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ビック・ベンチャーを創れ!(全6記事)

「雇われ社長なんだなって気づいて…」 高給を捨ててサイバーエージェントGから独立した、ある起業家の決意

新しいサービスで世の中にインパクトを与え続けるIT事業家4名―クラウドワークス・吉田浩一郎氏、Gunosy・木村新司氏、ポケラボ・前田悠太氏、Smart Education・池谷大吾氏―が一同に会し、「ビッグベンチャーをつくれ」をテーマに意見を交わしたセッション。このパートでは、SMART EDUCATION(スマートエデュケーション)・池谷大吾氏が自身の独立への想いを熱く語ります。(IVS 2014 Summer Workshopより)

日本が世界で勝負できる3つの分野

小野裕史氏(以下、小野):続きまして前田さん。どういうきっかけで、起業ではないと思うのですけれど、会社に入ってしかも11番目の正社員だったのに結果的に社長になって、しかもその会社から今度グリーという大きな会社の役員になっていくステップ。

色んなきっかけがあったと思うんですが、どんなきっかけで変わっていったんですかね。順番に。

前田悠太氏(以下、前田):まずポケラボというベンチャーに入るきっかけは、ジャフコっていうベンチャーキャピタルにいて。ジャフコという会社を選んだのも、自分が就職活動をあんまりできなくて、というかあんまりやる気もなくて、何したいっていうのが全くなかったんですね。

今ここにいらっしゃる方ってたいてい目的意識の高い方々ですが、そこに対して劣等感のあるような学生でした。でもなんにもないから色んな仕事を見られる仕事がいいっていう、馬鹿みたいな発想でベンチャーキャピタルと経営コンサルだけ受けて。受かった中で1番面白いと思ったジャフコに入りました。

そのジャフコの中で4年半くらいいたのですけど、その中ですごい面白いマーケットというか、ザクッと言うと日本から世界に対して大きな勝負ができるマーケットで、自分の大きな商売がしたいと思っていて。

その中でとった仮説が3つ。今も変わらないのですけれど、1つはモバイルゲームのマーケット、2つ目は再生医療、3つ目はナノテクノロジー。この3つが日本から世界に対してすごい大きな勝負のできる機会のあるマーケットだなと思って。思ったらすぐ動いて、そういったベンチャーだとか、研究所だとかも含めて、足しげく通いました。

日本で1番のソーシャルゲーム会社を目指した

前田:その中で出会ったのがgumiという会社でございまして、まだ國光さんたち3人ぐらいの会社で、そこに投資させていただいたんです。そこでボードで入っていた本間さん(本間真彦氏)っていうジャフコの先輩なのですけれども、インキュベイトファンドというベンチャーキャピタルをやっている方ですが、出会って意気投合して、リアルソーシャルゲームプロジェクトをやらないかみたいな話になって。

ポケラボっていう会社の箱をつくったのは本間さんという方でして、ポケラボという会社は、創業者2人。学生上がりの、私よりも年下の人間がもともと創業なんですけれども、真に創業しているのは、ベンチャーキャピタリストでそこにジョインした2人っていうのが実質的な創業者みたいなところでした。

そこを紹介されて、ここで「いろんな絵を描いていかない?」と言われて、本当に3、4人だったのですけど、そこでつくること以外のお手伝いをジャフコに居ながらして。

ジャフコの有給を使ってシリコンバレー行って、DCMっていうベンチャーキャピタルから約10億の調達をして。調達を機に自分も正式にジョインしたというのがポケラボに入る流れです。

でもここで結構ポイントだなと思うのは、自分の仮説があって、今もそれは間違ってないと思っているんですけど、すごく大きな大局観。当時、ご存知の方いるかわからないですが、海外でPCのフェイスブック上のアプリがすごい流行っていて、すごい大きなマーケットだったんです。ジンガという会社ですとか、いろんな会社がすごく伸びていて。

日本を見ると、日本のガラケーのコンテンツのモバイルゲームは、モバイルゲーム市場世界一だったんですね。スマートフォンが来ることもわかっていましたし、この上でソーシャルネットワーク、mixiとかモバゲーとかグリーだとかが出てきてる中で、この上でのモバイル上のソーシャルゲームは絶対日本くるよなって。

日本で1番のソーシャルゲームのプレイヤーって、世界のゲームワールドカップのシード権を得られる会社になれるんじゃないか、みたいな仮説から面白いなと思ってきています。というのが自分のポケラボに入ったきっかけであり、想いです。これは全然変わらない。

会社倒産の危機

前田:自分がどうやって社長になったかという話ですけれども、要は潰れそうになったんですね。入りました、10億調達しました、10億のお金を溶かしながら、そこから1年くらいで10人くらいの会社が80人くらいになりましたと。

