2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
リンクをコピー
記事をブックマーク
今日は「海外展開に挑む日本企業のあるべき姿とは」というテーマで、お2人のお話を中心に聞いてもらいたいと思います。
ここにいらっしゃるみなさんはこれから海外進出を目指される、あるいはもうすでに検討を始められている、という方が多いと聞いています。今日は海外進出するにあたっての具体的なノウハウであったり、あるいはマインドセットであったり、その辺のお話をお2人に聞いていきます。
まず、徳重さんにおうかがいします。徳重さんはテラモーターズとテラドローンともに海外進出を果たされているわけですが、私が2013年に初めてお会いしました時からずっと一貫して、「日本発のメガベンチャーを目指すんだ」というお話をされていらっしゃいます。
そもそも、なぜ日本発のメガベンチャーを目指そうと思われたのですか。
徳重徹氏(以下、徳重):私、シリコンバレーに2001~2006年の5年間いた時がありました。その時に「シリコンバレーの会社にグローバル展開ができて、なんで日本の会社にできないんだ」「彼らにできて、なんでできないんだ」みたいな、悔しい思いをしました。
リアルなケースで言うと、僕がちょうどサンノゼにいたんですけど、その本当に近くに、当時50人くらいの「DVD1ヶ月借り放題で20ドル」みたいなことをしているサービスがあって、「こんなのでいいのか?」と思いました。
九法:あの会社ですね。
徳重:はい。それが今、時価総額8兆円のNetflixになっています。
九法:なるほど。
徳重:だからGoogleなど有名なところだけではなくて、そういうことをリアルに僕は原体験として持っています。
徳重:僕はこの4年間は、3週間海外行って、1週間日本、みたいな生活です。先週もインドや東南アジアに出て、今週は日本なんですが来週はヨーロッパに行く。
4年間ずっと行ったり来たりしているんで、海外、とくにアジアに行くと、日本の会社や日本人に対するプレゼンスや評価は非常に高いんだけど、ほぼ誰も戦っていない。僕は「無形資産」とよく言っているんだけど、もったいないなとも思います。
九法:「無形資産」というのは、その(海外に出る人の)「思い」ということですか?
徳重:いえ、「日本の企業、日本人が勝手に評価されています」ということです。
九法:あぁ、なるほど。
徳重:つまり今日、田所さんから出てくるかもしれないけど、なにを強みとするか、アセットにするか。単純に「日本の会社」「日本人」というだけで評価されているわけです。それはすごい価値なわけです。
九法:それ自体がアドバンテージになっているんですね。
徳重:その価値をほぼ誰も使っていない。最後に思うのは、今ありがたいことに、日本市場にはいろいろなベンチャーが育ってきていますけど、もっとスケールするベンチャーが出てこないとダメだと思っています。本当に変化が激しいじゃないですか。
九法:そうですね。
徳重:ここの1年、とくに早い。これからもそうです。そうすると正直、大企業のスピード感では難しいと思っています。となると、未だになにかイノベーションを起こし続けていて、スピード感を持って、Amazonのようにベンチャー企業が大きくなる会社が必要という、そこの文脈から来ています。そこの信念はすごく固いです。
九法:ありがとうございます。今、徳重さんのお話をうかがっていると、創業前から「なにがなんでも海外に出ていくんだ」という思いをお持ちだったことがわかったと思います。
私自身もいろいろな起業家にお会いして話を聞くと、「まぁいつかは海外に出たいよね」という実際多いです。ただ、その言葉からはどこまで本気なのかということは伝わりません。
徳重さんみたいに「何が何でも」ではなく、「いつかは」くらいの気持ちだとなかなか成功しない、というのは取材経験から思います。
九法:ぜひ田所さんにも、お話をうかがいたいです。シリコンバレーや日本の起業家を数々ご覧になられてきて、日本のスタートアップが海外で成功するために、どんな条件が必要になるのか。今日はたくさんスライドを作ってきてくださったと聞いています(笑)。
田所雅之氏(以下、田所):スライドを作ってしまいました。
