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ビアトーク ~”バリュー”が誰にも真似できない会社をつくる〜(全5記事)

"知的な変わり者"が旋風を起こす ビール業界の風雲児はいかにして生まれたのか

「メルカリ」を運営するメルカリと、「よなよなエール」などのクラフトビールを次々と生み出すヤッホーブルーイングによるイベント「メルカリ×ヤッホーブルーイング ビアトーク ~”バリュー”が誰にも真似できない会社をつくる〜」を開催。バリューにこだわる理由、紆余曲折を経て辿り着いた「強い組織を作る方法」などをビール片手に語り合いました。本パートでは、両社が持つバリューに込めた思いを紹介しています。

ブランドキャラクターは「知的な変わり者」

司会者:最初に、井手さん、および小泉から、それぞれ各社の紹介をさせていただきます。まず、井手社長からお願いします。

井手直行氏(以下、井手):(スライドを指して)我々の会社、ヤッホーブルーイングです。1996年に設立して、97年からビール造りを始めまして、今年で20年になります。これは、軽井沢にある会社の外観で、ビールを造る仕込釜です。上は、会社ができて2〜3年くらいのときの研修の写真です。

真ん中は、20代のときの若い私です。創業メンバー7人でビール造りを始めまして、私は当時、営業をやっていました。途中から社長になったんですが、そんな懐かしい写真です。

看板製品は、今、手元にある方も多い『よなよなエール』です。ちなみに、『よなよなエール』を今日のイベント前から知っていた方は、どれくらいいらっしゃいますか?

(会場挙手)

全員ですね。だから来ているんですよね! 愚問でした。すみません(笑)。

(会場笑)

97年、最初に我々が造ったビールです。コンセプトは、「家庭で飲める手頃な本格エールビール」。ブランドキャラクターは「知的な変わり者」。「知的」が大事で、ただの変わり者だとおバカさんになっちゃって、あまりかっこよくないんです。だから、我々は知的さを入れて、「知的な変わり者」と、愛着を込めて言っています。

「斬新なブランド名、デザイン、個性的な香り、味わい」。20年前から基本の味の方向性は変えずに、少しずつ、みなさんがわからないくらいに、味の改良をしています。デザイン、値段、パッケージはまったく変えていないです。こういう、がんばっている製品はけっこうめずらしいです。

「とことんやって、ダメだったら会社を畳んで釣りをして余生を」

最初に我々の歴史をお話しすると、97年にできてから、売り上げがガンガンガンと上がっていって、地ビールブームがありました。各地でビール会社がボンボンボンと出てきて、47都道府県すべてにビール会社ができたんです。あっという間に全国に280社くらいできました。

私は当時、営業をやっていて、「これはすごいビジネスだ」と、もうウハウハだったんです。若かりし頃の私、このままずっと売上がいくかなと思いました。

でも、そううまくはいかないですよね。

(会場笑)

ブームが終わっちゃったんです。終わったら、何をやってもダメです。本当になんでもやったんですが、そのとき、本当に苦労しました。

そのときのエピソードですが、夢を持って起業して、そこそこみんなも仲良かったけど、売れ行きが悪くなってくるといろいろと険悪な雰囲気が出てきます。

製造は「営業が売ってこないからダメなんだ」。営業は「もっと美味しいビールを造らないからダメなんだ」「そもそも日本にこんな味わいの濃いビールを根付かせようと思ったのがダメだったんだ」など、みんなひどいことを言って辞めて、あっという間に、半分くらいの社員になっていきました。

私も「もうこの事業はダメだな」と思っていました。今日はほとんど触れませんが、実はヤッホーブルーイングの親会社は星野リゾートなんですね。最近はずっと会っていないですが、今少し話題になっている星野リゾートの代表の星野(佳路)が創業者なんです。

彼にも「この事業はダメだからやめましょう。こんなビール、日本に根付かないですよ」なんて言いながら、私ももう諦めかけてたんです。でも、ファンもまだまだついてきてくれていて、がんばっているスタッフもいたんです。だから見捨てることができなかったんです。

本当に人生をこの会社に懸けて、心中しようとがんばっていました。「すべてを注ぎ込んで、ダメだったら、もういいや」と星野に話しました。そしたら星野は「とことんまでやって、それでもダメだったら会社を畳んで釣りをして余生を過ごそう」と、言ってくれた。

