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急成長する世界のeコマース企業(全2記事)

リピート率65%、客単価20万円! 中古ブランドECの「The RealReal」創業者が明かす、驚異のビジネスモデル

アメリカで急成長を遂げているブランド品のリセールEC「The RealReal」。2013年に日本上陸を果たした同社の特徴は、客単価とリピート率がそれぞれ20万円、65%と非常に高い水準にある点。日本でも同業態への参入企業が増えつつあるなか、リーディングカンパニーである同社の創業者・ラティ氏が、そのビジネスモデルを解説しました。(IVS 2014 Spring/session1:急成長する世界のEコマース企業より)

銀行をクビになって始めたファッションECが大成功

田中章雄氏(以下、田中):皆さんこんにちは。インフィニティ・ベンチャーズの田中です。新興系のEコマース、めちゃくちゃ数字が伸びている会社を、アメリカから一社、もう一社はヨーロッパから招待いたしました。

ファッションEコマースの最前線、特にその中で伸びている企業。どのような形で伸びているのかを、今日は色々無理なお願いをして(笑)、具体的な数字とかも見せてもらえることになりましたので、ぜひ楽しんでいただければと思います。まずは、お二人がどのような困難を乗り越えてここまで来られたのかを、お伺いしたいと思います。

Rati Sahi Levesque氏(以下、Rati):こんにちは。今日はありがとうございます。私はラティといいます。「The RealReal」という会社をやっています。私たちはラグジュアリーな本物のブランド品、価値のあるものだけを委託販売しています。アート、ファッション、ジュエリーや時計などですね。

田中:ニセモノなしのホンモノだけですね?

Rati:はい、本物だけです。少し自己紹介をさせていただきます。私は大学で経済学を専攻していました。

田中:ファッション経済学ですか?

Rati:違います。ビジネスの経済学、皆さんのよく知るあの経済学です。そしてサンフランシスコでブティックをやっていました。

田中:ちょっと待ってください。大事なことを言い忘れていませんか? なぜ経済学からブティック経営に至ったんですか?

Rati:その前は、ウェルズ・ファーゴ銀行でプロジェクトマネージャーをしていました。

田中:とても退屈そうな仕事ですね。

Rati:その通りなんです。

田中:銀行関係のお仕事の人を批判している訳ではありませんが、銀行でマネージャー? 最悪ですね(笑)。

Rati:本当にその通りなんですよ(笑)。フルタイムで働くようになると、バックグラウンドチェックをされました。すると、大学生だった時にニセモノの身分証明書を使ったことが……大学生だった18歳の時にバーに飲みに行こうとしたんです。それがバレてしまいまして、辞めました。今思えばそれが素晴らしい転機になりました。

その後、少し旅に出て、ファッションに興味を持ち始めたのです。そしてサンフランシスコとニューヨークの成功しているブティックで、バイヤーとして働き始めます。それで、自分のブティックを開くまでに至りました。

田中:銀行をクビになったことが素晴らしい転機になったのですね。

Rati:そうなんです。

田中:皮肉ですね(笑)。The RealRealの共同創業者となるそのきっかけが、ニセモノの身分証明書だったなんて。

Rati:そうなんです(笑)。

ショップの実店舗を持って気がついたトレンド

Rati:そして(The RealRealのCEOの)ジュリーに出会いました。その当時、自分のブティックをやり始めてから約6年が経っていました。ジュリーはマーチャンダイザー、クリエイティブディレクターを探していたのです。私とジュリーの共通の友人が、ジュリーを紹介してくれました。

そしてジュリーが彼女のビジネスアイデアを話してくれた時に、とても良いアイデアだと思ったんです。私の店の裏に委託販売品を置いていたのですが、たくさんのお客さまが店内の商品を見ずに店の裏に直接やってくるようになっていました。

田中:あなたのブティックには2つセクションがあったのですか? 表には新作を、裏には委託販売品を置いていた(笑)。

Rati:そうです(笑)。私たちはディオールやシャネルを取り扱っていました。店の裏に置いてあるそれらの商品を、多くの方が通常よりも高めの金額で、新作よりも多く買っていくことに気が付いたのです。

田中:つまりどのくらい高めの金額で?

