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新進気鋭の起業家が語る20代のチェレンジの仕方(全4記事)

「効率よくやろうとする人はダメ」 世界を変えたい“中二病”起業家が語る、20代の戦い方

新進気鋭の若手起業家4名―ウォンテッドリー・仲暁子氏、trippiece・石田言行氏、リディラバ・安部敏樹氏、FiNC・溝口勇児氏―が一同に会し、学生時代をどのように過ごし、何をきっかけに起業へと進んだのか、20代にやっておくべきことを紹介します。(IVS 2014 Summer Workshopより)

エネルギーが有り余っていた

佐俣アンリ氏(以下、佐俣):ここからの2人はぶっ飛びな感じがするので、何を考えて学生生活を送っていたかというのを聞きたいです。じゃあ、まずは安部さんどうですか。

安部敏樹氏(以下、安部):1年生とか2年生のときですか? 僕は花火を打ち込んでましたね(笑)。大学には必ず守衛室ってあるじゃないですか。いつも考えていたのは「守衛室にあんなに人は要るのかな」ってことだったんですね。夜なのに3人とか4人とかいて、それは国の税金でやる必要があるのかと思って。

じゃあ、俺らは仕事を作る必要があるだろうということで、渋谷で飲んだ後の夜中2時くらいに大学に戻って、花火を打ち込みまくるということをずっとやってました。

毎週金曜になると、ドンキで大量に買った花火をバンバンバンバンバン! って。友達10人くらいで無線を使ってチームワークを組んで、「プランΔ(デルタ)だ!」とか言って臨機応変に守衛さんと戦うというのを、1・2年生のときはやってました。こういうのでいいんですかね(笑)?

でもまぁ、僕は起業をしたいって思ってたわけじゃないので。気づいたら、事業として回したほうがいいようになっていたので、法人をたてて仕事になってきているという感じです。もしかしたら、起業がしたい、起業ありきという部分ではちょっと違うのかもしれないなと思ってましたね。

佐俣:エネルギーが余ってたんですかね?

安部:やっぱり大事ですよね。何をするにしてもエネルギーがないと。エネルギーがあり余っていれば、変な話、たくさん失敗してもいいじゃないですか。あり余ってんだから、ちょっと分けてやれって感じで。最初からエネルギーがないと、「効率よくやろう」とか言い出しちゃうわけなんですね。

基本的に、効率よくやろうとしてる人はうまくいかないんで。最初からエネルギーがあり余ってトライばっかりしているうちに、「あっ、ここの金脈当てたぜ」みたいなことが出てきて、うまくいくので。エネルギーは大事ですよ。

何かできないかとをずっと探していた学生生活

佐俣:僕は、安部さんの話にすごく同意ですね。僕のまわりには学生の頃に起業して会社を大きくしたやつがいっぱいいて、彼らの学生の頃のプロフィールを見てみると、いわゆる「意識が高い学生」なんですね。ツイッターのプロフィールで、「○○大学/○○/○○/……」って、いっぱいスラッシュが入ってるような(笑)。

要は、いろんな活動をしているわけです。言行(石田言行氏)も、学生の頃のプロフィールを見せてもらったら、学生団体の人です! って感じでした。僕はそれでいいと思うので。やっぱり、エネルギーがあり余ってるんですね。

ちなみに僕が学生のときに何をやっていたかというと、1・2年のときはずっと体育会をやっていて、ボート部で年間300日合宿っていうすごく夢のある生活でした(笑)。日本で1番練習してたと思います。それで、腰を壊して運動ができなくなっちゃったので、突然ニートになったんですね。大学なんて通ったこともなかったし、筋トレしかしてなかったので、何もできない。

あまりに暇すぎたので、家に置いてあったカメラを使って、写真部に入って1年間で10万枚くらい写真を撮ってたんです。そのときの写真の仲間が、raksulの共同創業者なんですけど。とにかく、僕も学生の頃はやることを探してたのかな。パワーが余ってたので、何かできないかと探してたんですね。安部さんはそれが花火だったんですね?(笑)

安部:花火だけじゃないですけどね!(笑) ありとあらゆることをやってた気がします。

起業をするつもりは全くなかった

佐俣:何をやってたんですか?

安部:今の仕事につながるという意味では、ホームレスの人たちの炊き出しをやったりとか。それは、もちろんホームレスの人たちを助けたいという気持ちもあったんですけど、単純に興味があったということもあります。

あとは漁船に乗ったり、旅行もいっぱいしてましたね。いろんなところを旅して、一緒にやって、みたいな。あとは、やっぱりモテたいじゃないですか。いかに女の子にモテるかというのはずっと考えてましたね。

佐俣:結果はどうでした?

