2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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三浦崇宏氏(以下、三浦):次の渡邊さんはSmartHRですが、さっきのプレゼンで言わなかったことも、今日このあと言ってもらえるんですか?
渡邊順子氏(以下、渡邊):Mission / Vision / Valueのところはお伝えさせていただきます。
三浦:じゃあもうぜひ一発目で。
渡邊:Mission / Valueをちょうど今、絶賛変えているところでして。
三浦:今ちょうど変えているところなんですね。
渡邊:そうなんです。プロのコピーライターさんにお願いして。
三浦:僕もプロですよ。
渡邊:あっ……。
(会場笑)
三浦:冗談冗談(笑)。
渡邊:最初のMission / Vision / Valueができたのは今から2年半前、創業のときだったので、最初は外の方にお願いするのはすごく抵抗がありました。
三浦:そのときの社員数は何人くらいだったんですか?
渡邊:社長と副社長と、その後に入社予定の4人で作ったものですね。そのMission / Vision / Valueに惹かれて入る社員も多くて、みんなが2年半そういう思いでやってきたものを、いきなり外からやってきたライターさんに何がわかるんだろう、というふうに思っていて。
三浦:「コピーライターがなんぼのもんじゃい」というような。
渡邊:すみません、そうですね(苦笑)。
三浦:僕らはそういうところから入っているんですよ。
渡邊:コピーライターさんにお願いしたかったことは、言葉尻や繊細な表現が外にどう思われるかなど、言葉の磨き方はやっぱりプロの方に頼るべきところかな、と思いながら、今やっているところですね。
三浦:(コピーライターは)言われてパッと(言葉が)出るというふうに、けっこう誤解されてしまうんですが、みなさんの話を聞いて、さっき佐渡島さんと話していたように、ある種の触媒みたいな機能になるんじゃないかなと思っていて。ちなみに、渡邊さんのSmartHRでは最終的にまだ決まっていないという状況なんですか?
渡邊:まだ決まっていなくて、9月の中頃に完成している予定です。
三浦:じゃあ今はまだ準備中ということですね。今日の議論が何か少しでも役に立てばと思います。CRAZYさんとfreeeさんは、社内で全部内製されたんですよね?
小守由希子氏(以下、小守)・辻本祐佳氏(以下、辻本):(頷き)
三浦:SmartHRのみ、我々のようなプロのクリエイティブの人間に外注してやった、というところで。自社でやることを意思決定した理由はなんだったんですか?
小守:決めた理由としては、今回は、もともと経営者だった森山の言葉、森山のビジョンだったものを、全員のビジョンにする、というのを意思決定しているので、社員全員の言葉を集めて、抽出して、抽象度を上げて作っていく。そういう作り方で意思決定しました。
三浦:大変でした?
小守:すごく非効率な方法をとったんです(笑)。
三浦:でも、非効率であることが大事だったりするんですが……どのへんが大変だったんですか?
小守:まず「90名全員のビジョンを聞く」ということで、社長の時間を相当投下したんですね。具体的に言うと10名、5名1セットで、2時間という時間の中でちょっとご飯を食べたり、気持ちのいい場所に行ったりして、みんなで話し合いをする時間を、9日間作ったんですよ。9日間そこに拘束されるところと、みんなの思いを集めていく作業は、かなり難易度が高くて、時間を使っていましたね。
三浦:でも、僕らが会社を作っているなかで言うと、そういう非効率なことが意外と大事だと思うときはないですか?
佐渡島庸平氏(以下、佐渡島):そうですね。非効率というよりも、そっちのほうが逆に効率がいいというか。結局1on1のほうが情報が伝わりやすかったりするから。
三浦:儀式というか、こういったある種のイベントがないと本気で考えないというか。その一見非効率に見える時間が、ものすごくロイヤリティや熱狂を生むこともあると思っていて。社内でやってもいいし、外部の方にお願いすることも、ある種、その豊かな時間に投資している部分もあると思うんですよね。実際、社内の反響としては、freeeの辻本ジャーマネはどうでしたか?
