2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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平原依文氏(以下、平原):ピョーさん、もう1回自己紹介しますか?
ピョートル・フェリクス・グジバチ氏(以下、ピョートル):自己紹介というより、自己開示なんですけれども。僕、今朝は健康診断を受けて、バリウムを飲まされて、身体が非常にだるいんですよ。医療関係の方いらっしゃいます? どなたか医療関係の仕事の方、ぜひバリウムをなくしていただきたいです。
(会場笑)
なんらかの新しいかたちの胃の検査があれば幸いです。
稲川尚之氏(以下、稲川):胃カメラを飲まなくてもいい。
ピョートル:そうです。
平原:ちなみに稲川さんは、もう健康診断はされましたか?
稲川:しましたよ。
平原:しましたか。どうでしたか?
稲川:胃カメラがつらかったです。
平原:つらかったですか(笑)。ありがとうございます。本日は、お二人を招いて対談をさせていただこうと思います。なんでこの二人かというと、実は1年前、最初に日経BPさんでの対談企画がありまして、その時にすごくバトルチックになったりして、とても楽しい対談をしたんです。
(一同笑)
平原:それを今日、もう一回実現させたいなと思って。
ピョートル:バトルロイヤル(笑)。
平原:バトルをやろうかと思います。
稲川:そんなにうまくいきますかね?
(一同笑)
平原:大丈夫です(笑)。スタートアップの業界にすごく詳しいお二人なので、今日は2つの質問を準備しております。みなさん準備はよろしいですか?
稲川:はい。
ピョートル:はい。
平原:ありがとうございます! 本日のテーマはずばり、スタートアップの未来です。どうですか? 参加者の方に聞いてみようかな。スタートアップの未来と聞いたときに、どんなことを思い浮かべますか? (会場を指して)じゃあお兄さん、お願いします。
(一同笑)
質問者1:世界を変える。あとは、世界を牽引するという感じですかね。
平原:いいですね。世界を変えたり、牽引したりするような企業ですね。ありがとうございます。素晴らしいコメントでした。スタートアップの未来と考えるとたくさん思い浮かぶと思うんですけれども、お二人に最初に準備した質問がございます。よろしいですか?
ずばり、今スタートアップ業界ではどんな波が来ていますか? ピョートルはどうですか? 最近エストニアやフィンランドなど、シリコンバレーと関係なくいろんなスタートアップとのお付き合いがあると思いますが、どんな波が来ていると思いますか?
ピョートル:すごく複雑な答えになっちゃうんですけど、国はそれぞれ違う波がきていると思っています。グローバルのレベルでいうと、日本はまだ波を感じていないというか、波が来ているのに気づいていない気がしていています。
シリコンバレーに行くと、ガンガンお金を取りにくくなっているのは事実ですね。なぜかというと、従来のビジネスモデルでスタートアップを立ち上げると、今ではもう競争が激しすぎるんです。
他にもいっぱいあります。とくに中国・インド・イスラエルなどの国を見ると、「新しいビジネスモデルを持ってこないと、投資する意味がない」と言われますね。非常識を常識にしていく考え方を持っていないと、お金がもらえなくなってくるんじゃないかな、というのが一つの波ですね。いかがでしょうか?
稲川:そうですね。自分はベンチャーキャピタルの仕事をしていて、投資の仕事をしています。経歴的には、2013年から3年間シリコンバレーで過ごして、その後3年間、東京ベースで同じようにベンチャーのスタートアップとお付き合いをしてきたんですよ。
自分で解決したい課題が明確にある人ほど、行動を起こしてなにかをしているケースがあって、これはNPOであれ、利益追求型のビジネス会社であれ、どちらでも同じことが起こっていると思っています。「日本はシリコンバレーみたいになればいい」と言うけれど、シリコンバレーに行ったことがある人、どのくらいいますか?