安部:あんまり成果は出なかった(笑)。でも、そこで効率を求めちゃいけないわけですよ。いかに効率よく女の子を落とすかじゃなくて、とにかくアタックをしてみると。それが大事だと思いますね。

佐俣:ありがとうございます(笑)。溝口さんはどういう学生生活でした?

溝口勇児氏(以下、溝口):僕は大学に行ってないんですけど、高校生のときは平日は6時くらいまでサッカーをして、7時からマクドナルドでバイトみたいな。土日は引っ越しのバイトとかをやって。

僕は自分で生計を立てなきゃいけない複雑な環境だったので、バイトに明け暮れてました。

佐俣:気になるんですけど、そこから今の起業に至るまでにポイントはあったんですか?

溝口:いろいろあるんですけど……高校生のときに佐川急便に就職が決まってて、楽しくなさそうだなと思って華やかそうなスポーツクラブのトレーナーを始めたんです。で、負けず嫌いだったのと、上の人が簡単に言うといけすかなかったんですよね。

そのとき出会った言葉で、和久さん(和久平八郎・ドラマ『踊る大捜査線』)が「正しいことをしたけりゃ偉くなれ」と言ってて、それでどんどん偉くなっていこうとステップアップしていくうちに、世の中にはおかしなこと、不条理なことがたくさんあるなと思って。

起業なんてまったくしようとも思ってなかったんですけど、結果的に起業せざるをえなくなった感覚ですかね。

(安部:大きくうなずく)

佐俣:なんですか?(笑)

安部:怒りは大事だなと思って(笑)。不条理ふざけんな、みたいな。頭が沸いてるおじいさんとかいるじゃないですか。あぁいう人たちになんで従わなくちゃいけないんだろうというのはすごくあって。そういう人たちが作った仕組みというのは頭が沸いてるわけじゃないですか。

就活して就職して、それに従います! って言ってもしょうがないわけで。世の中のためになんないじゃないですか。頭が沸いてるやつはぶん殴っていかなきゃだめだってことに、すごく共感を持ちましたね。

不条理を打破するために影響力を持ちたかった

佐俣:お二人はだいぶロックンローラーな感じで……(笑)。再現性があるかって言われるとなさそうな感じですけど。でも、怒りとか強烈なエネルギーとか、もっと自分がっていう……溝口さんは「自分がイチローになればいい」と思ったのがきっかけだったとインタビューで聞いたんですけど、そういうことですよね?

溝口:僕が23歳のときに大きなスポーツクラブの支配人をやることになりまして、従業員も20人強いて、ひとつの環境のトップになったんですね。そこが僕の至らなさもあってなくなることになったんですけど、なくしたくなかった。

その地域はドーナツ化現象みたいなのが起きていて、中心地のお店なのでもっと稼がせようということで始まったお店だったので、行政も関係してたんです。だから市長とか市議会議員とかに「会えないか」とアポを取ろうとしたり、役所の入り口にたむろして見つけようとしたりしたんですけど、なかなか会えなくて。

ようやく1時間の約束で時間をもらえて、すごく時間をかけて事業再建計画を立てていったんですけど、そのときにさっき言われてたような頭がイカれてるおじさんに「時間がないから15分にして!」って言われて。

15分一生懸命プレゼンするんですけど、まったく話を聞いてくれない。思ったのが、どうしてこいつは俺の話を聞いてくれないんだろうと。そのときに、「自分がイチローだったら絶対聞いてくれたのに」とトチ狂ったことを思って(笑)。

佐俣:それは、イチローみたいなスターになってれば、全部聞いてくれただろうってことですか?

溝口:そうですね。純粋に影響力というか。さっきの「正しいことをしたけりゃ偉くなれ」というのと近くて、助けたい人を助けたいとか、不条理を打破したいとなったときには、影響力、チカラがないと難しい。

そのチカラを持った存在というのが、僕の中での代名詞ではイチローだったんですよね。ただそれだけの話で、イチローになれたらなと思って。それもひとつの起業のきっかけですね。

想いを言葉にすることが大切

佐俣:言行は、起業に至るターニングポイントというのは人生であったの?

石田言行氏(以下、石田):起業する、起業するって言ってると、起業しなきゃいけない空気感になっていくんですよ。

佐俣:じゃあ、周りに持ってかれたってこと?

