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第2部(全2記事)

「大企業が事業をパクっても同じ未来は作れない」DMM片桐社長が語る、スタートアップの強み

2018年3月29日、株式会社DMM.com本社オフィスにて、大手IT企業からスタートアップへとキャリアを進めた3人の経営メンバーとDMM片桐孝憲氏によるトークセッション「DMM.com片桐社長とU-25経営陣が語る『今スタートアップに行く理由』」が開催されました。モデレーターを根岸奈津美氏にバトンタッチした後半部のパートには、DMM.comの片桐社長が登壇。前半に引き続き、Lovegraph吉村創一朗氏、Graffity大野将希氏、Flamingo牟田吉昌氏も参加の上、それぞれのキャリアについてトークセッションが繰り広げられました。(写真提供:ラブグラフ)

スタートアップに興味がある大企業、学生、ネット系が3分の1ずつ来場

根岸奈津美氏(以下、根岸):後半のモデレーターをやらせてもらいます、グリーベンチャーズの根岸と申します。

今日はみなさんキャリア論で、「片桐さんの話を聞きたい」「なんで吹けば飛びそうな小さいベンチャーにあの3人行ってんだっけ?」などたぶん気になっていると思うので、自由にいろいろ聞いていきたいなと思っています。じゃあ、乾杯!

一同:乾杯!

根岸:早速ですが、前半で話してもらったGraffityとラブグラフとフラミンゴ、片桐さん知ってます?

片桐孝憲氏(以下、片桐):知ってますよ。

根岸:ありがとうございます。前半ではその3社のナンバー2のみなさんの経験や、事業の話をうかがったんですが、後半でキャリア論というところで事前にみなさんから質問を頂戴しました。

参加者のデモグラは、だいたい大企業でスタートアップに興味がある人が3分の1ぐらい。学生さんでたぶんスタートアップに興味がある人が3分の1ぐらい。あとはネット系。超どスタートアップじゃないけどネット系の企業にいらっしゃる方3分の1ぐらいです。

事前に質問を頂戴しているなかで、(スライドを指して)だいたいこの4つぐらいのテーマの質問(①スタートアップと大企業、どっちを選ぶべき?、②どんなチームで日々スタートアップをやっているの?、③自分のキャリアについてどう考えているの?、④今経営、プロダクトについて悩んでいることは?)が多かったので、この中から自由に選んで話していけたらいいなと思っています。

片桐:定義の問題なんですけど、スタートアップというのはどれぐらい? 例えばメルカリがスタートアップかという話あるじゃない? その定義をしっかりしましょう。

根岸:そうですね。登壇している3社がみんなシリーズBにいってないぐらいので、そのくらいのイメージはどうですか?

片桐:シリーズBって言われても俺もわからないですからね。

根岸:そうですよね。

(会場笑)

根岸:それでいうと、12ヶ月以内に結果出さないと会社がキャッシュアウトして死ぬって感じですね(笑)。

(一同笑)

インターン生がスタートアップに集まるのはなぜか

根岸:それぞれ社員何人ですか?

吉村創一朗氏(以下、吉村):今、副業合わせて30人ぐらいですね。

根岸:そんないる? ちょっと今盛った? 社員は10人です。

吉村:10人ぐらいで、副業入れて20人。

片桐:なんで大きく見せるの?(笑)。

(会場笑)

吉村:いやいや、ライターの方も入れようということで(笑)。

片桐:嘘が一番よくないからね。

(会場笑)

吉村:嘘はついてないです。もちろん(笑)。

根岸:Graffityとフラミンゴはそれぞれ何人?

大野将希氏(以下、大野):Graffityは、正社員で今6名で、副業を合わせると15名ぐらいですね。

牟田吉昌氏(以下、牟田):そうですね。うちは正社員が8名で、インターン生を足すと20人ぐらいですね。

片桐:なんでインターン生が集まるの?

牟田:ビジョンに共感してくれたり、「仲間になりたいです!」みたいな感じで言ってくれて、もちろん本人のマインド、スキルセットなども加味した上で「じゃあこういうの困ってます、〇〇を一緒にやりましょう!」って言って、入ってくれていますね。

片桐:スタートアップを見ていると、インターン生がたくさんいるんだけど自分はインターン生をどうやって集めればいいのかよくわからないんだよね。なんでサービスや会社が有名ではないのにインターン生が集まるかを知りたい。(一同笑)

なんで集まるの?

