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Panel Discussion「勝てるスタートアップのつくり方」(全2記事)

急成長中のスタートアップは人材をどうやって定着させるのか? メルペイ、SmartHRらの場合

2018年10月2日、著しい成長を見せているスタートアップの経営陣が一同に会した「500 Career Fair」(主催: 500 Startups Japan)が開催されました。トークテーマを「勝てるスタートアップのつくり方」とし、メルペイ青柳直樹氏、SmartHR宮田昇始氏、カケハシ中川貴史、Zehitomoジョーダン・フィッシャー氏が登壇。採用やカルチャー醸成、評価制度、活性化施策などの観点から、ディスカッションしました。(photos by Michael Holmes)

テーマは「勝てるスタートアップのつくり方」

澤山陽平氏(以下、澤山):それではさっそくパネルディスカッションに移っていきたいと思います。パネルのテーマは「勝てるスタートアップのつくり方」です。

採用やカルチャー作り、評価制度など、さまざまなスタートアップでいま実際に活躍中の方々に、いろいろと聞いていきたいと思います。ではパネラーの方々、どうぞお願いします。拍手でお迎えいただければと思います。

(会場拍手)

ジェームス・ライニー氏(以下、ジェームス):今日は「勝てるスタートアップのつくり方」というテーマです。スタートアップとしての組織づくりや、カルチャー醸成についての話をしたいと思います。その前に、まず軽く自己紹介していただければと思います。青柳さん、どうですか?

青柳直樹氏(以下、青柳):青柳直樹です。よろしくお願いします。僕はいま、メルカリのなかで、メルペイという会社の代表をやっていまして、新しい金融事業の立ち上げを10ヶ月前から始めています。

メルカリというサービスは、開始から5年以上経つのですが、メルペイは新しい金融事業です。いままでは完全にCtoCでしたが、メルペイはいろいろなビジネスパートナーとの事業もやろうということで、今までのメルカリにいなかったような人材を集めながら、新しい金融ペイメントなどを始めとするサービスを進めていく予定です。

よく、「メルカリはもうスタートアップじゃないんだから」と言われるんですが、メルペイはそのなかでも新たに金融事業を立ち上げるという観点で、非常におもしろいユニークなチャレンジをしています。今日は500 Familyに呼んでいただいてうれしいなと思っています。よろしくお願いします。

(会場拍手)

ジェームス:順番にいきましょう。では、宮田さん。

宮田昇始氏(以下、宮田):SmartHRの宮田と申します。のちほど1分間のPitch Timeがあるので、サービスの説明は割愛します。HRのSaaSを作っています。うちの会社は今日現在、82名くらいですが、今月入社した人が14名います。単月で20パーセント成長しているんですね。それくらい急激に伸びている会社です。

これまで、シングルプロダクトで会社を伸ばしてきたんですが、これから一気に幅を広げて、いろいろなことを攻めていこうという会社です。今日はよろしくお願いします。

(会場拍手)

急速に成長するKAKEHASHIとZehitomo

中川貴史氏(以下、中川):KAKEHASHIの中川です。よろしくお願いします。いま、KAKEHASHIは、薬局で使われるシステムをSaaSというかたちで提供している会社になります。半年前に30名くらいだった組織を、いま70名くらいまでに急速に拡大させているところです。

プロダクトをリリースしてちょうど1年くらいになります。プロダクトをリリースしてから8ヶ月のタイミングで、市場の13パーセント以上、8,000店舗以上の薬局から問い合わせを受けました。一気に強いトラクション(Traction:顧客獲得)をもらって、そこから組織を拡大させながらスケールを確保していくフェーズにあります。

薬局のSaaSというとすごくマニアックなイメージなんですが、この医療という分野には、本当に課題がたくさんあります。いまのプロダクトを軸にしながら、今後おもしろい医療の課題の本質を解いていくことが、我々の事業で目指しているところになります。ありがとうございます。

(会場拍手)

ジェームス:Hi、Jordan.