最初、登壇するのが誰かというのがまだ決まってなくて、徳重さんの話もあったんですけど。僕はまさに徳重さんとこうやってやらせてもらうのは非常に光栄です。海外展開するスタートアップに必要な5つの条件を(スライドに)書かせていただきました。
この5つの条件も徳重さんの顔、テラモーター・テラドローンさんのことを思い浮かべながら書かせていただきました。3年前に『ガイアの夜明け』というテレビ東京の番組でテラモーターズが取り上げられていました。みなさんにもぜひ見ていただいてほしいんですけど、僕は拝見させていただき、いたく感動しました。
とは言っても、僕自身は今日はまとめ方として、5つの条件を示します。
先ほど、事前のミーティングで徳重さんと九法さんと話したんですけど、企業によって、やはり前提条件とは少し違ってくることがありますが、この5つの条件は最大公約数的に大事です。
スタートアップというのは当然、リスクが高い領域を狙って行きますので海外であろうが日本であろうが関係ないんですよね。この5つのポイントに沿いながら、話していきたいなと思います。
九法:スライドに沿っておうかがいします。まず「Want」。まさに徳重さんの「Want」を先ほどうかがったわけですけども。
田所:まず条件としては「Want」「Needed」「Can」があります。「Want」がそもそもやりたいかどうか。
「Can」がいわゆる「アンフェアアドバンテージ」というんですけど、国内でもそうですが、スタートアップとして圧倒的な優位性があるかどうか。
「Needed」は、プロダクトマーケットフィットできるかどうか、海外の市場にある特有のニーズを満たせるかどうかです。
「Get Paid」というのは、いわゆるワンマーケットと言って、徳重さんがテラドローンでやられていると思うんですけど、海外市場を取ることが生き残る条件かどうかというポイントです。
「新しいパラダイムの市場です」といった時にまだ市場ができ上がってない状態です。そこで多くのスタートアップがドミナントプレイヤー、強いプレイヤーになろうとしている状態です。それが国を越える参入障壁が低い場合、あるローカル、つまり起業家の本国でやってても、長い目で見て生き残れないということですよね。
最後は「Growth」です。当然ここにいらっしゃる方も、たぶん(投資ラウンドが)シリーズAやシリーズBなど調達されていると思うんですけど、イグジットストーリーやエクイティストーリーを立てて、しっかりとグロースできるかどうか。その戦略面が大事だと思います。
徳重さんは、シリコンバレーのVCにいらっしゃって、Netflixなどを間近で見てらっしゃった。そういう悔しいと思ったということは「自分がやりたいかどうか」という意志があったんだと思います。
折しもメルカリの小泉(文明)さんも、いろいろなところで、いわゆるファーストムーバーとして「野茂英雄になりたい」と言っていました。いたんですけど。残念ながらソフトウェアやITの領域などでは、日本はまだ、世界市場を取れていない。メルカリの小泉さんの思いは、徳重さんと似ていると思います。
田所:『ガイアの夜明け』で、元パナソニックでアフリカで駐在されていた方がテラモーターズに入り、バングラディシュの責任者を当時やっていました。番組を見て思ったんですが、すごく徳重さんと雰囲気がすごく似ているんですね。
九法:(笑)。
田所:お2人で駐在されていました。バングラディシュの市場調査をして、さらに商品調達から、実際に組み立てから2人ですべてやっている。「なんでやっているか」という質問があった時に、アフリカに行った時に「日本のメーカーがサムスンとかにブランドで負けているのが悔しいと思った」といっていたのが印象的でした。
これは創業者である徳重さんの思いがすごい伝わっているのかなと思いました。そして、顔にも憑依して徳重さんっぽくなっているのかなと思いました。
九法・徳重:(笑)。
田所:インドネシアでVIP Plazaというスタートアップをやっているキム・テソンさんがいます。彼はもともと、東南アジアの楽天にいました。彼はボーングローバルの在日3世で、韓国語・日本語・英語、完璧に喋れます。
楽天は東南アジアから撤退しちゃったんですけれども、インドネシアが中間層がすごい伸びているところに注目して、そこに対して、「VIP Plaza」というフラッシュマーケティングのスタートアップをやっています。インドネシアの勃興するミドルクラスに強い共感を持っていたんですね。「だからそれをやりたい」と。
