2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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大池知博氏(以下、大池):みなさんにも、いろいろとお聞きしたいと思うんですけども。まず1つが、どういう学生さんが欲しいか。どういう学生を自社で採用したいかについて、お一人ずつお聞きしたいなと思います。
まずは森さんから。どういう学生を求めているか、教えてください。
森泰輝氏(以下、森):今、いろんなテクノロジーが発展していることもあって、企業のライフサイクルがすごく速くなっていると思うんですね。できたサービスがすぐ廃れるみたいな。
サイクルが速くなっちゃって、一つの仕事やサービスに一生携わっていくことが難しい状態なので。そういう意味で、「変化に耐えられる」っていうことは、月並みかもしれないけどすごい大事かなと思っています。そんなベースを持っているような、柔軟な方を求めています。
室山真一郎氏(以下、室山):座っている順番でいいですかね? 正直これは、自分自身がそうだったことを踏まえての話なんですが。ここにいるみなさんも、みんながそうだとまでは言いませんが、おそらく大多数の方は、悪い意味でなく「何者でもない」と思うんですよ。これからだと思うんです。
なので、「何かできる」と変な意気込みを持ってても、お互いの期待値的にミスマッチになると思うんです。「何者かにとっととなってくれ」っていうか、どんだけ急な成長曲線で、仰角どんだけ立てていけるんだ、みたいなね。そこで自走できる人。そんな人がいるとうれしいなと思います。
加藤信介氏(以下、加藤):決めたらとりあえず全力でがんばる。それでポジティブな人に僕は尽きるなと思っております。
大池:はい。ありがとうございます。
真田哲弥氏(以下、真田):じゃあ、僕もちょっとくらいまともなことを言おうかな。
(会場笑)
大池:お願いします!
真田:先ほど森さんが「企業の寿命が短くなっている」っていう話をしましたけど、昔と今とで何がどう変わってきて、今どういうトレンドになってきているかっていう全体感の話をします。
戦争の形態がすごい変わってきているって、みんな気づいていますよね? 戦争って、いわゆる軍事行為で、第二次世界大戦では陸軍10万人とかが行進して攻めていくっていうのが、ヨーロッパの大陸では行われたりしたんです。
いまの戦争って、非正規戦と言われています。要はゲリラが、どっかにスパイとなって潜り込んだり、一般人の振りをして入りこんでテロを起こすとかです。どんどんそうなっていきますね。軍事の世界ではそうなっていってるわけですけれども、ビジネスでもわりとそうなってきているんです。
昔は正規戦で、正規軍が大量生産によって1つのものをたくさんつくることによって、スケールメリット活かして安くしていた。それをマーケティング部隊や営業マンが、数字のノルマを追っていろんなところに営業に行っていたと。そういう正規軍展開っていうのが主力だった時代っていうのが、もう20〜30年前ぐらいです。
1990年代くらいからトレンドが変わりはじめて、今はどこの会社もそういうトレンドになってるわけです。要はゲリラ戦ですね。正規軍の場合は上意下達で、ピラミッドの上から下に命令が下りていって、その命令に沿ってぴっしり規定通りに働ける人が有効なわけです。
この命令式系統で成立しているスポーツが多いです。こういうヒエラルキーの中で、ピラミッドの上から出た命令をしっかりこなすことができる人を養成するのに、体育会系ないしは集団スポーツは非常に向いてますね。だから、そういうところで養成された人っていうのが昔は大人気だったわけですよ。
真田:ところが、もはや正規戦をやらなくなっています。大手企業といえど、ゲリラ戦がいろんなところで展開しつつある中で、やっていけなくなってきました。
ジャングルに6人のチームで、ポトンと落下傘かなんかで落とされて、あとはそこの目的地を破壊して無事に生還しろって言われたときにどうしたらいいか。
