2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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平原依文氏(以下、平原):そこでお二人に後ろを見ていただきたいんです。次の質問です。
グローバルのお話をされていて、そこからまた「日本だからこそできる」というお話もされていたと思います。そこで、お二人が考えるグローバルをフィールドとして見据えたとき、日本流の戦い方とはなんだと思いますか? 稲川さん、どうでしょうか。
稲川尚之氏(以下、稲川):難しい質問が先に来ましたね(笑)。得意分野があればそれを世界に広げていく、みんなに紹介していく、という感覚でやるのがいいのかなと考えてはいました。僕はベンチャーキャピタルで、ベンチャー起業家やアントレプレナーじゃないので、自分の考えはあまり役立たないと思うのですが……。
平原:そんなことないです! アメリカ、日本という2つの文化をよく知っている稲川さんだからこそ思うことを、そのまま教えてください。
稲川:例えば日本酒の獺祭は、けっこうカリフォルニアで出ているんです。確か日本では2014年頃、獺祭がまったく買えなかったですよね。でも、アメリカのサンフランシスコでは普通に売っていました。そのかわり、値段が日本の倍するんです。2合瓶が40ドルくらいするんですよ。ちょっと買えないですよね。
そのかわり、ブルームーンというビールが好きだったんですが、(アメリカでは)350mlの瓶が6本で9ドル。この間、東急ストアで見たら1本で350円くらいして。「なんじゃこりゃ!」と(笑)。
どういう売り方をするかもあるのですが、ブルームーンの話は別にして、日本酒をみんなが飲むようになってきているカルチャーとか、そういうところにどう出していくか。面的な広がりを考えてやるといいのかな。
日本食ブームでもあるので、フードテックも最近けっこう出ていて。肉をうまく焼く温度計や調理器具もそうですし、インポッシブルバーガーという、お肉じゃないけどお肉の味がするハンバーガーとか。シリコンバレーで流行っているんですが、そういう新しい食の文化で、日本は意外といけるんじゃないかなと思います。
ピョートル・フェリクス・グジバチ氏(以下、ピョートル):おもしろいですね。今の話を聞いて、またちょっと知能指数が動きました。今日のイベントの話ですと、そもそもスタートアップはシリコンバレー系、テクノロジー系の話なんです。
スタートアップはアイデアを実証する仕組みです。アイデアを考えてやってみて、いけるかどうかがスタートアップなので、そのときにベンチャーキャピタルのみなさんからお金を頂いてスケールアップしていく。
「それがかっこいい!」と言う固定概念があるんですけれども、僕はスタートアップでいいのか? と思います。もうちょっと中小企業を増やしてもいいかもしれない。今の話ですと、例えば和食だとレストランのビジネスとか、今の日本にはどんなリソースがあって、なにが世界中で話題になっていて流行っているかとか、みなさん知らないと思うんですよね。
例えば、僕はポーランド人なんですけれど、ポーランドの大学があった街に行くと、今は寿司屋ばっかりですよ。誰がやっているかというと、日本人ではなく韓国人がやっているんですよね。ポーランド人は(日本人と韓国人の)顔がわからないから。ポーランド人は「あ、寿司が人気だから寿司屋を作ろう」と考えているんです。
僕は「なんで日本人がやらないんだろう?」とすごく不思議です。「なんで世界に行って、『日本にはこういうものがあるから買わない? 興味ない?』と確認しないんだろう?」と。現時点で良い事例は1つしかないと思うんですけれど、近藤麻理恵さん。こんまりです。セコイア・キャピタルからお金を頂いているというような話がありますよね。
稲川:ロサンゼルスに住んでいるんですよね。
ピョートル:彼女の神道の考え方はものすごくブームになって。仏教もちょっとあるんですが、神道の考え方を一気に世界にもたらしたのは、すごく大きい成功なんじゃないかな。日本の根本的な文化の良さをこれだけスケールアップした。アメリカ・ヨーロッパでは、今どこの本屋に行ってもこんまりの本が置いてあるんですよ。
必死にシリコンバレーと戦うんじゃなくて、もうちょっと日本の良さを自己認識して、それをもっと世界にもたらしていく。そこがポイントなんですけれども、ドコモ・ベンチャーズは、それに関してはあまり興味がないんですよね。
稲川:そういうことはないですよ(笑)。
(会場笑)
いっぱい興味はありますよ。例えば今は、イスラエルとかのマーケットを見ていますし、アメリカ国内でも、ボストンとかシアトルとか、ニューヨークとか。あとはファッションとかもあります。ビジネスをやっていく上で、どうしてアメリカ企業が日本に入ってくるのがいいのかを考えたことはありますか? なんとなくアメリカ文化って受け入れやすいんですよ。
さっきの「ギブミーチョコレート」じゃないですけれど、「かっこいい!」と思っちゃうんですよね。「アメリカに行ってきます」と言うだけで、みんなに「かっこいい!」と言われるんですよ。とくにお土産を買ってきているわけじゃないんですけど。
逆に海外から見た日本のイメージは、良いイメージと悪いイメージが両方あるんです。日本文化を海外にどういうふうに合わせるかが難しいんだろうな、と思って見ているんですけれど……。
稲川:頭の中でぐるぐる回っちゃっているので、ちょっと話をいろいろ回していいですか? シリコンバレーでラーメン屋さんをやっている日本人の方がいて、非常に悩まれているのが「日本人が好むラーメンの味をキープするのが難しい」ということです。外国人が好む麺の長さとスープの温度が違うんですよ。コーンスープとラーメンのスープの美味しい温度って、違うじゃないですか。
アメリカ人は、揚げたての唐揚げは熱くて食べられないんですよ。手で持てる温度じゃないと。彼らからするとこれは熱すぎて美味しくないんです。だからちょっと冷ます。ラーメンも一緒で「すすれないから麺は短いほうがいいし、スープの温度も下げてくれ」と言うんですよ。そうなると、今度はそのラーメン屋に日本人が行かなくなるんです。
お店が始まった時は1時間待ちなんです。行列ができて日本人がいっぱい来るんですが、経営者が変わってアメリカで育った方になると、そっちに合わせるのでダメなんです。「あのラーメン屋は終わってしまった」と。寿司屋もそうです。ドラゴンロールとか。
(一同笑)
サーモンにマヨネーズをかけてバーナーで炙るとか、そういうのは好まれるんですけれど……。純粋な光り物のお寿司とかを食べたいんですけれど、なかなかないんです。シャリも大きいし。
そういうカルチャーに合わせたかたちをどうビジネスでやっていくかというのはあるんですが、アプリなど別の技術をあてがうにしても、そういったカスタマイズをどうするかは勝負どころかなと思っています。
日本のリアルを知っているからこそ、どう合わせていくかを考えられるのは日本文化の上では非常にいいことなのかなと思います。みなさんが苦労されているところは、ベンチャーで働かれている方も似たような経験をしているんじゃないかなと思っていました。
ピョートル:質問してもいいですか? ラーメンはそもそも和食じゃないんじゃない?
