2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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三浦崇宏氏(以下、三浦):(コルクの3つの行動指針の一つである「さらけだす」のように)ものすごくシンプルで、なおかつ開いてゆくというか、コミュニケーションのきっかけになっていく。そういう、言葉にしたほうがいいことが、絶対にあって。
あと一個面白いのが、Misson Vision Valueのようなブランドの骨幹があると、本当にいろんなスピードが早まるんですよ。さっき佐渡島さんが、採用面談で、「この人はちょっとさらけださせなさそうだから、違うかもしれないな」というようなことがあると言ったように、実際に社員のみなさんもこういう言葉があると、変わる部分があるんじゃないかなと思っていて。
僕は博報堂に10年いたんですが、博報堂には「生活者発想」というすごくシンプルな言葉が一つある。これは、もともと電通がメディアに対する支配力がものすごくあって、普通に戦ったらぼろぼろに負けてしまうところを、僕たちはメデイアよりも生活者、エンドユーザーのことを考えているので、いい広告、いいマーケティングができますよ、というところからかなり差別化戦略の中で生まれたスローガンなんですよ。
でも、これが(博報堂の中に)めちゃめちゃ浸透していて、僕が社内のビジネスプランコンテストの審査員をしたときに、エントリーシート700通ぐらいきたなかで、90パーセントが生活者発想でベンチャービジネスを考えたというような、「生活者発想で考えるとこうなる」ということが書いてあって。
1個のスローガンなり、ブランドビジョンなりが、ありとあらゆる意思決定、アイデア開発に役立っているというのは、めちゃくちゃコスパがいいなと思いましたね。
佐渡島庸平氏(以下、佐渡島):でもそれって、講談社(の基本理念)は「おもしろくて、ためになる」だから、『ドラゴン桜』も『宇宙兄弟』も、「おもしろくて、ためになる」ので、そういう社員が使い続けたいものを考えることがめちゃくちゃ重要で。
三浦:そこがけっこうかっこつけすぎたりとか。ぼくは「言葉の手触り」とよく言っていて、「これちょっと手触りが硬いんですよね」「ちょっとふにゃってしていますよね」というようなことの繰り返しで、言葉の硬度、硬さ軟らかさを決めていくということが、最後の微調整ではけっこう重要になりましたね。
実際、これを決めて、コルクの現場のみなさんはけっこう変わった部分はありますか?
佐渡島:人って変化することが超難しいんですよ。というか、人は「変化しろ」って言われると基本的に抵抗をする。もともといるメンバーに、今まではMissonやValueはなかったのに、こういうふうになったと言うと、すごく反発するんだけれど、それを言っていて新しく入ってくる人間はそれをすごく理解して入ってくる。
三浦:(MissionやVisionを)わかって入ってくる。基準もありますから。
佐渡島:そう。それで、その人たちが社内でその言葉を使うと、言葉って伝染するんですよ。それを策定したあとから入ってきたメンバーが半分を超えてくると、その言葉が全員に浸透していって、変わりだす。
だから組織で面白いなと思うのが、もとからいるメンバーのほうが僕とコミュニケーションをとっているから早く変わると思いきや、新しいメンバーの影響を受けてからメンバーが変わる順番になっていくという。
三浦:過去のメンバーは、過去の佐渡島さんとずっとコミュニケーションをとってきたから、ということがあるのかもしれないですね。
未来に基準を置いてから入ってきたメンバーのほうが、たぶんスピーディーだし、その未来の基準っていうのは、結局言葉でしか表現されないっていう部分がありますよね。今日はそういうようなことを話していくんですけれども。
佐渡島:これ、何分まであるの?
三浦:僕もタイムキーパーをずっと探していたんですが、これは何分まで?
佐渡島:あと5分だからちょうどだ。
三浦:奇跡的に、いいですね。
佐渡島:じゃあこの流れで。三浦くんの会社のMissonとValueは何なの?