深田(洋輔)さん。YOYO Holdingsという会社をやっています。彼の事業も伸びているんですけど、もともと大学院時代にボランティアに行って、グラミン銀行の(ムハマド・)ユヌスさんに憧れていたんですね。
そういった貧困を解決できるモデルを作りたい思いがありました。彼にしてみたら日本には解決したいレベルの貧困がなかったんですよ。なのでフィリピンで事業をはじめました。
そもそも先ほど徳重さんも言っていたんですけど、自分の原体験があるかどうか、経営者が海外でやりたいかどうかはすごく大事かなと思います。これが1点目ですね。
九法:テラモーターズのバングラディシュの社員の方、「徳重さんが乗り移っているような」というお話が田所さんからありましたが、実際に経営者として、社員の方たちに徳重さんの持つ「Want」を浸透させていくために、意識されていたことはありましたか。
徳重:1つは、そういうのが好きそうな人を採用できるのが理想ですよね。だけど、やはり新興国、アジアやインドなどもとくにそうなんだけど、大変なんですよ。『プロジェクトX』ってわかります?
九法:もちろんです。
徳重:『プロジェクトX』とは、昔の戦後の日本の話で、ソニーの海外市場立ち上げ、マツダのロータリエンジン開発などですが、とにかく困難に次ぐ困難がどんどん降りかかってきて、それをなんとかクリアする話なんですけど。うちのインドの責任者が「いや社長、インドは毎週が『プロジェクトX』です」よと(笑)。
(会場笑)
それくらい大変なんです(笑)。ありがたいことに、『プロジェクトX』の昔の放送分が今ネットでも見れるんですよね。僕らはとにかく、スピリットはソニーの創業期にすごく似ているんですよ。ソニーは「技術の会社」と言われていますけど、ドブ板の営業をけっこう世界中でやっていたんですね。
それを見せたりするとやはり、今自分たちが苦しいことに対して『プロジェクトX』の体験などがオーバーラップします。目の前を見ると街中では、さきほどの話で、サムスンやLGやファーウェイくらいしかない。「なんでこんな負けてんだ?」みたいな。
昔は日本と言えば「クオリティ悪い」の代名詞だったのが、「今俺たちはこんな(恵まれた)状況から入れているのに、なんでこの状況で俺たちはできないんだろう」「情けないだろ」。そういうのはあると思う。
だからそういうふうに、自分の体験とも合わせられないと、実体験がないですよね。
九法:私、2013年に桑原さん(注:上述のバングラディシュ駐在員)にも取材させていただいたことがあります。その時にやはり彼も、『プロジェクトX』を徳重さんに「見ろ」と言われてDVDを見た、というようなお話もされてましたね(笑)。なるほど、ありがとうございます。
九法:では、続いて田所さん。「Needed」の話をご説明いただけますか。
田所:「Needed」は、先ほど「海外も国内も関係ない」と言ったんですけど、そもそも国内であろうが「ニーズがあるかどうか」はベンチャーが成功するための必須のポイントだと思うんですよね。
徳重さんのテラモーターズは、日本に比べて圧倒的に東南アジアやインドのほうが台数が多いということは、海外市場の潜在的ニーズが大きいという重要なポイントになります。そもそも国内であろうが海外であろうが、ニーズがあるか、プロダクトマーケットフィットをさせていくのがポイントかなと思っています。
1つの例としては、セブンドリーマーズさんはこれまでで累計で100億円くらい調達しました。(セブンドリーマーズは)全自動洗濯物折り畳み機「ランドロイド」をローンチしています。別に洗濯物を折り畳むことは、国内だけではなくて中国であろうが、アメリカであろうがニーズがあります。
あとは20億円くらいを調達して日本とアメリカで展開している、杉江(理)さんのWHILLなどがあります。彼はもともと日産で設計をやっていました。起業した後は、アメリカに行って、500(Startups)に入りました。
なぜ日本じゃなくてアメリカでやったかというと、圧倒的に今市場が大きいからです。市場規模は10倍くらいあります。アメリカでFDAを取るのが(注:米国食品医薬品局の認可)大変だったんですけど取り、今アメリカで事業を拡大しています。WHILLも海外で展開するべき良い事例だとお思います。