石田:そうじゃないですかね。でも想いを言葉にする、口にするっていうのはすごく大事だと思っていて。何か言われたときに「僕は起業したいです」って。ある意味では逃げ場をなくしていくんですよね。どんどん逃げ場をなくしていって、結局そうしたっていうか。

「言葉」と「行動」って書いて「言行(いあん)」って読むんですけど、言ったことを実際に行うっていうのを僕自身の人生の決めごとにしていて。僕の場合は、さっき言われてた「起業が目的」のパターンだったんですけど、とにかく起業するんだっていうのは周りに言い続けてましたね。

結果やりたいことが漠然と決まっていって、起業したって感じですね。ターニングポイントっていうポイントはなくて、ゆっくり時間をかけて作り上げていったという形だと思います。

起業したい学生へのアドバイス

佐俣:今、ここに来てるような学生の方が「起業したい」って言ってきたら、何てアドバイスする?

石田:えー、したけりゃすればいいし……(笑)。する気がないならしなければいい、とだけ……。

本当に自分自身の問題なので、起業するのが全部正解だとはまったく思ってないです。夢を叶えたいとか、やりたいことがあるとか、純粋に「勝つ」っていう欲求がないと勝っていけない世界だと思うので。

学生起業家というと、成功率では低いほうだと思うので、そこで勝ち抜くというのは大変なことですけど、想いが強ければやってみればいいんじゃないかなと単純に思いますね。僕は別に、促すこともしないし、否定することもしないしっていう感じです。

佐俣:仲さんはどうですか?

仲暁子氏(以下、仲):学生さんに聞かれたらですか? 起業して、ほとんど99%くらいの人は失敗すると思うんですけど、私も学生のときに失敗してよかったと思うので、やるのはやったらよくて。でも起業が目的だと、今は登記が1円でできるので(※正確には資本金が1円でも可、登記には別途費用が発生)登記した瞬間に夢が達成、みたいな(笑)。さあどうする? って感じになるんですよね。

やるんだったら最終的に世の中にインパクトを与えないといけないと思っていて、学生のスタートで売上10億とか20億とかの会社を作っても意味がなくて。最終的に時価総額1000億いきます、くらいの次のDeNAとかソフトバンクを作るくらいの意気込みでやってもらいたいので、起業が夢になって終わっちゃうのはいけないなと思いますよね。

タイミングにうまく乗れるかがカギ

佐俣:仲さんは起業するまでのターニングポイントはあったんですか?

:ターニングポイントは、一言でいうと「タイミングがよかった」という感じですね。何があったかっていうと、実はゴールドマン・サックスに入った後、漫画家になろうと思ってたんですよ(笑)。

で、ゴールドマンをやめてしばらく漫画家を目指してたんですけど、ご縁があってFacebookに入ることになって、これからFacebookが日本を変えていくってことに気が付いたんです。

皆さんGoogleをめっちゃ使ってると思うんですけど、10年……いや5~6年前くらいまでは、Googleが情報を探し出す1番のツール、手段だったんですよね。自分が知っている欲求は検索できたけど、それがソーシャルに置き換えられたときに何が起きたかっていうと「自分の知らない情報」。

例えば、恵比寿でラーメンを食べたかったら「恵比寿 ラーメン」で検索できますけど、自分が好きかもしれない音楽家のコンサートが恵比寿であっても、知らなかったら行けないじゃないですか。

でも、mutual friends(共通の友達)が「あなたはこのコンサート好きかも」みたいにシェアしてくれたら気付くっていう、まったく異なった情報伝達の時代になるっていうことを、Facebookにいるときにわかったんですよ。

で、見えちゃったんですよね(笑)。そういうチャンスは10年に1回くらいしかないよって言われて、当時25歳とかだったんで「次は35歳か、体力がなくなるから今のうちにやろう」みたいな感じですね。

30歳になって起業するのは難しい

佐俣:その「今のうちにやろう」っていうのは超大事だと思ってて。皆さん、20歳から23歳くらいの人が多いと思うんですけど、僕が今30歳になってわかったのは、30歳になって起業するのって皆さんが今起業するより200倍くらい難しいんです。

人間って、25~26歳くらいから結婚が始まるんですよね。で、2年後の28歳くらいで出産があります。その前後に、家を買うってのがあります。30歳くらいになると、それなりの確率で親が健康じゃなくなったりします。僕の周りでも、学生の頃に起業しようって言ってたやつのほとんどが起業しないんですよ。

これは別に志がないからじゃなくて、ロジカルに考えてリスクを取れなくなる年齢が来るっていう理由が結構多いと思って。今、そういう年齢ですよね?

