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スケルトニクス阿嘉倫大氏(全2記事)

資金ショートというゾンビに怯える日々 世界初の搭乗型外骨格スーツ「スケルトニクス」を生むまでの苦悩の物語

世界初の搭乗型外骨格スーツ「スケルトニクス®」を事業化したスケルトニクス株式会社・阿嘉倫大氏のインタビュー。スケルトニクスを生み出してからの苦労を振り返ります。※このログは(アマテラスの起業家対談の記事)を転載したものに、ログミー編集部で見出し等を追加して作成しています。

資金ショートというゾンビに怯える日々

アマテラス藤岡清高氏(以下、藤岡):2013年10月に法人化し、4年が経ちました。これまで資金面も含めた経営の壁はどうやって乗り越えてきましたか?

阿嘉倫大氏(以下、阿嘉):スケルトニクスの初号機はもともと僕のアイデアだったこともあり、技術的には僕のリードが強く、経営面は白久がリードしていました。彼が慎重にセーフティネットを張り、堅実にスタートしました。僕は開発現場で徹底的なコスト削減やリソースの有効活用に努めていました。

とはいえ資金の問題は本当に恐怖でした。月次決算資料を見ると徐々にキャッシュが減っていて、ゾンビが襲ってくるような(笑)、感覚がありました。

方針から融資も出資も受けていませんでした。また、当初はメディア露出を優先させるため、スケルトニクスを持ち出しでイベントに出展したり、無料に近いオファーを受けたりといった先行投資を続けていました。ですので、2014年頃は本当に苦しかったです。

今後の売上予測もできず、適正な価格設定方法もわかりません。資金ショートに怯えながら、切り詰めて活動していました。自分たちの給料も最低限でしたね。

藤岡:外骨格スーツは世界的に見ても珍しいので、戦略が立てにくいと思います。

阿嘉:どうアプローチすれば良いのかもわかりませんでしたから。ただ、メディア露出で多くの方の目に留まってコンタクトをいただき、徐々に仕事へと繋がっていきました。2014年後半にはハウステンボスへのスケルトニクス販売、紅白歌合戦のオファー(氷川きよし氏の舞台に協力)、ドバイ首長国への機体販売と案件が固まってきて、2015年初めにはある程度キャッシュ面が落ち着きました。

そこでエグゾネクスの開発に注力するため、現在の、100平米ほどあるオフィスを借りました。以前は25平米と狭く、開発スペースも机2つ分ぐらいだったので、今は本当に仕事がしやすくなりました。

ビジネスショーや科学イベントで活躍

藤岡:売上のベースとなっているのは、どのような業務ですか?

阿嘉:イベントへの派遣が典型的です。幕張メッセなどで開催されているイベントや展示会に、ブース演出としてスケルトニクスをレンタルしたりします。また、都心だけでなく地方で開催されるイベントでも演出やコンテンツとして引き合いを頂いております。販売ほどではないですが、大きな売上になります。

ブース演出は、まずデモンストレーションとして、歩行や動作をお見せできます。一般の方が搭乗して歩くのは危険もあるので、スタッフが乗ります。それから操縦体験として、足を固定した状態で一般の方に搭乗してもらい、腕だけを動かせてもらうこともできます。

企業とのコラボレーション案件も多く、たとえばスクウェア・エニックスとご一緒した仕事では、「フィギュアヘッズ」というゲームの中に出てくるロボットを現実化するということで外装を製作し、東京ゲームショウに展示されました。

科学系イベントへのレンタル依頼もあります。科学教育として様々な地方で開催されていて、超伝導体モノレールやVRのような新技術を体感するブースと並列して呼んでいただいています。

※以下、スクウェア・エニックスとのコラボレーション案件のドキュメンタリー動画『スケルトニクス × フィギュアヘッズ リアル2Footへの道 vol.3 「試作」』

「売り込まずに売れる商品」が理想

藤岡:業績はある程度安定してきたようですが、理由は何でしょうか?

阿嘉:スケルトニクスをレンタル・展示する業務自体が、イベント関係者への良いプロモーションになっています。メディア取材も多いので、それも宣伝になります。

僕の理想は、「こちらから使ってください」と売り込むより、クライアントの方から「使わせて欲しい」と依頼が来るよう、きちんと弊社が提供できる製品、サービスの価値をお伝えできていることです。

そのためには、次の製品やサービスのレベルを上げ続けなければ、飽きられてしまいます。大変ではありますが、レベルアップし続けることは、僕にとって理想で、そういう姿でありたいですし、今それができているのは喜ばしいことです。そして、ただ作るだけでなく、クライアントにとって価値ある製品であること、その存在がここにあることを知ってもらう努力を続けたいですね。

町工場からベンチャー企業へと進化したい

藤岡:現在の経営面での課題は何ですか?