田所:もう1部に上場してしまいましたけど、ユーグレナの創業者の出雲さんはもともと原体験として、東大1年の時にバングラディシュに行ったら、栄養失調の子どもが多い惨状を目の当たりにして、「栄養失調をなくしたい」と思ったんですね。
栄養失調は日本では少ないと思うんですよ。車椅子も同様にアメリカが市場が圧倒的に大きい。潜在的ニーズや市場が海外にあるかどうか、というのがポイントかなと思っています。
例えば、バングラディシュでは1億4,000万人いる中で、1/5は栄養失調らしいです。それを解決する一端を担うために、ユーグレナは、バングラディシュでも展開をしています。
『ガイアの夜明け』で、放送されていた内容に戻りますが、バングラディシュで中国メーカーがこういう品質の悪い充電器を売っているので、3ヶ月くらいで実際にバッテリーがダメになってしまうそうです。一方でテラモーターズは、しっかりと蓄電をコントロールしているので寿命が延びるということで、現地に受け入れられました。
「テラなら3年間で、75万節約できます」というビラを現地に出されたんですよね。現地の人も、現金な話なんですけどビジネスでやっているので「儲かるか儲からないか」が大事です。リクシャーなどの三輪タクシーに乗っている人たちは、日々これで生活費を稼いでいます。
どこのものとも知らないベンチャーが来て、実際使うかというと使わないと思うんですけども。バングラディシュの人たちからしてみたら信頼が置ける日本製だし、車体が21万円で安いし、「バッテリーも良さそうだ、じゃあ、買ってみよう」という話になるんだと思います。
九法:ありがとうございます。今テラモーターズさんのお話もありましたけども、徳重さん、今の話を踏まえて聞かせてください
九法:今、バングラディシュの例が出てきました。現在、テラモーターズはバングラディシュやインドなど、東南アジアに進出されているわけですが、、その国のニーズをどういうふうに見極められ、どのくらいの期間をかけてリサーチされているのか。具体的なエピソードを交えて、教えていただけますか。
徳重:いわゆるプロダクトマーケットフィットという言葉が今、よく使われると思うんですけど。そこはまったく同じだと思います。ただ、その見極めが本当に正しいのかどうか、ヒアリングして1次情報を聞くんだけど、そこの判断はかなり難しい。経験していないというところもあります。
日本人だとまともなことを言ってくれると思うんですけど、新興国の人は、たぶん買わないのに新しいものが出たら「それ良いね」とか適当に言います(笑)。本当に買うのか買わないのかという見極めが、本当に難しい。
いま無い新しい市場を切り開くわけだからマインドセットはポジティブに考えなきゃいけないけど、「本当に売れるかどうか」は、逆に現実的に保守的にシリアスに考えなきゃいけない。逆の思考がいるんですよね。このポジティブと、シリアスを何度も行き来しながら解を探すというようなプロセスですかね。
しかも、いろいろな人が勝手に適当なことを言うんで、なにが正しいのかという「本質を掴む判断力」がすごく重要になる。
さきほど打ち合わせ時に田所さんから「5つの成功要素の中で1個、なにか足りないのはない?」と言われて。僕が思っているのは、「とにかく小さい失敗を早くやって回転率を上げる。なるべく時間とお金をかけずに早くやり切る」ということだと思います。突っ込んで具体でやってみないと、この感覚はわからないと思います。
徳重:僕の場合は1度、ベトナムで大きな失敗がありました。なので実はバングラディシュでのことも、製品を直前に突貫工事で変えているんですね。もともと25万円くらいでも、「2割高くても売れる」と言っていたんだけど、やはり本場の本場にモノ出してやってみたら「売れなさそうだ、そこまでは」と考え始めるようになった。
それで、もう1段、価格を3万円くらい落としたんです。直前に6ヶ月突貫工事。だからそれくらいシリアスなんだよね。とくにアジアは、日本人が思う以上に価格に敏感なので。そこの感覚はやってみてというのはすごく大事かなと思います。
九法:小さな経験をしないとなかなか見えてこないものがある、というお話だと思います。さきほど徳重さんの「最大の失敗」の話を少し伺ったんですが、ぜひその辺を詳しく聞かせていただけますか。