三浦:僕は本当に一個だけで、「すべての挑戦と変化を支援する」。
佐渡島:支援する人なんだね。
三浦:そうですね。すべての挑戦と変化を支援するためには、当然自分たちも挑戦し変化していないと、信頼されないっていう部分でやっていますけれども、今時点では企業さんからきているものをそれが挑戦か変化を促すものかどうかだけでぜんぶ判断しているし、そこにコミットしている。
佐渡島:なるほど。
三浦:だからけっこう、博報堂時代と(比べて)今独立して何が一番いいのかって言われると、いろいろいいことがある。それを言うと、まず僕が博報堂を辞めるときに一番背中を押してくれたのが、佐渡島さんです。ちょっとこれはもう別の話なんですが。
そのときに、辞めてよかったところは、ちょっと給料が上がったとか、こういうところでお話をさせていただく機会が増えたとか、仲間・いいメンバーが(増えた)とか、いろいろなんですが、一番はお客さんがいいです。
僕らのサイトを見ると、最初に「挑戦と変化を応援するぞー」って、でっかく書いてあるし、ぼくもいろんなところで「挑戦と変化しか興味がないんです」って言っているので、クライアントさんが本当に挑戦し変化をしたい人しか……。
佐渡島:来ない。
三浦:来ないんですよ。
佐渡島:博報堂のときだと、博報堂と付き合っているお客さんに三浦くんが合わせないといけなかったけれど、今だったら、三浦くんの会社にお客さんが合わせてくるから、どんどんやりやすくなるよね。
三浦:そうそう。正直、最初のお話をさせていただいたときに、僕らって相当面倒くさいですよ、と。変わるとかチャレンジすることに本当にコミットするので、僕はよくきらきら系ブラック企業って言っているんですけれども、遅くまで楽しく働くかわりに、ある程度お付き合いいただきますよ、というような。
さっと流して、きれいに広告を作って、いい感じで打ち上げしたいだけなら、電通さんや博報堂さんといった大手がありますので、というようにお断りさせていただくことが今けっこうある。
だから独立して、世の中がAIとかブロックチェーンとか、あるいは働き方改革とかいろいろ変わらなきゃって気持ちがすごくある中で、クライアントさんも今……例えば経営者、新規市場部のほうで変わりたいと思う方がわざわざ僕らを探して、連絡をくださるので、それは非常にいいアウトプットに繋がっているなと思っています。
佐渡島:いいね。もう起業して3年?
三浦:今2期目ですね。
佐渡島:2期目はいつ終わるの?
三浦:2期目が12月に終わります。2017年の1月5日に資本金55万円で立ち上げて。
佐渡島:すごい勢いで成長したね。
三浦:でも、お客さんがスタートアップが多いので。
佐渡島:スタートアップが多いの?
三浦:スタートアップが4割、わりと大きいクライアントさんが6割くらいですね。
佐渡島:すごいね。もう社員20~30人いる?
三浦:ぜんぜんいないですよ。3人で始めて、今11人。それで9月、10月に1人ずつ増えるくらいです。
佐渡島:オフィスは2回ぐらい引っ越ししていなかったっけ?
三浦:引っ越しの雰囲気を出しているだけで、ぜんぜん引っ越せていなくて。3人でオフィスの4階で始めたんですが、そこに5階と7階を足して3フロアを持っているだけです。それで一応、年末ぐらいに引っ越せそうな。物件を探すのが大変じゃないですか。会社の引っ越しって大変ですよね。
佐渡島:引っ越し、大変だ。引っ越しの金額。
三浦:経営者の先輩後輩になっちゃったんですが。
(会場笑)
佐渡島:引っ越しの金額にがっくりくるよ。
三浦:そう。現金がめっちゃかかりますよね?
佐渡島:うん。
三浦:やっぱりそうなんですね。佐渡島さんはどうしたんですか? もう(貯金を)はたいたんですか、それともけっこう調達とかをしたんですか?
佐渡島:なんにもしていない。
三浦:それまでの売上で?
佐渡島:そうそう。
三浦:コルクって今何期目ですか?