牟田:なんでですかね? 僕らでいうと、外国人のサービスをやっているわけですから、自分の言葉を、「バイリンガルなので言葉のスキルを活かしたいです」みたいにうちも外国人のために事業やっているのでインターン生、コミュニティマネージャーでミートアップやってもらったり。たぶん、やりたいこととうちのビジョンみたいのが近くて親しみやすいのかなと思います。

片桐:ビジョンを語る機会はあまりないでしょ? サービス見て、勝手に来るわけでもない。ブログとかやっているの?

牟田:弊社は社長がかなりブログ書いてますね。

片桐:社長が書きまくったブログをインターン希望者が見に来るんだ?

牟田:そうですね。Twitterの活動を非常にしてます。ビジョンや事業についてなるべく多く世の中に発信しようとしているので、そうすると弊社に興味を持って下さる方が徐々に増えますね!

大企業は分業型、スタートアップはゼロから携われて成長できる

片桐:大企業とはどれぐらいの規模のことを言ってるの?

根岸:大企業は、リクルートや商社、あと上場しているネット系の企業を大企業と定義しています。

片桐:わかりました。

根岸:DMMも大企業だと思っています。そういう大企業とスタートアップの二項対立があるんですけど、そもそも「どっちを選ぶべき?」という質問があって、「その段階で迷っても困るんだけど……」みたいのがありながら。

片桐:おもしろいね。意見を聞かせてください。

吉村:そうですね。参加者の方のデモグラと今回のテーマを合わせて言うのであれば、僕はスタートアップだと思っています。

何が大事かはいろいろありますが、わかりやすく「成長」みたいなテーマで切り取るのであれば、LINEにいた時は社員が1,000人ぐらいいたのですが、1,000人の組織の1人の影響力と、10人の組織の1人としての影響力はぜんぜん違うと思っています。

例えば、LINEの場合、席の近くに執行役員の方がいたのですが、(一部の大企業)社長の顔を年に数回しか見ない会社で行われる意思や方向性の決定が、雲の上みたいな経営会議で執り行われていることに、自分たちは一切口も出せないし、なにが起こってるのかもわからない会社もあると思うんですよ。

一方でベンチャーみたいな会社、ここにいるような登壇している企業って、本当にフラットにすぐ近くにいるし、とくに大きな方向、戦略を描いて「10年でこう絶対なります」みたいなことがない中でいうと、社長が左に行きたいと言った瞬間に「本当に左でいいんですか?」「右じゃなくて大丈夫ですか?」みたいな問いを投げかけて、意思決定に自分たちが関われるという意味で、小さいほうがいいかなとは思っています。

そうは言いつつ、その会社の中で広い事業ドメインがあって、コンシューマー向けのプラットフォームやプロダクトを持っている会社さんでいうと、新規事業を若手が広くやっていく。LINEもそうだったんですけど、そういうところであれば別に大企業という定義に当てはまらなくても、面白いのかなって思っています。

根岸:吉村君。ちょっと長めなので(そろそろ終わらせて)。

吉村:あ、はい。

(会場笑)

片桐:いい話だった。

吉村:あ、いい話でした?

片桐:もうあと2〜3行でお願いします。

吉村:大企業は分業型。ベンチャーは0から100までやれる。成長する。以上。はい。という感じです。

片桐:おもしろかった。いや、めっちゃおもしろかった。

吉村:ありがとうございます。

何が正しいかはどういう問いを解きたいかによって変わってくる

大野:僕もGoogleにいて、環境も自由で、やりたいことに手をあげれば挑戦できる環境でした。

ただ1つ言うとすれば、やはりタイミングなのかなと思います。もともとやりたい思いがあって、ならいつやるかをキャリアとして考えたときに、例えばGoogleで3年後同じことをやり続けてなにができるかというところと、3年後、例えばスタートアップに行って成し遂げたことって、大きな差があると思います。

Googleでなにか3年やったあとになにか始めるよりも、それがやりたいって分かっているのであれば、今始めて、結果がどうであれ、挑戦したいという想いがあって決断しました。

