2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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アマテラス藤岡清高氏(以下、藤岡):まずは、岡田さんの生い立ちからお話しいただきたいと思います。岡田さんとコンピューターとの出会いはいつ頃でしたか?
岡田陽介氏(以下、岡田):小学校5年生の時、学校でコンピューターを初めて触りました。「すごいな」と感動し、祖父母にお願いして買ってもらったのが、自分の初めてのコンピューターです。
私以外は誰もコンピューターを使わない家でしたが、小学校で初めて見た時に「絶対にやりたい」と思ったのです。そこにロジックはなく、感覚的にそう思いました。私自身が面白い、新しいものが好きなのでしょうね。
コンピューターの魅力を実感したのは、半径3km程度だった小学生の生活圏が、インターネットによって一気に広がったことです。日本にいながらアメリカの映画を観られる。英語はわかりませんが、自分の視野が大きく広がったような気持ちになりました。
岡田:それをきっかけに、「なぜこの映像は動いているのか」いう疑問から、プログラムを独学で勉強していくことに繋がっていきました。そして、高校は愛工大名電という情報系の学校に進学しました。
藤岡:イチローの出身校ですね。
岡田:そうです。当時はコンピューターサイエンスを専門的に学べる高校があまりありませんでした。私は愛知県名古屋出身ですが、選択肢は愛工大名電ほぼ一択という環境でした。
藤岡:確かに、コンピューターサイエンスを学べる学校はまだ少なかったでしょうね。デジタルハリウッド大学が開校した頃でしょうか。
岡田:そうですね。私は愛工大名電の情報科学科の3期生ですが、1期生の先輩たちがデジタルハリウッド大学の1期生です。
私の代が入学してやっと全学年が揃ったという非常に先駆的な学科で、中学校の先生からは心配されました。「新しい学校に行くリスクを取るより、まずは普通高校でしっかり勉強して、コンピューターサイエンスは大学でやれば良いのでは」と言われましたが、私は普通科には魅力を感じませんでした。
結果的には、あの道を選んで本当に良かったです。高校3年時には仲間たちと一緒にコンテストに応募して受賞したりし、この道を選択するきっかけになった気がします。
岡田:大学でもコンピューターサイエンスを専攻しましたが、コンピューターのスキルセットは高校時代ですでに付いていたので、「学ぶ」ことよりも、自分たちでプロジェクトを立ち上げたりしていました。
自分の研究を先生に見せたら「面白い」と学会に連れて行っていただいたりした一方で、コンピューター室の全コンピューターを使ってコンピューターグラフィックス作りをして、怒られたりもしました。そして、在学中に仲間たちと起業しました。
藤岡:どのようなきっかけで起業されたのですか?
岡田:コンピューターでやりたいことがあり、そのためには会社組織にした方が良いかと思い、よくわからないまま会社を立ち上げてみたというのが正直なところです。
その頃アメリカではInstagramのようなサービスが流行しつつあり、画像のシェアリングサービスを日本でも立ち上げようと思いました。当然システムは作れたのですが、すぐに大きな問題が発生しました。
この種のサービスは、ユーザーが増えるとクラウド上で保管する画像枚数も増え、サーバーコストが爆発的にかかるのです。本来1,000万円ほどの資金が必要なところを、大学生なので数万円のお小遣いで始めてしまいました。
そこで会社運営の難しさにようやく気がつきました。私がもっとも反省したのは、「ビジネスをどう立ち上げて、どうやって企業やユーザーからお金をいただくのか」というビジネス感覚が抜けていたことです。テクノロジーだけでは会社は運営できないことを痛感しました。
藤岡:ITベンチャーは当時かなりあったと思いますが、なぜリッチメディアを選ばれたのですか?