辻本:うちの場合は、最後にちょっとコピーライターさんにお願いもしたんですけれども……。
三浦:そうだよね。freeeの佐々木社長は、もともと博報堂の出身ですよね。
辻本:そうなんです。社長が最初に入った会社が博報堂さんなんです。我々の場合は、いろいろ議論して、最後にコピーライターさんに、「こういう感じのエッセンスを込めた言葉にしたいです」というところで入っていただいたので、それが伝わる温度感が難しかったですね。
三浦:難しかった。途中まで社内で集めてきた熱意をプロのコピーライターに説明したり、真空包装してお渡しするのが難しいときはありますよね。
辻本:そうなんですよね。なので、むしろ最初から入っていただいたほうが良かったのかもしれません。それこそ触媒のようなかたちで、「こういうのはどうですか」「こうですか」「でも、これは違うな」というときに、なぜそれが違うのかという(ことを考える)ので、我々の考えがより深まる。そういうことで、最終的に言葉を決めていったんです。
最初から(コピーライターさんを)入れなかったのは、最初はみんなで「必要だね。すぐ作り始めよう」となったからです。うちの会社のもともとの価値基準のなかに、アウトプット→思考というのがあって。
それは単なるアウトプット思考とはちょっと違っています。まずアウトプットしてから考えて改善していこう、というものなんですね。それがもともとある価値基準でもあるのでけっこう浸透していて、「ちょっと作ってみよう」ということで動き出したときには、まだコピーライターさんを入れるという話にはならなかったという。
三浦:なるほど。ちょうど、(小守氏が)100%内製型、(辻本氏が)折衷型、(渡邊氏が)外注型みたいな(笑)。外注型の意思決定をした理由はなんだったんですか?
渡邊:まず一人ひとりの思いを反映させたい、という思いはあったんですけれども、やっぱりCRAZYさんがすごいなと思ったのは、そのヒアリングに割く時間がとてつもなく大変だなと思っていて。
今は、スタートアップならではと思うのですが、直面している課題を優先したかったのと、例えば私がみんなの意見を整理するとして、私の思いが影響してしまわないかとか。そういったこともすべてお任せしようと思ったのと、事業が成長して合わなくなってきて、とにかく早く変えたかったんです……。
三浦:とにかく早く変えたかった(笑)。
渡邊:そうなんです。早く、ちゃっちゃとやってくれるプロ……(笑)。
三浦:とにかく早く変えたかったというのは……割とこういうのは時間をかけて作ったほうがいい部分があると思っていて。いわゆる「頼まれて作る側の人間」から言うと、「最初から最後までだいたいできたので、最後の言葉にする部分だけお願いします」と言われたら、たぶんうちの会社だったら受けないんですよ。
たぶん、作る側としては、最初から最後までやる、というふうにやりたい気持ちがあって。その「急に作りたかった」というのは、どういうことなんですか?
渡邊:そもそものきっかけとなったのは、サービスのスローガンがなかったんですね。そこで私がやりたいと言って、同じ時期に社長が「価値観もそろそろ変えたい」というところで、全部コピーライターさんにお願いする形をとりました。
三浦:なるほど。実際、渡邊さんが今その作業の対面にやっているという。
渡邊:そうですね。
三浦:楽しいですか?
渡邊:楽しいです。
三浦:なにが大変?
渡邊:大変なことはそんなにないですね。ただ、今従業員が60人くらいになったことから、ヒアリングの日程調整マシンみたいになっているので、そこだけです。コピーライターさんのヒアリングを経て、結果だけ聞くんですけど、みんなの思いや目指しているところが同じで何だかうれしいですね。
三浦:そうか、ヒアリングとか。これは僕の個人的な興味なんですが、freeeさんとSmartHRさんはプロを選ばれるときに、どういう基準でその方を選んだんですか?
渡邊:正直、明確に「ここがいい」という基準はそんなになくて、いくつか会社さんにお話を聞いて、やり方をおうかがいしたんですけれども、型がほとんど同じだったんですね。
佐渡島:どんな感じの型なんですか?
渡邊:まずヒアリングをして、グループワークをして、マネージャー以上のメンバーで揉んで、ブラッシュアップするフローがほとんど一緒でした。メンバーも言葉にはかなりこだわるので、揉むところをしっかりやれば、結果は同じかなと思って。そんなにこだわりはないです(笑)。
三浦:そんなに気を遣わなくていいですよ。どこでも一緒だなと思ったんですよね。
渡邊:速いところに。
三浦:速さと価格。牛丼じゃねえかよ(笑)。
(一同笑)
渡邊:Valueの中に「速いほうがカッコイイ」というのがあるので大事にしました(笑)。
三浦:なるほど。「速いほうがカッコイイ」。これは良い言葉ですね。freeeの(場合は、どういう基準でコピーライターを選んだんですか)……。
辻本:そうですね……。
三浦:社長の知り合い? 博報堂時代の同期?