次の命令なんかいちいち待っていられないから、その場その場で判断して、自分たちで考えて戦って生き延びて、食べものがなくなったら近くの動物を殺して食うとかしながら生き延びて、目的を遂行しないといけない。
ゲリラ戦ってこういうものですよね。そのときには自分で考えて、臨機応変に対応しなきゃならない。持ってきた食べものがなくなったら、罠を仕掛けて動物を捕まえて食うとか。
その都度、それなりに考えながら動いていくことに、全体のパラダイムが変わってきているっていうのが大きな流れですよ。
どこの会社であれ、多かれ少なかれ、こういうパラダイムシフトが起きています。正規軍で10万人の陸軍部隊が一斉に行進しながら戦いに行くみたいな時代は、もう30年前くらいに終わっています。
だから、求められる能力っていうのは、教えられたことを教えられた通りにやるとか、命令されたことを命令された通りにやるとか、そういうのではないと。自分で考えて動ける自走型で、どうやってやっていきますかということです。
今後、どんどんAIなどのテクノロジーが進化して、いずれは車に運転手のいらない時代が来るわけですよね。勝手に車が走って、勝手に目的地まで届けてくれると。カスタマーサポートセンターも、昔は一人ひとりが考えてやっていたのが、AIが答えてくれるようになる。考える人がいらなくなる。
昔は職人が熟練の技でつくっていたものが、どんどんロボットに置き換わって、工場のラインでもロボットがはんだ付けしているような時代になって、職人っていう職種が日本からぐっと少なくなったみたいに。
次はオフィスワーカーも同じように、AIとかに置き換わっていきます。そういう人はいらなくなる時代っていうことで。自分で考えて動けるっていうことが、おそらくこれからの時代、どこの会社であれ一番求められることなのかなあと思っております。めっちゃ長い話をしてしまいました(笑)。
大池:さすが総代!(笑)。ありがとうございました。
前田:えっと、僕からは3つ話していいですか? 1つは、すごい大事にしているんですけど、仮説思考力ですね。「頭がいい」っていうのにもいろんな要素があると思うんですよ。すごい知識量が多いとか、芸人みたいに、当意即妙で気の利いたことが言えるとか。いろんな頭の良さっていうものがあります。
うちの会社がすごい大事にしているのは、仮説思考力が高いっていうことです。「仮説思考ってなにか?」っていう話なんですけど、それこそ面接とかで、たまに僕が出したりする「水平思考クイズ」って知ってます?
大池:すみません、存じないです。
前田:知ってる人います? 最近は最終面接に来る前に仮説思考が高くない人はドロップアウトすることが基本になっているのですが。話をしていて、「あれ? この人、仮説思考弱そうだな」って思ったときに限り、出題しています。試しに大池さんにやってみていいですか?
大池:あ、僕に。すみません、僕、苦手そうだ(笑)。
前田:一番簡単なのを言ってみます。たぶん知ってる人もいると思うんですけど。いまから僕があるストーリーを話すので、それがなぜかっていうことを考えてほしいんですけど。
なぜかっていう答えを見つけるにあたって、僕になんでも質問をしていいです。僕はイエスかノーかだけ答えるので、その質問の答えを聞いて、早く答えにたどりつけるかどうかっていうのがクイズのやり方なんですけど。
大池:はい。
前田:「ある男がバーに入りました。そこで『お水をください』と言いました。『お水をください』って言ったんですけど、店員さんは男に銃を向けました。男は『ありがとう』って言ってお店を出ました。なぜでしょうか?」
っていう問題なんですけど。なんだと思いますか?
大池:難しいですね……。その男の人の服装が変だからですか?
前田:んっ、変ですか? いや、違います。
大池:違います? なんだろうなあ?
前田:もし変だったとしたら、どういうストーリーなんでしょう? 仮に変な服装だとして、なぜ「水がほしい」って言ったっていうストーリーになるんですか?
