2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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堀江愛利氏(以下、堀江):例えば、プレゼンをいろいろ見てきて、話が伝わるということと、心に残るプレゼンというのはまた違うと思うんですよ。何が一番(の心に残る)要素になりますか?
澤円氏(以下、澤):やっぱり、その人がどのくらい真剣に生きているかが、伝わるか伝わらないかですよね。一番響くのがその人の失敗談だったり、すごく悔しい思いだったりします。それが作られた言葉じゃなくて、その人の言葉として出てきた時はグッときます。
日本でスタートアップを立ち上げている連中に、何社かメンタリングをさせてもらっているんですけど、やっぱりクレイジーなんですよ。どこかおかしいんです。どこかおかしいし、場合によっては絶対に笑われるんですよ。だけど、そいつらは真剣なんですよね。1つ、おもしろい会社があるんですよ。いくつかあるな。どの変態がいいかな。
(会場笑)
澤:フェアリー720(ナナ・ニ・マル)だったかな。あのフェアリー。「妖精をつくりたい」と真剣に考えているスタートアップがいるんです。妖精ですよ、妖精。
(彼らが)何を考えたかというと、最初は柱を3本立てて、紐をそこに通して、そこになにかぶらさげて、指向性の(ある)マイクを付けて。それに喋りかけると、紐についたものが喋ったほうにビュンッビュンッと来るというホーンカップをつくって、「これ、……妖精?」と聞いたら「妖精です!」
(会場笑)
澤:「いいけど……。妖精かぁ……」。かたちというか、恰好はボールだったんですけど、マイクとカメラがついているのかな。呼ぶと、すっごいスピードでがんっと(こっちに)来るんです。
堀江:はっはっは(笑)! 怖いですね!
澤:「いや、まだプロトタイプなんで」とか言うんですよ。「なんでこれつくるの?」と聞いたら、「だって、妖精が肩に乗る生活とか素敵じゃないですか」という答えで、もう返す言葉がないんですよ。
(会場笑)
澤:まあーー素敵だよね……。ちなみに本気で真剣にやってた。(それは)元自衛官のすっごいごっつい男2人で真剣につくっていて、しばらく経って、また会いに行ったら「ちょっと進化したんですよ!」と言って、スマートフォンになっていて、もっと危なくなってた。
(会場笑)
澤:ただ、動きはちょっと緩やかになっていました。たぶん、それをやっているうちに技術が進んでくると、ホログラフィックで表現できるようになってきたり、何かデバイスをかけることによって、(表現の幅を)広げたりできるようになる。
それは、やっぱり真剣なんですよね。それによってハッピーになる人間が、世の中にたくさんいるはずだと本気で考えてる。どこかで変わるかもしれないけれど、それを言われると、こっちとしては応援せざるを得ないんですよね。
「こいつら、本気でアホだな」とは思うんだけど、それだけ時間を突っ込んでやっていると、やっぱりこちらも真面目に聞きますからね。
堀江:なるほどね。私もおもしろい話、1つしていいですか?
澤:してして!
堀江:Shit Mapというものがあるんです。
澤:何?
堀江:シエット。
澤:シエット?
