2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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丸幸弘氏:こんにちは。残念ながら私、研究者です(笑)。経営者だと話し足りないんですが、研究者ですのでちょうど10分で話したいと思います。
みなさん、世の中ってなにでできているかわかります? ITじゃないですよ、研究です。科学技術により人間の生活が豊かになります。今日はそんな話をしようかなと思っています。
この話を真面目にすると、1時間半の基調講演になりますからね。今日は研究者でありながら、経営をやっている僕の方から少しだけお話をさせていただきます。
あ、リバネスがどんな会社か? それはあとでググってください。
(会場笑)
最初の質問です。「最先端の出前実験教室。この事業を僕はやりたい。さぁ、みなさん投資をしてください」。しますか? 最先端の科学の実験教室ですね。答えはどうでしょう?
2つ目、(スライドを指して)なんか聞いたことありますね。「ミドリムシで世界を救う」。ちょっと興奮した人?(笑)。
(会場笑)
いろんな人がいらっしゃるかもしれません。どうでしょう? 今のは投資してくれるかもしれませんね。さぁ投資しますか?
答えは2つとも、リバネスを創る15年前、そしてユーグレナを創業した12年前、答えはNOでした。科学技術というのが世界で進んでいるのにもかかわらず、当時の日本ではこの2つに投資はしてくれませんでした。これが、これから僕が解決していきたい課題なんですね。
リバネスは今では10倍になっています。当時は、たった15人の大学院生が作った会社でした。科学技術を発展させて、もっと世界に貢献したい、そういう思いでやりました。今では、出前実験教室には、のべ10万人の生徒が参加し、たくさんの教員とともに事業化することに成功しています。
(スライドを指して)これは有名なユーグレナですね。時価総額1,000億円になりました。僕は立ち上げから技術顧問として、自分自身の研究をそこに活用してきました。
ちょっと、幼いころの話をしたいと思います。僕は幼稚園から小学校3年生までシンガポールにいました。おもしろい国ですよ、ぜひ来てほしいです。
シンガポールというのは多様な国です。シンガポール人、マレーシア人、インド人、もちろんイギリス人、日本人。たくさんの人種がいました。僕がそこで一番びっくりしたのは学校の授業です。生徒はどんどん手を挙げて発言をしていきます。いろんな意見が出ました。
日本に帰ってきたときにびっくりしました。みんな黄色い帽子とランドセルですね。授業中もずーっと先生の教えているのを見ているんです。授業では「先生の言うことを聞きなさい」「テストをとにかくがんばりなさい」。これが日本の学校教育でした。
子どもの時、すでに僕はシンガポールと日本の2つの文化を比較することができました。「やはり多様性の価値というのは、世界では当たり前の共通言語なんだ」と学びました。そのあと日本に帰ってきて僕は大変なことになります。当たり前が通用しないわけですから。
こんな僕はバイクという、工学的な技術を学びました。マフラーを変えるか、電気系統をいじらなければならない。まぁ不評でしたよね。不評でした。でも、すごく速くなりました。黙っておいてくださいね。そんなわけないでしょ、って(笑)。 これが高校時代です。そして大学に入ると、バンドを始めまして。研究者の人って技術だったりミトコンドリアだったりの話にこう……自分一人の世界に入ってしまうじゃないですか、こうやって人前に立つと。
(会場笑)
なぜ僕がステージ慣れしたか。バンドです。CDを出していましたし、一応ギターボーカルだったんだけど、当時はモテモテでした。人と違う曲を作ったりするのが好きでした。
そして大学時代はひたすら旅をしました。
自分の自己紹介をしていて、なにを伝えたいのかというと、昔から「誰も見たことも聞いたもないことをやりたい」。これは僕自身のアイデンティティだと思ってます。
