2024.12.03
企業の情報漏えいで最も多いのは「中途退職者」による持ち出し 内部不正が発生しやすい3つの要素
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夏野剛氏(以下、夏野):じゃあ、福島さん、いきましょうか。これ、福島さんはまた違うアプローチですよね。
福島良典氏(以下、福島):Gunosy代表取締役の福島です。Gunosyっていう会社がなにをやっているかっていうところと、僕自身が2012年に未踏をやっていたんで、その時のお話をしたいと思います。
まず、2012年に未踏をやりました。先ほど鈴木さんの話でちょっと出てきたんですけど、レコメンドエンジンっていう、例えば、Amazonとかで「この商品を買ってる人はこの商品も買っています」みたいな、おすすめがされるじゃないですか。それのニュース版の開発をやっていました。
先ほどフィルターバブル問題というのがあったと思うんですけど。レコメンドエンジンって、要するに好きなものがどんどん偏っていっちゃう問題がある。ピュアなレコメンドエンジンを使うと、多様性や意外性がなくなる課題がありました。
当時は、メールマガジンの形式でグノシーのサービスを個人で始めていました。そのサービス上でアルゴリズムのテストをした結果、精度やカバレッジで従来の指標と同じような数字だったんですけど、サービスの継続率で言うと、「多様性とか意外性を考慮したほうが良かった」が証明できました。
その後、グノシーのサービス自体がどんどん伸びていったので、2012年11月に法人化して当社を創業いたしました。
未踏に入って良かったことは、ベンチャーって、とくに最初の資金集めがすごく苦しいんですね。エンジニアって、あまりビジネスロジックとかこういう世界に慣れていないので、お金を集めることにすごく億劫だったりするんです。でも自分がやりたいことや興味があることに対して、必要な資金を供給してくれるというのはすごく良かった。
あと、同世代のおもしろい人たちと交われるのも良い点ですね。あと「国が認めた天才スーパークリエイターです」って言うと、いろんな人が「あ、すごいんですね」って言ってくれるっていう……。ここは笑ってほしいところなんですけど(笑)。
(会場笑)
Gunosyという会社は、「情報を世界中の人に最適に届ける」というミッションでやっています。メインのサービスは情報キュレーションサービス「グノシー」です。ダウンロード数の推移は、2017年1月時点で1,800万ダウンロードで順調に伸びています。
今はニュースアプリをメインでやっているんですけど、会社の思想は、ユーザーに届いていないあらゆる情報を最適に届けるための課題解決をしていきたい。スマホが出てきて、どんどん情報が増えていく中で、人が本当に求めている情報が手に入りづらくなっている。
情報リテラシーが高い人は、検索エンジンを駆使したり、ソーシャルメディアを駆使して、欲しい情報を手に入れていくんですけど。そうじゃない人は、「デジタルデバイド」と言いますか、情報を得るのが難しくなっていく。なにを見ていいかわからないとか、どういうアプリが世の中にあるのかわからないとか、そういう問題が広がっていると思っています。
Gunosyという会社は、データとアルゴリズムによって情報を最適に届けていくのが強みの会社なので、情報に非対称性のある領域を対象に、新しいサービスを作り始めています。
僕の直下の「新規事業開発室」で作っているサービスは、コマースと動画です。
コマースのサービスは、今、世の中でフリマアプリがすごく流行っているじゃないですか。でも、Amazonや価格.comで検索しても、フリマアプリで扱っている商品って、出てこないんですよね。でも、実際に買いたい人は、いろんなアプリを使い回して、最安値の商品を探していたりとかしている。
動画も同じで、動画のコンテンツが世の中に増えているんですけど、おもしろい動画をどう探していいかわからないといった問題がある。
そういう情報過多の課題を、ワンタップで解決できるようなサービスっていうのをやっています。いろんなアプリを知っておかなきゃいけない、検索テクニックがないとほしい情報にたどり着けない世の中を、データとアルゴリズムで変えていきたいなと思っています。
技術の応用に対する僕らの考え方としては、最近、ディープラーニングや深層学習と呼ばれる、アルゴリズムの新しいパラダイムが起こっていて、精度の部分であるとか、そもそも機械学習とかロジックの作り方の考え方自体が革命的に変化しています。
Gunosyが技術に対してどう向き合ってるか。あくまでユーザーの課題や顧客の課題を、一番効率良く解決できるようなテクノロジーを選んでいます。
応用例でいくと、かつては、SVMみたいなもので年齢を予測していたんですけど、ぜんぜん高い精度が出ませんでした。そんな中で「ちょっとディープラーニング試してみよう」ってやったら、けっこう精度が高く出ました。
