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プロダクト・イノベーション(全5記事)

「好奇心は後天的に育たない」 KAIZEN platform須藤氏らが語る、スタートアップが人材に求める“3つの絶対条件”とは?

革新的なプロダクトやサービスをつくり続ける代表企業の4名―Google・徳生健太郎氏、freee・佐々木大輔氏、リクルートライフスタイル・大宮英紀氏、KAIZEN platform・須藤憲司氏―が一同に会し、スタートアップの成功のカギ「人材」に求める条件についてディスカッションしました。(IVS 2014 Springより)

イノベーションには社内での問題意識の共有が不可欠

小野裕史氏(以下、小野):特にGoogleさんだとか、リクルートさんにお伺いしたいんですが、どういう人を採用すれば、そういったアイデアをどんどん生み出せるのか、そもそもアイデアを持っているやつしか採らないみたいな。やりたいことがある奴しか採らない、っていうのはあるかもしれないんですけれども、そこの辺の採用面、もちろんこれは4名それぞれに聞いていきたいですけど、その辺っていかがでしょうか?

徳生健太郎氏(以下、徳生):「アイデアを持っている人を雇う」っていうことはあんまりないですね。別に、避けるっていうのではなくて、検証できないところなので、問題意識をちゃんと理解して、例えばインタビューの質問であったり、それに対してものすごく速く考えて、問題の本質をとらえて、それに合うような回答をしてくれるかっていうところが判断になりますかね。

先ほどおっしゃってたイノベーションが出ないっていうのは、元を正すと、やっぱり課題とか問題意識が共有されてないんじゃないかと、当事者意識と問題の本質、それがわかっていれば誰だって考えるし、イノベーションが出ないって言っても、お互い問題を意識すると、それを考える会話が起こるし。

「気になるから、皆何やってるんだろう?」という気持ちは起こらないと思うんですね。だから、そっちの自分が、どれだけチームの連中とそういう意識を共有できてるか、当事者意識をちゃんとコミュニケートして、どれだけ大事かってことを自分が伝えられているかというところで、人の力の出し方も変わってくるんだと思います。

課題の本質まで考えられる人を採用したい

小野:大宮さん、先ほどのスライドの中でも「人×制度」という話もありましたが、この辺のブレイクダウンも含めてぜひ。

大宮英紀氏(以下、大宮):そうですね、僕が採用のときに見たりするのが、徳生さんと一緒なんですけど、課題設定がちゃんとできているか、というところでして。

その手段は、テクノロジーの進化だったり、その人が成長することによってスキルが身についてくると思うんです。課題設定が変な方向にいっているとうまくいかないので。まずその課題設定ができていて、それを本当にやりたいと思えるっていう情熱を持ちつつも、ポジティブな人ですね。

それで結構過去の話を聞くと、そういうふうにいろんなプレッシャーに耐えられる力ってすぐに高められないと思うので、結構小っちゃい頃から、そういう経験をしながらなんとか登ってきた人って、話をしていてもわかると思うので。

そこの課題設定と、その諦めずやれるような形で、過去のバックグランドもやれている人は、すごくいいなっていうか共感できますし、仲間として迎え入れて一緒に仕事をやりたくなります。

小野:まさに、実際色々と採用もしているお二方、いかがですか。

佐々木大輔氏(以下、佐々木):僕たちは採用する過程で、あまり制約にとらわれずに、「本質的に良いことはこっちだよね」という考えをはっきり持っている方っていうのを、積極的に採用するようにしています。

小野:課題性だけでなくて、その課題の本質まで。

佐々木:本質まで、もうこの制約が間違ってるよね、とかそういうことをやっぱり言える人で。その結果何が起こるかと言うとですね。うちの会社で次に何をやるかブレストしよう、みたいなことをやると、もちろん「こんなものを作る」とかっていうのも出るんですけど、なんか「こういう法律を変える」とか……。

小野:特にそれにかかわる分野ですね。

佐々木:そうです。紙を使うっていう習慣をなくすだとか、なんかそういう、それ自分たちで変えられないよね、みたいなことも含めてアイデアとしていっぱい出てくるんです。

これを変えるには、こういうことを実現しなきゃいけないとかっていうところで、また更に面白いアイデアも出てきたりとかして。何か制約とかを取っ払って、本当にこれが良いよね、みたいなことを考えられる人っていうのが、すごく僕達は相性が良いというか。カルチャーフィットが良いなと思っています。

好奇心は後天的に育成するのが難しい

須藤憲司氏(以下、須藤):そうですね。僕、3つくらい大事にしていることがあるんですけれども、1個すごく大前提として「好奇心」があって。好奇心って結構、後天的に育成したりって結構難しいってリクルートのときから感じていて。