まぁ、こうなるとですね、大学3年生のときに不幸が訪れます。さぁどんな不幸か? これは就職活動ですね。自由に生きようと考えていた仲間たちが「ロックンロール!」とか言いながら、みんなね、スーツを着て、就職活動をやるんですね。
「おかしい。ロックに生きるはずだったんじゃないのか」「バカな?」と。みんなは「普通に生きるために就職をするんだよ」と。僕には本当に無理で、すごく悩みました。なんで働く意味がわからないのに働かなきゃいけないのか。
その会社で働けば、本当に日本が変えられるのか? ではなぜ、人と同じ考え方で動かなければいけないのか。これを思っていました。
そして、出会いがあります。(スライドを指して)この写真を見て「おお~」という人は研究者です。これはカルビン・ベンソン回路っていう……今日、こんな話でいいんですかね?(笑)。大丈夫ですか? いいんですか? まだ6分12秒ですから、時間はあります。
(会場笑)
カルビン・ベンソン回路って、実はノーベル賞をとっている光合成のメカニズムなんですね。これを解明したベンソン先生って、もうお亡くなりになりましたけど、当時約80歳、彼の講演を聞いたときにすごく僕は感動しました。
彼は言うんです。「僕はね、毎日朝起きる時にすっごくワクワクしてる。今日はもっといい研究ができるかもしれない」。こんなことを若い僕に教えてくれます。そして「僕はなんでこんなことに悩んでいるんだ」と気づきました。
いろいろディスカッションして、先生は「君は研究者に向いているよ」って言うんです。「研究者は人と違うことが好きだから。君は就職する必要は別にないよ。研究者になれるよ」。
すっきりしました。「よーし、研究者になろう」って。そして僕は東京大学の大学院に研究者になるために入ります。研究者になる。大学の教授になったら、次はノーベル賞をとるくらいになりたいと思っていました。
そしてそこで大きな課題にぶち当たります。
(スライドを指して)これです。科学技術で世界はできているにもかかわらず、東京大学の一番いい機器を使っているのにもかかわらず。博士を取った後に働けていない、この日本。そしてもう1つ。僕みたいに科学や技術が好きで理系に進む人が減っていくこと。
僕は教授に言いました。「どうやって解決すればいいんだ?」。大学や大企業の社長に言いました。「どうすればいいんだ?」。答えはこうです。「わからない」。
「じゃあこれから、誰が解決するんですか?」。
それが実は15人の学生で、会社を作った理由です。ビジネスモデルは決まってません。なぜなら僕らはビジネスマンじゃないから。15人の学生がビジネスモデルはなく、お金もなく、信用もなく、事業を作ったこともなく、ただ単に「自分たちが活躍できる世界こそが、世界を変えていくんだ」と。それでさまざまな事業を展開していきました。
今ではその考え方をシンガポール、マレーシア、アメリカ、イギリスで広げ、同じような法人ができました。そして、世界各国の科学技術が活用されていないということが、全世界で共通してあることがわかったんです。知識と知識を組み合わせて、新しい世界を作っていくことをみんなで、世界でやるようになりました。
なぜビジネス経験のなかった僕に、事業ができたのか?
僕らは「商売」という言葉が大嫌いです。お金を儲けることは研究者の中では悪なんです。でも、事業は作れるんです。商売っていうものはですね、悪というのは言い過ぎかもしれませんけど、ほとんどの研究者はそう思っています。
商売は、ラーメン屋でももちろんそうです。「自分じゃなくてもできることなんじゃないかな?」と。研究者は人と違うことがしたいからやっているんです。事業というのは自分じゃなければできない。自分のコア技術こそが世界を変える。この世に存在しないといけない。
そして、商売は疲れるんです。将来、なくても変わらない。
ユーグレナができて変わったことがある。事業があるとないとじゃ、大きく変わる。事業は楽しい。
みなさん、ぜひ「世の中にインパクトを起こす」ということをやっていただきたいと思います。そして、人と違うことが、世界を変えていく。その考え方が研究者的な視点であると、今日覚えて帰っていただければと思います。
ご静聴ありがとうございました。
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