ジョーダン・フィッシャー氏(以下、ジョーダン):Everyone! Zehitomoのジョーダンと申します。はじめましての人がほとんどだと思います。Zehitomoはローカルサービスのマーケットプレイスです。具体的には、パーソナルトレーナー、家のリフォーム、出張カメラマンなど、これまではオフラインでフリーランスや中小企業が直接会ってやるような仕事の市場を対象としています。

ローカルサービスの市場は、飲食業界の市場と同じくらい大きくて、日本でみると約20兆円もありますが、オンライン上での成約率は約2.5パーセントという、非常に非効率で不透明な市場です。

そこで、オンライン上でのマーケットプレイスとして、フリーランスと中小企業の方が効率的にビジネスを展開できて、同時に消費者のみなさんがネットでものを買うのと同じくらい簡単にサービスを予約したり、購入したりできるプラットフォームが、Zehitomoです。

現在は25名くらいのメンバーで、最近は毎月3名くらい新しいメンバーが増えています。先月は3人が試用期間からフルタイムに切り替わって、今月も新しく3人入りました。

去年と比べると約20倍伸びているんですけど、まだまだ1,000倍くらい伸びしろがある市場なので、今日はみなさんから学べるのを楽しみにしています。よろしくお願いします。

(会場拍手)

採用が成長のボトルネックになる

ジェームス:ちょっと各社の規模を整理したくて、Zehitomoが約30人、KAKEHASHIが約70人、SmartHRが約80人、そしてメルペイが約250人、そんな感じですね。ちなみに去年の12月は何名くらいでしたか?

青柳:僕は1人(笑)。

ジェームス:宮田さんは?

宮田:去年末は40人ぐらい。

中川:20名くらいじゃないですかね。

ジェームス:20名から10ヶ月で70名。急成長してますね。急成長しているスタートアップには、大きく2つの組織の課題点があるかなと思っています。1つは、どうやって優秀な人を採りに行くか。急成長しているスタートアップにありがちなのは、採用が成長のボトルネックになってくることですね。

もう1つは、優秀な方が入社してくれた後、ちゃんと彼らの力を引き出せる組織づくりができているかということ。みなさん、この2点をどう考えていますか? 今度は宮田さんから始めます?

宮田:そうですね。まず採用についてですが、インターネット業界は人の取り合いがすごくて、いろいろな会社さんとよくぶつかります。

そんななかで順調に採用できているのは、さっきジェームスが言っていたけれども、スタートアップというか、ITの力で巨大な産業を変えていくところに、みなさんもやはりチャレンジのしがいを感じてくれていることが1つ。

うちの会社がどうやって採っているのかというと、80名くらいの会社なんですけど、一人ひとりの裁量を非常に大きくしているところが、とくに働いている人や、これからSmartHRに入ろうとしている人には刺さっているポイントかなと思っています。

どれくらいメンバーに任せているかというと、例えば、SmartHRプロダクトマネージャーをやっているのは女性なんですけど、入社1ヶ月目くらいまでは、カスタマーサポートの仕事をしていたんですね。「SmartHRをもっと良くできるから、プロダクトマネージャーをやりたい」というので任せてみたら、すごくうまくいったので、そのまま任せています。

それから、昨年からテレビCMを始めたりしているんですが、私がやろうと言い出したわけではないんです。メンバーから「このタイミングでこういう層向けに、こういう内容でCMを打ちましょう」という提案をもらって、「じゃあ、いいんじゃないか」というのが走り出したりと、メンバーに大胆にやってもらうことを大事にしています。そういう裁量の大きさに惹かれて入ってくる人たちは多いかな、と思っています。

ジェームス:なるほど。

カルチャーフィットの重要性

ジェームス:ジョーダン、どうですか。

ジョーダン:そうですね。やはりスタートアップは責任取り放題の環境です。だから本当に自発性があって、モチベーションが高くて、自分で走り出せる人だと、会社のステージが上がるほど、やることや貢献できることがより明確になってくると思います。

入社したばかりの頃は、全員ある程度の柔軟性を持っている。でも、毎日のように「今日はこれをやる」けど、「結果次第で明日やることはぜんぜん変わる」ということがあります。これが続くと、我慢できなくなる人もいる。カルチャーフィットしているかどうかは大切だと思うんですよね。

あとは、いいときも大変なときも両方あるから、信用し合える柔軟性のある仲間と一緒にやることが第一です。

Zehitomoの採用方法は、最初の頃といまではぜんぜん違います。最初の頃は僕が全部ネットワーキングして、人の紹介だったり、他の社員の紹介だったり、たくさん話してから「じゃあ一緒にやりましょう」という流れがほとんどでしたが、自分が忙しかったりすると時間を使えなかったりして、拡大しませんでした。