稲川:(笑)。
ピョートル:日本人が中華のスープを日本に持って帰って、日本人の口に合わせた。
稲川:今『まんぷく』で話題ですよね、カップ麺。
(会場笑)
中国のラーメンと日本のラーメンは違いますよね。四ツ谷のラーメン屋でも「中国の麺にしますか? 日本の麺にしますか?」と聞かれるお店があります。そもそも味が違うものだと思っています。
平原:まさかこんなに食の話で盛り上がるとは……みなさんまったく予想がついておりませんでしたね(笑)。ありがとうございます。この後、日本初のフードテクノロジーの会社さんもピッチされます。
ピョートル:ラーメンテック。
平原:ラーメンテック……ラーメンテックとはちょっと違うかもしれませんけれども、そちらのお話もすごく楽しみです。時間が終わりに近づいてまいりましたので、最後に一言ずつ。日本のスタートアップだからこそ持つ強みってなんでしょうか? じゃあ、まずはピョートルから。
ピョートル:日本のスタートアップが持つ強みといえば、さっきの話にもつながるんですけれど、日本の伝統や文化。それをしっかり学んでから世界にもたらしていくのがポイントなんじゃない? 本当にそれをやっている会社が少ないのは事実です。
それこそ外に出て銀座に行けば、インバウンドの観光客が多いのに、それに対応していない日本人のみなさんのメンタリティはちょっともったいないなと思うんです。「がんばってここ(日本)に来ているのであれば、観光客の人たちも、自分の国で日本のものを求めているんじゃないかな?」という考えはポイントですよね。
平原:ピョーさん、ありがとうございます。稲川さんはどうですか?
稲川:言い尽くされたことかもしれませんけれど、大企業に入ったらできないことを自分でできるような環境を、自ら作ることができる組織形態。会社はたぶん、登記すればすぐに立てられるので、お金と人とアイデアがあればものを動かせるはずです。僕はドコモに入ってもう20年以上経つんですけれど、こうやって比較的自由に話をできるようになるまでに、20年かかりました(笑)。
でも、ベンチャーで社長になれば、明日から好きなことを言って大ボラを吹いて、そのホラがいつの間にか、「嘘から出たまこと」じゃないけれど、本当に実現しちゃうんじゃないかなと思います。これはリスクを取るからこそ成果も大きいんだと思うんですけれど、大企業に入っても「なかなかできないよね」と言っている。
さっきピョートルさんが「『やりたい』というのはちょっと文法的におかしい」と言っていて、「『やるか、やらないか』の二択ですよね」という話がありましたけれど、まさにそうです。
ベンチャーの強みとは、やりたいことをやれる環境を自分で作れることかなと思います。僕はやったことがないので、そういうベンチャーをやられている方をすごく尊敬します。
平原:たくさん知りたいと思うので、ぜひネットワーキングタイムで稲川さんとお話しください。お二人ともありがとうございました。
稲川:ありがとうございました。
ピョートル:どうもありがとうございました。
(会場拍手)
平原:実はまだ時間が3分少々余っているんですけれども。
ピョートル:逃げていい?
平原:逃げていいです(笑)。参加者の方から、日本が持つ強みってなんだろう? というのをちょっとうかがいたいと思います。どうですか? 日本が持つ強みってなんですか?
質問者2:お話ありがとうございました。大変おこがましいお話ではあるんですが、日本の持つ強み、他の国にない強みは、たぶん私が生まれたことなので、私をもっと活かしたらいいかなと思っています。
平原:ありがとうございます(笑)。それがなぜなのか、後でお聞かせください。ではもう1人いきましょうか。「我こそは!」という方はいますか? いない。ちょっと寂しいですね。
(会場挙手)
じゃあ、はい(笑)。どうですか? 日本こそが持つ強みはなんでしょうか?
質問者3:本来はチームワークだと思います。 最近はそうでもなくなってきているので、コミュニティワークさえうまく再生させられたら、おもしろいことができそうな気がする。
平原:ありがとうございます。そうですね、今いろんなコミュニティが生まれていて、そこからいろんなアイデアやビジネスが生まれていると思います。ちょうどコミュニティのコラボレーションを開発しているプラットフォームの企業さんもこの後ピッチされるので、みなさんよろしければお聞きください。では、これで前半は終了となります。
(会場拍手)
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