佐渡島:今、6期が今月(2018年8月)で終わる。
三浦:ああ。コルク創業期、進化期というようなフェーズってけっこうありましたか?
佐渡島:そう、だからさっきの契約書を作る時期。
三浦:これが1年半くらい?
佐渡島:そう。
三浦:これ、何人でした?
佐渡島:そのときは10人ぐらいかな。
三浦:でも、そのときから10人いらしたんですね。
佐渡島:そうだね、けっこうな勢いで。何をもって社員の人数というかなんだけど。初期はインターンにもたくさん来てもらっていたから、実はたぶんもっといっぱいいたんだよね。
三浦:また佐渡島さんは、(インターンを)つかいこなすんですよね。
佐渡島:いや、全然うまく指示を出していないというか。そのときは僕の考え方が経営者として全くなかったから。
三浦:スーパー編集者ですもんね、まずは。
佐渡島:僕にとってのいい環境が他人にとってもいい環境だろうと思っていたわけ。
三浦:わかる! 僕も最近会社の人にすごく怒られるんですよね。
佐渡島:だから、面接とかも(やらなくて)いいと。
三浦:やらなくていい!?
佐渡島:うん。なんとなくやればいいと。それで全員会社にいていいよと。そのかわり、なにも仕事を渡さないよと。お茶出しとかお客さんが来たときの対応で、気が利いている感じだったら、仕事がふられることがあるかもしれない。
三浦:単なる佐渡島さんと後輩の集まりみたいなものですね。
佐渡島:そう。それで、うまく動かなかったら1週間後、1ヶ月後とかに「なし」って言われます。
三浦:はいはい。もう帰っていいよ、来なくていいよと。
佐渡島:っていうか、「もう終わり」って言われるような。一切仕事がふられないで、「やる」ということがテストみたいな感じの仕組みでやっていたんです。
三浦:仕事をもらうより見つけられたり、1個1個の仕事に……そのときはまだ言語化されていなかったけれども、「心に届ける」という佐渡島さんの胸にあったビジョンと何か重なるところが発見できるかどうか、というような。言語化されない基準があったんでしょうね。
佐渡島:うん。それで、そのほかのメンバーとかも新しいインターンを放っておけばいいんだけれども……僕はもうぜんぜん放っといて自分の仕事をやったりできるんだけれども、そういう人が気になって世話をする人とかがいるわけ。
それで、そういうので大変だから、そういうふうにインターンを取らずに、しっかり選抜して欲しいって(メンバーが)言っていたら、(僕が)「気にしなくていいじゃん」と言って。
三浦:それは佐渡島理論ですよね。
佐渡島:そうそう。(そう)やっていたんだけど。
三浦:普通の人はそういうわけにはいかないですよね。目の前で仕事がない人がいたら「大丈夫?」って言ってしまうのが普通の人ですからね。
佐渡島:そう。だからそれはよくない仕組みだということについて、いろんな人から反対されたけれど、「そんなことを気にするのはおかしいんじゃない?」とか言って。
三浦:僕だって、佐渡島さんのコルクのブランドを作るときにけっこう(会社に)通っているんですよ。隔週で3ヶ月ぐらい伺って、本当に社員の何人の方と仲良くなって。
「佐渡島さんすごいんですが、私たち社員の気持ち分かってくれないんです」というような。
佐渡島:(笑)。
三浦:そういうことを僕も現場の人から聞くわけです。それは「佐渡島さんが遠くが見えすぎているから、ちょっと足元が見えないときがあるかもね」というような話をしていました。
佐渡島:そう。でもね、今は社員にも共感してもらえる制度にしていますね。
三浦:佐渡島さん自身がその経営者として……経営者にとって、社員ってある意味顧客じゃないですか。
経営者にとって、社員を大事にすることも、実はクライアントを大事にするのと同じぐらいマネジメントの対象で、たぶん佐渡島さん自身も社員の方とのコミュニケーションの中で、心に届けているかどうかが、たぶん1個の基準になっていて、思考や行動が変わっているんじゃないかなという気がします。
佐渡島:うん、そう。結局、初めに僕が考えていたことは、エージェントという仕組みがないから、それを作って、僕がエージェントをするのを、メンバーのみんなに支えてもらおうと思っていたんだけれども、もう今は僕がみんながエージェントとして活躍するための仕組みを作る。