釣りは私の趣味で、星野は本来釣りはしないんですよ。でも彼はそう言ってまだ諦めなかった。それから心を入れ替えたんです。そんなことをやっていくうちに、バーっと紆余曲折があり、今、どんな感じになっているかというと、まぁこんな感じです。

創業以来、実は8年間赤字だったんです。8年間赤字で、私、2008年に社長に就任しましたけど、そこからググッと急成長していき、今、12年連続で増収増益です。

ミッション・ビジョン・ガッホー文化・価値観・ヤッホーバリュー

今、クラフトビール会社も、一時期淘汰されて160社くらいまでに減ったんですが、最近また200社ちょっとに増えてきました。日本のビールマーケットは、20数年間ずっと低迷していて、縮小しているんです。日本のすべてのビール会社で、IT企業みたいに急成長しているのは、実は我々だけです。

売上は、なんとか持ち直し、今日、みなさんが手を挙げていただく状況になってきました。

おかげさまで、チームも一時期はひどかったですけど、今は、いい感じになってきました。例えば、50カ国以上で実施されている働きがいのある会社ランキング、「Great Place to Work」に去年、初エントリーしました。

するとベストカンパニーに選ばれました。それで、2月に授賞式に行ってきたんです。授賞式に行った写真がこんな感じでですね。

(会場笑)

先ほど、「あのボウリングのピンの写真がおもしろかったです」と言われましたけど、実際はサグラダ・ファミリアだったんです。

(会場笑)

うちのチーム作りは、まだ発展途上なんです。今日はうちの人事の責任者も来ていますけど、シャレで「サクラダ工務店」と書いたら、「工務店でGreat Place to Workとは、さすがですね!」と勘違いされた。「違います、違います」と、こんなこともシャレで言えるようになりました(笑)。

うちの経営理念は、この5つを設定しています。どんな意味かというと、いろんな意味のつけ方が各種あるんです。

うちは「ミッション、ビジョン、ガッホー文化(注:頑張れヤッホーの略語)、価値観、ヤッホーバリュー」。こんなふうに、少し細分化して経営理念を設定しています。上位概念のミッションから、目標のビジョンを定めて、このビジョンを支える3つの価値と定めています。今日このあと、その話をします。

一番上の上位概念のミッションは、「ビールに味を! 人生に幸せを!」。簡単ですが、こんなことを謳っている会社でございます。ありがとうございました。

(会場拍手)

メルカリから届いたモチベーションクラ“ウドン”

小泉文明氏(以下、小泉):サグラダ・ファミリアの後は、やりづらいですね(笑)。あるなら言ってもらえれば、僕もさんざん準備したのに(笑)。

(会場笑)

小泉:普通の資料で来たので、すごく心細いです(笑)。

ところで、本日のモデレーターの麻野耕司さんの会社、リンクアンドモチベーションは5月8日からGINZA SIXに移転されたんです。

井手:お~。

小泉:僕らの会社も、そういう意味でいうと、ちょっとおもしろい会社として、今日、彼らの会社に移転祝いを贈ったんです。


麻野耕司氏(以下、麻野):今、僕は「モチベーションクラウド」というプロダクトに、力を入れて取り組ませてもらっています。そこにオフィス移転で大量のうどんが届きました。

「モチベーションクラ”ウドン”」と書いてありました。

(会場笑)

ややウケくらいでしたね。

小泉:(笑)。

麻野:これが、Go Bold(=「大胆にやろう」というメルカリの理念)ですかね!?

小泉:そうそう(笑)。花は絶対に贈らないと決めているので。

麻野:なるほど。ある意味、浸透してますね。

ミーティングでダジャレを決定

小泉:実は、うどんを送るまでに、けっこう紆余曲折があったからね(笑)。

麻野:ちゃんとミーティングしてくれてるんだ!(笑)。

小泉:ちゃんとミーティングして、うどんが出たときに、やばいと思いました。「それだ!」って。

麻野:3日前くらいから、「届いた? 届いた?」という連絡が小泉さんからめっちゃ来るので、「これか!」みたいな。こちらがそのモチベーションクラウドンでございます。

(会場笑)

小泉:けっこうな数を送ったでしょ?