堀江:……うんち。
澤:だよね(笑)。
堀江:シエットマップというものがあって。サンフランシスコにはホームレスがすごく多くて、そういった人たちが路上にしてしまうんですよ。それをぜんぶ、リアルタイムで、どこにそういうものがあるかというアプリを作ろうとしているんです。「そんな無駄なこと……」と思うでしょ。それが、マップができると、だんだんブラウンになるわけですよね。
(会場笑)
澤:ブラウン……リアリティーだな(笑)。
堀江:この角は行っちゃいけないとか。本来はツアーリストのために作られたんですけど、自分の持ち家とそのブラウンが近くなると「家の価値が下がるのでやめてくれ」という話が出て、ついには脅しまで入ってきたんです。
でも、いかにホームレスが困っているかということもすごくリアルに見えるので、今度は街のほうがそれをベースにして、クリーナーを出すんですよ。くだらないアイデアだと思ったところがリアルになったことで、「解決しないと」と思う人が現われたり、それですごく困っている人が浮き彫りになったんです。
だから、「自分のアイデアはバカだな」とか「笑われる」と思っていても、やってみるとそこからピボットというか、いろんなアイデアが出てくるので、おもしろい話だなと思ったんです。
澤:結局、それは誰かが行動したから、そうなったということだもんね。
堀江:そうですね。
澤:おもしろい。
澤:ちなみにスライド、どれか使いましょうか。
堀江:そうですね、今のシリコンバレーの状況ということでは、どれにしましょう。じゃあこっちに。シリコンバレー……。シリコンバレーはおもしろいところではあるんですけど、みなさん、「How are we innovating?」
イノベーションというのは、3、4年前はアクセラレーターというものが世界中で360件ありました。今の時点では、もう580件です。
コーポレートイノベーションというところでの動きが3倍になり、そのうち、Fortune 500のトップ100の会社自体が41パーセント。そのなかの会社が自分たちのCVC(Corporate Venture Capital)を持つような動きになっています。
R&D(Research&Development)の額もどんどん上がっているんですが、今までやってきたことのモアをやっているだけなんです。でも、イノベーションは、イノベーションのやり方をまたイノベートしていかないといけない、と私は思っています。
その視点でこういったデータを見ると、モアだけではやっていけない。そういう意味では、今のシリコンバレーの現状は、(スライドを指して)これ、サバ缶なんですけど、サバ缶を開けると似たような魚がきちっと入っていますよね。
実はシリコンバレーというのは、イノベーションといいながら、私はサバ缶みたいだと思っています。
なぜかというと、(スライドを指して)これは実はテック関係のカンファレンスの写真です。男性のトイレの前に男性が並んでいて、女性のところには誰もいない。普通、デパートとかに行くと、わりと女性の方に列ができていたりするんですよね。
これが何かというと、「イノベーション=男性によってイノベーションされている」ケースがすごく多い。そう見たときに、このやり方をもっとやって、イノベートになるんだろうかと感じました。イノベートはもちろん向上するとは思うんですけど、もっともっとできるんじゃないか、という思いもあったんです。
澤:あとは、モアというのは、0を1にすることではなくて、1に何かを足していく作業ですよね。0を1にするのが一番パワーを必要とします。最初の引っ掛かりがない状態なので、本当にこれは苦しいんですよね。
それを乗り越えた人たちは、本当にイノベーターとして評価されることになると思うんですけど、ただ、それの偏りがアメリカですらこれだけあるということなんだよね。
堀江:そうですね。
堀江:男女は変わらないんじゃないかという話もあるんですが、(スライドを指して)実際にこの2つの脳があるんですけど、どっちが男性のものだと思いますか? 色がついているのであれですけど。私も(専門が)サイエンスじゃないので説明はよくできないんですけれど、脳は実際のパターンが違うんです。
女性は左脳と右脳を行ったり来たりして、細かいことや、いろんな小さいことをコネクションしては、何が実際に起こっているのかを察知できる。その分、その先の大きなビジョンを語るよりは、目の前のことをきちっとしていくというアプローチがあります。
男性が女性より劣っているとか、女性が男性より(優れている)とかいう話ではなくて、まずは「違いがある」ということです。
(スライドを指して)これはアメリカのgrocery storeなんですけど、なんの棚だと思いますか?
シャンプーです。シャンプーはいろんな種類があるんですが、女性に「シャンプーを選んでください、どういう内容で選びますか」というと、色だったり香りだったり、オーガニックだったりとかいろいろあるんですけど、男性に聞くとこうなります。
(会場笑)
堀江:「It says shampoo.」(笑)。これは大げさな話です。
(会場笑)
澤:でも、だいたいわかりますね。
堀江:シャンプーはどうやって決めてますか?
