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パネルディスカッション『大企業のリーダー経験者が、ギルド型組織を志向する理由とは』(全2記事)

一緒に仕事をしたい人は「友だち以上恋人未満」の関係性 つながりと承認が喜びに変わる「ギルド型組織」の働き方

2019年4月11日、株式会社コンカー セミナールームにて「GUILD SUMMIT 〜会社員でもない、フリーランスでもない、あたらしい働き方〜」が開催されました。会社に所属しながら、複業として他社のプロジェクトに参加したり、同じ価値観を持ったフリーランスが集まって大きな仕事にチャレンジしたりと、従来の枠組みには収まらない働き方が生まれる昨今。これからは「会社員だから」でも「フリーランスだから」でもない、自分らしい働き方とはなにかを求められるようになります。このイベントには、そんな自分らしい働き方を実践している人たちが登壇。本記事ではギルド型組織の働き方について語った後半パートを中心にお送りします。

会社内イノベーションを具現化するサービス

柿野拓氏(以下、柿野):小井戸さんにもお聞きしたいのですが、事業会社の役員クラスで、「会社の中でイノベーションしたい」「新規事業をやりたい」という方はいるけれど、後ろを振り向いたら誰もいないというケースはよくあると思います。

小井戸さんが主導するビズコンシェルは、そういうところを具現化するサービスだと勝手に思っていますが、その理解で合っていますか?

小井戸洋氏(以下、小井戸):はい、そうですね。大企業からもそういった事業開発のご依頼をいただくことは多いですね。

今までで多かったのは、これまでの仕事を通じてつながった人のネットワークのようなものがありまして、そこからお話をいただくことが多かったりします。知り合い経由というのが一番仕事も受けやすいですし、いい気がしますね。ですから、そうしたかたちでなにかサービス化できるといいのかとは個人的には思います。

柿野:なるほど。工藤さんのチームはみなさん契約社員なんでしたっけ? 

工藤崇志氏(以下、工藤):契約というか、正社員というかたちでは誰も雇ってはいません。

柿野:すごい興味あるんですけど、どうやって仕事を見つけて、コンペして、受注してるんですか?

工藤:わかりませんが、なんか来るんですよ(笑)。ちゃんと説明すると、僕の場合、ミクシィで僕自身が外部委託としてエンジニアをしていたこともあったりするので、そこの中のネットワークであるとか。

メンバーの中にもいろいろと有名な人がいたりして、そこからの仕事の依頼が来たりします。いわゆるリファラルの仕事の依頼というのが多いことから、そうした意味では営業はあまりしたことがないということが現状ではあります。

フリーランスでもギルドでも、結局は集団になってしまうことの意味

柿野:フリーランスの方とお話をしていると、仕事をどう引っ張ってくるのかという不安が大きいんじゃないかと。でも、たしかにデマンドは多種多様ですし、いっぱいある。かといって、実際に探してみると、うまくマッチするような仕事は見つかりにくい。このギャップをぜひ埋めていただけると、社会全体のためにもなる可能性をとても感じました。

あと気になるのは、会社にしてもフリーにしても、必殺仕事人にしてもギルドにしても、結局はみんな群れますよね? そもそも集団が生まれるという意味合いをどう捉えているのか。みなさんに是非、おうかがいしたいと思っています。どうしようかな。工藤さんからいこうかな。

工藤:僕のほうが説明しやすいところがありますね。個人事業主としての仕事、いわゆるフリーランスとして仕事をしていたときに感じていたのは、僕はiOSエンジニアであり、それをメインにしていたので、iOSの案件は来るんですよね。だけどそれ以外の案件は来ない。自分の仕事の切り売りをしている感じがかなり出てきていた。

そうしたときに、もう少しチームで仕事をしたいと。でも会社員としては「うーん、それは嫌だなぁ」という思いがあった。その中で、背中を預けられるような、自分の弱みも強みも含めて、お互いが理解できているメンバーが、会社ではなくコミュニティとしてあって、それをベースに仕事ができたらおもしろいんじゃないかと思いました。

それがたぶん、ここのギルドの話につながるんです。それを実践してみたいということがありました。それで今、2期目でやってみて、わりとうまく回っているのだろうかというところですね。

柿野:ちなみに私の勤めるConcurという会社は、スティーブ・シンという人が創業者で、今、DockerのCEOなんですね。彼に「新しいビジネスをやろうと思うんだけど、アドバイスちょうだい」と言ったら、「なにをやるかが一番大事だけど、誰とやるかはもっと大事だね」と言われました。

工藤:同じことをするにしても、誰とやるかがめちゃめちゃ大事ですよね。

柿野:そう、本当にそう思いますね。

結果を出しやすいチームが自然とできあがる仕組み

柿野:藤原さんはいかがですか?