だからMissonやValueを創るというのは、僕が3年前に経営者になろうと思ったということです。
三浦:はいはい。スーパー編集者から経営者に進化したタイミングで、スーパー編集者である佐渡島のヴィジョンを共有するための言語としてMisson、Vision、Valueが必要になったということかもしれませんね。
佐渡島:うん。だからMisson、Value、Visionとかが必要じゃないということがありえるのかって気がしますよね。前回、それが議題だったって言うんだけど、経営をするときに初めにやることっていうか。
もちろん、そのあとに資金であったり、いくつか経営者がやらなきゃいけないことはあるけれども、初めにやらなければならないことがMisson Valueというか。
三浦:まずMissonとしてどこを目指しているのかを決めるだけでも、会社がどこまで遠くにいけるかの一つの道筋になりますもんね。
三浦:という感じでちょうど、完璧なタイムマネジメントでいった前半、進行できたんじゃないでしょうか。
佐渡島:あと1分。
三浦:あと1分ありましたね。質問を聞いてみましょうか?
佐渡島:どうぞどうぞ。
三浦:質問がある人がいらっしゃったらお願いします。最前列の先輩、お願いします。
佐渡島:(質問を)聞いて終わるかんじですね(笑)。
三浦:即答しましょう。即答。
質問者:三浦さん、佐渡島さんありがとうございました。さきほど3つの「さらけだす」「やりすぎる」「まきこむ」の中で、「やりすぎる」のところについて、具体的にどんなところがやりすぎるになるのかなと思って。
佐渡島:結局、クリエイター、作家がものを作るときって、圧倒的にこだわるんですよ。例えば、小山宙哉がほかの人と何が違うのかと言ったら……第一稿はほかのクリエイターと一緒かもしれないけれども、最終稿が別物なんですよ。その間に2回直して世に出す人と5回直して世に出す人で、結局は全然違うんです。
だから、自分が「終わりだ、でき上がった」と思ったところから一歩、二歩(先へ)行ったものだけが世で評価されているのがコンテンツの世界なので、それを日常的にやる。例えば、誰かのサプライズパーティーをするときに、その人が知らないレストランに呼んで「おめでとう」って言うことは、知らない、知らせていないパーティーなわけですよ。
三浦:あることはありますよね。サプライズってなんだよ、というような(笑)。
佐渡島:そう。それを驚いて腰を抜かすようなものにして初めて、本当のサプライズパーティーでしょう、という考え方ができるようにするということですね。
三浦:佐渡島さんは、例えば物販のプロダクトにしてみても、ある1個のプロダクトを買って、初速で反応してくれた人だけにそれと対になるもう1個のプロダクトの連絡がいくというような。これって、工夫としてはものすごくやりすぎているというか。
ただ1個売って、もう1回メルマガを送ればいいだけの話を仕組みにしている。コルクでは作家が表現をやりすぎるのと同じくらい、プロダクト販売に関してもやりすぎるということが、ビジネス化されているということだったりする。
僕らの世界でも、「企画が決まってからが企画だからね」とよく言うんですよ。最初に1個、例えばケンドリック・ラマーが来たから、政治的な文章を黒塗りにしようという企画がパッと決まる。
そのあとに、じゃあそれってどれくらいリアルな紙を貼ったほうがいいのか、それともめちゃめちゃいい照明を当てて写真で貼ったほうがいいのか、霞ヶ関と永田町とどこの看板に貼れば一番人が見るんだっけ、というように、1個1個緻密に積み重ねるかで、人の心に届くかが決まる。そういうところは、たぶん、表現者もビジネスパーソンも広告屋もみんな一緒だと思います。
質問者:ありがとうございました。
三浦:ありがとうございました。
佐渡島:どうもありがとうございます。
(会場拍手)
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