「年齢ってそんなに推定するの難しいんですか?」って聞かれるんですけど、例えばFacebookみたいなサービスだと年齢を入れてもらうじゃないですか。でも、ニュースアプリって、別にアンケートみたいなのを入れてもユーザーは答えてくれないんですね。ユーザーはニュースを見たくてアプリを使っているので、「あなたは何歳ですか?」って聞かれても、「いや、知らないし」といった感じなので。
読んでいる記事や、実際にアプリをどういうふうに使っているとか、何時に使っているか、スクロール速度、そういった特徴量を入れながら年齢を推定しなきゃいけない。これはすごく難しかったです。
じゃあ「実際に年齢が推定できるようになって、なにがうれしいんですか?」っていうと、広告配信のロジックに応用してターゲットに合わせた広告の訴求ができるようになったり、あと記事とか年齢によって好む記事とか変わるので、そういうところに応用したりしています。
なので、僕らの技術に対するスタンスは、「技術のための技術」ではなくて、「ユーザーのための技術」。さらには顧客のためにテクノロジーを活用してビジネスを大きくしていく。そういう思想でテクノロジーの応用に取り組んでいます。
今後のアルゴリズムの進化の方向性においては、これからの世の中で、フェイクニュースや釣り記事と言われるようなものが増加している問題があります。
欲しい情報が届けられない状況で、配信コンテンツの質の向上、とくにフェイクニュースやクリックベイトと呼ばれる釣り記事の評価を下げていくようなアルゴリズムの研究開発に取り組んでいます。あとパーソナライズも同様に、ユーザーによって欲しい情報が異なるので、そこの精緻化に取り組んでいます。
グローバル市場にも挑戦しています。Gunosyは、USではなくアジア市場を狙っていて、今はインドネシアのニュースアプリ開発会社に出資をし、ニュースアプリの設計図を輸出しています。どういうことかというと、数字の見方やデータの取り方、アルゴリズムといった裏側を変えていくんですね。そうすることによって、ユーザーの継続率とか、ユーザーのエンゲージメントがすごく高まっていきます。
アルゴリズムは言語に依存しないんです。統計的な情報を使っているので。なので、僕はインドネシア語ぜんぜん読めないんですけど、実際にニュースアプリのアクティビティの向上とか、継続率の向上は、アルゴリズムという形でグローバル展開できるんだっていうことに、今挑戦しています。
最後に、「グローバルで勝つ日本企業になるために提言をしてくれ」と言われたので、一応書いてきたんですけど。まず、当社でいくと、グローバルでぜんぜん勝っていません。なので、「これから意識していきたいこととして、こういうことを考えています」とだけお伝えしておきます。
この後のディスカッションでそういう話があるみたいなので、ここではサラッと、こういうことを考えています、というところですね。
以上になります。ご清聴ありがとうございました。
(会場拍手)
夏野:福島くんは未踏でやってた時に、「ユーザーの好み通りにニュースを並べると見られなくなる」っていう話をしてくれて、「なるほど」と思いました。「好みの順位が低いものを間に混ぜてくんです」と言っていたけどあれは何年前?
福島:2012年なので、5年前ですね。
夏野:5年前。わずか5年前なんだけど、それが事業化して世界に出ていっているっていうのは、非常に私もPMとしてはうれしいかぎりです。
先ほどの「グローバルになるにはどうすればいいか」っていう話があったんですが、やっぱりこの日本に共通している問題は、国内市場が縮小していくこと。となると、企業が成長する、あるいは現体制を維持するためにも、今までにないことをやる、つまり未踏性のあることをやって新しい価値を作るか、グローバルに出ていくしかない。
そういう意味で、今日プレゼンしてくれた鈴木さんと福島さんは、未踏性のある新しいことをやりながら世界に出ていく、つまり両方やっているんです。ただよく考えると、GoogleとかAppleとかAmazonとかFacebookとか、シリコンバレーの成功したベンチャーはみんなそうなんです。
アメリカは過去20年で20パーセントも人口が増えてるんですけども、国内市場も拡大している、しかも、経済成長率では名目値で130パーセントなんですね、伸びてるんです。そういう国であっても、グローバルと未踏性を両方追求している。
さて、2人はAppleとGoogleとAmazon、Facebookになりますか?
鈴木健氏(以下、鈴木)・福島:……(笑)。
夏野:というのが、これからちょっとお話したいんですけどね。はい、ではこれから今まで発言する機会のなかったみなさんも一緒に話していきたいと思います。
米澤香子氏(以下、米澤):そもそも、なりたいと思っていらっしゃいますか?
夏野:えっ! なりたくない? なることに興味がない?