岡田:坂本社長が私のことを本気で考えてくれていたことです。それが一番大きかった。多くのITベンチャーからエンジニアとして採用のお話をいただく中、坂本社長だけは「経営者になるための勉強をうちでして行けば良い」と言って下さいました。エンジニアとして極めるなら、会社には入らず、自分で勉強した方が早いと思っていましたから。
リッチメディアでは本当にいろいろなことを学びました。最初は、一番バリューを出せるシステム開発やデザインを、その後は営業やマーケティング、さらに事業の立ち上げにも携わりました。
そして、ある程度、成果が出たタイミングで坂本社長のご厚意でシリコンバレーに派遣していただきました。この経験がその後の自身の強みになったと思います。
岡田:シリコンバレーでは大きな衝撃を受けました。当時ニュースでも話題になった、YouTubeの動画から猫の画像を自動で抽出したGoogleブレインプロジェクトが発足した頃です。
シリコンバレーにはGoogleやFacebookのエンジニアがいて、彼らから「最近ディープニューラルネットワークという、ニューラルネットワークをより複数の層(を深くした)で構成した技術が面白い」という話を聞いて興味を持ちました。現在の『ディープラーニング』の先駆けです。
当時、ニューラルネットワーク自体はすでにブームが去ったと見られていた研究でしたが、「もしこれで成果が出たら面白いな」と思いました。
藤岡:日本では松尾(豊)先生(注:東京大学大学院特任准教授。AIやディープラーニングが専門)の本が出始めたのが数年前で、私もその書籍等でディープラーニングについて知りました。しかし、シリコンバレーではずっと前から知られていたのですね。
岡田:そうです。ですので、当時日本に「猫を認識できるようになりました」と話しても、その面白さやすごさは理解されませんでした。私の説明能力も乏しかったのだと思いますが、伝える難しさを感じました。
しかし、私自身は本当に面白いと感じ、どんどんのめり込んでいきました。そのインパクトを現地で体感していたこともあり、起業しようと日本に帰国しました。
そして、会社を辞める際に私の事業に興味を持って付いてきてくれた緒方という共同創業者と、デザインやフロントエンドを担当してくれるもう1人が加わり、3人で会社を立ち上げました。
藤岡:起業分野が当時としては最先端過ぎることもあり、資金繰り等さまざまな悩みにぶつかったかと思います。
岡田:初期の資金繰りは本当に大変でした。
23歳で起業し、メンバー全員で何とか100万円をかき集めたのですが、麻布十番のオフィスの敷金と家賃、仲介手数料諸々で数十万円が消え、さらに登記費用もかかり、あっという間に残金は10万円以下に…。そこは一番苦しかったです。
受託開発で何とか食いつないでいたところ、現在取締役をしている富松がエンジェル投資をしてくれました。
そして、富松からの資金調達後、インスパイアにも出資していただきました。そこからキャッシュフローが安定し、開発に集中できるような体制になりました。
藤岡:この時点の資金調達では、まだプラットフォームやサービスはできてない状況だったと思います。アイデアにお金を出してもらったということですか?
岡田:そうです。当時はまだ「ディープラーニング」という言葉もなく、ディープニューラルネットワーク等も日本ではまだ適切な和訳がなかったので、「機械学習」と話していました。
藤岡:御社には当初よりかなり優秀なエンジニアがいらっしゃいましたよね。なぜそんな仲間を集められたのでしょうか。
岡田:仲間集めの一番のブレイクスルーポイントは、COOの外木が入ったことだと思っています。
それまで我々は、ほぼエンジニアとデザイナーだけで運用しているような専門家集団でした。しかし、正直、専門家だけでビジネスを拡大することは困難でした。そこに外木が入って組織を整理したことにより、適切なリソース配分が可能になり、エンジニアが集中して働きやすい環境が整いました。
また、採用のプロセスも設計できるようになりました。ダイレクトリクルーティングサイトを使ったり、リファラルリクルーティングで採用を進めたり。採用に限ったことではありませんが、やはりプロセスに沿って進めることにより成果は出ると感じています。このような形で、最近は仲間集めの壁もかなり解消してきました。
藤岡:外木さんはどのような経緯で参画されたのですか?
岡田:もともとは大学時代の友人です。大学時代には、お互いに「変なやつ」と思っていたと思いますが、同時に「変なやつだけどちゃんとしている」という信頼関係もありました。
初期のメンバーで重要なことは、「一緒に最後までやろう」というような強い思いや、お互いを裏切らない信用だと思っています。そういうメンバーが入ってくれたおかげで、ビジネスも拡大できました。
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