブロックチェーンに興味がある人だけのイベントでした。これも200名ぐらい来てもらって。

本田:盛り上がってるんですよね。

夢を追い続けられる環境づくりをしたい

本田:この領域で出遅れたら、たぶん取り返しのつかないぐらい、すごいスピードでいくと僕は思っていて。

大日方:そうです。

本田:だから「一緒にやろう」ということになったと思うし。僕も僕なりに勉強して、いろんな専門家の人に話を聞いても「インターネットが出てきたときの雰囲気と似てる」と、みんな同じこと言うんですよ。

大日方:はい。なんか怪しい人もたくさんいて。

本田:そう(笑)。

大日方:『ワイルド・ワイルド・ウエスト』みたいな。

本田:バブルが去年1回弾けた、みたいなジャンルで。ちょうどいいじゃないですか。今ちょっと警戒され始めてて、政府も動いて規制もできあがる流れにもなって、ちゃんとルールもできてくる。

大日方:はい。

本田:本当に思想を持って……例えば僕であったら、夢を追い続けられるような環境づくりをしたいわけですよね。そういう人を応援したいんですけど、それが「ブロックチェーンの技術によって実現してほしい」っていう思いで、このファンドをやろうとしてるんですけど。世界で一番ホットな国ってどこかあるの?

大日方:開発者っていう意味で言うと、やっぱりシリコンバレー。アメリカ、サンフランシスコのところは、これまでスタートアップの世界でもやっぱりデベロッパーがたくさんいるコミュニティなので。

もともとFacebookやGoogleにいたようなエンジニアが、この領域にどんどん取り組み始めることが2年前ぐらいから徐々に起きてきています。

本田:なるほど。

大日方:ヨーロッパで言うと、ドイツのベルリンは、かなりブロックチェーンコミュニティとしては大きいですね。アジアで言うと、実は世界的に見ても一番ぐらいに注目されてる国って、日本と韓国、シンガポールあたりだなと思います。

その中でも日本は、レギュレーションの意味でも、世界で初めてビットコインをペイメントのメソッドとして法律を作る、みたいな国です。それに呼応して、大企業が取り組み始めている。かつ、ここ1~2年で、デベロッパーのコミュニティがすごい大きくなってきている。世界的に見てもすごい注目されてるし、だからこそ僕もここにチャンスを感じてるところです。

これまでのスタートアップの世界、ITベンチャーの世界だと、やっぱりシリコンバレーが絶対的な世界の中心なんですよね。

本田:はい。

日本の起業家は意識がまだ低い

大日方:シリコンバレーでなにかしら成功しないととか、VCをやるんだったらシリコンバレーのVCの世界でトップにならないと、世界のプレイヤーになるのはけっこう難しいなと思ってて。

本田:うん、そうですね。

大日方:ただこのブロックチェーンの領域だと、シリコンバレーは必ずしも1つの中心じゃない。むしろアジア、とくに日本が世界的な注目を集めているし、まだまだこれから始まる領域なので、そこに興奮をめちゃくちゃ感じて取り組み始めています。僕も含めてなんですけど、とくに若い世代がすごく盛り上がってますね。

本田:チャンスがあるじゃないですか。でも日本のベンチャー投資もしてきて、日本の起業家は意識がまだ低いじゃないですか。僕はそう感じているんですよ。

大日方:それは世界を目指してないみたいな感じですか。

本田:僕はサッカーで……日本代表の合宿で晩飯食ってて、新しく召集された若者が来るわけですよね。それで話をしていても、まったくもってギラギラ感がないわけですよ。

大日方:まぁ、本田さんに比べちゃうとね。

(会場笑)

本田:いやいや。「(日本の人口は)たったの1億2,000万人ですよ」と僕は思っちゃう。しかも、今それが日本の中で社会問題になっていってるように減ってくわけですよ。今後、労働力をどうするのか。みんな、人材を確保するためにてんやわんやですよ。でも世界は増え続けているわけですよ。

大日方:そうですね。

本田:今、(地球の人口は)76億人いると言われていますよね。すぐ100億人にいくわけですよ。ここを意識していない。それで生活するかしないかで、1年後、5年後、10年後の成果は天と地の差だと思うんですよ。だから、ブロックチェーンの話に限らず、普通の企業もそうだし、もちろんスポーツ選手もそうだし。

結局ポイントとなるのは、サッカーもそうですけど、1人じゃできないんですよ。仲間が必要なんですよ。そうしたら自分のビジョンに共感してくれる仲間が必要で、たぶんオビくんにも僕はそのビジョンが伝わって、共感してくれてる部分があると思うんですけど。

大日方:そうですね。

報道するメディアの責任を問う

本田:たぶんここで僕が今話していてオビくんに共感してもらってるけど、僕はもっと仲間が必要なんですよ。それぐらいデカいことをやろうとしていて。別にそれは「僕の会社に来い」と言っているわけじゃないですよ。