(会場挙手)
稲川:このくらいですよね。つまり「シリコンバレーみたいにやれ」と言って、シリコンバレーに行ったこともないのに、シリコンバレーがどんなものかわからないまま、ベンチャーを立ち上げて「シリコンバレーに勝つぞ」と言っても多分ダメです。
そういうことが、まず日本に来ているのかなと思います。あと、日本には日本、サンフランシスコにはサンフランシスコの特徴があって。
シリコンバレーにはお金を出すエンジェルみたいな人たち、お金持ちが多いんです。物価も高いし、家も最低2~3億円ないと一戸建てなんて買えない。混雑もしているけれど、そういうところにいろんな人やお金持ちが集まっていて、大学もいい。
スタンフォードとかUCバークレーとかの優秀な大学があって、企業がいろんなところにいる。僕らは商売柄スマートフォンを見ていますけれど、見てみるとその会社の本社はだいたいシリコンバレーにあるんですよ。
Apple、Facebook、AndroidのGoogle、ヤフー、Twitter、Snap。Tiktokは中国なので最近は少し外れてきたんですが、ほとんどシリコンバレーが本社ですよね。ヘッドクォーターがあるんです。そこをベースに人とお金が集まっているので、そういった意味では……なんの質問でしたっけ?
(一同笑)
日本だったら、これからベンチャーはそういうところを目指すことと、そこを1回見に行くことをベースに生きていくのがいいかなと思います。
平原:ありがとうございます。ピョーさん、なにか追加でありますか?
ピョートル:やはり、さっき言ったグローバルなスケールでやらないと、スタートアップという考えが実施できないのは事実ですね。例えばUberを見ると、なぜUberは中国・シンガポールでうまくいかなかったのか。日本でもちょっと苦労しているのか。
なぜかというと、Uberのビジネスモデルはコミュニティ、シェアリングをするんですけれど、非常に距離の近い人たちしかシェアリングできないんです。
東京で車に乗りたいのであれば、札幌の車に興味はないはずですね。Airbnbは、グローバルなスケールを前提として動いているんです。例えば、日本に住んでいるみなさんがAirbnbで泊まろうとするときは、千代田区や世田谷区で泊まるという選択はしないんです。まず、海外で泊まるのが前提です。
そうすると、彼らのビジネスモデルやサービスの常識はUberと真逆で、どこに行っても導入できるのがポイントです。ローカルで民泊する会社よりも強いんです。
日本で民泊サービスを出している会社は何社もあるんですけれど、Airbnbと戦えないんですよ。顧客ベースは日本だから、札幌で泊まりたい東京住まいの日本人が使うかもしれないですけれど、スウェーデンから来ている観光客は使ってくれない。というのは事実です。
前提として、「いかにグローバルか」という考え方を土台にしていく。それは、最良の組織づくりの考え方でも、サービスの考え方でも一緒なんじゃないかな。ちなみにドコモ・ベンチャーズでは、今投資なさっているスタートアップの中で、すでにうまくグローバルな動きをしているスタートアップはありますか?