今は、会社としていろいろな部署ができあがって、それぞれの部署のマネージャーがニーズをより明確にして、それに合わせて何回かの面接をして、最終的に「本当に入れたい」と思う人だけ、僕が会っています。やはりまだリクルーターを使うほど会社が大きくはないので、こういうイベントも非常にありがたいです。

入るほうもスタートアップに入るのはすごくリスクだと思うんですね。入ってもらったあとは、責任もあって、インパクトや影響を与える仕事ができる。

Zehitomoのようなアーリーステージのスタートアップでは、入社して来た方々の価値がそのまま会社の資産になる。なので、本当にいい人を採ることが一番重要です。それぞれの強みを引き出し、助け合える関係を大事にしていますね。

ジェームス:ありがとうございます。

ミッション、バリューへの共感を重視する

ジェームス:青柳さん、メルペイの社員数は、去年12月の一人から250倍。すごい成長ですね。

青柳:日本のスタートアップのなかであらゆることをやりきっているな、という誇りがあります。メルカリはすごく採用力がある会社です。そこからいろいろ学びながら、メルペイは独自の採用チームと現場の各Hiring Managerがタッグを組んで動いていますね。採用担当者は10人を超えるくらい。

ジェームス:メルペイ単体で10人ですか?

青柳:はい、メルペイだけで。

ジェームス:すごいですね。

青柳:これは「将来どういう組織を作りたいか」から、逆算で考えています。そうすると結局、1人が候補者の方にどのくらい寄り添わなきゃいけないか、ということを考え、実際に採用のペースを実現しようと思ったら、それだけの人のサポートが必要です。

そして、サポーターとして採用活動に携わっている方の数は、私を含む経営陣、マネージャー陣、イベント等に登壇するメンバーを合わせると、50人を超えると思います。

10人の採用担当の人たちは、「メルカン(mercan)」というオウンドメディアでいろいろな会社の情報発信をしたり、ほぼ毎日どこかでイベントをやっていますね。例えば、Goという言語でバックエンド開発をやっているんですけど、Goについてのコミュニティイベントをやったり、金融機関の方をアトラクトするために六本木から大手町まで足を運んで、「フィノラボ(FINOLAB)」でマネーロンダリングについてのセミナーをやっているとか、さまざまなかたちで採用活動をやっています。

「全員採用」を掲げている会社は多いですが、メルペイも毎月社内でサーベイを取っています。10項目くらいのいろいろなサーベイを取っているんですけど、重視しているのがミッション、バリューへの共感というところ。

もう1つ特徴的なのは、「あなたは自分の友人にこの会社を紹介したいですか」というスコアがあって、さらに、みんなから「どうしたらもっと友人に勧めたくなりますか?」と聞いています。つまり、そのスコアが高くないと採用も自らしてくれない。

創業後の早い段階から、そういうフィードバックのループを作って、みんなが自然と採用に向かうように、サポートをしています。

ジェームス:おもしろいですね。興味深いです。

組織づくりに対して強いオーナーシップを持つには

ジェームス:中川さん、2倍、2倍と成長してきたと思うんですけど、どんなことを意識されてきましたか?

中川:やはり事業としては、たくさん人を採らなければならないというプレッシャーはある一方で、うちの会社は、すごくマッチングを重視しています。本当に「目の前の人がうちの会社に来たときにハッピーになれるのか」は、かなり重視しています。

うちの採用は、おもしろい点が2つあります。1つは、いまだいたい、月に数百人の応募があります。最初の段階で書類選考が終わって、実際に会うときに、必ず一発目では経営陣が出てきて、事業の話を1時間半みっちり伝えます。

そこで文化の話や事業の話を徹底的にして、その人がどういうモチベーションでスタートアップに来たいと思っているかを聞いて、本当に合いそうだなと思ってもらえるかどうかを、最初にちゃんと見ていますね。

2つ目は、社員の全員が採用権限を平等に持っていて、(求職者には)合計で9人のメンバーに会ってもらっています。このメリットは2つあります。

1つは、中にいる人が一人ひとり、自分の会社の組織づくりに対して強いオーナーシップを持てるんです。「僕がこの人を採ったんだ」という思い、「僕らが組織を作るんだ」という思いでいられるということ。