徳重:それは、僕がまだ未熟だったのもありますし(笑)。僕らは一番最初にベトナムで会社を作って、2年目の年末くらいにベトナム進出でした。優秀だったし、人も足りないから若いスタッフをバッと行かせました。
ベトナムに行かれた人はわかりますけど、大量にバイクがあります。かつ、東南アジアでもベトナム人が一番バイクを愛しているのでそこは間違いない。なので、テスラみたいなイメージのバイクを出して、スマホが付いてかっこいいバイクを出せば売れるだろうと思いました。
徳重: 2年と2億円をかけて、ほとんど売れなかった。何百台しか売れなくて。その失敗というのは、最終的に僕に責任があるんだけど、現地のneedsを拾い切れていなかったと。雰囲気でやってたんですね。現地に行かせた若いスタッフからは「プロモーション、ブランド(が大事)」「テスラだ」ということでしたが、それをやったとしても爆発的な売上はできなかったでしょうね。
(自分が)ベトナムに1ヶ月住んだら、「これはかなりずれてる」と思いました(笑)。つまり、「こんな高いのはさすがに売れない」と
だから意思決定権者がそこまでどっぷりと、ローカルの人たちの感覚まで理解するのがやはり必要です。もしそれがあったら、「それ違うだろ」と早めにわかってでしょうね
途中からぜんぜん違うタイプの、安くて軽く、免許いらないEバイクがガーッと市場で伸びていたんですよ。それにチェンジするべきだったんですよ。僕たちはアジャイル得意なので。
でも、ベトナムは任せっきりだったので、その情報が僕に入ってこなかった。その時僕はバングラディシュとインド両方を自分で立ち上げていたんで。もうベトナムに行く時間がなくて、ベトナムは任せていた。
でも、その情報が入ってきていたら……。そこはさきほどの話で、「本当に売れるのか?」ということに当事者意識と責任感を、そこに行ったリーダーが持っているかどうかが重要なんです。そうしたら「社長、あなたの言っていることはぜんぜん違いますよ」となっていた。そこはすごく大事だと思います。だから、雰囲気でモノつくり、サービスはもうやらない。
九法:創業者だけではなくて、社員の方一人ひとりが強い「Want」を持つ、ということですよね。
徳重:「本当に売れるのか」ということですね。「本当に」というキーワードが重要です。
九法:ありがとうございます。
徳重:失敗ついでで言うと、もともと大学のインターンから、うちに2人来ている若手の話をします。インドで1億円程度使って結果でなかった若手がいるんですけど、彼らは今、本気度がすごいですよ。「本当に売れるかどうか」のシリアスな部分が、全然違う。
1人は今ドローンで韓国に立ち上げ、1人は今インドでドローンをやっていますけど、うまくやれています。彼らは1回大きな失敗をしたので、肌感覚で身に付いている。
九法:ありがとうございます。
九法:今、田所さんのお話で5つの条件のうち「Want」と「Needed」というところを聞いてまいりました。
徳重さんのお話だと、「Want」も「Needed」も、小さな経験を積むことでより強い「Want」や「Needed」がより深くわかってくる、というお話でした。
じゃあ田所さん、続いては「Get Paid」をお願いします。
田所:“シリアスさ”というテーマと繋がると思うんですけど、そもそも海外などに出さないと、つまり国際展開しないと負けてしまう領域では、海外展開が重要になります。
例えば、なぜSansanがこれだけ資金調達やるかというと、グローバルで展開しているLinkedInがいるから。ChatWorkも多額の資金調達をやったのは、Slackがいるからですよね。
こういうふうに多額の調達をして海外展開していかないと囲碁と同じで、場所取りゲームで負けてしまうんですよね。先ほど挙げた例は、ワンマーケットで、つまり参入障壁が低く、ネットワーク・外部性があります。
ビジネスモデルがそもそも、国内で規制やローカライズなどで守られていれば、国内でやればいいと思うんですよ。
ただ、ドローンや EVの領域のように新たなパラダイムが生まれてくる時には、先にデカくデファクトスタンダードを取ったほうが勝ちなんですよね。
