2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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木村忠昭氏(以下、木村):最後は、久保田さん。
久保田雅也氏(以下、久保田):簡単に自己紹介をします。WiLの久保田です。
東京とパロアルトにファンドがありまして、日米で投資しています。お二方と違うのは、僕らはmid to laterフォーカスの投資家で、Y Combinatorははっきり言ってちょっとステージ的には早いんですけど、一応マルチステージなので投資もできます。
あとやっぱりトレンドは、本当にここで124社が2日間缶詰なんですけど、出るとかなり情報としては価値が高くて、そういった意味でよくうちのメンバー誰かが参加するというかたちでやっております。
僕のほうはちょっとマクロのほうから、というよりこの経緯でいうと、木村さんとパロアルトのワインバーで飲んでた時に、124社いて、さっきのAnyPerkの福山太郎さんが、何年前だか知らないですけど1回だけやったと。日本人の起業家、今年も0でした(笑)。
僕の友達でY Combinatorのメンターをやっている人がいて「なんで、日本から来ないんだ?」という話になりました。「いや、僕に言われても」って感じなんですけど(笑)。
「日本にもマーケティングツアーをした」って彼は言っていて。彼が言ってたのは、グローバルのサービスを必ずしも目指していなくても、ローカルスタートアップでも全然いいんだと。「南米のAlipayやってます」「僕はブラジルでナンバー1のフィンテックカンパニー目指します」みたいな、ぜんぜんグローバルじゃない人たちだってY Combinatorには沢山いる。別に「日本だから」「ドメスティックだから」というのは違うんだよ、ということを「もし誤解があったら言っておいてくれ」と言ってました。
あと、僕が感じた部分でお伝えしたいことでいうと、起業家のクオリティという観点ではぜんぜん日本でも遜色がないなと正直思います。ただ2つ欠けてる点があるなと思っていて。
1つはやっぱり英語。地味なんですけど、やっぱり英語でちゃんとプレゼンテーションをやりきれるというか、下手くそでもいいんだけど、英語というランゲージで人とコミュニケーションできること。ここはまさに本当に日本の起業家がディスアドバンテージしてるなと思います。
あとは(海外の人は)プレゼンがむちゃくちゃうまいですね。とくにさっきの2分のプレゼンって、もう相当練習してると思うんだけど、何も見ないで誰も1回も噛まないんですよね。
前田ヒロ氏(以下、前田):あんまり。
久保田:2分オーバーする人も、1分で終わる人もいないんです。とてつもなくIQ高い人たちが、たぶん1ヶ月ぐらい練習してるんじゃないかぐらいの。まさにプレゼン力ですね。
シリコンバレーの起業家の中にはプロダクトはもうぜんぜん弱々なんだけど、めっちゃプレゼンがうまくて、資金調達がすっごい上手な起業家とかいるんですね。そういう人って実はけっこういい線いくというか、最後、資金力ってものすごい勝負の分かれ目になるので。
シリコンバレー全体にそういうpresentableな起業家をよしとするカルチャーもあるし、そういう人たちが実際多いし、あのなかでもまれると日本人ももっと自信持って、ハッタリの1つもかましてやろうという気になると思いますね……。もう「10 trillion dollar market ! 」とか普通に言ってますね。
(一同笑)
「おいおい」って思うんだけど、日本人は少し恥ずかしいじゃないですか。だからそういうのないんですよね。とくに2分間、それがもうショーみたいになっていて、そこはすごいなと正直思いました。
久保田:あと500人いる会場なんですけど、あれ、地味にお尻痛いですよね?
前田:お尻痛い。
久保田:(笑)。いや、本当に500人いるんですけど、もういわゆるシリコンバレーの有名なエンジェルとかVCの人たちゴロゴロいて、その人たちがもう会場に入りきれないんですね。お尻痛いというのは椅子が最悪なんですよ。こんないい椅子じゃなくて、なんか小学校の木の……。
前田:固いですよね(笑)。
久保田:6時間ぐらい座りっぱなしだとみんなこうやって動き出すという。最悪に椅子が固くて、そういった著名なエンジェルとかも地べたに座ってるしみたいな。そういう「なんであの椅子なんだ?」という感想がありつつ。
それぐらい人が溢れてるというのは何を意味するかでいうと、やっぱり資金がコモディティ化したからだと思っています。お金はもう腐るほどあって、会場は投資したい人で溢れかえっているんです。立ち見や床に座り込む人もいて。日本からの登壇者はいないんですけど、我々のような日本から行く投資家はいます(笑)。
次のNext Big Thingのテーマをみんなすごく探していて、でも「AIもちょっと、去年だしな」「自動運転、う~ん、難易度高め……」「IoT、そうだよね、マネタイズ難しいよね」とか、なんかちょっとどれも微妙で踊り場的な。バズワード化するトレンドに熱狂するんだけど、事業化に関してはちょっと先な印象、だけど資金は溢れかえっているというのがすごく大きな、もうどマクロの話です。
そんななかで、バリュエーションは一時期よりは沈静化したんですよね?
