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成長するCtoCマーケットの展望(全4記事)

「島根の土地300坪、無料であげます」--無料・格安品の掲示板“ジモティー”がすごい

個人間売買が手軽にできる利便性から今注目を浴びるCtoCマーケットプレイス型のサービス。当セッションでは、その代表企業であるBaixing.com・Jian Shuo Wang氏、ジモティー・加藤貴博氏、ブラケット・光本勇介氏、メルカリ・山田進太郎氏の経営者4名が集い、CtoCマーケットの可能性と、各社の戦略について意見が交わされました。

CtoCのマーケットで起きている変化

田中章雄氏(以下、田中):これからC to Cのマーケットプレイスについてのセッションを行います。セッションを始めるにあたり、僕のほうで1枚スライドがあります。

興味深いので皆さんに見ていただきたいと思います。

これは何のサイトだかわかりますか? これはCraigslistのサイトなんです。このCraigslistのサイトに矢印がたくさん刺さっていて、その矢印のもとを辿っていくと、この2、3年でアメリカで出てきた新興系ネットベンチャーが並んでいるんですね。

例えばTransportという交通のカテゴリーがあります。そこに刺さっているのがUberとかHeliosとかありまして。もうちょっと上は、洋服の売買、sale for saleにはThe RealRealとかがあるんですね。

この図が何を示しているかというと、ここ数年間もともとアメリカではCraigslistのひとつひとつのカテゴリーだったものが、新興系のベンチャー、特にアプリ系のベンチャーに今襲われている。

今までずっと負けることがなかったCraigslistが、ついに全面戦争をベンチャーからしかけられている。その先にあるのが各バーティカルのマーケットプレイスやアプリです。

今回は面白いことにCraigslistと同じようなポジションにある元祖マーケットプレイスとしてもともとあった、クラシファイドをやっているビジネスの代表的なビジネスに中国と日本から来ていただきました。

今度は新しく攻めているほう、ひとつの分野に特化して攻めているというスモールビジネス、限りなくC(コンシューマー)に近いショップとショップオーナーが自分で開店するためのプラットフォームをやっていますStores.jpさんと、最近話題のメルカリさん、完全にC to Cのマーケットプレイス。

それぞれの立場において、この辺の業界では日本あるいは中国ではどんなことが起きているのかを探ってみたいと思いまして、今回のセッションを始めたいと思います。

クラシファイド広告サービス「Baixing」のミッション

田中:ではまずクラシファイドが攻められているということなので、クラシファイド系からプレゼンを行っていきたいと思います。まずは中国のBaixing.comのJian Shuo Wangさんに5分くらいでサービスの説明をしていただきたいと思います。Jian Shuoさん、あなたたちが中国でやっていることについて少しお話していただけますか?

Jian Shuo Wang氏(以下、Jian Shuo):皆さん、こんにちは、Jian Shuo Wangです。中国からきました。今日はここ日本で、私たちがどんなことしているか、そして何を学んだかを皆さんとシェアする機会に恵まれ、本当にうれしいです。

田中:IVSは2回目ですよね?

Jian Shuo:そうですね。前回は京都で、今回は札幌です。

田中:またお会いできてうれしいです。

Jian Shuo:ありがとうございます。では、5分くらいお時間をいただいて、私たちがどんなことをしているのか、そしてC to Cマーケットプレイスについてどんなことを学んだかをご紹介します。これが私たちのウェブサイトです。

田中:ところで、Baixingとはどういう意味なのでしょうか? 日本語ではバイシン(百姓)というと米農家のことですが。

Jian Shuo:米農家のことなんですか? 知りませんでした。Baixingとは一般の普通の人、という意味です。優れたビジネスパーソンだとかではなく、普通の人を指します。

田中:バイシンとは百姓という意味であるが、日本語でいうと一般ピープルということです。そこを皆さん留意いただければと思います。

Jian Shuo:でも、百姓というのは面白いですね。私たちがやっていることと共通するものがあります。昔はみんなが百姓でしたね。そして私たちがやっていることは普通の人に、どんな人にも利用いただけるサービスなのですから。私たちのミッションは。

ビジネスイメージは大きな掲示板

Jian Shuo:無料かつシンプルな方法でみんなが広告を出して、そしてものごとをスムーズに進められるようにすることです。これが私たちが考えるクラシファイドビジネスというものです。

クラシファイドとは広告ですが、とてもコストや技術を必要とする商業用広告とは違います。どんな個人も、百姓でも、広告をつくってオンラインにポストできるのです。

私たちのビジネスイメージは、大きなビルボード(掲示板)があって、そこに1人1人の個人が思い思いに書いた紙、お知らせを張り付けていくような感じです。私たちのオフィス内にも大きなビルボード(掲示板)があります。