澤:僕、その辺の女性がぜんぜんかなわないくらい、すごくシャンプーのこだわりがありますよ。今は同じものをずっと使っているんですけど、「最終的にどうなりたいのか」といういろんなパラメーターセットがかなりあるんです。
なぜこんなにべらべら喋りはじめたかというと、実は僕は女性脳なんですよ。僕は、ちょっと女性的な考え方をする癖がついているんです。僕は「まどか」という名前なんですよね。野郎ばっかりの3兄弟の末っ子で、「おまえは、女の子になるはずだったんだ」と、ずーっと言われながら育ったんですよ。ピアノをずっとやっていて、運動神経が鈍くて、おまけに今、この長髪です。
そうすると、「女性ならどう考えるのかな」と思う癖がつくんですよ。ものの見方や考え方がすごく女性的になってきたので、わりと女性が言っていることがスッとわかるんですけど、これ、男性はほとんどわからないと思っていただいてけっこうです。なので、愛利さんとも女性的な観点というのでシンパシーがあるんですね。
堀江:そうですね。だから女性でも男性的な(部分を持っていたり)、さっきお見せしたように、ブラック&ホワイトじゃなくて、女性でもmasculine stlye(男性的なスタイル)というのがあるんですけれども。
堀江:(スライドを指して)これなんですけど、「True Innovation?? 93パーセント」、なんのナンバーだと思いますか? シリコンバレーのベンチャーキャピタルの93パーセントが男性なんです。
澤: あーーーー。
堀江:93パーセント。例えば、みなさんがスタートアップをされていて、ピッチに行くたびに女性ばかりだったら異様だと思いませんか? 今は男性社会というのは当たり前だと思っているから、カンファレンスに行くと男性ばかり。ピッチに行くと男性ばかりとか、審査員も男性陣という状態に、すごく慣れちゃってるんです。
それがまったく逆で、みなさんが行く先々ですべて女性ばっかりだったら、異様だと感じると思うんですよね。もう慣れてしまってわからなくなっている。イノベーションというのは、「これでいいんだろうか」と問いかけながら、いろんな視野で議論しながら見つけていくものだと思うんです。次に、94パーセント。
澤:あー、ちょっと上がったぞ。
堀江:上がりましたね。これは、そういうベンチャーキャピタルのファンドの94パーセントが男性の起業家に行っているナンバーです。
澤:はあーーーー。
堀江:女性には、わずか6パーセントしか行っていません。実際に女性起業家の比率が、全体の中で少ないということもあると思うんです。でも、現在そうだということは、こうやって数字で見るとなかなか衝撃的じゃないかと思います。(スライドを指して)こういうシリコンバレーのドラマがありますよね。見たことある人?
(会場挙手)
堀江:「Do not Repeat same mistake Silicon Valley made.」シリコンバレーで失敗したことを、みなさんが繰り返さないように。これは何かというと、システムの問題もあるんですけれど、エンジニアはどうしても男性が多い。
そのままのエコシステムを持ってきてしまっているので、女性が入るというところがどうしても欠けてしまう。そうすると、結局、 Brain drain(頭脳の流出)じゃないですけど、だんだん男性的な文化になって、実は今、いろんなトップの人がシリコンバレーを出ていっています。ご存知ですか?
澤:ふーん。
堀江:ピーター・ティールさんとか。
澤:あー、そうですね。うん。
堀江:そういった方々が、あまりにHierarchy(階層的)になりすぎてしまったんです。最初は「みんなでがんばろう!」みたいなことがあってよかったんですけど、人間のあれですかね? パワーとInfuluence(影響力)とお金が入ってくると、どんどん……こうなってきてしまう。
澤:硬直化してしまう。
堀江:上の人の意見を聞いて、「あの人が正しい」と思い込みはじめたり、例えば「シリコンバレーが正しい」と思い込み過ぎたり。男性だけではなく、いろんな人種かもしれないし。そういった現状があるので、そういう意味ではBrotopia(ブロトピア=bro(男性同士の呼びかけ言葉)+utopia)をまた作らない、ということは、1つの課題じゃないかなと思います。
澤:たぶん、1周回ったんですよね。日本はずーっと男性社会で、男性がすべてのカルチャーや理屈を作っている。あと日本の場合、もう一つ厄介なのが、前にちょっとお話したと思うんですけど、正解がある前提でものを考える癖がついていると思うんですよね。
日本には、正解は1つだという神話みたいなものがあるんです。例えば、これは良く出てくるんですけど、国語のテストで物語を読み、太郎がこうこうこうしました、この時の太郎の気持ちを述べよ、って「知るかい!」という話なんですよね。
堀江:はっはっはっはっは!