阿嘉:知り合いのベンチャー関係者から鋭い指摘をされました。「初期のスケルトニクス株式会社は、ベンチャーというよりスモールビジネスだ」という言葉でした。

「社会を変えよう」とか、「メガベンチャーになる」といったミッションが発端ではなく、「エグゾネクスを作りたい」という気持ちから生まれているので、町工場と同じだと。実際その通りで、全部自分たちでこなす状態でした。イベントがあれば社員総出で準備して、設営も自前というような。

ただ、今後は事業の拡大を目指していこうと考えていますので、大きなキャパシティが必要になります。自分が頑張るだけでなく、チームとして役割分担を含めて、社内の体制を整備していくことが課題です。

目的は、「究極の外骨格をつくる」

藤岡:チームとして社内を整備する際に欠かせない、会社の目的は何ですか?

阿嘉:実は、設立時の目的であったエグゾネクス開発プロジェクトは期限内に目標スペックに至ることができず、2015年末に終了しています。その時点で一度、スケルトニクス株式会社は存在意義を失いました。

当時、時間を掛けて何度もメンバーで今後について話し合いました。結局、白久は次のキャリアへの挑戦として退社し、僕は引き続き挑戦したかったので会社を残し、以降代表として続けています。

現在の会社の目的でありモチベーションは、「究極の外骨格をつくる」ことです。僕のフォーカスはパフォーマンスの高い装着型のロボット作ることにあります。おこがましいですが、今あるロボットは、世の中が本当に欲しいスペックに達していないと思うのです。もっと飛んだり跳ねたりする(笑)、本当のスーパーロボットを人々は欲しがっているはずです。それは僕も欲しいですし、作りたいですね。

高いハードルですが、スケルトニクス株式会社が提供すべき価値を考えると、そこへ行き着きます。みんなが欲しい、もしくは、ある種誰よりもスケルトニクスを知っている私自身が欲しいということは、価値があることのはずなので。

今、新たな事業構想として外骨格スーツで思う存分、飛んだり跳ねたりして、エクストリームスポーツに挑戦することを考えています。そのために、今のプロダクトやサービスをレベルアップさせながら、夢のように高いパフォーマンスが可能なパワードスーツの提供をビジネスとして営利化し、事業展開できればと考えています。

外骨格スーツの魅力は、領域の広さ

藤岡:人間が搭乗して操縦するロボットへの強いこだわりを感じますが、その情熱はどこから来ているのでしょうか?

阿嘉:よく、「どんなロボットアニメが好きなんですか?」という質問をされますが、僕はロボットアニメも好きですが、それより、モノづくりが好きだということが情熱を生んでいます。

中でもパワードスーツというパッケージは規模が大きく範囲が広いので、大きな魅力を感じます。制御や電気、機械の知識が不可欠で、デザインも必要です。人が乗るので人体への理解も欠かせません。そこにやりがいがありますし、課題解決の介入方法がたくさんあるため、同じ分だけ可能性がたくさんあるという点で大きな魅力を感じ、情熱を注いでいます。

ドバイ首長国・首相オフィスのエントランスで阿嘉CEOが搭乗する第5世代「スケルトニクス・アライブ」。今後はこのマシンを進化させていくタスクが控えている

求めるのは、会社のビジョンと「やりたい」が合致している人

藤岡:最後の質問です。事業の拡大や加速にあたり、求める人材はどういう人ですか?

阿嘉:一緒に働く人は、一緒に未来を作っていくので、外骨格スーツ開発に魅力を感じてくれる人が大前提です。そして、スケルトニクス株式会社で働くことがその人にとってのやりたいことであって欲しいですね。この会社のビジョンの達成が、その人のビジョンに合致しているなら、叶えるために一緒に働きましょうという思いです。

藤岡:この会社で働く魅力についてはいかがですか?

阿嘉:本当にロボットが好きで、自分が信じる「すごいロボット」を作る。真っ直ぐにその目標へと向かい、求めている人に提供する。そんな会社です。その真っ直ぐさは魅力ではないかと考えています。

藤岡:確かに、ただ営利のためではなく、純粋にモノづくりに携われる環境は貴重です。

阿嘉:企業なので、営利目的ではないとは言えませんが(笑)が、その手段として本当に欲しいもの、本当に提供したいもの、本当に見たい世界に対して、真っ直ぐにコミットし、それを営利化していきたいと考えていますし、その姿勢によって高いパフォーマンスを発揮できると考えています。

藤岡:その真っ直ぐさは本当にスタートアップならではの魅力だと思います。素敵なお話をありがとうございました。

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