2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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林信行氏(以下、林):ただいま紹介にあずかりました林信行です。これから、「デジタルファブリケーションで変わるハードウエア・スタートアップ」というセッションを、こちらの4名の方々と一緒に、始めさせていただきます。ここで最初に、ひとくくりにハードウエア・スタートアップといっても、すごい広い言葉だなと思ったんです。実際どんなものを、ここでハードウエア・スタートアップと呼んでいるのかということで、いくつか挙げさせてもらいました。
林:IoT (Internet of Things)って最近聞かないことがないぐらいのバズワードになっていますけれども、Internet of ThingsとかITガジェットをつくっているメーカーさんもあれば、あるいはハードウエア・スタートアップといっても、必ずしもパソコンとかスマートフォンにつながらない家電とか、そういったものをつくっているスタートアップもあると思います。
あとArduinoとか、これからいろいろなハードウエアをつくるためのプラットホーム、基礎技術を提供している会社もある。あるいはもう、ここの会社しかできないという、すごい技術力を売りにしている会社もあれば、コンサルティングとかプロデューサー的な役割を商品にしている会社もある。
あるいはそういった、いろいろなハードウエア・スタートアップが、物をつくるための3Dプリンターだとか、そういった必要な場を提供している会社もあれば、つくった製品を販売、流通している会社も、これらは全部一応、ハードウエア・スタートアップの中に入るんじゃないかなというふうに思っています。軽く整理すると、これ先にこの絵見せちゃえばよかったですね。
林:例えば「ペブル」というウェアラブルなんかをつくっているのが、一番上のものに相当すれば、隣にいるビーサイズさんは、ひとり家電とはというかたちで、スタンドとか充電器とか、充電のデバイスとかっていうと、スマートフォンと直接つながるわけじゃないので、ちょっと違うのかなというふうに思ったりします。
林:ちなみに、このnon-ITの分野でいうと、最近これ「cheero」って皆さんご存じですか? Amazonでも非常に人気のバッテリーなんですけれども、このバッテリーをつくっているメーカーさん、実は会計年度12年、FY12は、たった社員5人で年間の売上10万ドルだったのが、今、なんと社員は倍の10人で売上2300万ドルくらいです。
結構バッテリーって熱いビジネスで、最近Googleの社員の方、検索エンジンをやっていられる方も独立してAnkerっていうバッテリーのビジネスを始めたりとか、地味なんだけれども熱い分野もあったりします。
林:このツール・プラットフォームというところでは、Spark I/OというArduinoの、こんな小さな基板を提供している会社もあります。また、これもキックスターターで非常に成功したんですけれども、最近ですと日本でASiC(エイジック)という、ペンとかインクジェットプリンターに、このインクで書くと名刺とかに電子基板を印刷できてしまうという、こういった技術が基になって次のハードウエア・スタートアップが出てきそうなものもあります。
今日もパネリストにいらっしゃる、すごいスペシャルな日本ならではのユニークな技術を持っている方もいれば、会場にいるUstreamに関してはもう世界一という技術を持っている会社もあったりします。こういうのはユニークな技術というところです。
林:あるいは、コンサルティング、プロデューシングというとすごい大ざっぱなくくりなんですけれども、これは僕が非常に印象に残った、ミラノサローネでのタクラムさんがつくった展示。
林:これも東芝が、これからヨーロッパにLED電球で進出していくっていうもので、非常にきれいなインスタレーションで展示なさったtakram(タクラム)さんのとかもあります。あと、Fabサービスというのはどういったところかというと、去年、実はこのセッションをやると、我々が裏チャンネルだとすると、表チャンネルはすごい人がいて、ここの会場は、やや寂しい感じだったじゃないですか。
でも、そのセッションが終わったときに一人、ツカツカツカと私のところに来て、「ここ、全然会場に人がいないだろう、だから我々チャンスだと思うんや」と言った人が、その後DMM3Dプリントというサービスを始めて、今やビートたけしのCMをうってすごいことになっている。
会場にいらっしゃったら、あとで無茶ぶりしようと思いますけれども、今、亀山さんいらっしゃいますかね、会場に。ちょっとじゃ何か、DMMの話題。この1年振り返っていただいていいですか、軽く。いきなり、無茶ぶりしちゃってすみません。パネリストを紹介する前に。(拍手)
DMMグループ会長・亀山敬司氏(以下、亀山):どうも、こんにちは亀山です(笑)。今日もまだ、人が少ないみたいだから、まだまだチャンスがあるかなっていう。15年ぐらい前からインターネットをやっているけれども、その頃もあまり、そんな考えていなかったし、その頃リアルプレーヤーというソフトが出て。
そこから、それがきっかけで、最近だとボーカロイドみたいなソフトのおかげで、クリエーターがデビューしやすくなったので、今回もそういう新しいアプリみたいなものでものづくりが伸びたらいいと思います、という感じでいいですか。
林:1年ぐらいで、どれぐらいサービスの勢いがあるんですか?