残念な例と言いますか。みなさんも知っていることだと思うんですが、なぜmixiが市場を失ってしまったのか。FacebookやTwitterの後追いをしてしまったからですよね。SNSという領域は、ネットワーク・外部性が効く世界で、友達が使うからみんな使うわけですね。
(mixiは)13年の時点でアクセス解析数を公表していない。これを見てわかるように、公表できないほどダメになってしまったと思うんですけど。おそらくこういった領域においては、海外展開を積極的にしないと負けてしまうということだと思っています。
ビジネスモデルがクロスナショナル、クロスボーダーではないと勝てないビジネスモデルかどうかが海外に出る条件かなと思っています。
九法:ありがとうございます。そういう意味だとテラモーターズさんは、そもそも最初から国内だけを目指してビジネスモデルを設計されていませんよね。
徳重:まぁ僕の場合は「世界で勝つというWant」が強すぎるので……。
(会場笑)
やるの前提なので、あとは具体でどうやるかという話。ただ今、EVとドローンをやっていて、EVが製造業でドローンがサービスソフトなんですけど。ドローンのほうがより、ワンプロダクトグローバルができやすい領域なんですよね。両方やっているからわかるんですけど、後者のほうがはるかにやりやすいです。
九法:ドローンのほうが。
徳重:はい。なのでEVをやっていると、製造業が金型変わるだけで3ヶ月待たなきゃいけないんですよ。僕らみたいにせっかちな人間は3ヶ月待つことがすごくイライラするんですけど、ドローンだったらすぐできちゃうんで。
大事なのは勝ちパターンをいかに見つけるか。だから今、韓国やインドでやろうとしているんですけど、やりながら勝ちパターンを見つけて、それができればもう一気に世界展開するみたいな。今そういうステージに来ています。
でも、田所さんも書いているけど、勝ちパターンを見つける前に「ヨーロッパに行きます。人材、マーケ、事務所代金で100億なくなりました」みたいなシリコンバレーの悪い例もあるので。
いかに勝ちパターンを見つけるかだと思います。そうしたらあとはアクセルを踏みまくればいい。そこの強弱の付け方、意思決定の仕方は、すごい大事だと思いますね。
九法:ありがとうございます。
九法:今、「勝ちパターンをいかに見つけるか」というお話がありましたけれども、田所さん、今のお話をお聞きになられてどうお感じになりましたか?
田所:プロダクトマーケットフィットしているかどうかという部分が大事です。その次に重要なのが「ユニットエコノミクス」と言って、お客さん1人あたりの採算性があるかどうかというところです。
シリコンバレーでも、60億や100億円を調達したところでダメになった理由が、要は1人あたり売れたのに損している会社が、KPIとしてトップライン(売り上げ)しか見ていないんですよ。ユニットエコノミクスはマイナスなのでやればやるほど損しちゃうんですよね。
勝ちパターンとして、ビジネスのキードライバーを見つけて「こうやったら売れるよ」という状態を発見してからがスケールするのに大事かなと思います。
徳重:僕らもそういう意味では、テラドローンとしては資金調達、まだゼロなんですよ。親会社の資金だけでやっています。
でも競合のPrecisionHawkという、アメリカに一番イケているスタートアップがあるんですけど。彼らは100億円くらい調達しているんですよ。でも2回くらいピボットして、もう資金が溶けているんですよね。30億くらい溶かして、新たに70億調達したんで。でももうシリーズDまでなっているんですよ。そこが、僕たちと今同じレベルです。
僕たちはまだ何も調達していないんですが、社員もそう思っていると思いますが、「世界トップのPrecisionHawkに本当に勝てそうだな」みたいなことは言っています。
アメリカの会社が全部凄いわけではなくて、僕の感覚的には10パーセントくらいだと思っています。ほとんどは「お金が集まってガンガンやるんだけど溶けました」という会社もかなり多いと思っています。
田所:そこに1個加えると、プロダクトマーケットフィットは、起業家は残念ながら過大評価しがちかなと思うんですよね。「起業家プレミアム」と呼んでるんですけど。僕自身も起業していて、前やったスタートアップなどぜんぜんプロダクトマーケットフィットしていないのに「している感」を前面に出してしまった。
九法:ちなみに、なぜ「している感」を持ち出したんですか?