大池:あ、えっと、すみません。そこまで深く考えてなかったです。
前田:これが仮説思考力がない人の典型的な答えです(笑)。
(会場笑)
大池:ごめんなさい、バカなんで(笑)。
前田:いえ、ぜんぜんぜんぜん(笑)。このクイズが何かっていうと、その男が「水をほしい」って言ってる理由が「もしかしたらこういうことじゃないか?」と、ストーリーを高速に組み立てられる人が「仮説思考力の高い人」っていう話なんです。
例えば「その男は喉が渇いていました」って、単純に思うじゃないですか。喉が渇いていて水がほしいって言っているのかと。それは違うんだと。じゃあ、そのとき植物を飼っていて水をあげたかったのかと考えるかもしれません。もしかしたら外で火事があって、水をかけたいのか、とか。
なんでもいいんですけど。こうやって高速に何個も仮説が立てられるっていうことがすごく大事だと思っています。
前田:僕らが仕掛けることって、けっこう間違ったりもするんですよ。例えば、「このボタンをここに置いたらユーザーはこういうふうに行動するであろう」って仮説を立てるんですけど、けっこう違っていたりもするんですね。
違ったときに、どう水平に思考をずらせるかどうかっていうのがすごく大事だと思っていまして。垂直な人っていうのは、「絶対ボタンは右下にあるべきなんだ」ってずっと思っちゃってるみたいなことです。
だから、例えば仕事をしていて、垂直思考の人にこの質問を出すと、「この男は喉が渇いている」というストーリーからずっと離れられないんですよ。わかりますかね? 「その男は今朝、水を飲んできましたか?」とか考えるんです。
「喉が渇いてるというストーリーをいったん断ち切ったら?」って思うんだけど、断ち切られたストーリーも、また繰り返しやっちゃうっていうのが、垂直思考の人の癖ですね。
人間って、意識しないと思考がどんどん垂直に凝り固まってしまいがちなんです。それを水平にずらさないと、思索の成功確度って上がっていかないと思っているんです。そもそも、その仮説を立てられる力があるかどうかっていうのを見ているということです。
前田:2つ目もけっこう最近よく言っているんですけど、オタクがいいですね。どこかの領域特化で偏愛を持っているというか、偏った愛情を何かの領域に持っている人。もうそれは、僕らにもわからない何かです。
最近で言うと、僕らVR事業を始めていて、けっこう動いているんですけど。ローソンと提携して、ローソンの公式バーチャルクルーっていうのをつくったんですね。
大池:見ました、見ました。
前田:あるエンジニアが、3日ぐらい寝ずに「いや、この人差し指の曲がり方が……」とか言ってるんです。もうわけがわかんないレベルなんですよ(笑)。
「肩の、この位置が」とか、すごいこう、オタクむき出しで。キャラクターってこうじゃなきゃかわいくないとか。
今スマホで見ることができる人は見てもらいたいんですけど。この子、髪の毛が立ってるじゃないですか。立ってる髪の毛の角度とか、動き方とか、すごい細かく「こうやって動かないといけないんだ、髪は!」みたいに、朝まで自分のこだわりでもって突き詰めてたんですね。
ちなみにこれは、海外のBBCとかでも全部取材されていて。メディアで「AIはついにここまで進化した」って取り上げられたんですけど、AIではなく裏側に人間がいるんですけど(笑)。
(会場笑)
前田:「すごいショートカットお似合いですね」っていう、「カメラで髪の毛の長さを判断して、AIがそこまでわかってるなんてすごい」って記事に出ているんですけど、僕は一言も言っていないんです。ってか、AIでそこまでできたらGoogle超えてるよね(笑)。
(一同笑)
前田:「あの、今日はちょっと顔色が悪いですね」「もっと近づいてきてください」とか、「お子さんはおいくつなんですか?」とか。それは、カメラで相手を見てしゃべっているので。伊集院光さんが現場にいらしていたそうなのですが、「わ! 伊集院さんですね!」とか。AIでそこまでできたらすごいじゃないですか(笑)。