今話しているビルボード(掲示板)は本当に巨大なものを想像してください。先ほどCraigslistについて、バーティカルがカテゴリーに攻め込んできているというお話しがありましたが、私たちは誰でも広告を張り付けることが出来る大きなビルボードをイメージしています。このピラミッドを見てください。1番上の赤い部分が大きなコーポレーション、

次の黄色がスモールビジネス、私たちが見ているのは個人、C to Cで、誰もが紙で自由に世間にお知らせしたいことを書いて、ペタペタと巨大掲示板・ビルボードに貼っていくことです。とってもシンプル且つ自由で無料です。

CtoCマーケットプレイスの3つのポイント

C to Cマーケットプレイスから学んだ3つのキーポイント、それは「フリー」「シンプル」そして「豊かさ」です。まずはフリー(無料・自由さ)、についてお話します。

私たちは巨大でフリーなサービスを提供しています。そこでは個人が自由に無料でお知らせをポストすることが出来、個人が電話でコンタクトを取り合うことも自由で、物やサービスのやりとりで発生する決済も自由です。個人間でもビジネス間でも手数料はかかりません。

マネタイズはアップセルから。リストのトップに広告を載せておきたい場合には料金をお支払いいただいています。そしてページのサイドに載せる広告からもマネタイズしています。無料という響きもいいし、誰しも無料だと喜びますよね。

しかし無料ということはつまりコストをかけることが出来ないという意味でもあります。私たちの予算はとても低いです。4ページだけ、そして100人以下の従業員でやっていますが、毎月中国国内5000万人、毎日50万人の案件をカバーしています。

このようにやり繰りしながら無料でやっています。実際にどのくらいシンプルなページなのかお見せします。

皆さんも漢字からどんなカテゴリーになっているか想像がつくと思います。左がモバイル、右がPCトップページです。

田中:これがページトップですか?

Jian Shuo:そうです。

田中:とてもシンプルですね。カテゴリーだけなんですね。

Jian Shuo:とてもシンプルにしています。約200のカテゴリーがあります。カテゴリーの1つをクリックすればリストのページが出てきます。

これは車のリストですが、ひとつずつ載っていますね。気になるものがあれば、「View Ad(この掲載を見る)」をクリック。すると内容を見ることができます。

とてもシンプルなので誰でもすぐに出来ます。この3つのステップはどのカテゴリーでも同じです。私たちのサイトは中古車専門でも、仕事探し専門でも、デーティングサイトではありません。私たちのサイトは無料で誰でもポストすることが出来る掲示板なのです。

ですので、例えばインダストリーのカテゴリーを新規に作りたい場合、カテゴリーを自分でつくることができます。そして、カテゴリーを作った瞬間に他の人もそのカテゴリーに投稿することが出来ます。

水平的なアプローチが生み出した成果

田中:最も使われているカテゴリーはどれですか?

Jian Shuo:中古車が1番ですね。私たちは市場にホリゾンタル(水平)にアプローチしています。そして、中古車の取引に特に力を入れていたわけではありません。

それが突然、中国全体の30%の中古車が私たちのサイトで取引されるようになったのです。他にはアルバイト募集の広告が大きいですね。しかし、中古車に関しては特に何かしたわけではなく、自然に伸びていきましたね。

田中:それは変わりましたね。確か4、5年前にお会いしたときには、最も活用されているのは中古家電製品だったと仰っていたと記憶しています。

Jian Shuo:そうですね、常に変化しますから。私たちのこの掲示板は今最も流行っているものが集まります。中古車市場はここ数年で急成長しました。それに伴い、私たちのサイトの中古車カテゴリーも成長したのでしょう。

もしもホリゾンタル(水平)なアプローチを取らなければ、こんなことも目に見えてこなかったかもしれませんね。これがみんなの求めているものだってことが。

田中:ありがとうございます。

Jian Shuo:それと最後に、豊富さです。

私たちはとても大きな幅でやっています。さまざまな側面の、皆さんが想像出来る限りのカテゴリーが揃っています。そしてスモールビジネスへも個人へもサービスを提供し、さらに大きな都市でも小さな都市でもやっています。

中国にはとても多くの街があります。大きな街は北京や上海などですが、それ以外にもっと多くの小さな街があります。

そして現在ではその小さな街の人々が利用者の50%を占めています。つまり、このサービスはとても広く利用されているのです。そして携帯電話。現在では全体の72%が携帯電話(モバイル)からのアクセスです。これは急速に伸びています。

シンプル、無料。そして低コスト。カテゴリーもカバーする街も広く用意しているので、多くの方にご利用いただいています。そしてこれが結果的に収益につながり、最終的に利益が出ますのでとても嬉しく思っています。

4つのテンプレートのみで構成されるウェブサイト

田中:ところで、先ほどお話されていた、「4ページの会社」とはどういう意味ですか?