Rati:委託販売品を、大体相場の600USドルから1000USドルくらい高めの値段でです。そんなトレンドがあることに気が付きました。そのうちに裏に用意しておく委託品の品数が増えていきました。当時はFarfetchもなく、オンラインでやるのが主流ではなかったので、これは他にもお店を開いたほうがいいのかな、と考えていた時にジュリーと出会い、今に至ります。

田中:ジュリーとはこの写真の左の方ですね。つまり、彼女があなたを「ブティックを辞めて一緒にやろう!」と説得したのですね。

Rati:そうなんです。彼女はとても行動が早い。2週間後には、私は店を売り、彼女と一緒にやることに決めました。The RealRealでは、女性用・男性用アパレル商品、アート、ジュエリーから時計まで、すべてのカテゴリーを特集しています。最近アートの取り扱いを始めました。ジュエリーと時計もわりと新しい取り扱い商品ですが、とても上手くいっています。今年はジュエリーだけで1500万ドルほどの売り上げがありました。

田中:ではここで、ビジネスを始めた当初のお写真を見せていただきましょう。

Rati:これは初めて商品を委託品ピックアップした時の写真です。最初はジュリーの自宅で仕事をするところから始めました。とても素敵なお宅だったので、彼女の自宅でやることに特に問題もなく数週間が過ぎました。

私たちはスタイリストに片っ端からどんどん電話をかけました。私たちは「委託品のパーセンテージを皆さんにお支払いするので、商品を頂けないか?」と説明します。あるスタイリストが言いました、「オッケー。私はいくら頂けるのかしら? いつ取りに来られる?」と。やった! 私たちは狂喜し、すぐにトラックを借りて、インターンと一緒にLAまで車で行って、2,000アイテムほどをピックアップ、その日は午前3時、4時くらいまでかかりました。

田中:つまり彼女の家に行って、2,000のアイテムをピックアップしたのですね?

Rati:そうです。とても楽しかったです。その時ピックアップしたアイテムはすべて数か月のうちに売れました。ほとんどサイズ0でしたが。

田中:典型的なアメリカ人のサイズよりかなり細いですね(笑)。

Rati:はい(笑)。

リピート率65%、委託者のためのマーケットプレイス

Rati:私たちは本物のブランド・ラグジュアリー委託商品だけを扱うリセールのマーケットプレイスです。全米16の主要都市にいる委託者に対して、ホワイトグローブサービスを無料で行っています。委託者には商品が売れた料金の70%以下の委託料をお支払いしています。委託者は平均で8500USドルを受け取り、250万人以上の方にアクティブにご利用いただいております。

田中:この一番上の写真について教えてもらえますか?

Rati:ルイ・ヴィトン、シャネル、エルメス等のバッグが本物かどうかを確認しています。

田中:商品が本物であることを保証するのですね。

Rati:はい、そうです。100%保証します。バーキンやオーストリッチのバッグ等が頻繁に届きます。

Rati:会社の成長についてですが、設立から約3年になります。今年1億5000万ドルの収益、携帯電話からのアクセスを通じた収益は3000万ドルを視野に入れています。最近携帯のアプリを始めましたがこちらも順調です。App Storeでは私たちのアプリがフィーチャーされて、とても嬉しく思っています。

これまでに約45万アイテムを売り、委託者のリピート率は65%です。委託者のためのマーケットプレイスです。彼らはまず私たちが取り扱うデザイナーのリストを見て、そこからどんなものであれば売りに出すことが出来るのか確認します。現在取り扱いがないブランドについても、取り扱い依頼の連絡が来ます。

田中:基本的な部分に関する質問なのですが、どんな人がこれらを購入するのでしょうか?