もう1つは、実際に入るときに、現場の営業で入る人も、デザイナーやエンジニアと一緒に話をしてから入ってくるので、どういう人たちが会社にいるかというイメージが湧いてから入社するんですね。

絶対にカルチャーのミスマッチが起きないのが、すごくいいところです。すごく納得をしてなかに入って、安心して活躍できる仕組みになっているかなと思います。

「一番ワクワクした瞬間」を聞く意義

ジェームス:中川さん、カルチャーのミスマッチが起きないように、必ず聞いている質問とかありますかね。

中川:うちの会社でよく聞くのは、例えば「今まで仕事をしてて、一番ワクワクした瞬間はなんですか?」という質問をしていますね。

なんでこの質問をしているかというと、「その人のモチベーションの源泉がどこにあるか」を見ていて、その人はこう成長したいのか、実は周りにいる人との相性が大事なのか、それとも事業を育てたいのか、それとも社会貢献のようなことにモチベーションがあるのか。そのモチベーションの源泉が、うちの会社で活かせるのかどうかをすごく重視して見ていますね。

ジェームス:なるほど。宮田さんは、そういうのあります?

宮田:カルチャーマッチみたいなものですよね。

ジェームス:面談で必ず聞く質問とか。(それ以外でも)どうしているとか。

宮田:カルチャーマッチについては、実は聞いていないですね。昔は聞いていたんですよ。うちの会社は、「このバリューがうちの会社にとっては大事です」という価値観を明文化していて。

このバリューを大事にするがゆえに、評価制度に組み込んでいて、「会社の価値観にマッチする行動が起きたら給料が上がりやすいですよ。マッチする行動が少ないと、給料がたぶん上がらないと思うんで、やめたほうがいいです」と言っているんですけど。

こちらからマッチ度を聞くことはしていません。というのが、最初の頃は聞いていたんですよ。「うちの会社は、このバリューを重視してるんですけど、これに当てはまる行動はなんですか?」ということを教えてもらっていたんです。だけど、みんなそれっぽいことを言うので、聞くのをやめて、「セルフチェックしてください」というやり方に変えました。

けっこう強めに言うんですよ。「マジで給料上がらないので、本当に共感しないんだったらやめたほうがいいですよね」。

(会場笑)

そう言うと、だいたい「なんとなく合ってなさそうだな」と思った人は、自分から辞退されます。結果、価値観にマッチした人が入ってくれているかなと思っています。

ジェームス:それって大事ですね。

「自由なカルチャー」が分水嶺となる

ジェームス:ジョーダンはどうですか?

ジョーダン:Zehitomoのやり方は「何時から何時まで働かなくちゃいけない」とか、「長く働いたから評価する」とか、そういうことはまったくありません。完全にパフォーマンス、つまり結果だけで見ています。

他には、チームワークとか、オーナーシップとか、問題解決力を見ています。それで、評価制度のときに毎回「Zehitomoはこういう文化ですよ」「Zehitomoの文化のなかで、あなたのチームワークはこうでしたよ、問題解決力はこうでしたよ」と伝えています。

Zehitomoは、人によってはすごく働きやすいと思うけど、人によってはすごく働きにくいかもしれない。カルチャーは表にあらわして、マグネットみたいに使っています。「柔軟な会社だからこそ、たくさん責任をとってたくさん成長できる可能性がある」というと、「自由なカルチャーでいいな」と思う人は来てくれるし、決まりごとが多い方がいい人は来ないですね。柔軟すぎること、決まりごとが少ないことに不安になる人もいる。だから、最初の時点で振り分けができる。

面接では、ここ数ヶ月はできるだけ会う人を増やそうとしています。会えば会うほど、その人が毎日一緒に働くイメージも描けるし、「パフォーマンスだけで見る」と何度も伝えることができます。

最終的にはみなさんが言ったとおり、給料を上げるにはパフォーマンスがすべて。会う人にはモチベーションを持ってパフォーマンスを出せる環境であるか見てほしいし、僕もパフォーマンスを発揮してくれそうな人かどうかを見たいと思っています。

ジェームス:カルチャーって、けっこうモヤッとしている単語だと思うんですが、みなさんの会社のカルチャーや働き方の共通点はなんですか? メルペイの場合は250人と、すごく成長していると思いますけど、そのなかでなにか共通点あります?