藤原弘治氏(以下、藤原):今の話を聞いていて、まさにそうだ思いました。我々もギルドのネットワークを作り始めたというのは、バイネームでスキルを持った人たちと仕事ができることがすごく大事だからです。それが目的で作ったというところも正直あります。

群れるといったところでいくと、我々もフリーの人と1対1でつながるというよりも、つながっているその先で、例えば先ほどの大きい仕事をするといったときには、個々のつながりがバラバラだとやっぱり1つの力としてなかなかうまく組み合わさらなかったりします。

例えば開発案件があったときに、エンジニアがいて、そのディレクションをする人がいる。あとはそのつながりで、例えばデザインをする人とか、大体がつながっています。

そこの機微をすごくわかっている仲間がいるので、自然とそのプロジェクトチームがその人起点で広がっていくということが実感値としてある。そういった意味では群れるというのは、むしろお互いの仕事のやりやすさであったり、結果の出しやすいチームが自然とできあがっているのかと思いました。

柿野:ハイスキルな人とケミストリーが合うかどうかのバランスは、かなり難しいと思うのですが。どうですかね?

藤原:そこの調整はお互いにやってみて、違うと思えば、やっぱりそこは離れていったりもします(笑)。自然に調整されていくといいますか。お互いにフリーで、それこそサラリーマンでもなく……嫌で辞めている人だけではないと思いますが、そこを我慢してやる必要もない。

柿野:それはいいですよね。黙ってても収束ポイントに勝手に落ち着く感じですよね。

藤原:そうです、そうです(笑)。

柿野:それはすばらしいですね。

一緒に仕事をしたい人とは、友だち以上恋人未満のような関係性

柿野:最後、小井戸さんはいかがですかね?

小井戸:僕も、チームでやるから大きい仕事ができるという、強みの補完関係のような話は本当にそうだと思いながらも、もう1つあって。これはうちのケースだけかもしれませんが、群れる理由は、けっこうラクで楽しいということもあるかと思っています。

柿野:わかる!

小井戸:僕のパートナーは基本的に自分で会社をやっている人が多い。そうなると、やっぱり社内ではわりと経営者は孤立しているものです。部下に対してもかなり気を使ったり、なかなか本音が言えないようなところがあります。でも経営者同士で話していると、対等に話ができるので、そうした関係がラクなのではないだろうかと思うのが1つですね。

もう1つは、先ほども話にあった、一緒に仕事をしたい人としか基本的に仕事をしないというポリシーでやっているところがあります。みなさんもそうだと思いますが。一緒に仕事をしたい人というのは、友だち以上恋人未満のような。

柿野:(笑)。

小井戸:絶妙な関係性の仲なんですが。友だちとも少し違う一緒に働いていて楽しいというような関係性です。そうした良い関係性があるからだと思っています。その楽しさのようなものが仕事をやるうえでもモチベーションになっている部分がありますね。

受けない仕事のポイントとは

柿野:お聞きしていて、一緒にやるプロジェクトメンバーは大事。でも、実際やる案件の内容も大事ですよね。お客さんとのケミストリーが怪しくて、「ちょっとこれは違うぞ」と思ったときってどう対応しますか?

小井戸:受けませんね。僕が営業窓口を全部やっているので、仕事の話を聞きに行って、そのときに「あ、ちょっと厳しいな」となんらかの理由で思った場合は、受けないようにしますね。

柿野:受けない条件ってみたいなもの、ポイント表みたいなものがあるんですか? お話できる範囲で結構です(笑)。

小井戸:そうですね(笑)。クライアントとの相性はかなり大事だと思っています。そこはやっぱり、一番最初に見ますね。人同士なので、案件の中身もそうですが、コミュニケーションがきちんと取れるか。お互いフルコミでやる場合は信頼して大丈夫かと言ったことです。

そのうえで、実際に案件内容をヒアリングして、僕らが課題に対してちゃんと課題解決できるのか、できないのかということの精査も大事です。そこは案件の中身とこちらの実力のすり合わせだと思います。

柿野:工藤さんは、お金よりもおもしろさでいきそうですよね(笑)。

工藤:いや~、おもしろさもありますが、ちゃんとそこはビジネスとして切るんです(笑)。今の話ともだいぶかぶりますが、僕なりに思うのが、新規のお客さんが多く付き合いはまだまだ僕も多いのですが。そういうときに、どのようにお客様との付き合いを考えるかというときに、契約の期間を最初は短くするというのは1つのポイントだと思っています。

例えばアプリを作る、我々はiOSアプリやWebアプリを作るのですが。一番最初に完成品を約束するのではなく、まずは1ヶ月やってみましょうと。そうした小さな成功をお互いに作れるかどうかというような契約の組み方をします。

ちょっと法的な言い方になるんですけど、請負契約は絶対にしない。行為に対する報酬をもらうような。そうした法的な面と、あとは細かく責務を分けるといったやり方でリスクを少なくしつつ、お互いの幸せを模索できるような工夫をしたりしますね。

