2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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生徒A:市場の現在の成長率と10年後の成長率をどのように見極めれば良いのでしょうか?
サム:皆さんに良いお知らせです。このポイントについて学生である皆さんはとても有利です。皆さんの直感を信じてください。皆さんより年配の人々は若い人がどんなものを喜んで使っているのか頭を使って想像しなくてはなりません。
その反面、皆さんは今皆さんがどんなものを気に入って使っているか、周りの友達がどんなものを使ってどんなことをしているのかを観察することで年配の人々よりもより優れた感覚・直感を得ることが出来るからです。
今の質問に対する答えは「自分の感覚、直感を信じること」です。皆さん自身がよくやること、よく使っているもの、同世代の友達がどんなものを使っているか、これらに着目すれば自然と今後の市場を予期することが出来るでしょう。
今日の講義の前にもうひとつだけ質問を受け付けます。
サム:とにかくやり続けるしかありません。他に良いアドバイスがあればよいのですが。学生であれば、ストレスで疲れ果ててしまえば諦めることができます。「もうこれ以上は無理だ。今学期はもうよい成績を取ることは諦めよう」と。スタートアップをやっていく中で最も困難なことのひとつは、会社を経営していることが現実であり、とにかく進み続けるしかないということです。
「疲れたら少し仕事を離れて休めばいい」というよくあるアドバイスはスタートアップ創設者には当てはまりません。とても消耗しますが、創設者はこれを理解せねばなりません。
とにかく前に進み続けるしかありません。周りの人に頼りましょう。創設者のうつ、気分消沈はシリアスな問題であり、周りからのサポートが必要です。燃え尽き・疲労困憊・消耗を乗り越えるには、自分が消耗しきっている事実とその原因をよく認識するしか方法はありません。そうするうちに物事は良くなっていくはずです。
(会場笑)
辞めてもらうことが避けられないこともあります。まずは共同創設者についてお話します。共同創設者との関係が会社の中でもっとも大切なポイントのひとつです。共同創設者とぎくしゃくすることに気をつけ、わだかまりがある場合にはすぐに話し合いの機会を設けることだとよく言います。
これは事実で、YCでもスタートアップが初期の段階で失敗する原因のひとつとして共同創設者同士の対立が挙げられます。しかし、なぜか多くの人が共同創設者を選ぶよりも、新しく人を雇う時のほうがはるかに慎重です。これは絶対に真似してはなりません。
スタートアップ経営人生において、誰を共同創設者として選ぶかは最も重要な決断です。これを理解し慎重に決断しましょう。正確な理由はわかりませんが、学生は誰を共同創設者とするかの判断を下すことがとてもヘタです。あまり考えることなしに「誰か」を選んでしまうのです。
「私はスタートアップを始めたい。あなたも同じようにビジネスを始めたい。それなら一緒にスタートアップを始めようじゃないか!」「ねぇ、実は共同創設者を探しているんだ。お互いのことをよく知らないけれど、まぁ一緒に会社を始めてみようじゃないか!」とこんな様子です。
これは本当にバカげています! こんな風に簡単に新しく人を雇い入れたりしないでしょう? しっかりと検討するでしょう? しかし多くの人がビジネスパートナーをこのように選んでいます。これは絶対にやってはいけません。考えなしに適当に選ぶ、あるいはよく知らない・深い信頼関係を築いていない友人とも呼ぶことが出来ない人を共同創設者に選ぶと、何か問題が起きた時に最悪な状況に陥ります。
大学内で共同創設者と出会うのが良い方法です。もしも大学に行っていないのであれば、面白い会社に勤めてそこで出会うのも良いです。もしもFacebookやGoogleに代表するような企業に勤めていれば、そこはスタンフォードと同じ程度に優秀な人が集まる場所でしょうから。
相性が合わない・優秀ではない共同創設者と一緒にやるよりは、ひとりで会社をやるほうがマシでしょう。しかし、ひとりで創設者をやるのもまた大変なことです。ここに来る前にある統計データを見ていました。YCの中で最も成功しているトップ20の会社のほぼ全てにおいて、少なくとも2人の共同創設が存在します。私達YCが創設者1人でやっている会社に投資する割合は、10あるうちのひとつ程度です。
最も良いケースはよく知っている人を共同創設者にすること。それが叶わない場合には1人でやる。多くの学生起業家がするように、適当に共同創設者を選ぶのは最悪です。
共同創設者について考える時に皆さんの頭に浮かぶ疑問は、「ここまでは理解したが、現実としてどんな人を選んだら良いのか?」ですよね。YCの皆が知っているフレーズがあります。それは「情け容赦なく手厳しく、様々な能力がある人を」。