稲川:アメリカ企業などの海外企業はグローバルですね。日本企業はわりと日本のマーケットと主にやっている感じはあります。日本人は言葉では「グローバルを知っています」と言うけれど、ピョートルさんのおっしゃる「グローバル」という感覚が、一体なにを意味するのかを本当に理解できている人は少ないんじゃないかなと思っています。
その理由は「グローバル」と言うと、なんとなく戦後の「ギブミーチョコレート」のカルチャーから抜け出ていない気がしていて。グローバルとは「英語をがんばらなきゃ」「アメリカに行かなきゃ」ということだと考えられている。
最近投資しているアメリカ企業はグローバルだと言いましたけれど、実はアメリカ人のシリコンバレーのベンチャー企業に「日本のドコモですけれども、日本のマーケットに興味はありますか? 進出してきませんか?」と言うと、半分以上は「ノー」というんです。
彼らは「英語という母国語で、まずアメリカ国内で成功しないことには、僕らは立ち行かないんです」という考えなんです。僕らの感覚から言うと、全然グローバルじゃないですよね。「海外に行かなきゃ」と考えるグローバルじゃないんです。
でも、それは勝手にイギリスに飛んだりシンガポールに飛んだり、英語圏は水平的にバーッと広がっている。これはグローバルの感覚を、外国やナショナリティの感覚で構えちゃうからダメなんじゃないかな。もっとマーケットベースで「日本に限らない」と考えたら、自然とグローバルな動きができると思うんです。
僕ら日本人はどちらかというと、中国人やアメリカ人などの外国人と組むようなグローバル、インターナショナルな関係を作るのが下手なんです。「日本がんばれ!」の世界があって、「また日本人はダメでした。今度はがんばりましょう」とよく言いますよね。でも、「日本人がダメでしたと言うけれど、なんで日本人だけと組むんですか?」と思います。
先ほどチームビルディングの話がありましたが、羊飼いが羊を飼うように、自然なマネジメントのかたちをしよう。その時にはCEO、CTO、CFO、COO、みなさんに特徴があって、別に全員が日本人である必要はないですよね。
だけど「日本人ががんばらなきゃ」と考えて日本人を探すんですよ。うちのドコモもそうですけれど、日本語が話せることが採用の条件に入っています。「だからどうなの?」という話ですよね。
稲川:わりとおもしろい例が1つあるんですよ。九州の水産事業者が養殖のブリやカンパチを売るのに苦労していたんです。養殖のブリだったら安いですよね。漁業の人は、漁獲高という獲れた魚の数で競い合うので、漁業組合の性質がそれなんです。
つまり、育てる魚はそこに入っていない。養殖魚は売れない。そういう悪循環がある。日本人も「養殖より天然のほうがおいしい」と思って天然ものを買う傾向にあるんですけれど、よくよく調べてみたらアメリカ人は養殖の魚のほうを信用しているので、「養殖ものが欲しい」というニーズがあるんです。
裏返してみると、牛肉の輸出は非常にめんどくさいです。みなさん海外旅行に行った後、「お肉は持っていますか?」「果物は持っていますか?」と聞かれますが、「お魚は持っていますか?」とは聞かれないですよね。
僕の知り合いが、築地でサンマを買って発泡スチロールに入れて、スーツケースを預けるところに(魚入りの発泡スチロールを)預けて、駐在先の国にお魚を持って帰ったりしていたんですよ。あれ、大丈夫らしいんです。
輸出入の観点から言うと、魚を物流させるのって楽なんです。つまり、九州の養殖屋さんが、アメリカのマーケットに魚を出せることに気づいたんです。別に「英語をやろう」「グローバルにいこう」とは思っていないです。マーケットベースで売れることがわかった。
これに最近のベンチャーの技術やIOTをつなげて、牛の「神戸牛〇〇号」みたいに1匹ずつブリに印をつければ、「そこで優勝した魚です」と言える時代はすぐ来ると思います。そういう傾向の考え方をして、それを日本人じゃないかたちでグローバルな行動を起こして活動するほうが、僕らには合っているんじゃないかなとすごく思うんです。
ピョートル:今の話はすごくおもしろくて、英語の「global」という言葉には、実際に「インターナショナル」ではなくて「全般」という意味があるんです。「全部」。例えば「globally」というのは、海外のことを考えるんじゃなくて、「全社会の問題を考えろ」「人類の問題を考えろ」という意味ですよね。
やはり日本語の「グローバル」は、わりと「インターナショナル」に近いですよね。「グローバルに動くから英語で話さなきゃ」「英語でサービスを出さなきゃ」「じゃあ中国に行かなきゃ」ということじゃなくて、いかにできるだけ多くの人たちに自分たちのものを届けていくのかがポイントなのかなと、今の話を聞いて考えました。
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