青柳:そうですね、採用ですごく気をつけているのが、メルカリグループ全体で、明確にミッションと3つのバリューへの共感を採用の基準にしています。

バリューはメルカリ・メルペイ共通で「Go Bold、All for One、Be Professional」という3つの柱で、メルペイでは「信用を創造して、なめらかな社会を創る」というミッションへの共感にとにかくこだわっています。

ここへの共感の度合いがわからなかった場合には、僕自身が必ず出ていって、納得しないと通らないというカルチャーゲートキーパーをやっています。

半年で合宿を3回やらないと「目線」が合わない

ジェームス:カルチャーフィットしているかどうかは、どうやって見極めてるんですか?

青柳:確かにさっき宮田さんがおっしゃったとおり、「Why Merpay(どうしてメルペイに入りたいのか?)」や、「これについてどう思いますか」というな話だと、だいたい通り一遍の回答がくるんです。

僕が聞いているのは、僕らのいまのミッションである、「信用を創造してなめらかな社会を創る」という話をして、みんな「いいですね。キャッシュレスになっていいですね」と言うんですが、同じ話をどんどん深掘っていくようにします。

そうしたときに、本当にその人が新しい社会を作っていきたいか、話しているときのキャッチボールがどのくらい面白く弾んでいくか、その人が話しているうちに高揚していくかがわかります。

そこの明確な答えというよりは、実際に僕が出ていってできるかぎりのことをしゃべるのに対して、その人がどのくらいビビッときていて、盛り上がっているか。基本、先ほどの9人と会うという話とは違って、僕らはなるべく面接のプロセスを短くしています。

ジェームス:なるほど、選考プロセスについては、あえて短くしてるんですね。

青柳:2回オフィスに来ていただいて、それ以上ということは基本的にない。そのあと、どうしても採りたいという候補者の人は、何回もごはんに行ったり、ディナーに行ったり、クロージングには時間をかけるんです。けれども、オファーを出すところまでは基本的に2回です。

例外的に3回目があります。この人はスキルもあるし、こういう会社のバリューに合っているんだけれど、ミッションに共感しているかどうか、というところでクエスチョンがついたりすると、僕は「会わせてくれ」と言っています。

ジェームス:なるほど。実際に入ってもらって、「ちょっと違うな」と思う場合は、どうしていますか?

青柳:あまりにも新しいことをやっているので、まず、オン・ボーディング(注:組織の一体感を高める新しい人材定着プロセス)のサポートの専属チームを作っています。必ず1ヶ月後に面談をしたり、僕もウェルカムランチに出ていったり、そのあとチームでの合宿なども頻繁にやっています。創業して10ヶ月ですが、合宿は5回やりました。

ジェームス:マジですか?(笑)。

青柳:やはり、30人、50人、100人、150人、200人と増えているので、気がついたら会社の3分の2くらいの人たちが半年以内に入社しています。なので、半年で3回くらい合宿をやらないと、目線が合わないじゃないですか。

ジェームス:なるほど。

青柳:ちょっと暑苦しいですけど、なるべくオン・ボーディングの機会を増やしています。それでも、なかなかカルチャーフィットが(できない)……という場合は、正直にダイレクトにフィードバックをして、向き合ってお話ししていますが、けっこうレアケースだと思います。

SmartHRのオン・ボーディングの方法

ジェームス:SmartHRの場合は、どのようにオン・ボーディングしているんですか?

宮田:正直に言うと、これまではあんまりそこに力をかけていなかった。

株主の前田ヒロさんと、うちの人事評価制度を初期から作ってくれているコンサルの人がいるんですけど、今年の5月くらいに、その2人に全員と1on1をしてもらいました。そこでいろいろなニーズというか要望や課題を吸い上げてもらって、いまはいろいろ改善しています。

その中で、やはり「最初にもうちょっとオン・ボーディングをやってほしかった」という声がけっこう多いんですよね。なので、そこはいま、まだ解決・改善しようとやっているところです。

最近やり始めたのが、僕が組織のカルチャーや「なぜこういう組織にしているか」をオリエンテーションみたいに話して、CFOが「うちの会社はお金をこうやって集めて、こうやって使って、残高がこれくらいです」ということを教えて、COOがビジネスについてオン・ボーディングするというもの。

