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けんすう氏が語る“遊びが仕事になる”時代の事業の作り方

2017年6月7日に行われた「IVS 2017 Spring」のセッション「IVS DOJO」で、けんすうこと古川健介氏が登壇しました。「呪いの掲示板」や「ミルクカフェ」、ハウツーサイト「nanapi」といったサービス立ち上げを振り返り、そこには“遊び”があったと語る古川氏。なぜ“遊び”があると事業はうまくいくのか、自身の考えを語りました。

労働時間が長いと成功確率は上がる、けれど?

古川健介(以下、古川):古川と申します、よろしくお願いします。

今日はとくに次元(=株式会社じげん・平尾丈氏のセッションにかけている)を超えるような話はしません。

(会場笑)

今日は「遊び半分の起業のすすめ」がテーマです。

私、Supershipという会社でインターネット系の仕事をしているんですが、最近「遊びと仕事の境界線っていらないんじゃないかな」と思っています。なぜ境界線がいらないのかっていうのをお話ししたいなと思います。

とくに若手の人は「起業家はめちゃくちゃ働け」と、先輩とかに怒られたりすることもあると思うんですね。

これはその通りで。ちなみにこのグラフ、この資料の中で唯一のグラフです。

(会場笑)

労働時間が長いと、成功確率は上がるんですね。とくに起業したばかりの頃は1人か2人なので、2倍働くと2倍生産性が上がるので、まあそうです、と。ただ、これをやってみるとわかるんですけど、たくさん働くってつらいんですね。

(会場笑)

例えば、徹夜麻雀みたいなことをしても、けっこうみんな徹夜でがんばってもぜんぜん疲れないことがありますよね。事業もそんな感じでできないかな、と思っています。

じゃあ、僕の場合はどうしていたのかを、ちょっとお話しした方がいいかなと思っているので、その話をします。

楽しくて運営していた「呪いのサイト」「ミルクカフェ」

僕の起業の経緯というか、インターネットを始めたのは16歳。当時、呪いのサイトっていうのを作ったんですね。なにかというと、「このページを見たら5人に教えないと呪われるよ」っていう。

(会場笑)

これ自体は大したことないんですけど、呪いの掲示板というのをつけてたんですね。そうするとなぜかすごく流行って。呪いたい人の名前を書くと呪われるみたいな感じで都市伝説化して、1日に何十件も人の名前と呪いの言葉がかけられる、いろんな心温まるコミュニティができました、と。

(会場笑)

霊媒師の人からメールをいただいて「このサイトは良くない気が集まっている」って言われて。

(会場笑)

僕は霊媒師じゃないんですけど、良くない気は集まっていたので(笑)。削除しました。

その後に、「ミルクカフェ」という大学受験生のためのサイトをリリースしたんですね。

これは僕が浪人生の時に受験情報を探していた時、インターネット上にぜんぜんなくて、「じゃあ自分で作ろう」みたいな感じで作りました。これはもう、とにかくほしかったので。作りたかったから作っただけなんですね。

当時、プログラムとかもぜんぜんできなくて、とにかくずっと勉強をしていろいろ駆使して作ったんです。これがやっぱりすごい楽しくて、時間を忘れて夢中になってやりました。

でも、匿名掲示板なのでめちゃくちゃ問題が起きました。警察から捜査依頼がきたりですとか、内容証明が毎週のように送られてきて「訴えるぞ」と書かれていたりとか。

実際に訴えられたことが3件ぐらいありました。これもすごい楽しくて。

(会場笑)

とくに裁判所に行かれた方って何人かいると思うんですけど。裁判所って、いい大人にめちゃくちゃボロクソ言われるんですね。「人間性を疑う」みたいな。僕は20歳ぐらいだったんですけど「すげえな」「こんなに言われるんだ」と思って。けっこう楽しい感じでした。

(会場笑)

「真面目に見せたくて真面目にやる」ではうまくいかない

その後、21歳の頃に「したらば」というインターネット系のレンタル掲示板の会社の社長になりました。アクセス数はけっこう伸びて、当時でたぶん日本で100位ぐらいまでいったんですね。

すごいなと思ってたんですけど、売上とかぜんぜんなくて。さらにはAWSとかもなかったので、伸びれば伸びるほどお金がなくなっていくんですね。

「これはやばいな」と思っていました。そんな時に、ある人から連絡がきて……堀江(貴文)さんが一番面白い時の写真です。

(会場笑)

こんな感じでM&Aみたいなことも学生時代に経験できました。自分の中ではほとんど遊んでいるだけなんです。こんな、楽しいようなことを経験させてもらってます。

……堀江さん来てないですよね。

(会場笑)