片桐:2人ともキャリアがすごいんだね。LINE、Googleだもんね。

大野:そうです。

(会場笑)

すいません(笑)。

片桐:LINEみたいな超スーパー企業の感じと、スタートアップの今の感じが、すごくわかってるんだね。

大野:どうなんですか? 認識はしてるものの、それが正しいかどうかはまだちょっとわかりきってないのはありますね。

牟田:僕はどういう問いを解きたいかによって、だいぶ変わってくるなと思っています。例えば、前職がリクルートだったんですけど、「リクルートで何千万人のキャリアを変えたい」みたいな問いに対して、本当に「リクナビネクストを変えたいんだ。就活を変えたいんだ!」という方がいれば、その問いにたぶん立ち向かったほうがいいでしょうけど。

でも、それだけしかできなかったり、分業の話もあったと思うんですけど、リクルートキャリアの中のマーケティングで、例えばクラウドや管理者画面を作ることしかできなかったりするなかで、スタートアップは本当に自分たちの定義した問い、「僕はこの問いを解きたい」「僕らだったら外国人のために事業を作りたい」という問いに対して、自分たちがわからないことに毎日ぶつかっていく。

経営からオペレーションまで全部やらないといけないという、問いの数と内容が違ってくると思っていて、どっちを選びたいかだと思っています。

僕自身はリクルートに2年いたんですけど、大きな問いに対してもやりがいはあるものの、ワクワクが感がちょっと足りなかったのが正直ありました。だから外国人のために、僕自身も6年間中国に住んでいたので、そういう課題感もあって、「いや、ワクワクするな」が強くて、Flamingoでいろんな問いに対して経営からオペレーションまで解けることがすごいワクワクしましたし、そっちを選んだという感じですね。

片桐:すごいわ。

根岸:(笑)。

片桐:すごくいい。すごくいいね。

新しいリーダーシップは異なるものをまとめる能力

根岸:例えば、片桐さんはピクシブでしてきた採用や育成と、DMMでする採用や、育成って違うんですか?

片桐:ピクシブは基本的にはほぼほぼ1つの事業を100人から150人くらいで作っているから誰がどんな仕事しているのかとかよくわかったけど、DMMの場合は50近い事業を1000人とか2000人みたいな規模で開発・運営しているわけだから事業自体の細部・事業に関わる人を把握するというのがそもそも難しい。

話は変わるけど、普通の大企業だと、みんなが同じ事業やっているというか、同じ媒体の営業を50人・100人でやって、その中で勝っていくというのは受験勉強に近い。DMMに来て思ったのは、また別の能力が必要だと思った。競争させるというよりは、違う能力を持っている人たちをまとめて、1個のことを見て、「この問いを解こう」「この課題解決しよう」って話にしていかないとまとまらない。リーダーシップのあり方が違ってくるって思っています。

スタートアップのリーダーシップって、まったく違う人たちをちゃんと束ねて1個の課題を解決することだと思うのね。だから、そういうことをやりたいとか、やれるのであればスタートアップのほうがいいかもしれない。

スタートアップの新しいリーダー(に求められること)って、まったく違う人たちを束ねる能力。エンジニアの言語と、営業の人の言語って違うから、そういうのをお互い聞きながらまとめる能力が問われる時代になったと思います。質問とはだいぶ話変わったけど、今の話よくない?(笑)

(一同笑)

根岸:めっちゃいい。確かにそうですね。

自分と違う価値観を受け入れられるならスタートアップはやりやすい

根岸:問2「どんなチーム・組織でやってますか?」は、大企業だと同じ部門の人や毛色の揃った人と一緒に働くと思うんです。このあたりはどうなんだろう。 

片桐:「どんなチーム・組織で日々スタートアップやってるのか?」。

例えば、1個の事業でキーになる人材は、事業が大きくなってくると一緒になってくる。でも、本当にどっちに価値があるかはわからない。同じことを50人・100人でやっているような営業会社があって、そういうものの中でやっていくのか。誰かがリーダーとなって、その中で自分のパフォーマンスや個性を出しながら、その問題を解決していくかという話になるか、もしくはそれをまとめるか。