柿野:なるほど。前のセッションで幻冬社の箕輪さんがおっしゃった、小さな成功体験をお客様とまず共有するということに近いかもしれませんね。

つながりと承認の喜び

柿野:時間も残りわずかですので、最後に御三方にお聞きしたいと思います。働くとは何かについて、順番にお聞きしたい。えーと、まずは藤原さんからおうかがいしたいと思います。

藤原:なかなかあれですね(笑)。

柿野:あれですよね(笑)。難しい、よくわかります。

藤原:すごく個人的な感じになりますが、生活するためなどの前提は置いておいて、自分の存在や能力とかを発揮することで認められて、それがある種の充足感じゃないですけれども、感じられると。それがあるから、仕事というか、働くことを続けられるのだろうと思います。

当然失敗もありますし、怒られることもある。断りたい仕事でも、僕の場合は断れないときも多々あるんですが。会社に勤めていることで、周りに同じ方に向かってくれる人が多くいることが強みです。そのおかげで続けられるということもあるし。

働くことで、さっきの友だち以上恋人未満じゃありませんが、乗り越えることでそうした絆を作れるというのが、自分の中ではプラスになっています。友だちとは違う関係性だったりもするのですが、そうした仲間というか、つながりができていくのが楽しいと感じられるからだと思いますね。

柿野:ありがとうございます。なんだか藤原さんもいずれ独立しちゃうのかと感じました(笑)。

藤原:そこは……ちょっと次へいこうかな(笑)。

(会場笑)

生きるために働くフェーズの存在

柿野:では、工藤さんいかがですか?

工藤:働く……難しいことなので、自分ベースの言葉になりますが。2つに分けられると思います。2つというのは、生きるために働くというフェーズがやっぱりあるような気がします。

会社であるとか、どこかに依存というか、1ヶ所じゃないとなんとなく自分は生きられないようなフェーズが僕はあったんです。そうした意味で言うと、そのフェーズに関しては生きるために働くと。なんで働くかといえば、生きるためです。

それを超えた段階で何を考えるかと言うと、逆にお金に対してモチベーションをなにも感じなくなるんですよね。

柿野:うん、わかる。

工藤:たぶん1000万から3000万くらいまでは、そんなになにも感じなくて。それを超えた瞬間には感じるんだと思いますが。だいたいそんなに普通の人はいかないから。

そのあたりでやっていくことを考えたときに「働くって何?」と言われたら、誰といたいのか、何をしたいのか、どうやれば楽しいのか……仕事と趣味が入り乱れるというか、混同するような、そうしたフェーズになるんじゃないのかと思っています。言葉が明確ではありませんが。

柿野:ありがとうございます。

プロジェクト型の仕事が増えていく兆候

柿野:最後に小井戸さん。小井戸さんはサラリーマンをやって、事業部長までやって、今は独立されている。藤原さんや工藤さんや私の合体系という感じもします。では、最後にまとめていただいてよろしいですか? 働くとはいったい何でしょうか(笑)。

小井戸:まとめるのは難しいですね(笑)。サラリーマン時代はミッション遂行型で、言われたことは感情を抑えてでもやり切ることを優先するようなスタンスで仕事をやっていました。

仕事はきつかったですが、幸い仲間に恵まれて、体育会系のノリでがんばれたような感じでした。今思うと、青春時代に部活をやっていたような(笑)。結果的にグリーもジェットコースターのような時期だったんですが、その時期にやりきったことはすごく達成感もあって、仕事をしていて成長できたし、楽しかったというのが今思うところです。

独立して働いてから感じることは、案件の規模の大きさはほぼ気にならなくなってきました。逆に規模は小さくても、一つひとつの仕事をやる価値というか、やりがいとか誰とやるかということに価値の軸がズレてきたように思っています。僕らの世代って、たぶん死ぬまで働くと思いますが、働く価値観のシフトがこうやって続くのではないかということを今は思っています。

今この瞬間で言うと、お金もありつつ、あとはやることの楽しさや人とのつながり、そのあたりをバランスとりながらやっている感じなんです。たぶんこれもまた変わっていくと思うので、そうした自分の価値観の変化自体も楽しみながら働いていこうと最近は思っています。

柿野:御三方のお話を聞いていて思ったのは、会社というより、部活動や文化祭のような、決まった組織ではなくて、気が合うプロが集まって、みんなで盛り上がって、終わったらまたそれぞれに散っていくプロジェクト型集団的な仕事がもっと増えていく感じがしました。

だいぶ時間も過ぎてしまいました。質問やご不明な点はぜひネットワーキングで直接語り合っていただければと思います。本日は御三方、ありがとうございました。盛大な拍手をお願いします!

(会場拍手)

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