うちは新卒採用とかやってないんでわからないんですけど、新卒で来る学生の子たちとかで、好奇心が無いって結構キツイなと。どれだけ仕事のことを教えてあげられても、好奇心の持ち方だけは教えてあげられないので、好奇心が有る無いって大事。

僕ら中途採用ばかりですけど、それって年齢あまり問わずだと思っていて、いくつになったって、好奇心がある人はやっぱりすごく話していて楽しいですし、さっきのイノベーションが起きやすいんじゃないかなっていうので、まずは好奇心と。

2つ目が、ベーシックな地頭というか、3つ目が、これもなんか好奇心に近いのかもしれないんですけども「偏り」っていうかですね。変わっている人、なんかちょっと若干狂っているなとかですね(笑)。

佐々木:普通じゃない発想。

須藤:性格悪いなとか、口が悪いなとか、何でもいいんですけど、「ちょっと偏っている」ってすごく大事だなと思って。全部平均的って、チームの構成、人としてのバランスとチームとしてのバランスってあると思うんですけど、ある程度、多様性があった方が、チームとしてのパワーにすごくつながるなと思っていて。

「健全に偏る」みたいなことをすごく大事にしていて、健全に偏った人を採ろう、みたいな。難しいんですけど、言葉ではわかるんだけど、じゃあどういう人っていうと、大体「ちょっとどうかと思うよね」みたいな発言をしたりとかあるんですけど。ちょっと味のある人を採る、っていうのをやっています。はい。

小野:特に「好奇心」っていうキーワードは僕もすごく賛成で。好奇心がないと、そもそも課題にも気がつかないですよね。興味を持つから、そこに何か課題を見つけられるチャンスになるわけですよね。

須藤:そうですね。さっきの大宮さんの話にもつながるんですけど、要は、課題設定って、好奇心がないと言われたことをやることになるので、これだと相当難しいんじゃないか、というふうに思うんですよね。なので、いわゆる一般的に優等生みたいな人ばっかりいると、すごく大変なんじゃないかなみたいな。

課題を共有するためには、まず課題の発信を怠らないこと

徳生:人を雇っちゃった場合はどうするかっていう話、もちろん皆さんにあるとおもうんですけれども……。

小野:ぜひお願いします。大事ですね(笑)。

徳生:それもちろん人ありきの話だと僕は思いますが、会社がちょっと大きくなってくると、ミッションとか問題の共有というのが難しくなるというか、怠けちゃうと本当にしなくなっちゃう。下の人に、「例えばこういう問題がある」っていう、「エグゼクティブリーダーミーティングがあるんだ、じゃあこれやらなきゃいけないんだ」っていうのでは多分駄目で。その経緯を全部説明するとか。

あと自分のいろんな、こういう業界の人と話したり、ユーザースタディを見たりとか、データ読んだりして、「これってやばいんじゃないの?」というところで、じゃあちょっとこのフィーチャー、ターンダウンしようといっても、ほとんどわからないですよね。

いくら好奇心があっても、何か言われただけだし。僕がここに来た結論というのは、いろんなステップを踏んできたので、そのステップをある程度共有してあげないと、向こうだって同じ波長に乗ってこない。

その説明義務。トランスペアレンシーっていう、部下から見たらトランスペアレンシーと見えると思うんですけども、その努力をしなくなったり、チームが大きくなってくると説明義務を怠ってくる、すると課題設定っていうのがぶれてくるって気がします。

なので、僕はどちらかというと性善説っていう性質なんすけども、とりあえず、材料を全部上げてみて、それで課題を考えてもらうというところで、やんなきゃいけないというのは、雇ったあとにいろいろできることだと思いますね。

小野:積極的に、こちらからも課題を発信していかないと……。

徳生:発信が大事です。それにどんな些細なことでもいいから、この記事見たよ、とりあえずFYIとかいってシェアするとか、それをやっぱり自分が来たステップをできる限り共有するというところが、課題設定を円滑にするひとつの重要なステップだと思います。

質疑応答-成長のフェーズで関わる人間をどう変えるか

小野:ありがとうございます。そろそろ会場に振りたいと思うんですが、残り10分ぐらいということで、ぜひこの質問してみたいという方がいらっしゃいましたら、手を挙げていただければと思うんですが。

質問者:本日は貴重なお話ありがとうございました。イノベーションはすごく大事だと思うんですけれども、全く何も無いところから、1を生み出すイノベーションと、いったん出したものを成長させて1を10にするイノベーションと、ただその先をもうちょっとオペレーティブな仕事も増えてくると思うんですけれども。

