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成長するCtoCマーケットの展望(全4記事)

「月額有料はよくないのでは?」 スマホ向けサービスのビジネスモデルについてメルカリ山田進太郎氏らが語る

個人間売買が手軽にできる利便性から今注目を浴びるCtoCのマーケットプレイス型のサービス。当セッションでは、その代表企業であるBaixing.com・Jian Shuo Wang氏、ジモティー・加藤貴博氏、ブラケット・光本勇介氏、メルカリ・山田進太郎氏の経営者4名が集い、CtoCマーケットの可能性と、各社の戦略について意見が交わされました。

誰でも使えるプロダクトに洗練させる

田中章雄氏(以下、田中):皆さんがやっていることは今までなかったカテゴリー・サービスだと思います。クラシファイド自体日本でそんなに流行っているものではないので、新カテゴリーというものを考えたとき、皆さんは自分たちのプラットフォームを含めて、どうやって集客しているのですか? こういうことをやらないと新しいサービスは世の中に広まらない、という体験談があれば苦労話を含め聞きたいです。

山田さん、テレビは力技なので10億円くらい調達して、お金ばら撒けばできると思いますが、テレビ以外で集客を考えたときにどういう工夫をしていますか?

山田進太郎氏(以下、山田):プロダクトが非常に重要だと思うので、出品にしても購入にしても、誰がやっても迷わずいけるという、プロダクトを洗練させることがまずは第一だと思っています。実際に起こっているのは、大体今1インストールあればどれくらいの人が購入してくれる、出品してくれる、どれくらいのアープが出るというのが分かってきています。

今は手数料を取っていないので、売上ゼロという会社なんですけれど、でも、将来的な利益が得られるか、LTV(ライフタイムバリュー)はどれくらいあるのかなど計算しているのですが、ほぼ同じような結果がどのチャンネルについても言えるので、まずはそういうプロダクトをつくることが重要だと思います。

失敗しなければ正解は見つからない

田中:光本さん、どうですか? 基本的には他力本願で集客が出来る人たちと組むのか、それとも独自に集客で考えていることがあれば教えてください。

光本勇介氏(以下、光本):まだ正直なところ答えが見つけられていません。私たちのサービスは誰でも簡単にオンラインストアが持てるというサービスです。

例えば楽天さん。10年、15年ビジネスされていて、今保有されているストアの数、4万店舗くらいだと思います。色々な形でお金を使われてマーケティングされている中でそれくらいの数。

私たちは、個人単位に対してもたくさんオンラインストアを提供していきたい。同じことをしても、私たちが希望する数は稼げないと思いますので、どんな違ったことをしたらいいのだろう、というのを日々試しまくっているという感じですね。

例えば、先ほどお見せしたように、パッケージ商品みたいなものをつくってオフラインの店舗で売りまくってみるとか。本当に失敗もたくさんしていますが、失敗しなければ正解は見つからないと思っているので、色んな手法をやりまくっている現状です。

田中:加藤さん、どうでしょう。日本人に「クラシファイド」と言っても、加藤さんがターゲットにしているような、年配でITリテラシーが低い人に言ってもわからないと思うのですが、どうやって広げているのですか?

加藤貴博氏(以下、加藤):クラシファイドというアプローチでは難しいと思いました。

田中:たぶんグーグルとかヤフーで「クラシファイド」と検索する人はいないですよね。

加藤:はい。「掲示板」のほうが親和性が高いので、クラシファイドと名乗ることを最初に捨てて。最初の頃は、社員みんなで「友人何人に声を掛けられるかゲーム」という人海戦術から始まりました(笑)。大学で現役大学生に出品してよって声掛けて、「気持ちわる!」と言われたこともありました。

そういうところから始まって、山田さんがおっしゃっていた通り、プロダクトを使って満足していただいた方がリピーターとして累積していかないと、お金がかかってしょうがない。マーケティングコストをずっとかけるわけにはいかないので、リピーターを積み上げるのが1番重要だと感じています。

リピーターが出来る理由は、「使って良かった」とか成功体験がある人だと思っています。マッチングをどれだけ埋めるかというのが、成長のドライバーだと感じます。

相場より100万円以上安く中古車を売れるワケ

田中:今話していたのは、どうやってこれらプラットフォームを世に広めるかということです。これらは皆新しい試みなので、知ってもらうためにはどうしたらいいか。中国でのあなたの経験をお話していただけますか。

Jian Shuo Wang氏(以下、Jian Shuo):1番の鍵は口コミですね。言うのは簡単ですが、口コミを得ることは……。

田中:TVCMは中国で流していますか?