もし仕事相手が大企業だった場合は同じ職種の人たち、スタートアップの場合は違う職種の人たちとやらなきゃいけない。たぶんどっちが合うかなんですよね。自分が同じ職種の人たちだけで、そこの中で秀でていくのが得意だったら、そういう働き方もあるし、まったく違う個性や能力を認め合いながらながらやれるならば、やれるという。もちろん、大企業の中でもスタートアップっぽいところはありますよ。

根岸:はい。

片桐:だけど、簡単に言うと、そういう自分とまったく違う価値観、そういうものを受け入れられるんだったら、まとめられるんだったら、スタートアップはわかりやすいよね。

大企業が事業をパクってもスタートアップと同じ未来は作れない

根岸:そうですね。例えばDMMで新規事業やるのと、どスタートアップに行くのとで、実際働く人とかやり方って変わってくるものですか? 例えばDMMなどの大企業で一緒に事業をやると、ヒトも資本も揃っていてやりやすいものなのでしょうか?

片桐:それがわからなくて、新規事業を作る瞬間だけでいうと、スタートアップのど根性感、経営陣の理想とか思想みたいなのが大事。例えば僕がDMMで同じ事業を思いついて、「よーし! Lovegraphみたいのやっちゃおうかな〜!」みたいなことを思っても(ダメ)。

(一同笑)

極端に言うと社会問題や、社会に対する向き合い方、思想、そういう問題によって単純に同じようなことやっていても差異が出てしまう。

少なくとも会社から指示を出された その事業に興味ない担当者が、「Lovegraphっぽいもの」を作ってもやっぱりそこに思いがないと、人や金、開発力がある会社にいても難しいよね。思いがないと人もユーザーも巻き込めない。

しかも、「Lovegraphっぽいもの作ってよ」って言っても、今のLovegraphをパクるだけ。スタートアップのすごさって、「こういうのを作ってこの世界まで行きたいよね」ということがあるから、開発のここまで行きたいというスケジュールが頭の中にできている。それが真似ているだけだと自分たちには見えない。

だから今あるラブグラフを真似るだけで、思いや想像力がないと次の開発どうしていけばいいかわからなくなっちゃう。そういうことが起きる。大企業で新規事業が生まれづらくなるのって、そういうことだと思うのね。

根岸:なるほど。確かに。思想を強く持ちにくいですよね。なるほど。

片桐:もう1個は、大企業になってくると「19時で帰らなきゃいけない」といったことが起きてくる。

根岸:確かにそうですね。

片桐:そういうことを加味しながら新規事業を作らないといけないんだよ。

根岸:確かに。確かに(笑)。

スタートアップを見極めることはできない

根岸:次に、私の個人的な質問なんですけど、そもそも大企業かスタートアップかといって悩んでいる時点で、行きたいスタートアップが別に見つかってないのかなと思っています。

片桐:見つからないよ。どうやってスタートアップ見つけるんだよ(笑)。

根岸:見つからない。どうやって見つけたらいいですか?

片桐:リクナビ載ってないし。

(一同笑)

根岸:そうそう、リクナビ載っていないし。

片桐:もちろんネットコミュニティにいたら「あそこはイケてる」「イケてない」って声が聞こえてくるかもしれないけど、もしも「働きたい」「スタートアップ行きたいな」と思っても、普通に大企業に勤めていたらマジでわからない。

根岸:わからない。

片桐:ある意味、すごく簡単に言うと、雑草みたいのが生えていて。

(一同笑)

でも、ものすごい良い植物の可能性があるわけですよ。でも、そんなの見分けられますか? 山に行って、食べられる山菜と食べられない山菜がわかりますかという話です。それぐらい難しい。

それがわかったら、ベンチャーキャピタリスト全員が勝ちますよ。

根岸:そうですね。

片桐:そのぐらい難しい。だからスタートアップ選びは非常に難しい。

資格をとるのではなく、仕事はラーニングでやる

片桐:そうなるとどうするか。経営陣との相性でしかないと思います。仕事は上司との相性だから。そうなると、大企業の場合、人がたくさんいるから経営者と会って「この人、相性良さそう」と思っても一緒に働けない。