:そうなんです。25歳の終わりくらいに会社を作ったんですけど、本当にやっといてよかったと思って。

佐俣:僕の奥さんは今31歳ですけど、僕が27歳、奥さんが28歳のときに同時にサラリーマンをやめて起業したんです。そのときに収入がゼロになったんですけど、今もう1回収入がゼロになれるかっていうと、やっぱりちょっと怖いと思う。

人間って、歳をとればとるほど怖いものが増えるんですよね。なので、皆さんの年齢くらいが1番怖いものがないんじゃないかなっていう……。

:そのことを、私が学生のときに大人から聞いてもピンと来なかったでしょうけどね(笑)。

佐俣:今、俺おじさんっぽかったよね(笑)。

:でも、そんな感じですね。

20代にやっておくべきこと

佐俣:安部さんも、そろそろ20代が終わりかけてくるじゃないですか。今何歳?

安部:今26歳ですね。まだ半ばですよ! それは溝口さんに振ったほうがいいですよ(笑)。

佐俣:じゃあ、溝口さん。僕らって、20代が終わる年齢じゃないですか。20代のうちにやっといてよかったこととか、やらなくて後悔したことってありますか?

溝口:そうですね……。ちょっと質問から外れるかもしれないんですけど、20代のときによかったなと思うのは、日々頑張らざるをえない環境だったのもあって、「周りの芝生が青い」とかそういうサイドブレーキをあまり引かずに目の前のことをがむしゃらにやってきたというのはあります。

目の前のことをがむしゃらにやって、そこにエネルギーを投下していくと、いろいろ広がっていくというのはあったんですよね。あるときそれに気づいて、僕だったら大学に行ってませんけど、そういう人たちがうらやましいという感情も徐々になくなってきたというか、そういうことは働いていくうちにありましたよね。

佐俣:なるほど。安部さんはどうなんですか?

安部:やっといたほうがいいことですか?

佐俣:やってよかったな、ってことはありますか?

安部:いや、すべてよかったですね。何でもやってよかった(笑)! やらないよりやってよかったというのは間違いなくあって、とにかく何でもやったほうがいいって感じですよね。

(会場に)この中でお金儲けしたい人はどれぐらいいますか? 「金ほしいぜ!」みたいな。……ああ、いいですね。じゃあ中二病っぽく、「私は世界を変えたい」っていう人? ……いいですね! そういうのが大事だと思うんですね。

僕が思うのは、孫さん(孫正義氏)ってハゲてるじゃないですか。僕は会ったことがないから言えるんですけど(笑)。孫さんは若い頃に「会社を1兆、2兆と数えるようになりたい」ってことを言ってたわけですよ。

その1兆、2兆というのはお金自体に価値があるわけじゃなくて、そのお金を通して人が動いたりだとか、社会の仕組みが変わってくことに意味があるわけじゃないですか。そうすると別にお金だけじゃなくて、世界を変えたいでいいと思うんですね。

起業すれば認知欲求は満たされる

安部:そのためにやってみると、結構せこせこ金も稼がなきゃいけないんだなってわかってくるんですけど。ただ、お金儲けをしたい人が起業するみたいな価値観を持つんじゃなくて、「こういう世の中を作りたい」ってなったときに、その世の中の作り方として今の資本主義というプラットフォームに乗るのもひとつの手だし、起業というものは世の中を変えていく手段としてはあると思うんですよね。……っていうのが言いたかった。全然関係なかったですね(笑)。

(溝口:挙手)

佐俣:はい、溝口さん。

溝口:僕のところにも、起業したいっていう若者がすごく来るんですよ。さっきアンリさんがおっしゃったように、若いうちに起業するリスクはほとんどなくて、仮にお金を周りに借りて失敗しても、人生を棒に振るレベルではない借金と、周りにかっこ悪いって思われるくらいで。

それが、年齢を重ねていくうちにどんどんリスクが上がっていく。そういう意味では、若いうちは崇高な目的を初めから掲げて起業する必要はないんじゃないかなって、僕は思っちゃうんですよね。

だいたい若いうちに起業する人って、いわゆる認知欲求的なところだと思ってて。マズローの欲求段階説とかでいうと。かっこいいと思われたいとか、社長と呼ばれたいとか、そんな経験をしたいみたいな。僕は、認知欲求を超えることなく自己実現の欲求まではいけないと思ってて。

だったら社長になれば、すぐに認められるという部分では満たされちゃうんですよ。すると、どうでもよくなっちゃうんですね。社長と呼ばれたいみたいなのはまったくなくなるので。

そしたら初めて、その先に「俺はこういう世の中を作りたい」「事業を通じて世の中に価値を残す」というほうに向かうと思っていて。だったら早めに、認知欲求みたいなものを満たすために起業だったら起業をしちゃえばいいと思うんですよね。

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