Jian Shuo:私たちはTVCMはやっていません。料金をいただいているのは全体の5%以下、それ以外は自然にサイトに入ってきた利用者です。つまり、私たちのサイトの内容がとても優れているという意味だと考えています。

半分以上の車がアメリカドルで1万ドル以上相場より安い。全体で見てもすべての車がアメリカドルで5000ドルは安い。ディーラーも扱っていないような安い車を扱うことが出来るのは私たちだけです。

田中:どうしてあなたのサイトではそんなに安く車を購入することができるのでしょうか? 中国では日本やアメリカよりも車の値段が高いと理解していますが。

Jian Shuo:その通りです。新車は日本の値段より高いです。これには実はからくりがあります。誰も新車を欲しがらないので、ディーラーも新車を在庫で置きたくない。新車の市場がないのです。私たちのサイトだけが車を購入するルートになるのです。

中国での仕事を取ってみましょう。80%以上の仕事は600アメリカドル以下の収入にしかなりません。それこそ百姓の給料しか得ることが出来ません(笑)。

つまり、人々の収入が少ないので新車の商業的な市場がない。そこで無料で中古車の売買が出来る場所をつくってあげたので、自然に人が集まったのでしょう。

田中:ありがとうございます。

プロダクトの改善点について

田中:今回の話の中で4人に共通していたのが、シンプルに簡単にすることが大事だという話でした。でも、まだまだ皆さんのサービスはもっと簡単になっていくのではないかと思いますが、簡単さは皆さんがつくられているサービスのコアコンピテンスとしてどれくらい重要なんでしょうか?

ある程度簡単にしてしまえば、あとはバシバシTV広告を打てばいい話なのか、今のこの現状からどれくらい追求しなくてはいけないのか、皆さんどう考えているのか教えていただきたいと思います。それでは、2分でつくられたって嘘っぽいんで(笑)、STORES.jpの体験からお願いします。今の状況よりもっと簡単になりますか?

光本:まだまだ簡単に出来るポイントはあると思います。ただ、簡単にすれば自分たちのビジネスやサービスが成長できるとは思いません。

マーケティングやプロモーションの話にもつながりますが、今までは個人が簡単にオンラインストアをつくれるというカテゴリーや市場自体が無かったと思うんです。

なので、成長していくためには、まずは個人でも簡単にオンラインストアがつくれるということ自体を自分たちで頑張って啓蒙していかないといけないかなと。それで理解してもらえたらやっと市場がつくられていく、やっと市場が形成されて、自分たちの成長にもつながるのだと思います。その啓蒙が大変なところなので、それを今頑張っています。

田中:山田さんはどう思います。もう行き着くとこまで行ってしまいましたか?

山田:いや全然……。今やっていることはディベロッパーを含めたプロダクトの人間が、ひたすら改善しているという状況です。これは終わりの見えないことだと考えています。

まだまだ出来ることは山ほどあるし、それをやることで、よりリテンションが上がることによってLTVも上がっていくと思うので、ある程度ティッピング・ポイントは超えているとは思いますが、まだまだ全然足りないという感じで考えています。

田中:今だと写真を撮って、項目が4つ5つくらいありますよね。あれもまだシンプルに出来る余地がある?

山田:はい。出来ると思います。例えばeBayはバーコードで撮ればそのままその電化製品とかの情報がばっと入るみたいな会社を買収とかしていて。

田中:コンテンツを勝手に入れてくれる?

山田:そうですね。そういうことも出来ると思いますし、過去の傾向からプリセットしてあげるとか、そういうことも出来るかもしれないですし。あらゆることが出来ると思っています。

田中:ありがとうございます。

クラシファイド広告のポテンシャル

田中:この市場は行き着くところはどれくらいの規模感なのか? 山田さんは世界征服的な、アマゾン超えるみたいな話をしていましたが(笑)、実際に今のビジネスモデルで突き進んだときに、どれくらいの市場規模か皆さんにお聞きしたいです。