澤:俺、太郎じゃないもん! という話なんだけど、なんとびっくりすることに、それに正解があるんですよ。ある事象になった時に太郎がどう考えたか。その太郎に自分がなったとしても、感じ方は全員違うはずじゃないですか。
だけど「こう思うはずである」というものが正解として存在する前提になっているんです。これは僕からすると異常だなと思っているんですけど、それが教育でまかり通っているんですよね。
堀江:そういう意味では、美術のクラスでもそうだったような気がします。
澤:そうですね。
堀江:わりときれいな絵というか、選ばれる子が同じだったりする。小学校の時から、「私の絵は全然ダメなんだ」と思い込んじゃいましたね。
澤:うんうん。この間、その話でかみさんがすごく怒ってしまったんですけど、ある人のお嬢ちゃんが何かの課題の時に風景を描いて、人を入れろと言われたのかな。どうしても人を入れる気にならなくて、一部分だけクローズアップして絵を描いたらしいんですね。
そうしたら、(その子の)お母さんが幼稚園で、それを貼らないでくれと頼んだらしいんですよ。要するに、オーダーされた絵と違うことを描いているから、恥ずかしいから外してくれとお母さんが言った、というのを聞いて、かみさんがえらい怒ったんです。
澤氏の奥様:(課題の)人間が入っていなかった。
澤:「人間を入れろ」という課題を満たしていないから。先生は貼っていたんですけど、お母さんが「課題をちゃんと満たしてないから、恥ずかしいから剥がしてください」と言った。これなんかは絶対に正解がある。
絵なんてぶっちゃけ、どう描いたっていいじゃないですか。だけど、そういうものが蔓延してしまっていることが、日本の閉塞感を生んでるのかなと思ったけれど、ある意味においては、結局シリコンバレーも同じだったんですね。
堀江:だから、気を付けないといけないですよね。イノベーションというのは、常に正しいと言われていることに対しての問いかけですよね。「本当にそうか?」という。そういう意味では、イノベーターの仕事ですし、宿命ですし、自分でできたと思っても、できたと思ってはいけない。チャレンジしかないですよね。
澤:正解はないから、ずっとチャレンジし続けなければいけないという、ある種の宿命みたいなものを背負っている感じなんですかね。
堀江:そうですね。
堀江:どういうふうにチャレンジされてますか?
澤:そうなんですよ。最近、「もしかしたら自分はチャレンジしてないんじゃないか」という危機感が、常にあるんですよね。はっきり言っちゃうと、会社は別に辞める理由がないのでいるだけなんですよ。
(会場笑)
澤:大丈夫かな。そうかといって、うちの会社は今、変革期になっているので、めちゃくちゃおもしろいんですね。いるだけでどんどん変化していて、それに対してなるべく先頭でキャッチアップしていこうと思っているので、それは1つのチャレンジとしておもしろいと思っています。
あとは、既存の制度をなるべく無視したかたちで働いてやろうじゃないかというチャレンジをしています。それから、なるべく多くの人に対して貢献するというふうにやっていて、会社の仕事がだいたい6割くらいで、4割は外の仕事をすることに決めているんです。その4割の中で、なるべく多くの人たちを助けに行きます。
例えばいろんな地域に行ったり、スタートアップを支援したりして、自分の時間を使っていかに投資をして、いかに多くの人を成功させるかということにチャレンジしています。
だけど、やると必ずサンキューが返ってくるし、快適なんです。「これはまずいな」と最近思っていて、もしかしたらチャレンジが甘いんじゃないかなと思うんですね。コンフォートゾーンに入っているんじゃないかなと、今、疑心暗鬼になっている状態です。
堀江:危機感を持って。
澤:危機感を持って。それで、もっと難しい課題を、と思っているんですけれど、わりとさくっと成功する場合もあるんです。もしかしたら、失敗しても失敗と思わないくらい鈍くなっているのか、それともイージーなターゲットしかやっていないのか、それを常に問いかけているような状態ですね。
「俺、チャレンジしているぜ、がんばってるぜ」と言うつもりは毛頭ないです。何もしてないとは言わないけれど、もっと大きいチャレンジがあるのではないかと思っているのも事実ですね。
堀江:「チャレンジしてるかな」という自分の問いかけの中に、失敗する数とか、周りから「がんばってるね」と言われることによって感じることなのか、どの辺でそのバロメーターを持ってらっしゃいます?
澤:わりとそのバロメーターは、自分が一番大きいです。自分が自分に対して一番Self-critical(自己批判的)じゃなきゃいけないとずっと思っているので、一応、「自分で課しているバーが一番高い」と信じて行動はしています。ただし、フィードバックというのは、なるべく多くの人から得ようと思っているんです。
それもあって、女性のすごい起業家の方たちと仲良くしたいなと思ったんです。まったく違う視点から(意見を)言ってもらえるし、僕、男性のマウンティングはだいたい跳ね返しちゃうんです。ほとんど聞く耳を持たないんですよ。
堀江:男性のマウンティング。
澤:そう、言ってるだけでカッコ悪いでしょ。でも、するんですよ。してくるんですよ。それはもうはじき飛ばせると思っているから、参考にならないんです。だから、まったく違う女性の観点からフィードバックが欲しいというのは、飢えて言っているのかもしれないですね。
堀江:なるほどね。
堀江:よく「日本の会議は無駄じゃないか」と聞かれるんです。「なんで目標もないままミーティングに入って出てくるんだ」とアメリカ人に聞かれるんですけど、どう思われますか?