Jian Shuo:4ページだけというのはつまり、まず第1にホームページがありますね。次にリストのページ。そして詳しく詳細が載っているページ。最後に広告を出すときのポストのページがあります。

田中:つまり、あなたのウェブサイトは4つのテンプレートしかない、ということですね。

Jian Shuo:そうですね、基本的には4ページでモバイル版は3ページです。これはホームとリストのページを一緒にしたからです。とてもシンプルでしょう? 

最後に、C to Cマーケットにおいて、サービスが無料でシンプルで情報に溢れていることが大切ですね。低コストで大きなボリューム、これがこのマーケットで利益を出す鍵です。

田中:ありがとうございました。

「ジモティー」のサービス紹介

田中:では次は、ジモティー、加藤さんお願いします。加藤さんどうですか? 久しぶりにBaixingのアップデートを見て。僕はもっとサービスが進化して複雑になっているのかと思ったら、よりシンプルになっていたのが正直ショックでした。

加藤貴博氏(以下、加藤):3年くらい前にBaixingにお伺いさせていただいてから、よりシンプルになったなという印象を受けました。勉強させていただきながら我々はサービスをつくってきたので、まだシンプルに出来るな、とすごく感じました。

田中:ではその感想の中、ジモティーご自身ではいま何をやっているのか、加藤さんのほうからさくっと説明いただければと思います。

加藤:僕はジモティーという地元のライフサポートプラットフォームを運営しています。サービスと会社のご紹介をしたいと思います。

ジモティーは3年前に設立しています。現在運営しているサイトは2年半ほどの運用しています。こちらにいらっしゃる田中さんも創業メンバーというか設立者だと思います。IVPが最初に出資をしてつくった会社です。

田中:なので甘いコメントはなしで、ずばずば聞きます。

加藤:会社の立ち上げ方とかサービスのつくり方を習った先生が一緒にいるので、変なことを言わないように気を付けたいと思います。

田中:(笑)。

加藤:その後何社かから投資いただいて運営しています。僕はリクルートでいくつかのメディアのプロデューサーをやっていました。掲示板ジモティーの特徴は、今のBaixingのお話と一緒です。

売ります、あげますも含めた、地元のローカルの広告が掲載されているサイトです。投稿が非常にシンプルで、5項目くらい入力すると完結するサイトです。問い合わせもログインせずに、メールアドレスだけで行うことが出来ます。

高い決定率、ユーザー数が伸びてきています。不用品掲載、ゼロ円で差し上げます、という投稿がかなり多く載っています。そのような投稿は1週間以内に掲載終了する確率が90%超えているというのが、我々の方の数字で出ています。

島根県の300坪の土地を無料で提供

加藤:こちらは一例、広告に使うときのクリエティブの例です。「今週のあげます情報」ということで、これを作って媒体に掲載したりチラシということをいまやっています。ここに載っているものが実際に載った、ある瞬間にゼロ円であげます、という風に掲載されていたものの一部の抜粋です。

ご覧いただいてわかる通り、ダイニングセットとかソファとか洗濯機とか冷蔵庫とか、非常に多いです。大きく運びづらいものが、大量に無料であげますという形で掲載されているというケースが……。

田中:今まで「無料であげます」で1番でかかったものはなんですか?

加藤:1番でかかったのは「島根で300坪の土地あげます」が。

(会場笑)

加藤:物理的な大きさとしてはダントツだったと思います(笑)。

田中:でかいですね(笑)。

加藤:でかいです(笑)。あとは、「別荘あげます」も2回くらい載ったことがあります。あとは、船とか。面白かったのは、歯医者の診療台とか。

田中:それはもう引退した歯医者さんがもう要らないと?

加藤:そう(笑)。船とかにも書かれていたのですが、あとを継ぐ人がいないので差し上げますみたいな投稿が載ることがあります。

田中:なるほど。

ジモティーの成長率

加藤:ジモティーの成長率、実数は書いていないですが直近1年でいうと、およそ3倍。ユーザー数、PV数に関してはもうちょっと伸びています。開始から2年半順調に成長してきています。ジモティーのユーザーは特殊です。

普通のウェブサイトとは異なると考えています。40代以上の年齢層が60%を超えてます。40代、50代の方のユーザーのアクティブ率が非常に高いサイトです。

田中:これは簡単に言うと日本の若者、マイノリティー、ではなくマジョリティが使っているサービス、そう考えてよいのでしょうか?