加藤さん、無料で日本中の高齢者にものを取引してもらうサイトのビジネスは将来的にどれくらい大きくなるものだと考えていますか。ポテンシャルとして、現状はともかく。

加藤:無料のものだけでどれくらいのポテンシャル、という考え方はしていません。僕らが目指しているライフサポート、生活を支えるようなプラットフォームという考え方でいくと、3千万人、4千万人、日本の人口で考えると利用率で25%、30%を目指したいと考えています。

月間のMAUとしてですが。これはCraigslistの対人口の利用率だったりとか、イグラスのGumtreeの利用率とか、クラシファイドサイトがどれくらい人口に対する需要性があるかということですね。

田中:アメリカだとクラシファイドサービス、Craigslistとかどれくらい成長しているのですか。

加藤:Craigslistは聞く範囲だと3億に対して6千万人扱っているので20%ということになりますね。

田中:アメリカ全人口の20%?

加藤:はい。

田中:じゃあ、まだまだジモティーも伸びる余地があるわけですね。

加藤:まだまだ駆け出しでございます(笑)。

月額課金サービスはやめるべき

田中:山田さんはどうですか? 世界征服という話でしたが。

山田:そこまで大それた感じではないです(笑)。USの場合、日本の場合と色んなケースがあると思うのですけど、海外に比べて、日本はEC化率が非常に低い。もっとECが伸びてくる余地はあると思ってます。

なぜ伸びていなかったか考えると、アメリカや欧米はPC社会だと思うんです。PCを日常的に使っていて。Craigslistとかはまだモバイルのサイトすらないんですね。だからiPhoneで見てもすごい小さい。

田中:アンチ・モバイル的なスタンスなんですね。

山田:それでもそれだけ使われている。日本の場合は携帯社会というか、ガラケーウェブから始まっているので、スマホになることでようやく普通の人が普通にコンピュータを持つという時代が来たと思います。

しかもC to Cは人口密度が非常に重要だと思っていて、ようやくアプリで、みんながコンピュータを持って取引できる状態になったんじゃないかと。

田中:ガラケーの時代にモバオクが出てきたのと何が違うのですか。

山田:基本同じだと思いますよ。でも、ガラケーの限界みたいなものあるし。あと……これどうしようかな。

田中:いいですよ、言っちゃってください(笑)。

山田:言っちゃっていいですか? 僕、日本が良くないと思っているのは、有料化、月額有料サービスだと思っているんです。月額有料サービスにしているが故に、ユーザー層が広がらないというところが非常にあると思います。

田中:iモードの時代の弊害ですね、月額課金。

山田:ですので僕らのサービスは利用料無料でやっていて。

田中:カードの決済料も無料なんですっけ?

山田:今はそうです。なので、よりユーザー数を広げていこうと思ったら、月額有料サービスは絶対やるべきではないと思っています。他のコマースサイトさんは、月額有料なのでそんなに伸びなかったのではと思っています。

ブログも無料で開設できるからこそ広まった

田中:光本さんはどうでしょう?

光本:成長のポテンシャルについてですよね。僕たちはものすごいあると思っています。究極的には全人口が1人1個オンラインストアを持つ世界をつくりたいと思っていますので、本当に究極的ですが、ブログのオンラインストア版になりたいと思っています。

ブログが出来たときって、誰もこんなにたくさんの人がオンライン上で日記を書くなんて思ってもいなかった。こんなに普及するとは思っていなかった。でもこれだけ多くの方が毎日オンライン上で日記を書く、ブログのURLを持つカルチャーになった。

これはブログというサービスがブログ文化や市場をつくった結果だと思います。それと同じように私たちも、1人1個ブログを持つような感覚でオンラインストアを持つカルチャー・市場を頑張ってつくれればいいと思っています。

田中:ブログも無料のものがメインでなければここまで伸びていないですよね。

光本:そうですね。

田中:STORES.jpは将来的には無料版のほうが大きくなるポテンシャルがあるということですか?

光本:基本的には無料なので。一部希望される方からお金をいただいている、プレミアム会員になってお金をいただいていますが、基本的には無料で展開しています。

田中:山田さんに結構発想が近いですか? 無料のもので、誰でも使ってもらおうというのは。

光本:そうですね。ものすごく簡単に無料でまずはストアを開設していただきたいです。

流通額1.5兆円を誇るSquareのすごさ

田中:ストア数ではヤフーさん、楽天さん抜いていますが、取扱高で既存の巨大なプラットフォームに対抗できるボリュームまで持っていけるビジネスですか?