辻本:広報の人間の知り合い。
三浦:(笑)。なるほど。やっぱり「誰がいい」というふうにはあんまり選ばれない部分があるんですね。
辻本:そこはそうですね。ずっと並走してくれる人がいたらいいとは思いますが、もともと見つけられているわけではないので、そのとき、「じゃあどうする?」となると難しいなとは感じましたね。
三浦:佐渡島さんは、ご本人がどうしてもクリエイターなので、言語化というところに割と長けているじゃないですか。「どこを目指すんだっけ?」と言ったときに、言葉が決まるとみんなの意思決定が早くなるというか。
僕は自分の立場から言うと、ありとあらゆる企業の経営者に、そのすべてのワーディング、言語化していくためのファンクション、パートナーが必要だと思うし、そういう仕事をけっこうしているんですけれども、佐渡島さんは、今でもそういうことが必要だと思うときはありますか?
佐渡島:というか、絶対に必要ですね。だから、僕は自分の本を出すときも編集者をつけているし。
三浦:そうですよね。
佐渡島:箕輪(厚介)くんにやってもらったし。あと、この前『コルクラボ』という僕がやっているコミュニティのコピーを作ったんですよ。
三浦:そうなんですか。
佐渡島:そう。そのコピーも6ヶ月くらいかけて作って、ラボの中に電通のコピーライターがいたので、CRAZYと同じ感じで、彼がラボにいた100人から、「みんなはどんなコピーが良いか」「どういう場にしたいのか」というのを全部聞いて、さらにその人たちで集まって会議をして、200案くらい作ってくれたんですよ。
三浦:なるほど。
佐渡島:200案くらい作ったものを、みんなで投票して50案くらいにまで絞って。50案くらいに絞ったところから、僕と話し合って10案くらいに絞って、またそこから10案を50案くらいにまで増やして作ったんですよ。
三浦:また散らしたわけですね。その10案から見つけられた本質とはなんだろう、というようなところから。
佐渡島:そうですね。それで僕がコルクラボのコピーを、『あなたが、もっとあなたになる。』にしたんですよ。
そうしたら、その電通の人がまた10案くらい出してきたんですよ。せっかく1案にしたのに(笑)。
三浦:ようやく決まったと思ったら(笑)。
佐渡島:それで、「何がダメなのか」と聞いたら、『あなたが、もっとあなたになる。』の“もっと”というところには、今のあなたは不十分だという意味が含まれると。
三浦:うんうん。
佐渡島:たしかにそうなんですよ。でも、基本の概念は良いと思うから、これを軸に考えようと言って。例えば、「『あなたが好きな、あなたになる。』だったらどう?」と聞いたら「それならOKです」と言われて(笑)。
それで、ラボのコピーが「あなたが好きな、あなたになる。」に(決まりました)。ラボに集まっている人たちには、けっこう挑戦したりする人たちが多くて、その人たちに承認されて、自分も挑戦をする中で、自分が自分のことを好きになれるという。
そういう居場所をつくるコミュニティだということが伝わるようになって。その“もっと”という言葉の中に否定系が入っている、というのは、本当にコピーライターならではの繊細な気付きだなと思いました。
結局、そのレベルで言葉の届く距離を考える、というのは概念としてはかなり似ているんだけれど、ほんのちょっとだけ郵便物を隣の部屋に入れちゃったような感じ。
三浦:それは大事故ですからね。
佐渡島:そう。抽象概念でもそれが起きるんだ、という。
三浦:もしかしたら今日聞きにきてくださっている方々の中には、(Mission / Vision / Valueを)決めようとしている方や考えていらっしゃる方もいるかもしれないですが、すごくわかりやすい基準として、社員、内部の人間の行動の基準としてそれが機能するか、というのが1つ。
もう1つは、3社とも外部のBtoBサービスですが、お客さんあるいは採用希望者が、他の会社ではなく、その会社を選ぶ基準になっているかどうか。最後に、経営者の意思決定の基準になり得るか。この3つが機能するかは、ミッションのわかりやすい基準として、僕はよくご提案させていただいています。
ちなみに、たぶんそんなに時間もない中、せっかく前にいらっしゃっている御三方の中で、逆に佐渡島さんや僕に聞きたいことがもしあれば……何かありますか? 割とむりやりマイクを渡しましたけれど(笑)。
小守:Mission / Vision / Valueという中で、(これらを)作る中でも、今私たちは浸透(させること)をとても頑張っているんですね。実際に作る側だったり、クリエイターとして言葉を磨いていくという観点から、それを浸透させる上で心がけることがあれば、ぜひおうかがいしたいなと思います。
三浦:ありがとうございます。僕から先に言うと、僕はクライアントさんとそうしたプロジェクトをやるときには、浸透まで含めて1つのパッケージだと思っているんですね。それは、具体的には社員にワークショップをやるというようなことも含めるんですが、すごくシンプルなのは、評価基準に組み込むということですね。単純に、心に届けているかどうかで社内の評価が決まるとか。
例えば「世界で一番人生を祝う」ということであれば、それを具体的な行動に落としたときに、どういう評価基準になるかを経営レイヤーとHRレイヤーで考えると、割とスピーディーになっていくというか。
褒める・褒めないということ以上に、単純に社内の評価としてフィードバックすると、行動に移っていくという。あとは、意外と重要なのがメディア発信だったりしていて。佐渡島さんはよく「俺の本や俺のブログを社員が読んでくれない」と嘆いていますよね?