亀山:1年ぐらいですか? 3Dプリンターの?
林:ええ。
亀山:まだ、売上、月500万円ぐらいしかないんですよ。なので、ほとんど何も勢いないです、全然(笑)。投資ばっかり勢いで。CMとかも、はったりのCMと、あとプリンターを何億も買わされて……。
林:なるほど。
亀山:それで、材料が2倍、3倍使っていて失敗ばかりしているから、売上500万円で毎月何千万赤字かな。年間多分10から20ぐらい赤字になる、20億ぐらい出るかなってな感じで、全然勢いないですね、まだ(笑)。
林:いきなりパネリストの自己紹介に入る前に、答えていただきありがとうございます(笑)。
亀山:ただ、5年ぐらい先を目指していますので。
林:大きな伸びしろで。
亀山:まだ頑張ってつくり続けます。
林:ありがとうございます。
亀山:ありがとうございます。
林:(登壇者を紹介する前に)いきなり、会場への無茶ぶりから始めちゃいました(笑)。会社によってはこれ、結構いろいろ全部やっているみたいなんですが、ユカイ工学さんとかいらっしゃるということで、とにかく一口にハードウエア・スタートアップといっても、3Dプリンターを何億も赤字をしながら提供してくださる会社から、実際にものをつくっている会社まで、非常に幅広くあるという話でした。
ちなみに、ここにもう1枚だけ載っていないスライドを追加しまして。実はハードウエア・スタートアップ、もう1個注目してもいい分野があるかなと思って追加したんですけれども。あとで自己紹介していただく田川さんと一緒に、ジェームズダイソンアワードというところの審査員をやっていて、去年、非常に注目を集めたのが、義手の「Handie」(ハンディ)というのがあります。
林:これ、大手家電メーカーの人がつい最近、その家電メーカーをやめて、本格的にこれを打ち出すということを発表したばかりなんですけれども。実はFab系のもう1個の特徴は何かというと、他品種少量生産ができる。
人の腕にぴったりフィットするとか、人の足のサイズにぴったりという、こういった義手、義足とか、世界に1個のようなものをつくるというのが非常に向いているんじゃないかなと思います。
ということで、時間が長くなっちゃいました。スタートが遅れちゃいましたけれども、ここから先、登壇されるパネリストの方に自己紹介と、今、何でこれだけハードウエア・スタートアップに注目が集まっているのかというところの考えを一言ずついただければと思います。ビーサイズの八木さんからお願いします。
八木啓太氏(以下、八木):はい、ありがとうございます。ビーサイズの八木と申します。よろしくお願いいたします。まず、ビーサイズという会社なんですけれども、2011年に設立しました、家電のメーカーです。最初に発売した製品が、こちらの製品になります。
八木:パイプを4か所曲げただけのような製品なんですけれども、こちらが「LEDデスクライトSTROKE」(ストローク)という製品です。おしりのところにプラグを差していただいて。
八木:それで、先端部のタッチセンサーをピッと触れると。
八木:ふわっと光が広がるような、そういうデスクライトです。LEDというと目が疲れるとか、ネガティブなイメージもあるかと思うんですけれども、これは自然光に非常に近くて、正しい色味に見えたり、光に広がりがあるので、柔らかくて目が疲れないと、そういうような光の特徴があるデスクライトです。創業したときは、私一人だったので、このデスクライトSTROKEを一人でデザインして設計して製造して販売を行いました。一人でできる環境が、今は非常に整っているんです。
八木:それで、メディアの方に「ひとりメーカー」というコピーをつけてもらって、当時メイカーズという言葉はまだなかったんですけれども、その事例として紹介いただくようになって、事業をスタートすることができました。ビーサイズをスタートする前の話を、ちょっとさせていただこうと思っています。自己紹介ということで、創業前は、私、富士フイルムという会社で医療機器の設計、開発を行っていまして、これはレントゲンの装置です。
八木:非常に薄型でモバイルのレントゲン装置とか、あとこれは、ポータブルのエコーです。赤ちゃんを見るような超音波の装置。こういうものを開発していました。
八木:それはそれで経験も積めて 非常に楽しかったんですが、ちょうどその頃からデジタルファブリケーションをメーカーでも活用する流れがどんどん来ていたんですけれども、そんな中で、ある商社さんがLEDを紹介してくれたんです。