加藤:そうですね。これからどんどん増えつつある人口に対してサービスを提供しているという意識は強く持っています。

田中:こういうところに集まっている、ITの最先端や年齢という話ではなく、もっとリテラシーの低い人たちをイメージしたほうがいいですか?

加藤:そうですね。実際にオフィスに来ていただいたりとか、ご自宅にお伺い出来る場合はお伺いしてユーザーの方にインタビューさせていただくと、こちらはインタビューした方の例ですが、40代、50代の主婦の方で、スマートフォンを必然的に使っているというか、結果的にガラケーがあまり販売されていないので使っている方。

ネイティブのアプリも我々は提供していますが、「アプリ使っていらっしゃいますか?」「はい、アプリ見てます」、「画面がいっぱい開いて……」と、ちょっとこう会話がかみ合わないなと思っていたところ、ブラウザのことをアプリだと思っていらっしゃったりだとか、ネイティブのアプリという意識があまりない方とか。

田中:ではこのAさん、という方。アプリを知らない、と書いてありますがスマホユーザーなんですか?

加藤:ギャラクシーを持っていたんですが(笑)。

田中:ギャラクシーでアプリ知らない、と。

加藤:そうですね。携帯を実際に見させてもらったのですが、多分、ダウンロードされているアプリというのがもともとプリインストールされていたもののみというユーザーでした。非常にヘビーユーザーが多いサイトでして、一回見出すと1時間や2時間見ているという方、毎日見ていただいているという方がかなり多いサイトです。

ネットの親和性の低い人でも簡単に使える

田中:世の中だとテレビ離れが進んでいますが、このサイトの人たちはテレビを非常にたくさん見るんですか?(笑)

加藤:そうですね。テレビをものすごくご覧になる方が多いという印象がありますね。ターゲットセグメントをかなり意識しています。ネットの親和性が低く、Facebookやツイッターでソーシャルコネクトは必要のないユーザーかなと考えています。

40代から60代の方で、ネットの親和性は低い方、それでも我々のサービスだったら簡単だから使えると言っていただける方をユーザーとしてターゲットにしています。実際に行くお店、どういうところに行きますか? と聞くとダントツがイオンです。

イオンさんに激しくお金を使われている。ほとんどイオンで購買が完結している。

田中:これはイオンで買い物でしている人はネットリテラシーが低い、年寄りだ、ということを言いたいわけですか。

加藤:いや、イオンさんは最高に素晴らしいモールを運営されているので、言い過ぎかとは思いますが(笑)。ちょっと比率が高いかなと思います。

地域のニーズとのマッチングを図る

田中:ドン・キホーテも上位にきてますね。

加藤:そうですね。ドン・キホーテとか、11位12位が面白いと思ったのですが、トレジャーファクトリーとかハードオフ。

田中:これはなんの会社ですか。

加藤:中古品を扱うリサイクルのショップです。そういったところに行く方が多いというのが特徴です。まぁちょっと暗い話になってしまうんですが、低所得化、増税、高齢化という社会背景があり、40代以上の人口が、田中さんからご指摘いただいた通り、ユーザー数が増えています。可処分所得が下がっているので、そんなに物にお金を使いたくないという方もやっぱりいらっしゃると感じています。

難しいサービスは使いづらいので、デジタルデバイドと書いていますが、誰でも今の新しいサービスを使いこなせているわけではないとも感じています。

また、空いた時間に地元で1、2時間バイトがしたいとかいう方もかなり多くて、そういう方に対する地元のものとか、人のマッチングをするというのが、ジモティーの価値だと思います。

結果的に先ほどご紹介した通り、無料で不用品を処分したりとか、飼えなくなったペットの里親を探したり、地域の中で無料で人材を募集したりというニーズに対してマッチングさせていただいています。以上です。

田中:ちなみに、低所得で、ネットリテラシーが低くて、無料で物をあげているようなサイトってビジネスになるのですか?

加藤:えーっと……よくいただく質問です(笑)。

田中:素朴な質問で、皆さんも思っているんじゃないかなと思って代わりに僕が言いました。

加藤:ビジネスとしては、先ほどのBaixingのビジネスと近いというか、広告とオプション課金がメインになっていまして、マネタイズの部分では田中さんに追加投資いただけるように、ご期待に応えられるように今後、頑張っていきたいと思いますが(笑)。ユーザーのプラットフォームになることが出来れば、ちゃんとマネタイズできると考えています。

田中:ありがとうございます。

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