佐渡島:嘆いているというか、言っている。
三浦:あれ、なんでですか? いつも……もう見慣れてしまっているんですかね。
佐渡島:そう。あのね、知っていると思っているんだよね。
三浦:でも、さっき言ったとおり、佐渡島さんも常に進化しているから、本当はリアルタイムで受け取ってほしい、という部分はありますよね。
佐渡島:そう。でも、結局その人次第で、社員が「変わりたい」と思うかどうかだから。今日、さっき三浦くんはGOの社員が(来て)いない、と言っていたけれど、来ていたもんね。共同代表? とか言っていたけれど。
三浦:でも、あれは見に来たんじゃなくて、佐渡島さんに挨拶に来たんですけどね。
佐渡島:それと同じ感じで、今日ここにコルクの社員はいないけれど、コルクラボのメンバーはいるんですよ。コルクラボのメンバーはしょっちゅう会うから、情報が常にアップデートされていますね。
三浦:「相手が変わりたいかどうかだから」という、この突き放し具合が佐渡島ですね。佐渡島の佐渡はサドの佐渡と。
佐渡島:(笑)。
三浦:結局、何が言いたいかと言うと、経営者の発信はすごく大事で、意外と佐渡島さんクラスのリーダーになるとあれですが……。基本的には社長がメディアに出たものや、社長が外で語ったことは、PRという外のパブリックだけれど、実はインターナルのリレーションにもすごく有効なんじゃないかなと思っています。
やっぱり、そこでも広報の機能が大事かなと思っています。なので、評価機能とPRの2つがわかりやすく利くんじゃないかな、とよくクライアントさんにお話ししています。佐渡島さん、どうですか?
佐渡島:圧倒的に賛成です。今、評価制度に組み込むと言っていたように、うちは3年くらい前に一緒に作ってもらって、2年前くらいから運用し始めました。そして、この4、5ヶ月かけて、その行動指針を評価制度に落とすものを、リンモチ(株式会社リンクアンドモチベーション)と一緒に作っています。すごく時間をかけて同社と議論をしているから。
小守:それは、その行動指針の360度評価みたいな感じなんですか?
佐渡島:360度評価ではなくて、そもそもの評価制度の中に入れていて。うちは360度評価を使っていなくて、評価基準を作る中で、すべて入れ込むという。
三浦:さっき抽象と具体を行き来する、という話がありましたが、あらゆる抽象概念は行動に微分できるので、その行動のチェックリストというかルーツを仕込んでいくと、割と速められるかな、という気はしますね。
小守:ありがとうございます。ぜひ実践したいと思います。
三浦:お役に立てば。何かありますか? なければないでぜんぜん。
辻本:もう少しだけお聞きしたいのが、我々も今カルチャーを新しく作って、もちろんそれも評価基準などに入れていこうとはしているんですが、入れるのに時間がかかりますよね。その間は、どうされているのかなと。全部評価基準に入れてからみんなに公開、ということになったりするんですかね。
三浦:それはけっこう……。
佐渡島:順番だよね。
三浦:順番。ブランドがあって、そのあとに……例えば佐渡島さんの場合は、運用してから新たな評価基準を改めて設定しているし、僕の場合は何回かこういうのをやっている上で、浸透フェーズにアイディアや制度がある程度整理されていないと、結果機能しないよねという失敗も何回か経験しているので、今はそれもパッケージにして提案していますね。
辻本:ありがとうございます。
渡邊:SmartHRは評価にはすでに組み込まれています。
三浦:Smart”HR”ですもんね。
(一同笑)
渡邊:はい(笑)。そこを採用の面談でもお伝えしていて、「Valueにマッチする行動ができればお給料は上がりやすい。逆にそういう行動が少ないと評価も低くなるから、やめたほうがいいよ」と言っています。
三浦:そうですよね。ありがとうございます。という感じで、時間ですか?
司会:大変名残惜しいのですが、パネルディスカッションは以上で終了とさせていただきたいと思います。このあと懇親会を予定しておりますが、みなさん、大丈夫ですかね。本当は会場からの質問を受けてもよかったんですが、ここが大変盛り上がったので、個別の質問はぜひ直接いただければと思っております。5名にもう一度大きな拍手をお願いいたします。
(会場拍手)
三浦・佐渡島:ありがとうございました。
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