米澤:そうですね。今あるものになることには、私はあまり興味がないので。
夏野:ちょっと説明すると、Apple、Google、Facebook、Amazonに共通していることは、未踏性とグローバライゼーションを両方追求する会社として、世界中で成功モデルを広げていっている。そしてその結果として大きく成長している。
スマニューやグノシーは、そして日本のベンチャーは「そういう会社になれますか?」っていう質問。だから、「Appleにそのままなれ」って言ってるわけじゃないんです。
(福島氏に向かって)「なりたいですか?」っていう質問ですが。
福島:……(笑)。
夏野:なんか答えないと、会議が進まないです。
福島:そうですね、もちろんなってみたいなと思うんですけども、AppleやGoogle、Amazon、Facebookは、もちろんずっと意識していて、彼らがなにを考えているかとか、どういう戦略でやってるのかって、ずっと研究してるんですけど、まあ、レベルが違うな、と。簡単に彼らになれることはないかな、とは思ってますね。
ただ、やっぱりビジネスをやる以上、僕はプロダクトを作るのがすごく好きなので、プロダクトを作る以上は世界中の人が使う、本当にインパクトのある規模で使うようなプロダクトを、一生に一度は当ててみたいなとは思ってますね。
夏野:今、「レベルが違う」っていう話をしたんだけど、セルゲイとラリーが1998年にあのアルゴリズムを作った時は、もうレベル最低から始まってると思うんですが。
福島:たぶん、あの頃の検索エンジンだったら、ぜんぜん作れるんですけど。
夏野:いやいや、そういう意味じゃなくて。彼らも最初からすごかったわけじゃなくて。
福島:あ、そうです。
夏野:なので、レベルはたぶんね、ぜんぜん、今のほうがむしろ高いかもしれないんですが。なにか日本のベンチャーにはできない理由が……。できない感覚があります?
福島:まずですね、ニュースアプリで言うと、世界中ででかいサービスが生まれてる現状があったりするんですよ。
GoogleやFacebookは、最初から世界を意識してやってるんですけど、僕は「日本の中で広がればいいかな」っていうスピード感でそもそも始めてしまった。正直、ニュースアプリでこのグローバル市場を取るっていうのは、けっこうもう厳しくなっているかなと思っていて。
夏野:なるほど。
福島:ただ、Googleの後にFacebookが生まれていたり、Facebookの後にSnapchatが生まれていたり、そういう王座交代のタイミングっていうのが絶対あると思っているので。今いろいろやっている中で、一度でいいから王座交代を狙ってみたいなっていうところは、当然思っています。
夏野:はい。どうですか? 鈴木さんは。
鈴木:そうですね。質問をどう受け取るかによると思うんですけども。もちろん事業としてやっているから、AppleとかGoogleってすごく大きな……なんて言うかな、先輩だなというふうに思っていて。
ただ、AppleとかGoogleを目指すみたいな考え方だと、結果としてAppleとかGoogleみたいにたぶんできないだろうなと思っていて。要は、こういうところで、経済産業省的な世界でいると、産業的なのか、グローバル的なのかっていうふうな話にどうしてもなっちゃうんですけども。
実際にAppleとかGoogleの創業者の人たちがそういうことを考えていたかというと、僕は違うと思っていて。彼らが考えていることは、むしろ「普遍性のあるものをやりたい、仕事としてやりたい」と思っていて、結果として普遍性があったから、世界で使われたっていう順序なんですよね。
例えば、スティーブ・ジョブズで言うと、結局、ゼロックスのパロアルト研究所に行って、アラン・ケイたちの作ったAltoを見て、感動して、それを実現しようとしたわけだし。
ラリー・ペイジはWebリンクですね。ウィノグラードのゼミの中で、「いかにリンク構造から新しい価値を生み出していくのか」っていうことを研究していたんですよね。図書館のプロジェクトですよね。
どちらかというと、普遍性のあることをやろうとした結果として、そういうことが起きるんだと思うんです。僕もグローバル意識は当然ゼロではないんだけども、「それを意識しちゃいけないな」と思っていて。
いかに自分たちのやることが普遍性を持っているのか、普遍性のある思想を自分たちが作っていけるのか、もしくは、その思想の影響から新しいものを生み出していけるのか、ということをしっかりと考える。そうすると、結果として付いてくるんじゃないかな、というふうに思います。
夏野:ありがとうございます。今のお話はすごくおもしろくて、とくにFacebookで言うと、あれはharvard.eduっていうメアドアカウントを持ってる人しか、最初は使えなかったんですね。それがだんだん他の大学に広がっていって。で、それから一般に広がっていったんです。
そういう意味で言うと、マーク・ザッカーバーグは最初から世界はぜんぜん狙ってなかったんだと思うんです。ただ、モデルとしては普遍性のあるコミュニケーション。で、あれはね、あの順番が僕はすごく良かったなと思っていて。最初からboston.comだったら、もう、なんか、全く違う出会い系プラットフォームになってたかもしれません。
(会場笑)
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