だけど、スタートアップの場合は、ほとんど目の前にいるからね。そこはわかりやすく経営者と会って、「この人の話わかるな」「話が合うな」「永遠にしゃべれるな」という基準で選べる。事業はわからないけど、この人と合うだけで選び方はいいと思うのね。

結局、自分のスキルや経験を、この会社で活かせそうとは思わないほうがいいと思う。仕事はラーニングだから。例えば自分に何かスキルや経験があるとして、会社に入って、それが直で活きるとは思わないんですよね。

仕事は勉強しながらその問題を解決するしかないから、どこかの企業でなにかを学んだとしても、それはどこかで活きるからそれはそれとして、今ある会社の課題を一緒に解決するほうが成長するよね。

根岸:そうですね。

片桐:例えば、スキルや経験で活かしたいということは、なにかの資格を取って「その資格で食っていきます」みたいになっちゃうじゃない?

根岸:はい。

片桐:そうじゃなくて、そういう場所で資格にはなってないけど、資格っぽいものを取りに行く気持ちでいったほうがいい仕事になりやすい。

根岸:うん。確かに。

片桐:りょかち、なんでここにいるの?

(一同笑)

りょかち氏(以下、りょかち):(笑)。

片桐:今なにをしてるの?

りょかち:観客代表として座らせてもらいました(笑)。

根岸:なにか突っ込んでもらったらいいかなと思って。

やりたいことがあって、仲間がいて、わくわくするならやるしかない

りょかち:では、なんで今の会社に入ったんですか? その雑草の中から見つけたというか、選んだ理由みたいのがあればお願いします。

牟田:そうですね、僕はそれこそ経営者と仲良いという話でいくと、うちの創業者の金村(容典)と大学からの友人で、初対面が3~4年前なんですよ。「僕、日本にいるの外国人が文化や語学などの壁でチャレンジ出来ないのを見て、彼らがチャレンジできるように世の中をもっとなめらかにしたい」みたいなことを会った時にまず言われました。

しかもなにもないんですよ。モックしかない時代ですよ。ファイナンスもしなかったし、誰もがそのアプリ(の需要)があるとかどうかもわかってなくて、「でも、僕は世界を変えられるって信じてる」という根拠のない自信と根性が顔に似合わずすごくありました。

気づくと、彼がそのミッションにぶつかって、ずっと前進していくなか、すこし表現が気持ち悪いんですけど、正直、惚れますよね。こんな直向きに同世代の友人ががんばっているのを見て、一緒に挑戦したくなるんですよ。

当時の自分の中ではリクルートに入ったほうが僕は成長できると思うんですね。でも、よくよく月イチでごはん行ったら「やばい。考えてる視点とか視座とかもどんどん正直遅れをとっているな」と思いました。イメージでいうと、僕はバルセロナのユースリーグにいるサッカー選手で、バルセロナに入るけどなかなか試合に出れていない、彼はブンデスリーガで武藤(嘉紀)みたいにゴールを決めまくってるみたいな。

ゴール決まってる快感が僕にはわからなくて、「でも、バルセロナにいる僕ってなんなんだろう?」「いつになったらメッシみたいに試合に出れるんだろう?」みたいな焦りはとても有りました。だいたい10年間、5年、早くて3年(と思った)。

焦りを感じているうちに彼はまた僕に「今度僕バイエルンのフォワードとしてゴール決めるわ」みたいなことを言ってくるんです。その不安があって、「僕もそこのミッションに共感してるのに、なぜこんなむずむずしてるんだろう?一緒に勝ちたい!」と気付きました。

その仲間がいて、実際やりたいミッションがあって、プロダクトはどうであれ、自分がそこに対してコミットができる。例え一日20時間働いてもぜんぜん苦じゃないことに向き合えてるとしたら幸せだと思って、まずは兼業を始めました。

その時は割と毎日夜遅くまで金村と一緒に2人で「今のアプリのここはどう思う?」「次の開発スプリントでどの機能からつけるべき??」「ユーザーに我々ならでは提供できる価値は何だろう?」。みたいなことをディスカッションしてて、気づけば深夜2、3時になっていたり(笑)

それが今思うとすごいワクワクしたりして。やりたいことをやれていて、ミッションに向き合っていることがとても幸せな事だなと思いました。なので、僕はタイミングというよりか、ワクワクしたことがあって、一緒にやりたい人がいて、ミッションもクリアで転職しましたって感じですね。