麻野:ダンボールいっぱいに届きましたね。社内でも「さすがメルカリだ」と。

小泉:太く長く成長してほしいと思って、うどんかなと。

麻野:うまい! そういうこと!?

小泉:いや、ぜんぜん違う。

(会場笑)

小泉:単純に、「クラウド、クラウド、クラ……ウド、クラウ……、ウ、うどん!?」みたいな(笑)。

「2位以下は全部意味がない」

そんなノリでした。ある意味、悪ノリカンパニーではあるんですけど。では、うちも、メルカリについて、ご紹介できればと思います。

僕らは会社を作ってまだ4年とちょっとです。サービスでいうと、実はまだ4年も経っていない会社でございます。今、日本とアメリカとイギリス、3拠点でやっています。創業した翌年には、アメリカに進出しているので、実は、最初からグローバルでやろうと決めていました。

イギリスも増えたので、今は6拠点くらいあります。従業員数は500名を超えている状況です。イメージとしては、日本だけで400名くらい、アメリカが100名弱くらい、ロンドンは30名くらいなんです。社員の6〜7割がカスタマーサポートに従事しています。すごくカスタマーを大事にしている会社になっています。

僕ら経営陣は全員、1度会社を経営したことがあります。売却なりIPOなり、なにかしら、そういう成功の経験をもとにもう1回、自分たちの理想の会社を作ろうと。前回は失敗もたくさんしているので、失敗を生かして、新しい会社を作る感じです。

おかげさまで、多くの投資家も付いて、過去に126億円くらいの資金調達をしました。そのお金を使いながら、短期間でダッシュしてきた感じです。

先ほどの「ミッション、ビジョン、バリュー」の話ですけど、僕らの会社は、ミッション、ビジョンの差分が人によってけっこう取り方が違う、わかりづらいと。そこであえて、存在意義や、中・長期の方向性をミッションに統一しました。

そのミッションとしては、「新しい価値を生み出す世界的なマーケットプレイスを創る」と決めました。なので、最初から僕らは、「世界的な」ということを入れて「アメリカに行こう、そのあとはイギリスだ」みたいに、世界を意識した組織作りをしています。

その中で、バリュー、僕らはこの3つを制定しているんです。結局このミッションを達成するために大事なことは、当然、事業の成功なんです。事業の成功に関して言うと、僕らの事業は1社しか勝たないんです。

インターネット企業というと、「Winner takes all」という言葉があります。「1社が強い、2位以下は全部意味がない」と、わかりやすい構図になっているので、この1社にどうやって残るのかと考えた結果が、この3つのバリューでした。

やはり大胆にやって、リスクをテイクしていこうと。ある意味、僕はここを一番大事にしていて、今着ているTシャツに、「Go Bold」と書いてあります。あとは、会議室ですね。このあと見ていただいてもいいんですが、Boldという会議室があります。

そういうバリューを、みんなが口に出すことをたくさん仕掛けて、会社を運営しています。以上になります。

(会場拍手)

メルカリとヤッホーはどうやってバリューを経営に活用している?

司会者:では、私の役割はここまでにして、麻野さんにマイクをお渡しして、ディスカッションに移りたいと思います。お願いします。

麻野:改めまして、今日はファシリテーションを担当します。リンクアンドモチベーションの麻野と申します。リンクアンドモチベーションという会社では、組織人事のコンサルタントをしております。

専門は、成長企業の組織人事です。50人、100人、200人、300人、500人、1,000人のステージアップにおける組織人事全般の支援を担当する仕事をしておりました。

現在は、先ほどもあった、モチベーションクラウドというエンゲージメントシステムを開発し、こちらの展開に力を入れております。今日は、そういった視点も交えながら、お2人にいろんな話を聞いていきたいと思っております。

メルカリさんも、ヤッホーブルーイングさんも、両方、独自の組織文化がメディアに取り上げられていらっしゃいます。

ヤッホーブルーイングさんは、Great Place to Workでベストカンパニーに輝かれました。メルカリさんはモチベーションクラウドを使ってもらっていますが、非公表ながらものすごく高いモチベーションスコアが出ています。

特に理念浸透の項目のモチベーションスコアが非常に高いので、実際に浸透しているんだと感じます。両社とも、定量的にもそのバリューの浸透度合いが証明されている企業様なので、それをどうやってバリューをうまく経営に活用しているのかを聞いていきたいと思っております。

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