このフェーズ、フェーズで関わる人間をどういうふうに変えていくのか、組織を変えていったりとかっていうことはあると思うんですが、ここら辺をどういうふうにお考えなのかを伺いたいなと思います。よろしくお願いいたします。

徳生:質問の意味は、よくわかる。よくわかるけど、難しい質問ですね。じゃあ、誰か先に答えて(笑)。

佐々木:では僕が、0から1と、1から3ぐらいまで話します。0から1の時は、僕は、まず徹底的にやるって決めたことをフォーカスして実現する、っていうそれだけだと思っていて。

僕たちの場合には、完全に2人で開発していたんですけど、家にこもって絶対に外に出ない、下手にもう外部からのフィードバックとか受けて、自分たちをブレさせるということすらコストなんじゃないかと思って、もう完全に決めたことにフォーカスして実現する、というようなことをやっています。

良いのかわからないんですけど。ただそれによって、わりと早い段階でちゃんと仮説検証というプロセスに持っていけたんじゃないかなと思っていて。

意思決定のための4つの価値基準

佐々木:今度それが一旦出たとなると、問題点もどんどんわかってくるし、開発人数もどんどん増えていきますと、そうなるとやっぱり、これを解決しようという大きな旗を振って、それを置いておくみたいなところっていうのは、まず重要だし。

それはさっきちょうど話したところなのかなと思っていて、さらにそれが増えてきて今、freeeは開発者が20人くらいいるんですけれども、そうすると今度はやっぱり皆に共通する意思決定基準みたいなものがあるといいんじゃないかな、というふうに思って。

最近もう、まさにfreeeの中で4つの価値基準を持って、意思決定をしてくれ、ということを言っていてですね。

1つ目は、「それが本質的な価値を持つのかどうか」ということを考える。2つ目は「今すぐやる、まず手を動かす」。3つ目は「高い目標を持つ」と。妥協しないみたいなところとか。そして最後に「なんでもハックする」という精神で望もうと。

これはそうすることによって、新しいことをどんどん吸収していくっていうような形なんですけれども、そんな感じで、組織のカルチャー自体を作っていくっていうことで、なんとか対応していこうとするっていう感じなんですかね。大体それが1から3ぐらいまでなのかなというふうに思うんですけども、どうですか皆さん。

須藤:そうですね。もうさっきの佐々木さんの話にすごく賛成で、僕も0から1は、もう本当に「冷静と情熱」だと思っていて、要は「何をやりたいか」ということと、でも一方で「捨てなきゃいけないことを決める」っていう。

1から10はやっぱりコミュニケーション、さっきの徳生さんの話にすごく近いですけど、経緯とか含めて、コミュニケーションの問題で。たぶんコミュニケーションをすることによって解決できる範疇じゃないか。10から100になるとたぶん仕組みっぽい話なんじゃないかなと思って。

成長するフェーズには、それをコントロールする仕組みが必要

須藤:リクルートはそういうのはもう仕組みですよね。仕組みをイノベーションして、仕組みによってある程度をコントロールしていく、みたいなことをやっていたんじゃないかなっていうふうに記憶しているんですけど。どうですかその辺、大宮さん。

大宮:そうですね。たぶんそのフェーズによって関わる人数もたぶん大きく変わると思うので、その時にやっぱり、仕組みの重要性が出てくるとか、結構、私達さっき言った0から1の場合はとにかく作る。

1から10のところでまず、何がキードライバーかをとにかく見つけまくって、10からもっとやるときは、ほんとにKPIっていうか、シャープにしていって、皆がそれを目指せるような仕組み化をしていって、権限移譲していくっていうのがすごく必要だなと思っていまして。

結構そこからやるのは愚直に、日々の進捗を確認しながら、数字を常に意識したりとか、リクルートはずっとそういうふうに出てきてから、そこから広げる時にすごく組織としてはワークするような会社になっているので、1つのいい例なのかもしれないですけど。

インターネットの中だから、そこから少人数でめちゃくちゃ広げまくる、という会社さん今ありますけど、ちょっとそこをどうやっているのか、逆に僕は知りたいなと思います。

小野:いかがでしょうか? 大丈夫でしょうか?