大野:めちゃめちゃいいジョインしたんですね(笑)。

次の時代の当たり前を作るためにジョインする

大野:僕も近いところがあって、もともと代表の森本(俊亨)との出会いが大学の時のサークルで、そこから5年ぐらいの仲なんです。森本も同じように「本気で10億人の生活を変えたいと思っている」と、会った当初から言っていました。年を重ねていくごとに、それがより確かな想いに変わっていってるのを感じていました。

もともと1個下という年齢ではあるものの、目指す志の高さが圧倒的に違うので、そこにすごい共感をして「こいつと一緒にやっていったらなんでもできそうだな」と感じたというのがありますね。

学生の時に1回起業していて、コミュニケーションチャットボットで、よりパーソナリティされたチャットボットを作っていたんですけれども、仮説を1回やってみたけど違うなというので、いったんここは解散しようと。

僕はGoogleに行って、そこから森本が人工知能の研究をしようというのでテクノロジーのほうに進んでいってって、再営業みたいな感じで、「もう1回、10億人(の生活を変えることを)本気で目指したいよね」という思いがあって、ジョインを決めた背景がありますね。だからけっこう近いかもしれないですね。

吉村:僕がLINEにいた時はコンシューマー向けのプラットフォームの上でなにが起きてて、今、どういう時代なのかをすごくセンシティブにリアルタイムで感じることができました。自分は2回ぐらい創業期のスタートアップにというかスタートアップを作ったことがあって。

次に何をするかと思ったときに、絶対に自分ができないことしたいなと思ったこと。あとは次の時代の当たり前を作りたいなと思ったことは2つあります。

Lovegraphに決めた1つ目は、うちの代表の駒下(純兵)という人間はすごくアーティスティックな人間で、すごくビジョナリーな人間で、たぶん僕がどんなに転んでもこういうタイプの起業家にはなれないなと思った。

大きくマネジメントをアート、サイエンスとクラフトに分けたときに僕はサイエンスやクラフト寄りな人間なのですが、どうせだったらアートとの新しい化学反応を起こして、もっともっと大きい事業を作っていきたいと思いました。

僕は死ぬときに、自分の墓石に「Lovegraph作ってくれてありがとう」「あなたがいてくれたおかげで、こういう幸せに気づけました」みたいなところを、いかにその数を増やせるかに注力したい。

いろんな会社やスタートアップがありますが、演繹的思考で新しいテクノロジーでビジネスがどう当たり前になっていくのかを頭を使って考える必要がある。Lovegraphの場合は写真を撮って、それで人を幸せにするのは、なんてシンプルなんだろうと思った。そこがおもしろいなと思ってジョインしました。あと代表の駒下とは付き合いが長かったというのもありました。そんな感じです。

根岸:ありがとうございます。

安心・安全・安定してる会社の中からおもしろいものが生まれるか

根岸:私は大企業にいたんですけど、大企業からスタートアップだと、「給料とかどんなんだ?」とか、現実的なアップサイドを考えて行かない人ってめっちゃいると思うんです。「そんな瞬間のことを考えてもしょうがないじゃん」と思うんですけど、片桐さんはそのへんどう思います?

片桐:いや、ぜんぜんそうなんだけど、VCマネーが足りなすぎるんだよね。

(一同笑)

お金はめちゃくちゃ余ってるんだから、普通はスタートアップでも大企業と同じぐらいの、もちろんいつ終わるかわからないこと込みだから、むしろ高めに出していいと思っていて。理想論だけど、そうなるべきだと思います。

実際ないから出せないんだけども、理想論は終わる可能性が高いから、大企業より高いからスタートアップに行く風潮が生まれたら、もっとスタートアップが活性化するって俺は思ってる。

実際、それはできていないから待遇や福利厚生は、そういう意味だと落ちてきます。そこはスタートアップがもっと盛り上がるためには解決しないといけない問題かなと思っている。そうなると、難しいんだよね。大企業の企業内起業がいいかって話になってくる。安心安全安定してる会社の中からそんなおもしろいものが生まれるかといったら、そうじゃないということがあります。