澤:その話をすると4時間くらいかかります。
(会場笑)
堀江:ミーティングの後で話があったりして、会議の中では決まらない。なぜ日本人はあんな無駄なことをするのかと。
澤:まず、これは僕がいろんなところで、働き方改革の話をするときに、例で出していることがあるんですけど、僕のところに、ビジネスインターンで日本の企業から若手の28歳の人が来ていたんです。1年間、交代で毎年一人ずつ来ていたんですけど、最初に来た人が、衝撃の言葉を僕に言ったんです。
うちの会社(Microsoft)は外国人がいっぱいいて、わあーと盛り上がって会話するので、ミーティングでもわりとみんな発言するわけです。(彼が)「みんな発言するんですね」と言って、だって会議だもんと思ったんだけど、「僕、会議で何かが決まるのを初めて見ました」と言ったんです。何言ってんのこいつ、と思ったんだけど、本当なんですよ。
「(会議で)何か決まることがあるのを、僕、初めて知ったんです」。28歳だから、社会人5年目ですね。「いつも会議で何してるの?」と聞いたら、「その会議のオーナーである一番偉い人の話を、最初から最後まで聞いているのが会議だ」と言うんですよ。それは会議ではなくて講義だ、と教えてあげたんですけど。
「でも、言ってることがわからないことあるでしょ、どうするの?」
「終わった後で聞きます」
「なんで? わからないんだったら、その場で聞いた方が、その場にいる人で共有できるからいいじゃん」
「いや、その場でそんな質問をすると、会議の進行を妨げるんじゃない! って怒られます」
と言うんですね。
すべてが予定調和になっていて、そこのなかで、最初から最後まで時間を使うことが目的になっていて、何かを決めるとか意見をぶつけ合うということは、要するに怖いんですよ。何か否定されるのではないかと思われるのが怖い。そうすると、上の人の話は黙って聞いている。
「歯向かおうものなら自分の立場がなくなる」と下は思うし、上の人間は「上の人間で、自分のことなんか否定するんじゃないぞ、絶対」という態度で臨むので、それでは意見なんて出るわけないですよね。
終わった後にみんなで「やれやれ」。いろんなものが居酒屋とタバコ部屋で決まるんですよね。だから、仕事が終わった後がえらい長い。
澤:今日、受付で入館証を配ってくれていた彼は、日本企業出身なんです。僕のところにインターンに来てくれているんですけど、「やっぱりすごくカルチャーギャップがある」と言っていて。19時以降になると、ようやく落ち着いて仕事ができるんですって。
堀江:え? どうしてですか?
澤:それまでの時間は、やらなきゃいけない予定調和の会議がすごく多くて、それでつぶされちゃうから、その後に作業の時間が割ける。ようやく会議ができるとか、そんなことを言っていました。
さらに、それが終わった後に22時くらいからまた飲みに行ったりするみたいなんです。(自分の)人生を過ごす暇がなくなっちゃうんじゃないの、と思うんですが、それはかなり一般的なのは事実ですね。
堀江:そうですね。シリコンバレーの……というか、「起業家とはこうあるべき」というのが自然にあるんです。プレッシャーの中で何をするかは、とにかく毎日答えが正しいか、正しくないか、わからなくても決断しなくてはならない。決断しないことも決断なんですよね。
ずるずる引きずることによって、会議じゃないですけど、(決断を)しないことでロスがあるという切羽詰まった中でよく言われていたのが、「起業で3年間相当のものを3ヶ月でする」ということです。
それがどんどん短くなって、プレッシャーの中でやっていると、だんだん自分の中でストレスが麻痺してきて、何がストレスかわからなくなってしまう。そういう意味では、日本の方もそのプレッシャーの中で、「ストレスが溜まっている」と言えない中でやっているというのは、すごく思いますね。
澤:だから、どうしても思考停止してしまって、「ルールに従っていればいいや」ということになってしまうんです。決められているルールに従っていればとりあえずOK、という考え方になってしまうのも1つ、今の閉塞感を生んでいるところなのかなという気がしますね。
堀江:そうですね。
澤:いったんここでブレイクに入りたいと思います。ということで、愛利さん、ありがとうございました。
堀江:ありがとうございました。
(会場拍手)
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