前田:そうそう。2013年がピークかな。今はちょっとまた。
久保田:ですよね。
前田:うん。
久保田:なんか10とか。
林口哲也氏(以下、林口):10ミリオン前後ぐらいのところですよね。
久保田:沈静化したものの、たまたまここ出てるんですけど、やっぱり一部のよさげなテーマとかイケてるスタートアップにけっこう資金が集中しています。
久保田:これはCruise Automationという会社で、フォードが10億ドルで買収したんだけど、そこに投資していたエンジェルが軒並み入っています。
車系はやっぱりすごく熱いんですよね。DelphiがnuTonomyというのを先週たしか4億ドルで買収してるんですけど、M&Aとか資金が溢れかえっています。
なのでこういうテーマが良さげで、チームも……ここのチームは確かアップルの自動運転やってたメンバーがスピンしたとかなんとかで、しかもMITかなにかのアカデミック系の人も入ってて、めっちゃイケてるよねと。もう来た瞬間これはみんな飛びついてました。
というかこれ、まあY Combinatorってたぶんそうだと思うんですけど、こういう会社が出てきても、もうその時点で投資が全部決まっちゃってて。ね?
前田:そうね。ほとんどの会社。
久保田:プレゼンとかデモデイが終わったあとにネットワーキングの時間があるんですけど、こういう人たちはもういないんですね。もう帰っちゃってるんです。あるいは別部屋に呼び出されて、なんか詰め詰めに楽しい交渉してるとか、そんな感じなんですよ。
なので、デモデイといっても裏話満載みたいな感じです。そういう意味では、そういう資金の偏在というか集中というか、コモディティが上がりつつ、一部が人気化してるかな。
あとはいくつかありますけど、AIがどうこうって話はみんなほとんどしません。もう自然に入っている。日本だと「ザ・AI・カンパニー」ってありますけど、そんなピッチをする人は1人もいません。いろんなプロダクトの中にAIが組み込まれているので、やっぱり彼らは1周先を行ってるかなと思います。
やっぱり人材が、エンジニアが逼迫してるかなと思います。人材採用やエンジニアのツールとか、人に関わる部分。まあ広い意味ではHRテックだと思うんですけど、とくにエンジニア周りで、彼らの採用につながるものや、彼らのツールのunbundlingだとか、そのへんが1つトレンドかなと思いました。
そうですね。じゃあ次行ったほうがいいかもしれないですね。
久保田:トレンドの話を終えつつ、個別ではMay Mobilityが終わって、これがContract Simplyという建設業の工程管理をクラウドに集約するツールです。なにかというと、外側はクラウドの建設業のプロセスマネジメントの顔をしてるんですけど、マネタイズは実は裏側の、請求や決済のところで課金するというものですね。
僕、先週ラスベガスであった「Money 2020」というFintechで世界最大のイベントに行ってきたんですけど。こういうインボイスやペイメントのサービスは、いかにその商流というかトランザクションの中に入り込むかがキーになっています。
今、けっこう金融は「適切な場所で適切なサービスを、適切なプライスでオファーできるか」が肝なので、たぶんこの人たちも、外側は完全に「工程管理のクラウドツール、どうぞ無料です」ってやっていながら、その裏側のインボイスのレンディングや決済のツール、あとはコマースで課金マネタイズするのがけっこうトレンドに近いなと思っていて、入れさせていただきました。
あと、売上が今期で4ミリオンぐらい立ってると言ってます。そういった実事業が立ち上がった会社もまあまあ出てきています。やっぱり実績を見せないとなかなか投資家もついてこないというのが、最近は、さっき言ったようにみんな集中してくるので目立とうとして、こういうかたちだったなということです。
次は、コードレビューの分野ですね。エンジニアの人材逼迫感というのはけっこう半端じゃないんです。彼ら向けツールを出して、いわゆるB to D to Bみたいな話があるんですけど、デベロッパー経由で採用されるサービスもめちゃくちゃ増えていて、いかにデベロッパーに気に入られるか、みたいなトレンドがあります。