揺るがない、冷静で、簡単に動じない、タフで、あらゆる状況に対応することが出来る人が共同創設者として望ましいです。行動・決定が早く、クリエイティブで、どんなことにも対応する覚悟がある。実はポピュラー・カルチャーの中にまさにこのような人が存在するのです。ふざけていると思われるかもしれませんが、大真面目です。少なくとも覚えやすいし、長いことYCでも同じ話をしてきました。
その人とは、ジェームズ・ボンドです。先ほども言いましたが、ふざけていると思われるかもしれません。でも覚えやすいでしょう? 共同創設者には、何かひとつのことに特化して優れている人を選ぶより、ジェームズ・ボンドのように行動出来る人が望ましいです。
先ほども言った通り共同創設者として選ぶのは、しばらく付き合いがあり皆さんがその人柄を知っている人、理想的には数年間の付き合いがある人です。これは会社設立初期段階で人を雇う場合も同じです。
現状は、多くの人が初期段階で人を雇う場合はきちんと人柄を知っている人を選ぶのにも関わらず、共同創設者選びでそうしない場合が多すぎます。学生であること、学校に在籍しているという立場を利用しましょう。
「情け容赦なく手厳しく、様々な能力がある人」という条件に加え、タフで冷静な人を共同創設者として選びましょう。頭脳明晰な人を選ぶというのは一般論として当然ですが、タフで冷静であるということは、頭脳明晰であることと同じくらいに必要なパーソナリティーです。皆さん自身がタフで冷静ではないという自己認識がある場合には特に。
最近のスタートアップではこんな風に言われる風潮があります、「技術者出身の共同創設者は必要ない。技術者はそれとして雇えばいいのだから。創設者である私達の仕事はマネージメントに専念することだ」。
私達の経験から言ってそのような考え方では成功しません。ソフトウェア出身の人がソフトウェア会社をつくるべきであり、メディア出身の人がメディア会社を立ち上げるべきです。YCのこれまでの経験から言って、共同創設者が2、3人いるのが理想的です。1人ではもちろん物足りない。5人では多すぎる。4人、これはまれに上手くいく場合もあります。しかし目指すのは2人または3人です。
どのように人を雇うか、2番目のアドバイスは「雇うことを目標にしない」ことです。会社を始めて気がつく摩訶不思議なことなのですが、皆が「何人規模の会社なのですか?」と質問してきます。あなたの会社がうまくいっているか、どれだけあなたがすごいことをしているかを測る基準として多くの人がそのような質問をするのです。
会社の規模が大きければ人は関心します。雇っている人数が少なければ、「まだまだだな」と思われてしまう。しかし実際のところ人を雇いすぎるのはいけません。少ない人数でやっていることを誇りに思うべきです。
人が多すぎると、例えば内部混乱が起きる、物事の決定が遅くなる、それ以外にも色々ありますが、結果として多大な経済的損失を被ることになります。人を多く雇っても良いことはひとつもありません。
少ない人数でやっていけることを自慢にしてください。YCで最も成功する会社の多くが創設1年目はものすごく少ない人数でやっています。中には創設者たった1人でやっている会社もあります。そのような会社は出来るだけ長い間、少ない人数でやっていこうと努力します。
むしろ、最初の3人ほど人材の選択を間違った結果物事が上手くいかなくなった会社で、その状況を打破できたケースを見たことがありません。間違った人を早い段階で雇うことは確実に会社の終わりに繋がります。
Airbnbは会社を始めてから最初の候補者と面接するまでに5ヵ月の時間をかけています。そして創業1年目で雇い入れた人数はたった2人です。最初の従業員を雇う前、彼らは全てのスタッフに共有して欲しい企業文化をリストアップしました。
その中のひとつには「Airbnbの為に人生を捧げる覚悟があること」とありました。これに共感できない人は雇わない。もうひとつ過激な例を。AirbnbのCEO、ブライアン・チェスキーは、面接する時に「余命1年と医師から宣告されたとしてもここで働きたいか?」と聞いていました。彼はそれくらい真剣に会社を思ってくれる人しか雇いたくなかったのです。後にその質問はやりすぎだということに彼は気がつきましたが。
(会場笑)
最近では「余命10年と医師から宣告されたとしてもここで働きたいか?」と少し長くしたようです。今だに面接でこの質問をしているそうです。
(会場笑)
彼の会社が初期の段階で大きな困難にぶつかった時、皆がオフィスに泊まりこんで一生懸命仕事をしました。その困難な状況が解決するまで全員で毎日プロダクトを発送し続けたのです。Airbnbが素晴らしいのは、彼らが雇った最初の40人くらいが皆「会社の立ち上げに深く関わってきた」と誇りに思っていることです。これはなかなかレアなケースです。