田所:それは、起業家が前に進んでる感が欲しいからかなと思っています。実際にプロダクトマーケットフィットを達成していない状態でアクセルを踏んでしまっても、お金を駄々流しするだけですよね。だから(参加者に)起業家の方多いと思うんですけど、僕が言うのは、「自分は1.5倍ゲタ履いている気でいろ」というのが大事かなと思うんですよね。
例えばユーザーのリテンションが40パーセントがプロダクトマーケットフィットの基準と一般的に言われています。そうじゃなくて、60パーセントくらいを目指していくのが良いと思います。
結局、起業家はユーザーの良い声だけを聞いちゃうんですよね。おそらくダメになるスタートアップ、とくに資金を好きに使ってしまうスタートアップは、その「起業家プレミアム」という起業家バイアスの呪縛から抜け出せないと場合があります。
みんなアクセルを踏みたいんですよね。ブレーキを踏むより、アクセルを踏むほうが楽なんですよ。自分たちを過大評価する癖があるのかなと思うので、やはり自分では冷静に見るのが大事かなと思いますけどね。
徳重:僕はやはり、さきほど言った「失敗する」ことが重要だと思っています。そうするとね、かなり慎重になるんですよ。さきほどの「理想」と「現実」みたいな。理想と現実を行き来する。
でも、さきほどのうちの若い2人の例なんですが、逆に重要なのが失敗しちゃうと今度は憶病になるんですよ。人を雇うのも憶病になる。
慎重なだけではダメで、タイミングが来たら(資金を)投入しなきゃいけない。そこの見極めがすごく難しい。失敗すると、人間はやはり憶病になるので。
さきほどのアクセルとブレーキみたいなバランスがすごく大事であるということですね。
九法:ありがとうございます。起業家というのはバイアスを持ちがちなんだけども、失敗することによってバイアス経験的に身に着けていくということが重要だ、というようなお話でした。
2024.10.29
5〜10万円の低単価案件の受注をやめたら労働生産性が劇的に向上 相見積もり案件には提案書を出さないことで見えた“意外な効果”
2024.10.24
パワポ資料の「手戻り」が多すぎる問題の解消法 資料作成のプロが語る、修正の無限ループから抜け出す4つのコツ
2024.10.28
スキル重視の採用を続けた結果、早期離職が増え社員が1人に… 下半期の退職者ゼロを達成した「関係の質」向上の取り組み
2024.10.22
気づかぬうちに評価を下げる「ダメな口癖」3選 デキる人はやっている、上司の指摘に対する上手な返し方
2024.10.24
リスクを取らない人が多い日本は、むしろ稼ぐチャンス? 日本のGDP4位転落の今、個人に必要なマインドとは
2024.10.23
「初任給40万円時代」が、比較的早いうちにやってくる? これから淘汰される会社・生き残る会社の分かれ目
2024.10.23
「どうしてもあなたから買いたい」と言われる営業になるには 『無敗営業』著者が教える、納得感を高める商談の進め方
2024.10.28
“力を抜くこと”がリーダーにとって重要な理由 「人間の達人」タモリさんから学んだ自然体の大切さ
2024.10.29
「テスラの何がすごいのか」がわからない学生たち 起業率2年連続日本一の大学で「Appleのフレームワーク」を教えるわけ
2024.10.30
職場にいる「困った部下」への対処法 上司・部下間で生まれる“常識のズレ”を解消するには