なんにも経験のない若いやつらがやっていれば、それはもうカオスですよね。皆さん(会場の学生たち)と変わらないと思いますね。なんのリテラシーもない人間らが無茶な経営をして人数増やしましたと。とりあえずラインつくって増やしましたという状況で、本当にカオスだったんです。

投資家の人たちからも「どうするんだ」という話もあって、リアルな話では横から社長を獲ってくるか、というようなことも色々考えて、そういった方々とも会ったりして。

でも、すごい屈辱的なんですね。自分たちがつくってきた会社、全然できないから他の人を社長に据えるかって。そういうことを自分たちで判断しなきゃいけないっていう状況もあって、中々フィットしなくて。そうこうしているうちにどんどんお金が溶けていくし、なかなかカオスだと。

それで自分がやりますっていう話をして、創業者2人はもうプロデューサーだったので、モノづくりに集中していただいて。その2人を中心にしたモノづくりのラインっていうことに絞って、会社の統制を整えました。

すごく細かい話ですけれども、ルールもなかったので、全然朝みんな来ないとかですね、そういうことも含めて。でもそれって、ちっちゃなことだけどすごい大事なことなんです。何をやるかじゃなくて、組織としてのチームワーク。

起業には優秀な面子をそろえるべき

前田: モノづくりをするとか何かをするっていうときにちゃんと一定の統制だとかルールっていうのは本当に必要で、そういったことから全部整えることを自分の最初のミッションにして変わりました。

80人の人間が、私が入って色んなハレーションもあって最初半年くらいで、30%くらい辞めちゃったんです。紆余曲折あったのですが、辞めていく中でも自分たちとして大きな舵を切って。

モバゲーさん向けのタイトルで出していたものを全部切り替えて、スマートフォン単独で出すタイトルに切り替えました。そこでリスクをとってやったら結果としてうまくいって、今に至るという形です。

自分として色んな局面がやっぱりあります。あるんですけれどもその都度その都度すぐやるっていうことをやってきて、その結果ポケラボっていうベンチャーもそうなんですけれど、本当に身軽にすぐ動くっていうことを自分の精神のもとやってきたから今があるんだと思います。

ここにいらっしゃる皆さんって、当時の自分なんかよりも圧倒的に意識の高い方々だと思いますし、すごい頭の良い方々ばかりだと思うので、さっさと色んなことやるというか。

例えば起業したい方々多いじゃないですか。ここに登壇する方々っていうのはわりと色んな経験ある方々ですし、こういう方々を創業に誘えばいいじゃないって思うんです。創業に誘ってフラれたっていいじゃないですか。

フラれたって多分アドバイザーとかにはなってくれるかもしれないし、あるいは出資してくれるかもしれないし。ロイヤルストレートフラッシュみたいな面子を揃えるっていうことをしたほうが絶対にいいんですよね。

自分の仲間内だけで起業はしないほうがいいですし、ちょっとマインドが変わるだけで、今ここにいるこの機会をすごい大きなチャンスに変えられると思うから。例えばですけれど、そういった発想で動かれるといいなって思います。ちょっと話それましたけれども。

小野:いいですね。ありがとうございます。

出会いに救われた

小野:では続きまして池谷さん、どんなきっかけでどのように今に至ったか。

池谷大吾氏(以下、池谷):僕は本当に行き当たりばったりで、出会いに救われたということと、与えられたことに関してはスピード感をもって早くやる。実行力がすごく自分の強みだと思っていて。

学生の時もプログラミングのバイトで出会った友達にはすごく感謝していて、HPに入って、そのあと小野さんに偶然出会ってベンチャーに入ったこともすごく感謝しているし。その後約8年ぐらいサイバーエージェントグループにいて、今回のスマートエデュケーションというのを3年前に起業するんです。

きっかけはまた出会いで、シーエー・モバイルは僕が入社した数年くらいは小野さんを含めてサイバーエージェントのかなりの利益を支えた素晴らしい会社だったんです。

ただピークを迎えて最大600人ぐらいまで従業員増えたんですけれど、最後、僕結構リストラやって400人ぐらいまで辞めてもらって卒業するんですが、企業って波があるんですよ。

その中で何が起こったかというと、やっぱり業績が落ちた時にサイバーからついに役員を送り込まれるようになったんです。

今までどっちかというと、シーエー・モバイルっていうのは独立してやってきた会社なのですけれども、サイバーの文化が入ってくるようになって。もちろんサイバーの藤田さんを含めて、役員の方と交流するようになったんです。