雇う時に高い条件を設け、時間をかけて人材を確保していくことで、社内全員が皆さんのミッションを信じ、コミットしているという文化が生まれます。皆さんが私のアドバイス通り、本当に必要な場合にのみ人を雇うことにしようと決めたとする。
これは言い換えると、人を探さなくてはならない状況になったら最高の人材を探し出して迎えることが皆さんの最優先すべき仕事になるという意味です。プロダクトが最優先であればプロダクト最優先、資金繰りが最大の悩みの種であればそれを最優先事項とするのと同じことです。
雇用の大変さを多くの創設者が理解していません。彼らは彼らのアイデアが素晴らしければ自然とそれに相応しい人が集まるだろうと思う傾向があります。しかしそれは違います。優秀な人々には他にも検討できるオプションがあるので、最高の人材を確保するのに優に1年はかかることもあります。
皆さんはたくさんのオファーを受ける優秀な人々に対し、いかに皆さんの会社が重要かを理解してもらえるように努め、是非仲間になってくれるよう説得しなくてはならないのです。これが実は「成功する為に、まずはプロダクトを素晴らしいものに仕上げること」と前回話したことにも繋がります。最も優れた人々は、彼らは「ロケット船」に乗り込むべきだということを良く理解していますからね。
ここにいる皆さんも理屈として理解できるでしょう? 皆さんが仲間に入って欲しい優秀な候補者もこれを理解している。優れた人々は皆さんの会社が確実に成長していることを確認してからではないとチームに入ろうとはしません。
「新しい人を雇うプロセスの為にどの程度の時間を費やせばよいのでしょうか?」という質問が今朝届きました。答えはゼロか25%です。皆さんの選択は人を雇用するのにまったく時間を使わない、または新しい人を探して迎え入れることを最優先事項と定めて多くの時間を投資する、このいずれかしかありません。
「50%の時間を新規雇用に使うべきだ」とアドバイスするマネージメント関連の本も出ていたりしますが、それを書いてそのようにアドバイスしている人のほとんどが、もし実際に彼らの時間の10%を新規雇用の為につぎ込んでいれば良いほうであるというのが現実です。50%と比べると25%は少なく見えるようで、かなり膨大な時間の投資量となります。皆さんが「人を雇うモード」に入ったら実際にこのくらいの時間をかけて、人を探して会ったりする時間に費やすことになります。
特別優れているわけでもない「普通」の人を「まぁいいか」と妥協して雇うと後で必ず後悔します。私達はいつも創設者にこのように警告していますが、彼ら自身が実際に後悔してみなければ本当の意味での学びにならないようです。
仲間に入れる人を妥協すると、社内文化が乱れます。会社に毒です。「平凡」な人が大企業の中にいると、その人はある程度会社が抱える問題でしょう。しかし、そのような個人が直接企業を倒産に追い込む原因とはなることはありません。しかしスタートアップは違います。仲間に入った順番が5番目のメンバーまでの中に「平凡」な人がいる多くのスタートアップが失敗に終わります。
ある友人は会議室の中にこんな標語を掲げています。これを彼は面接時に面接に来る人に見えるように配置しているのですが、こんな風です「2流エンジニアに素晴らしい会社をつくることは出来ない」。
(会場笑)
「この人に会社の将来を賭けてもよいものか?」常にこう考えてください。雇う人の基準は自然と高くなります。会社が成長し、規模が拡大するにつれ、雇う人を妥協しなくてはならない時が来るでしょう。到底間に合いそうもない期限があるので誰かを早急に入れなくては、等。
妥協しなくてはならなかった場合でも妥協すると後悔します。セオリーと実践は違います。このポイントについてはこのコースで後日ゲストスピーカーからお話がある予定です。要は初期の段階で適当に人を選んで仲間に入れてはいけない、ということです。
どこから候補者を集めるべきか。これもまた学生が間違いを犯しやすいポイントです。最も良いのはあなたがすでに知っている人を候補者とすること。または会社の他のメンバーが知っている人、です。最も優れた会社の多くが、最初の100人目、時にはそれ以上までの仲間を個人的なコネ・つながりだけで集めています。
多くの創設者が自分の全く知らない候補者を素晴らしい人材であると確信を持つことも、他のメンバーに同じように全く知らない候補者に確信を持つよう促すことにも疑問を感じます。FacebookやGoogleで職を得た場合、最初の数週間は今後の採用の為にあなたが知っている全ての優秀な人々をリストアップするように人事部から言われます。
個人的なつながりが新規雇用の鍵です。もうひとつの鍵はシリコンバレー内だけではなく他の場所にも目を向けてみること。シリコンバレーでは優秀なエンジニアは引っ張りだこですが、シリコンバレー以外の場所にも皆さんが知っている優秀な人物で、皆さんと一緒に働きたいと思ってくれる人がいるはずです。
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