久保田:例えばこのPullRequestという会社は、別の会社で働いているトップエンジニアにコードレビューだけをクラウドソーシングできるというサービスを提供しています。
うちでちょっと見てた会社で、例えばプログラムのテストとか、フルローンチする前にいろいろスモールローンチさせるんですけど、そこを全部オートメートする会社でDark Launchチといった会社など、デベロッパーのかゆいところに手が届くようなツールってどんどん今出てきています。
これも、フルスタックで全部自分たちでやるということじゃなくて、外にツールとして使いやすいものが出てきている。その1つのトレンドに合ってるかなと思って選びました。
これはまたフィンテックなんですけど、Original Techというローンの中小金融機関向けのクラウドシステムです。要はホワイトラベルなので、金融機関がこれを導入すればあたかも自社サービスのようにオンラインでレンディングができます、というやつです。
まあ、なんてことないんですけど、なんで選んだかというと、先週のMoney 2020もそうでしたが、フィンテック領域だとスタートアップの顧客獲得コストが高騰してて、なかなか自社のスタートアップのブランディングでお客さんをキャプチャーできないことが課題として見えてきているんですね。
金融機関側はなにが課題かというと、「トップラインに貢献するフィンテックツールってなかなかないよね」「UI/UX止まりかよ」というなかで、こういった、自社で開発する、SIに頼んでフルスクラッチでなにかオフラインで使いやすいものを作るというよりは、「こういうものがあったらコスト削減になるので、真っ先に効果が見えるからいいよね」ということで、スタートアップとしての顧客獲得をある種B to B to Cでやるというニーズにも適うし、金融機関側のとりあえずコスト削減です。
だから中小金融機関に絞っています。チェース・マンハッタンとかバンク・オブ・アメリカとかどうでもよくて、地方銀行みたいなところを狙ったサービスなんですけど、これもそういったトレンドから読み取れる1つのスタートアップかなと思って挙げました。
久保田:今回はバイオテックが多くて、10社以上ありました。ある種、シークエンサーのゲノム解析コストって今めちゃくちゃ安くなっています。しかも今は一部だけ解析するんじゃなくて、全ゲノム解析って、かつて1人10億円ぐらいかかってたのが今はもう10万円ぐらいになっています。たぶんそのうち1,000円ぐらいになるんじゃないかって言われてます。なので、なんとなくバイオテック、ゲノム周りって1つエコシステムを立ち上げようみたいな雰囲気が徐々に出てきました。
かつてはこの領域だと、イルミナというのがシークエンサーで解析してて、あとサービスだったら23and meみたいな、日本でいうとGenequestさんみたいなところでお決まりだったんですけど、もっとこれゲノムっていろんなアプリケーションあるよね……というのに、かけ算でマリファナというすごいところにいってしまって(笑)。
CRISPR-Cas9ってわかります? ゲノム編集の技術があって、ゲノムをいじると結果のアウトプットのデザインができるって、今、ノーベル賞級の発明があるんです。これが、実ビジネスに応用されようとしています。
要はマリファナってちゃんとしたクオリティじゃないと病気になるらしくて、無害であるということ、かつ作付効率の高いものをゲノム編集で特別に作り上げるというサービス。アメリカってもう28州でマリファナが合法化されていて、とてつもない成長産業なんですね。
さっきの、いろんな業界だったりいろんな産業が少し踊り場感があるなかでみんなNext Big Thingを探していて、マリファナはなんとなくニッチに見えるんですけど、たぶん成長カーブでいうととてつもない広がりを見せていて、そこにこういったスタートアップが参入しています。非常にゲノム×マリファナでキャッチーでおもしろいなということで入れました。
ちょっと次は、木村さん、例の(オフレコ)ルールで割愛します(笑)。すみません、僕も忘れてました。
木村:わかりました。
久保田:というわけですが、はい、以上です。
木村:はい。ありがとうございます。
(会場拍手)
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