八木:これは、「八木さん、医療機器をつくっているから手術灯にどうか」と、「ドクターが手術をするときに臓器の色味が正しく自然の色に見えます」と、それから、「手が影にならなくて光が柔らかいので回り込みますので、どうでしょうか」と。富士フイルムは残念ながら採用しなかったんですけれども、このLED、非常に良かったんです。「じゃ、検討します」と言って持って帰っちゃったんです。それで、自宅で週末にプロトタイプ作ってみたんです。
八木:まだまだ、基板とかも内蔵されていなくて荒っぽいものなんですけれど、でも、実際に点灯させてみると本当にいい光だったんです、柔らかくて。なので、これは本当にいいなと。ちゃんと量産すれば、欲しいと思ってくれる人がもっといるかもしれないと思って、いよいよ検討を始めました。
そうすると1000万円と1年間ぐらいあれば、自分一人でもできるな、デジタルファブリケーション技術などをうまく活用することができるなということで、全財産をはたいて2011年にスタートしたという経緯です。開発としては、これも電子基板を設計するためのCADソフトは無料なんです。
八木:無料のCADソフトを使って回路を設計して、パターン設計をして、P版.comさんとか、そういうところで基板を。データを送れば彼らが基板にして送り返してくれるわけです。
八木:それからこれも無料のCADなんですけれども、ボディの部分とか、筐体の部分、内蔵される部品。全部で20点ぐらいなんですけれども、それも無料のCADで設計できるわけです。
八木:3Dプリンターとか、そういうものを活用して試作を行って、もちろん最後の量産については、やっぱり町工場さんとか、アナログのものづくりをうまく活用しながらやっていかなければいけないので、たくさんの日本の町工場さんに協力をあおいで、デジタル、アナログのいいところをうまく活用して、製品化に向けて進めてきました。最初は100台つくって、自宅の一室で組み立てをしていたんです。
八木:僕が、売れるごとに組み立てて出荷していたんです。家内工業みたいな(笑)。明治(時代)みたいな工業だったんですけれども、それをネットで販売して、それからFacebookで発信して、そうすると少しずつ口コミで販売数が伸びてきました。
八木:そうこうしているうちにグッドデザイン賞と、ドイツのレッド・ドット・デザイン賞とをいただいて、少しずつ認知が広がっていった中で、あるメディアさんが「ひとりメーカー」といったコピーをつけてくれたことが拡散されて、一人でもメーカーができるんだという驚きを持って、認知が広がって販売台数が伸びてきました。
八木:販売台数が伸びたことで量産体制を整えて、組み立て、物流もアウトソースして、家内工業からメーカーとしての機能を構築していったという経緯があります。今はSONYとかPanasonicの技術者も入ってもらって、社内の開発体制を整えて、メーカーとして強化していくというところです。そして昨年、新製品を出しまして、杉の間伐材を使った、置くだけ充電器です。
八木:木のコースターみたいなところにスマホを置くとピッと充電ができる、モバイルバッテリーも置くとピッと充電できる、タブレットも置くとピッと充電できるという製品です。
八木:(Qiという規格の)ワイヤレス充電に対応している製品です。ベッドサイドに置くと、溶け込んで。
八木:皆さんのベッドサイドは、きっと線だらけになっていると思うんですけれども、溶け込んで、馴染んじゃうというような製品です。今後は第3製品の開発と、来年から海外に向けても展開をスタートしたいと思っています、というところで、自己紹介。ありがとうございます。
林:はい、じゃ、八木さん的にはハードウエア・スタートアップ、なぜ今注目なのかという話を。
八木:後ほど、詳細をお話しさせていただこうと思うんですけれども、やっぱり今まで、ものづくりをスタートしようと思うと、大きな投資があって、それを償却しながら回収していくというビジネスモデルでした。
それが、非常に初期投資が小さくて済んで、小ロットからでも生産をして利益を出していくというモデルが、ツールやデジタルファブリケーションを活用することで、できるようになってきた。だから、あらゆる人がビジネスに参入することができるんだということが非常に大きいポイントかなと思っています。
林:ありがとうございます。
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