質問者:はい。ありがとうございました。

サービスを「改良する」という姿勢が大切

小野:はい。じゃあ、もう1名くらい。

質問者:お話の中で、とりあえず出してみて、失敗したらすぐ引っ込めればいいという話があったと思うんですけれども。一方で、成功するまでやり続けないと成功しないっていう話もあるかなと思っていて、その失敗して引っ込める判断をする基準をどういうふうに持っているのか、ということを教えていただけるとありがたいなと思います。

徳生:引っ込めるだけじゃないと思いますけど。「改良する」という姿勢だと思うんですよ。先ほども自分で、ちょっと反省して、「出したものを引っ込めたことはない」って発言したんですけども、我々くらいに大きくなると、いわゆるA/Bテストっていうのが非常に楽にできるようになっていて。

何百万人のユーザーがいたら1パーセントだけで何万人というユーザーの反応が来るわけですね。だから、スタートアップさんと違うのは、動いているものから変化させる場合が非常に多いので、動いているものを壊さないということを非常にシビアに考えます。

今の質問で言うと、我々の場合、全く新しいものを出す場合はまた違うんですけれども、例えば、ナレッジグラフっていうのを検索結果に付けるときとか、あれはサーチの結果に大きく影響するので、世界中でそれを実験してみる。

クリック率ですとか、滞在時間とかを見て、それでだめだったらどこが悪いんだろうっていうのを見て、また実験を繰り返す。そういった判断をしますね。

失敗のコストが低くなると、試行錯誤がしやすくなる

徳生:ですからちょっとずるいんですけども、そういう土壌ができると、そういう失敗のコストも低くなるし、やり直しがきく、それで止めたプロジェクトも多々あります。ランキングとか、そのクオリティーとか、プロジェクト、こうやったらうまくいくんじゃないのっていうのをやってみて。

何回も実験してもだめだった、「じゃあこれはやっぱダメだよね」っていうところは、グループの中でもやっぱり見極めがつく。2回3回、何ヶ月もかけて実験してみてやっていると、そこでやっぱりダメなんだろうなっていうのは、喧嘩になったり、お前ダメだからやめろっていうことにはならないですね。

自然にやっぱり課題設定とか意識して共有できているんで、やめることができる場合が多いです。ただ、基本的には止めたり、引っ込めたりってことはできます。できますが、基本的にどうやったら可能にするかというところで考えている場合が多いです。

小野:よろしいでしょうか? あと質問をラストひとつくらい。

質問者:さっき質問していらっしゃったイノベーションとオペレーションのトランディションについて僕も実は質問しようと思っていて、先にしていただいたんでよかったです。

もうひとつ気になるところで、イノベーションをゼロから作っていくときに、僕自身もいろいろプロジェクトをやってて、ビジネス・テクノロジー・クリエイティブの3要素っていうか、それをどうやって混ぜるとか、融合させるとか、これ人材っぽい話もあるし、プロセスっぽい話もあるんですけど、この辺について教えていただければと思います。

小野:ごめんなさい、ちょっと質問が高度すぎてわからなかった(笑)。

質問者:すみません。新しい事業を作っていくとき、ビジネスマンと、テクノロジストと、デザイナーとかが、一色単になってやらないとなかなか製品ってできないじゃないですか。問題の分割はできないから……。

何かそこら辺はたぶん、皆さんすごく考えながらやってらっしゃるのかなと思って。例えば、佐々木さんのところでやってらっしゃるやり方と、例えばその徳生さんがやっていらっしゃるやり方と、企業の規模とかによっても、スタイルも微妙に違うような気がしていて。

例えば、その個人の中でその3要素を閉じてやっている人もいれば、チームワークとしてちゃんと具体化というか、具現化できる会社もあるんじゃないかなと思っているんですけど、なんかそこら辺について教えていただければと。

テクノロジーだけに特化してサービスを立ち上げた

小野:デザイン、ビジネス、テクノロジーそれぞれが1つできれば、ベストのものができるのかもしれないけど、そうじゃない場合もあるかもしれない。

佐々木:僕たちのアプローチとしては、その中で言うと特にテクノロジーというところだけ頑張って、あとのそれ以外はうまく乗り越えるみたいな形でやりました。

それは例えば、デザインに関して言えば、オープンソースで活用できるデザインパーツというのはすごくいっぱいあるので、それを離れたカッコいいことは一切しない、というような開き直りであったりだとか。ビジネス面については、とりあえず後からついてくるだろうと、とりあえず無料で出して。

とりあえず思い描いているものを形にして、しかもそれが最初に使った時に、「おーすげー!」ってエクスペリエンスがあるようにしたんです。

そのため、そこにはたぶんデザインがすごいとか、いきなり儲かるとか、そういうことは関係なくて、そこのエクスペリエンスさえ提供できれば、そこがブレイクするようになるから、あとはどんどん引っ張ってくればいいっていうことで。例えばデザイナーとかは、今年になって初めて採用したとか、それまで社内にデザイナーがいなかったですとか。そういうような体制でやっていました。

小野:よろしいでしょうか。

質問者:はい。ありがとうございます。

小野:最後に、4名のスピーカーの方への大きな拍手で締めたいと思います。ありがとうございました。

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