伊集院光を伊集院光と判断して、「なんとかの番組見てます」とかも言えるっていう。そういう世界が来るのかもしれないですけどね。
細部に神を宿して、細かい手の動きとか、手首の動きとか、わかんないですけど。僕らが見たら、「これでいいじゃん」「充分じゃん」って思っても、「いや、これじゃ萌えないんです。僕らは本当に恋したいんです」と言って、最後までやり切るところが、すごくいいなと思いました。
こういうところにヒットの要因って眠っているんだろうなと思ったから、そういう何かに熱狂をすごい持っている人と働きたいっていうのが2つ目ですね。
前田:3つ目ですが、これはいつも言ってるんですけど「愛情深い人」です。優しくて愛がある人が良いんです。それはなぜかっていうと、僕らが教えられないから。さっきの1個目の仮説思考とかって、愛さえあれば、ぜんぜん心配しなくてよくて。
教えられるんですよ、仮説思考って。「仮説の立て方ってこうだよ」とか「論点設定ってこうやってやるんだよ」とか。ロジックってけっこう教えられるんです。頭の回転が絶望的に遅かったらしょうがないんですけど、でも一定の頭の回転速度があれば教えられるんですよね。
でも、「愛情深くなろう」みたいなことは教えられないんです。例えば、うちの会社の一番の自慢は「社員が優しい」っていうことなんです。僕が全体会議とかでしゃべってて、ちょっと喉がかすれてるなって思った社員が、気づいたらのど飴を置いてくれたりとか。
他人に対して想像力が深いなっていう瞬間がたくさんあるんですけど。そういう人たちと働いたほうが楽しいじゃないですか。
キングコングの西野さんっていますよね。テレビが取材に来て「なんで西野さんと仲いいんですか?」なんて聞かれるんですけど、僕本当に「彼が優しいから」っていう以外の答えがなくて。はれのひ株式会社が起こした成人式の事件、覚えてます?
大池:はい、覚えてますよ。
前田:成人式を挙げられなかった子たちのために成人式を挙げたわけですよね。それによって「バズるから」とか、本当に彼は考えていなくて。「めっちゃムカつく、大人」って言ってて、子どもが大人になる日に大人に恨みを持つなんて、イケてないと。
どうやったらあの子たちが報われるというか、あの子たちが受けた苦しみが癒されるかなっていうのを、本当にただ考えただけだったんですね。
前田:メディアは、そうじゃないもっとおもしろい回答を求めてるのかもしれないですけど。西野さんって本当に優しくて。彼も「優しい人と一緒に仕事したいんだ」って言ってるんですよ。能力の高い人はたくさんいるんですけど、それよりも優しい人と一緒にやりたいなと思っています。
僕らって、今年とか四半期とかで仕事が終わるわけじゃなくて、ずーっと一緒にやっていくわけじゃないですか。いい時も悪い時も一緒にやっていく中で、本当に一緒に仕事をしたいなっていう人と仕事をしたいっていう意味では、僕らは「優しくて愛情深い人と仕事をしたい」っていうのは、けっこう会社の大きな価値観なので。そこはよく見てますね。
だから面接でも、根掘り葉掘り、その人の愛ばっかり探る質問ばっかりしますね。「猫が捨てられてたらどうしますか?」とか、ふざけて聞くときもあるんですけど。
「猫が捨てられてたらどうしますか?」って聞いたら、号泣しちゃう人もいます。想像しちゃうんですよね。人によっては「猫ですか?」ってキョトンとする人もいるし。これは例えばですけど、愛情を量るための会話っていうのは、すごいよくしてます。そんな感じですね。長くなっちゃいました。
大池:とりあえずわかったことは、僕はもう面接で落ちちゃうっていうことですね(笑)。前田さんを見ることもなく。
(会場笑)
前田:入れます、ぜんぜん大丈夫です(笑)。外で結果を出せるので、ぜんぜん関係ないです。
大池:ありがとうございます(笑)。
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