光本:これもまた成長のポテンシャル、ビジネスのポテンシャルの話をするといつも参考に見ているのがSquareのビジネスです。

アメリカでSquareというサービスが開始されて、感覚が似ていると思うんです。1人1個決済のデバイスを持つ。あのサービスは3年で3百万デバイスをアメリカ全土に配り、1.5兆円くらい流通しています。

もちろんビジネスの保有者もたくさんいるとは思いますが、個人の方でも簡単に決済が出来る。それが積み重なって、1.5兆くらい流通しているのであれば、オンラインストアだって個人の方が持って、1店舗1店舗の決済が少なくとも、合算すればそれなりの流通を生み出すことが出来る可能性があると思っています。

田中:可能性としては兆単位のトランザクションのポテンシャルが日本でもあるかもしれないですね。ありがとうございます。

田中:いかがですか。クラシファイドビジネスのポテンシャルはどのような点にあるとお考えですか。御社の元競合がアメリカで株式公開していますが。御社のような真のクラシファイドビジネスの中国での発展のポテンシャルは?

Jian Shuo Wang氏(以下、Jian Shuo):用途にポテンシャルがあると感じます。クラシファイドとはインフラだと思うのです。みんなが仕事を探したり、物を売ったりすることが出来るインフラです。電気無しの世界が想像できないのと同じように、コミュニケーション無しの世界もあり得ません。

どんな社会でもクラシファイドはインフラになり得ると思います。中国ではこの用途のポテンシャルには無限の可能性があります。用途にポテンシャルがあるのであれば、マネタイズのやり方も多くあるはず。つまり可能性は無限にあるはずです。

田中:ありがとうございました。

ユーザーとの乖離を見つける

田中:そろそろ時間になってきました。2つ、3つくらい質問を受けたいと思います。

質問者:僕もC to Cのサービスをやっているので非常に勉強になりました。創業期からこれまでを振り返って、1番鍵になった施策について教えてください。

山田:どれかひとつという感じではないですが、オールジャンルのフリマアプリを昨年の7月に出しました。タイミング的にはスマホの普及期と合ってタイミングが良かった。

田中:タイミング?

山田:タイミングですね。

田中:加藤さん。

加藤:いくつかの複合だとは思いますが、ユーザーに会ったりとか、インタビューしたり、そこは徹底的にやったほうがいいと思います。社内で出てくる機能開発の意見がユーザーとずれることがかなり多いんです。

どんどんリッチ化しようとすると、どんどん自分たちのユーザーと乖離していく、みたいなことが起こり得ます。

田中:自分たちのユーザーと会って、ギャップに気が付いたのはどれくらいですか?

加藤:スタートしてから半年くらいは、どこのユーザーがコアになるのかがぼんやりしていました。そのうちにヘビーユーズしている人の傾向がだんだん見えてくるので、そこを徹底的に攻めることはしました。

田中:なるべく早めにユーザー像をつかむ、ということでしょうか?

加藤:そうです。

常識に捉われないサービスをつくる

田中:では光本さん。

光本:今まで難しかったことを簡単にするということがひとつ。オンラインストアをつくることにすごくハードルがあったのを、ものすごく簡単にして提供したので多くの方に使っていただいています。

あとは非常識なことをたくさんする。例えば、今までは1つのオンラインストアで決済するのに1つのクレジットカード契約をする必要があったのに対し、私たちはそういった契約をなくして決済が出来るようにした。

あとは撮影を無料でしてあげてるとか、倉庫を無料で提供するとか。結果的にそれがフックになって、利用していただいている方もたくさん……。

田中:今、プラットフォーム上で複数の決済を1回ですることが出来るのですか。コンシューマーから見たときに。

光本:はい、そうです。

Jian shuo:私もシンプルにすることが大切だと思います。始めた当時、シンプルすぎると思い色々な機能をどんどん追加しました。すると今度は複雑になりすぎた。そこで初心に戻り、シンプルなものに戻し、そこからさらにシンプルを追求しました。シンプルにする度に、ユーザーは活発にサイトを利用し、アクセス数もアップしました。シンプルにすることが成功への鍵だと強く思います。

田中:ありがとうございます。僕も彼を昔から見てるので、一時期かなり高機能になってきたな、と思ったら最近また昔よりさらにシンプルになったので、簡単に持っていくというのは光本さんのコメントも、非常に大事だなと学びました。

これで今回のセッションを終了します。皆さん、ありがとうございました。

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