根岸:確かに、確かに。それはそうだね。

片桐:たまたまね、今日、ユニクロ柳井さんの2016年に記事なったインタビュー記事を読んで、「経営に安心安全安定は絶対必要ない」って言ってたんですよ。だけど、僕は2015年の記事で「会社や経営というのは、安心安全に向かっていく」って書いてるのね。

(一同笑)

これってすごく相反する話だと思います会社は絶対に安心安全安定に向かっていくと思う。というか、そうしないとスタートアップって不安定、危険な状態?(笑)。それをどんだけ安心安全安定に変えていくかが経営だから。

そうしないと、一緒にやってくる人もいないし、誰も入ってくれない。だからいい会社にしていくのは、安心できて、安定していて、安全になることです。

例えば、スタートアップが村を作る。その村で、危険と不安定で安心できない。そんな村、誰も来ないからね。

根岸:そうですね。

片桐:安心できて安全で安定してるという村に人は集まるじゃない。

売上のためにまともな人だけ欲しいから狼がいなくなる

片桐:新規事業を伸ばしていくことよりも、オペレーションを磨くほうが売上とか利益が上がってくる。オペレーションを磨いてくると、初期の頃にいたような狼みたいな人たちがいなくなってくる。

根岸:わかる。狼みたいな(笑)。

片桐:本当にいなくなってくる。いなくなっていって、ちゃんとしてて、毎朝来てくれる人が増えて。初期の頃は朝は絶対来ない人ばっかりだったのね。それがだんだん、ちゃんと朝来る人たちが来て、お客さんとしっかり話してくれるから、売上や利益が上がっていく。これって本当に起業と企業のすごいジレンマです。

その初期の頃の人たちは、すごくめちゃくちゃな状態でも危険を楽しめたり、不安定な状態でも、ぜんぜんなんとも思ってない人たちだった。でもオペレーションを美しくするというか、ちゃんとやってくれる人たちはまともな人たちなのね。

そうなると、会社は売上や利益を上げていかないといけない宿命がある。そうなると、まともな人だけ欲しいから、会社というのは安心できて、安全で、安定してる状態に持っていく。(吉村氏と大野氏、牟田氏に向かって)今は危険不安定、そんなもんじゃない?

そういうものを変えていかないとオペレーションがきれいにならない。そうなると大企業でスタートアップがすごく難しい。だから、危険で不安定で不安な状態って、スタートアップじゃないと作り出せない。

(一同笑)

片桐:会社って、本当もう安全安心安定じゃない? 売上とか利益を出していても、そうなっていっちゃうんだよね。

根岸:そうですね。

片桐:だからそこはスタートアップする行為と、大企業の形態というか、ある程度資本力のある会社の大きな違いになってくるよね。

資産としての時間を何に使って、どのようなリターンを得るのか考える

根岸:一応みなさん(出身が)大企業だから、たぶんまともじゃないですか。まともだけど危険なところに飛び込んですごい下品な話ですけど、リターンってどう考えているのかなと思って。それこそ、そこがクリアになればみんなスタートアップ来るのかな? 現実問題、そんなお金を払えるメルカリみたいなスタートアップはあまりないじゃないですか。

片桐:メルカリはスタートアップじゃないからね(笑)。

根岸:スタートアップじゃない(笑)。

(一同笑)

片桐:スマホ革命以降、最高に成功した大企業ですからね。

根岸:そうですね。そうそう。例えば実際大企業から転職した皆さんは、リターンについてどう考えているんですか?

大野:大企業からスタートアップに行くときのリスクをどう考えているか。リターンをどう考えているかですよね。僕の考えですけど、お金だけがリターンじゃないです。

今、僕らの持っている資産は時間だけという認識がまずあって、その限られた時間をどこに投資していくかという意味で、「なんのリターンがあるんだろう?」というのを軸に考えてみます。例えば、大企業で2年間業務を行う経験と、なにも先がわからないけど、ただ解決したらすごく大きなものにぶち当たる経験に対して投資する2年間では大きな差があります。