別にそれは、みなさんのそれぞれの会社で働いていても、なにかできることがあると思うんです。それぞれの会社の生命保険で活かすとか。

僕らもパートナーシップですし、似たような感じですし。だから、今日僕がここにきて何が伝えたかったかというと、自分が何がきっかけで、今こういったスクールやファンドをやっているのか。

今後は事業もやっていこうと思っているんですね。それには、そのミッションを達成するには、本当に熱い仲間が同じ志を持った仲間が必要だということ。本当に切実に、もっと良くしないといけないことが、たくさんあるんですよ。

僕もまだ世界中を回ったわけじゃないですけど5~60ヶ国回って、いい国も、なかなか問題があってよくない国もたくさんあったけど。日本にいて、またこんなこと言ったら僕も叩かれるかもしれないけど。

報道する側が、いいところもちゃんと報道しないとね。悪いところ探しちゃダメですよ。いいところも悪いところも、もうちょっとうまく報道しないと、日本がすごくそのへんの情報が疎い。僕がそうだから。なにも知らなかった。いやもちろん僕がダメ。日本にいて勉強しなかっただけというのもありますよ。サッカーしかしなかったから。

でも、よく代表やいろんな場所で会う日本の選手に「海外に出ろ」とか、今日も実は大学で講演してきたんですけど、「世界にとにかく行ってみよう」「挑戦してみよう」という理由は……バックパッカーしてたんでしょ? 感じたことはたぶんあったと思うんですよね。行く前と行く後で一気に変わったと思うんですよね。

大日方:そうなんですよ。僕もそこへ行って初めて気付いて。18歳のときに1人でリュックを背負って、タイとかカンボジアとかラオス回って。「あ、日本ってめっちゃ違うな」「めっちゃラッキーなんだな」というのを初めて痛感できて。

だからこそ、たまたまラッキーに生まれた自分で、日本のためだけになにかやってても、それが超もったいないなと思ったんです。せっかく、大学もいけて英語も勉強できる環境に育ったので、日本だけじゃなくて世界でやれること、世界で活躍できることを目指したいということを、そのときから思いましたね。

日本人はもっと危機感を持たないといけない

本田:まさに挑戦しないとね、人生1回じゃないですか。僕よりも年配の方もここにたくさんいて、こんなこと言うのもおこがましいかもしれないですけど。でも、どっかで諦めちゃってるのをもう1回戻しゃいいだけなんですよ。もう1回やり始めりゃいいんです。いつからでもできる。自分を変えるのは今日から変えられるんです。

そういう日本人が……僕はもちろん日本人だという意識と、自分はグローバルな人物だという意識の両方を持ち合わせていて。日本人の意識としてコメントさせてもらうと、「日本人もっと危機感持たな!」と。

一応ね、資本主義と言われる世界で競争してるわけですよ。今、ものすごく危機感持たないと。他人事に思っている人たちがあまりにも多すぎる。使命感がない。

大日方:僕が本田さんと一緒にやりたいなと思ったところがその意識でした。僕はもともと、別にそんなにサッカーのファンじゃないし、どちらかと言うと野球少年だったんです。

本田:野球やってたんですよね。

大日方:本田さんと言ったら「本田△」みたいなイメージくらいしかなかった。

本田:なんか……あ~なるほど。

(会場笑)

大日方:でもね、別に有名だからとかサッカー選手ですごいから一緒にやりたいと思ったのは正直あんまりなくて。純粋に日本人として人間として、あとスタートアップなりベンチャーに投資する投資家としても、ここまでピュアに世界目線を持って「やるんだったらトップを目指そうよ」「世界を目指そうよ」と言う人ってほとんど会ったことないなと思ったんですよね。僕もやるんだったらそういう目線でやりたいなと思っていたので、そこがピッタリ共感したところですね。

本田:僕ら今日ね、僕のやってること、ブロックチェーンファンドのやること、それ以外にも事業をやっていること。いろいろ紹介させてもらったんですけど。みなさんにこれを知ってもらったのも、ここに呼んでもらえたのもなにかの縁なので。

それぞれミッションは違うかもしれないですけど、ミッションが近ければなにかできるかなと思ってるので。本当に仲間はいつでも絶賛大募集なので、どこかで一緒に仕事ができればなと思ってます。

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
著者フォローや記事の保存機能など、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

会員の方はこちら

関連タグ:

この記事のスピーカー

同じログの記事

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

  • 各地方の豪族的な企業とインパクトスタートアップの相性 ファミリーオフィスの跡継ぎにささる理由

人気の記事

新着イベント

ログミーBusinessに
記事掲載しませんか?

イベント・インタビュー・対談 etc.

“編集しない編集”で、
スピーカーの「意図をそのまま」お届け!