CA藤田晋氏を追い抜いてやろうと思っていた

池谷:どっちかというと、ちゃんと利益出し続けろということをミッションにされていたんですけれども、サイバー本体で話すと、社是は「21世紀を代表する会社」みたいな、すごいビジョナリーなことを掲げていて、あんまりそんなギスギスしたイメージもないビジョナリーな会社だったんですね。

僕はその時、子会社の社長もやっていたので、自分の好きなようにやらせてくれないのかって言った時に、色々コミュニケーションをとっている中で、サイバー本体で決めることだからと言われ、雇われ社長だということに気づくんです。当たり前ですよ、今からすれば。

すると道は2つだと。僕は当時35歳で子どもも3人いたんです。もちろんサイバーエージェントグループの役員ってものすごく給料いいですから、リッチでしたよね。

ただ1つの道としてはサイバーエージェントグループに残ってCA8という役員を目指してまさに「21世紀を代表する会社」をつくること。もう1つは僕自身がサイバーみたいなことをやること。どっちかだと。

僕は後者を選んだんです。というのは自分の中で「なんだ!」って思ったところがあるし、そのままそこに残るなら藤田さんを抜いてやろうじゃないかと思ってやっていたし。子どもたちにもそういう格好いいお父さんでありたいと、僕は素直に思ったので。

あとはもうひとつは、起業するなら心がけていることがあって。それは長く続けられること。まさにサイバーの21世紀も含めて、自分で続けられる、人に誇れるテーマでやろうと考えた。

もちろん皆さんには関係ないと思うんですけれど、起業って僕みたいに子どもがいると家族に迷惑かけるわけですよ。3年間、今まで海外旅行とか行っていましたけれど、すべて廃止しましたし、賃金も下がりますから車も売りましたし。

ただ僕の家族はハッピーで、「お父さん貧乏になったけど頑張るよ」っていうことでみんな応援してくれていますけれども。でもだからこそやっぱり有意義なことをやるべきだと、僕が選んだのは「教育」というテーマだったんです。

記憶に残る製品をつくる

池谷:教育というのは毎回毎回トレンドも変わるし、今までアナログで学んだものがデジタルで学ぶものになる。今後先も未来永劫変わらない。一生飽きずにいられる。僕はもちろん与えられたものはやるけど、飽きっぽい性格もあるので飽きずにできる。

僕の夢は「死ぬまで働こう」ということだと思っていて、社会とずっとコンタクトをとりたいと思っているので、そういったものを掲げていきたいんです。

メンバーにも、もちろんコミットはしているけれど、営業利益を上げてどうこうということは一切言っていなくて、僕らが目指すのは記憶に残る商品をつくることだと伝えています。

いわゆる子どもが大人になったときに「あれやったよね」って言ってもらえるような、記憶に残る製品を作ることだけを伝えて起業すると。そういったことが契機になって起業したって感じですね。

小野:ありがとうございます。

変なプライドが邪魔をしていた

小野:木村さんも実にいろんな会社を起こしたりしていますけれど、どのようなきっかけで。1番最初はシリウス?

木村新司氏(以下、木村):そうですね。1番最初のきっかけは、実はドリームインキュベータにいた時に、今のヤフーの副社長になっている川邊さんと、あとショッピングの方の小澤さんに出会って。

その時、野球が1リーグ制になろうとしていたんです。1リーグ制になろうとしているのをあの2人とか、あとはホリエモンとかもそうなんですけれど、楽天が買ったり、ライブドアが買おうとしたりとか。

彼らがその時30くらいだったと思うんですけれども、実際にそれを引っぱって、1リーグ制にならないように阻止しようとデモをしたりとか、それを企業に買わせようとしたりとか。

そういうのを見て、自分がやっていることがすごくちっぽけに思えたのと、自分がやりたいことにすごい素直に生きてるなぁと思ったんです。

今、その時の自分のことを考えると、実際コンサルティングしたいのかとか、そういう意味で言うと、もっとやりたいこと実はいっぱいあるんだけれども、変なプライドみたいなものが邪魔をしていて。

例えば世間体がいいとかわかりやすい会社にいるとか、そういうのに実は自分が邪魔されているんじゃないかということに気づいて。それで自分でやったほうがいいなということでスタートアップをやろうと思い切ったのが1番最初ですね。

実際、シリウスの時もそうなんですけれど、あの時26ぐらいで、周りの連中って外資系の有名な企業にもいっているし、日本でも有名なところにいっていたので、そういう友達がどんどんどんどん昇進していったりとか。

自分だけ毎日朝会社に行くときに、「こんな小さなビルで俺働いていていいのかな」とか(笑)、思っていて。「だからこそ成功しないといけない」みたいなのを思いながらやっていたっていうのを覚えていますね。

小野:ありがとうございます。

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