Rati:熱心なバイヤー、セレブのための委託者だとか。四半期ごとにいくつかのアイテムを購入していきます。でもシャネルを四半期ごとに購入するのはかなり大変です。前のシーズンのものをまず売って、それから今シーズンの新しいものを購入していく方もいます。常に新しいものを必要としている方々がいるのです。アイテムをローテーションするのですね。

最近では、「新しいアイテムを買おうと思うけど、このブランドは受け付けていますか? ヴィトンのスピーディとモノグラム、どっちの方がリセールするときに良い値段になるかしら?」という問い合わせをよく受けるようになりました。

米高級デパートが中古市場に寄せる強い関心

Rati:最も大きなパートナーのひとつに、Neiman Marcusがあります。今私たちと委託契約を結んでくれたら、Neiman Marcusのギフト券を差し上げます、というように……。

田中:Neiman Marcusとはアメリカで有名な高級デパートです。知らない人のために。

Rati:はい。彼らとのパートナーシップは私たちにとって重要な部分を占めています。

田中:どうして大きなデパートがセカンダリー・マーケットプレイスに興味を持つのでしょうか。

Rati:デパートは気が付き始めているのです。私たちがハイエンドなスタイリストたちとよい関係を築いていることを。そして、彼らの顧客が自宅のクローゼットにあるものを整理すれば、もっと多くの新しい商品を彼らのデパートから購入するだろうということにも。

彼らは私たちのサービスを通じて、彼らの顧客がたくさんの所持品を売ってくれることを願っているのです。そうすることによって、彼らの顧客はまた彼らのところで新たに買い物をしてくれるのですから。私たちも同じです。皆さんに私たちのサイトを通じて売ってほしいし、その後またデパートで新しく買い物をしてほしいのです。

田中:つまりラティさんたちは、Neiman Marcusのようなデパートを助けているんですね。人々がまず、手元にある商品を売ってキャッシュを得て、それを元にさらにお金を使うという流れをつくっている。

Rati:私たちの委託者はとても賢いです。彼らは必ずしも物を売ったお金を必要としているわけではないし、所持品を売って稼ぐことを目的としていません。所持品をまずは売ってから新しいものを購入する、これが理に適っていると彼らは理解しているのです。

田中:ターゲット年齢層は?

Rati:購入者は25から35歳くらいですが、委託者はもう少し上の世代です。バイヤーのデータから、どれくらい私たちが成長してきたかお見せします。

田中:200万人以上のメンバーがいるのですね。

Rati:データが少し古いので、今は250万人ほどですが。

真贋判定のプロセス改善に力を注ぐ

Rati:これがサンフランシスコにある私たちの倉庫です。シャネル、ヴィトンの靴が山積みになっています。

田中:確かジュリーが「倉庫に銃を携帯した警備員を配置している」と言っていたように思いますが……本当ですか?

Rati:そうなんです。ちょっと危険なエリアに倉庫があるので、私たちの倉庫を訪れる方の中には、「こんな場所で大丈夫なの?」と心配される方もいらっしゃいます。しかしこの倉庫を選んだのは、コストが安いからです。この倉庫の大きさにしては比較的安値な値段だったので。

田中:シャネルを盗もうとして警備員に銃で発砲された人はいましたか?

Rati:幸運なことにそのような人は出ていません(笑)。

Rati:これはオフィスのトップフロア。最近出したアプリ開発の様子です。

田中:The RealRealで働く人々は、従業員割引なんかがあるのでしょうか?

Rati:残念ですがそれはありません。そして従業員の皆さんには、例え欲しいものがあってもサイトに商品がアップされるまで待つように言っています。

田中:では、従業員だからといって特別扱いはしないのですね、わかりました。

Rati:でも、従業員が委託者として販売したい場合には70%の委託料を設定しています。まとめです。私たちはラグジュアリーな商品のリセラーとしてはトップを行く会社です。この5年で10億USドルの収益を上げる見通しです。私たちは委託者と顧客のために、本物か否かを見極めるプロセスにとても力を入れています。

田中:ありがとうございます。

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