大企業で得られる経験は、例えばスキルを養えたり、大きなお金を使って世界にインパクトを与えられる規模感の大きいビジネスに携われる。。

それに対してスタートアップだと、規模感が大きくなるだろうビジネスを作り出し、自ら大きくしていく必要がある。そう考えると、自分がどちらの経験をリターンとして得たいのか、20代の前半という時間をどこに投資すれば、自分の人生がよりプラスになるのかが見えてくるかと思います。

あとからまたお金がついてくる可能性もあるし、もしかしたら野垂れ死んでる可能性もあるかもしれないんですけれども、単純に今この時間を楽しんでどんどん経験さえ積んでいければ、自分の人生としてはプラスになっていくかなというのでリターンを1つ考えているっていうところです。

ただ金を持っているだけではそこに価値は生まれない

片桐:ドライというか、金をむちゃくちゃ持っていてもあんまり幸せじゃない時代になっていると思っていますね。金持ちの友人を見ていると金を持っていることより、自分がなにをやっているか、事業を持っているとか、意見ができるとか、一緒になにかできるとかね。そういうものが言える状態であるほうが人としての価値が高い。

ただ金を持っててもコミュニティで「あの人金持ちだけど、なんにもなんないよね?」みたいなことってすごく起きている。金を持ってることよりも、むしろ「このプロダクトはこうやってやったら成長する」というノウハウがあったり、自分ができたり、そのプロジェクトに対して影響力があったりする状態を作れたほうが、より人気になるというかコミュニティで人間関係ができやすい。

人は人間関係の中でしか楽しさを見いだせないと思うのね。だから1人で金持ちでもぜんぜん超つまんないんですよ。金があることよりも、そういうことのほうが僕は楽しいと思うんだよね。。

スタートアップばっかり応援して、だんだん「DMMダメじゃん」みたいな感じになって。……ダメじゃないからね!

(一同笑)

根岸:でも、DMMも社内スタートアップ的な気運が生まれるような感じのことをしてますよね。

片桐:社員2人とか数人のスタートアップの買収をしたりしてます。そこからうちのリソースで事業を作っていく。DMMというブランドの中での新規事業は、事業部長、事業部に権限があるので自分たちの思った感じでやれていくというのがあります。そういう意味でいうと、社内スタートアップ的な気運もあるかもしれないですね。

資金調達の点からもどっちがいいのかなんてわからない

片桐:でもどっちがいいのか本当わからない。ヤフーの川邊さんも発表したけど、そうなってくるとDMMが持っている資本の中で、どの事業にいくら割り当てるかみたいな話になってくるのね。

野良ベンチャーの場合は、誰かが魅入ったら突然すごい資金を入れるわけじゃん。例えばうちの会社でいうと、1個の事業というか立ち上げたばっかりの会社に何百億、何十億はつっこめない。

根岸:CASH……。

片桐:CASHは買ったけどね。このあとまた100億、200億を突っ込むかと言われたら、それは見ながらです。

でも外部資金というか、世の中の資金状況や資金調達を見ていくと、収益性がよくわからないんだけど、何十億円がどんどんぶっこまれている。ああいうの見ていると、むしろ社内でほかの事業との収支を比べられながらリソースが配分されていく場合と、資金注入が外部からある場合だったら、どっちがリソース大きいかという話になる。

しかも、そこに集まってる社員はみんなその事業をやるつもりで来てるから、1個の映画でもプロジェクトでもいいんだけど、そういうものをやるために集まっているっていう感じです。

根岸:そうですね。

片桐:うちの場合は、DMMという会社の中での話だから。そこはマインドがちょっと違います。それはどっちがいいか、本当にわからない。良い悪いじゃなくて、そういうものだから。どっちがいいかわからないんだけど、1個のプロジェクト成功させるためだけに集まるんだったら、スタートアップだってできる。

根岸:確かに。

片桐:とはいえ、なにかシナジーとかいろんな調整をしながら、大きいリソースでブランドで勝っていくんだったら、いわゆるブランドがあって、リソースが大きな大企業のほうが強い。だから難しい。

根岸:なるほど。

片桐:どっちがいいかじゃない?

根岸:そうですね。どっちが自分のやりたいことに、自分の性分に合ってるかみたいな。

片桐:僕、イベント趣旨を理解していて、ここにいるみんながスタートアップに行くように、今話してますからね。

(一同笑)

根岸:ありがとうございます。なるほど。

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