それぞれ1時間半ずつ受け持って、あとは1on1をしっかりやっています。僕も入社3ヶ月目までのメンバーに、必ず毎月1on1をして、立ち上がりがどうか、ということを見るようにしています。

僕だけじゃなくて、各チームのメンバーの上司や先輩が、2週間に1回1on1をします。1on1でその人の状態を図って、問題があれば軌道修正してあげて、というのをがんばっているところです。

ジェームス:宮田さん、確かに1on1をずっと続けるので、けっこう有名ですよね。

(会場笑)

宮田:そんなことはないけど。

(会場笑)

みんなやり始めてもあまり続かないんですけど、うちはもう2年半くらいずっと1on1をやっていて、しっかり回せているかなとは思っています。

MTGしながら、みんなの位置を揃える

ジェームス:中川さんはどうですか?

中川:うちの場合は入口が狭いので、カルチャーが合わないことはまずほとんど起きないという感じですね。

ジェームス:確かに、あんなにスクリーニングしていると……。

中川:とはいえ、働くなかでいかに業務に溶け込んでいくか、という問題があります。そういった意味では1on1をちゃんとやりましょう、というところだったり。

あとは、実はうちの場合だと、自律的な組織をすごく大事にしているので、育成やメンタリングをすることが、マネージャーのような人の役割ではなくて、現場で一人ひとりのメンバーが支え合うことを第一にしているんですね。

なので、ちょっと前に入った人がメンターのように、業務がうまく回るように横について、いろいろサポートをしてあげたり、なにか困っていそうだったら、横にいる人がちゃんと話しかけて「こうやってツールを使うといいんだよ」とサポートするとか。

そういったところは、カルチャー全体として、むしろ誰かの役割というよりも、全社でちゃんとオン・ボードして巻き込んでいかなきゃいけないよね、という意識付けを重視している感じです。

ジェームス:Zehitomoは、どんなオン・ボーディングをしていますか?

ジョーダン:オン・ボーディングに関しては、最近、各チームが資料を作っています。いまの問題は、いろいろなことが早く動きすぎていて、オン・ボーディング自体が1ヶ月経つと意味がなくなること。ミーティングをしながらみんなの位置を揃えていきます。

昨日も新しく3人とオン・ボーディングしました。例えば最近エンジニアチームでは、そのチームで最初のプロダクトを一緒に作りました。あとは集まってきた資料とか、新しく入ってくるメンバーから「毎月オン・ボーディングがあったほうがいいねー」という話が出て、参加者を変えながら毎月改善しています。

パフォーマンスは、かなり厳しく見ています。やはりパフォーマンスが出ていないと、みんなのモチベーションにも響くと思うんですね。

パフォーマンスが出せていないと判断した時は、なるべくダイレクトにフィードバックをしています。社内で四半期に1回、OKRと目標設定のプロセスをやっているんですけど、フィードバックはトップダウンとボトムアップの両方をやっています。

「会社としてこういうことを達成したい」「合わせてチームとしてこういうことができる」という話です。数字や細かくなにをするのかは、社員各自が「会社やチームのミッションを達成するために、こういうことをしたほうがいい。私だったらこういうことをする」と、ボトムアップで設定してもらっています。

それを測るためのKey Resultもあって、みんながオーナーシップを持って目標達成に向けて取り組んでもらっています。

自分の目標は自分で設定したから、達成するためのマイルストーンや、どうすれば達成するかは自分でわかっている。もしくは、努力するやり方がわかっている、という状態です。達成してもしなくても、みんなに常に難しい目標を持ってもらっている状態です。

目標や進捗の管理は、毎週、15Fiveというもので見えるようにしています。OKRを設定してから、毎週自分の目標に向かって、どう進めたのか、どういうところが課題になっているのか確認できます。それを見て、上司やマネージャーや他の人がフィードバックできるプラットフォームです。

例えば、チームやプロジェクト内で誰かが足並みから外れた時は、みんなが混乱しないように、できるだけ早く目標ややることやアクションがバラバラにならないように、また考え方が合うように動いています。

どのチームもプロジェクトもかなりスピード感を重視して動いているので、たまに間違えることもあるのですが、間違えていること自体は問題ではないので、できるだけ早くいい方法を探したり、やり方を見直す機会にしていますね。

ジェームス:ありがとうございます。

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