その後に新卒で普通にリクルートっていう会社に入社しました。

学生時代にいろいろインターネット系やってたんですけれども、「ちゃんと就職しよう」と思って入社したんです。そこでは、「インターネットができるので新規事業をやらせてみよう」ということでいろいろやっていました。まさに先ほどの平尾(丈)さんとかと同じ部署にいたんですが、けっこううまくいかなかったんですね。

今から考えると、けっこう真面目にやっていました。会社員なので、お金をもらっているので、ちゃんとやろうとしていたんです。言われたことはちゃんとやるとか、コピー用紙をホッチキスで留めるみたいな、そういう嫌な仕事でもすごいがんばったりしていた。

ただの資料作りとか、一見真面目にやってるんですけれども、これは事業の成長のためにではないんですよね。真面目に見せたいから真面目にやっている、みたいなところもありました。このへんは、事業をつくるという意味ではうまくいかなかったなぁと思っています。

楽しい×ニーズが高いもの

3年ぐらいリクルートで働いてから独立しました。その時に作ったのが「nanapi」というサービスです。nanapiは2014年、KDDIにM&Aされ、今はSupershipという会社に統合されています。

nanapiも、結局は自分の好きなことをちゃんとやろうと思って始めたものでした。僕はブログとかもやっていて、ハウツーを書いたりライフハックを書いたり、そういったことがすごく好きでした。記事を書いたり、人のものを編集したりするのがぜんぜん苦にならないんですね。

これはやり続けてもとても楽しいので、そういう意味では1日中、自分の中では遊んでいるような感じで事業ができたので、よかったかなぁ思っています。

この話をすると「楽しいだけのことをやっちゃう」という場合もあるんですけれども、当然ニーズが高いものをやらないとうまくいかないパターンもあります。

僕は今まで何十もサービスを作っていて、やっぱり自分が楽しいだけのサイトは趣味に過ぎないんですね。一般にはニーズが低いものなのでこうなってしまうと。

逆にニーズが高くてつらいものをがんばっている人が起業を考えたら、けっこう効率がいいなぁと思っています。これはずーっとがんばらないといけないんですけど、そんなに人ってがんばり続けられないので。つらくなってしまうなぁというのはわかります。

(グラフを指して)なので、右上がいいんじゃないかなぁと思っています。

例えばニーズがないのに楽しくてやっちゃった例として、何年か前に「emosi」っていうサービスをやっていました。

当時、ちょっとなんか考えすぎていて「言語ってださいなー」と思ったんですね。

(会場笑)

言語って、1万年ぐらい使われてるテクノロジーなんですけど、明らかに頭の中のものを言語化した時点で劣化してるじゃないですか。「本来劣化するものをネット時代に使い続けてるのってやばいなー」と思ったんですね。僕のほうがやばいんですけど。

(会場笑)

そこで、テキストを使ったコミュニケーションをさせようみたいな感じで、グローバルサービスをやり、めちゃくちゃこけたんですよ。これ、今から考えるとニーズとか無視してとにかく自分の世界観を表現したいだけの場、……現代アートみたいになっちゃって。「これはいかんなぁ」と反省はしたりしています。

遊び半分でできることで起業しよう

もっと言うと、今後、確実に嫌な仕事って減っていくと思うんですね。仕事が減っていき、週休3日になったり4日になったりして、余暇は増えていく。

となると、遊びが仕事になる可能性が高いなぁと思っています。なぜなら遊ぶこと自体の時間が増えると、嫌な仕事が減るからです。これはいろんな人も言っています。例えば、堀江さんも「今遊びだと思われてることは仕事になる」と言われてたりします。

例えば、モバイルゲームとかも昔はゲームを作ること自体が、みんなにとってビジネスというより趣味であったりしたものなんですね。それが今、こんなに大きな市場になってたりします。

なので、どんな事業でも最初の頃は、みんな楽しくて作っている時期がある。それがいわゆる「遊び」と呼べるんじゃないかなぁと思っています。

例えば上場企業であれば……。ドワンゴさんとかの有名な話ですけど、ニコニコ超会議とかでは「赤字が我々のアイデンティティ」と言ってたりします。

普通に考えるとすごいこと言ってるじゃないですか。3億円くらい赤字を出してるので。これがやっぱりユーザーにも受け入れられていて、スタッフがそれをすごい楽しんでいる。そんな感じで、こういった成功例ももう出てきている、増えてると思っています。成功例なのかはわかんないですけど。

結論を言うと、つらい=仕事しているみたいにけっこう思いがちなんですね。

お金は我慢料みたいに感じがちなんですけれども、心から没頭するようなもので起業するといいかなぁと思っています。なので、遊び半分でできることで起業しようというのが今日の私からのメッセージです。

ご清聴ありがとうございました。

(会場拍手)

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