2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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上原仁氏(以下、上原):どうもみなさんこんにちは。上原仁と申します。株式会社マイネットという会社の代表をやっています。
私は10年前に起業して、今現在こんなところに立たさせていただいていますが、もともとはドロドロのところから立ち上がった人間です。
今日、ここでお話する話は、先ほどのLaunch Padのようにすごくキラキラしたところですでに立っているような人より、「なにくそ!」「あいつら、きっと見てろ!」と思いながらいる人たちに向けて伝えたいと思っています。
私自身もずっとそうでした。創業して最初からずっと思っていることは、「100年成長する会社を作る」です。この目標を持って、そこに人生かけて、泥にまみれながら、今も夢の途中にいる1人の起業家です。そんな私の、この10年の戦いからの学びをお話しします。
今、ご紹介ありましたが、私は滋賀県出身の近江商人です。10年前は「近江商人」というハンドルでネット界隈を徘徊してました。今もブログなんかは存在したりしています。
近江商人という出自・生まれで、近江商人によるこの言葉が大好きだったんですね。「商売とは世のため人のための奉仕にして、利益はその当然の報酬なり」。
商売は、まず世のため人のためありきなんですよ。世のため人のためである以上は、必ず自分の下に利益がぐるっと戻ってくるというもの。そうやって、商売はサステイナブルに巡っていくものだという、この言葉が大好きです。
そんな私が起業を志したのは、小学校5年生のときでした。
小学校5年のときに松下幸之助の伝記を読んで、「松下電器は人を作る会社です」という言葉に、背筋に稲妻が走るくらいの感動を覚えました。「こんなにかっこいい経営者、立派な経営者になりたい」と思ったのが、私の人生をすべて決定づけました。
だから、こうやって松下幸之助さんのように商売経営の中で生きていくのは、もうこういうことだと思っていたんです。「起業するというのは商売をやることや」と、まず思ってました。「起業とは商売である」、これは当たり前だと思っていたんですけども。
私が創業したのは2006年なんですが、当時はWeb2.0と呼ばれる時代でした。その時代の起業家といえば、こういう人たちだったんですよね。
ミクシィの笠原健治さん。グリーの田中良和さん。ドリコムの内藤(裕紀)さん。家入(一真)さん。近藤(淳也)さん。そして海外に目を向ければ、ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリン。
「みんな、なんや」と。全員ものづくりの人なわけですよ。「起業っちゅうのは、商売ちゃうんか?」に対して、「こうや」と見せつけられたわけですね。「そうか、起業とはものづくりか」「商売ではないのか」と、当時の僕は思ったわけです。
この2004年、2005年、2006年くらいに、私は先輩経営者・先輩起業家たちに教えてもらいました。
だからね、私、この「商売」というのは少し後ろに置いておいて、まずはものづくりやってみようじゃないかと思ったんです。そして、やってみましたよ。「起業家は作らなあかんのか」と思ったわけです。
そして6年間、いろいろ作ってみました。作った、作った(笑)。地道にやりましたよ、ほんまにね。
なんのものづくりもしたことがない人間でしたが、とりあえず「見よう見まねでやってみる」ちゅう感じで、いろいろ作ってみました。「newsing」「katy」「たべにこ」。そしてついには、美少女ゲームまで作っちゃいましたね。
これをやってみたところ、どれもパッとしない(笑)。まあ、全然いかんわけですよ。跳ねないわけですよ。「これ一体なんなんかな?」と。
6年間もコツコツと、いろいろなもの作ってパッとしない。なんだか、だんだんと周りはもう自分のことを信じなくなっていくわけですよ。「起業して俺、一体なにがやりたかったんやろう?」と思いました。
正直、もう「なにやってんやろう? 俺は、ああやって松下幸之助さん目指して起業したのに。最初はいろんな人にもてはやしてもらったけど、どれもパッとしない。なにがやりたかったんやろう?」と、悶々とした毎日を過ごしていました。もしかすると、この会場にも今、その最中(さなか)の人もいるかもしれません。
そんな悶々とした毎日を過ごしていたある日に、同じ起業家をやっていた連れが突然逝きました。同じ出自で同じ夢を見て同じように走ってきた、ネットが好きな商売人。「ほんとに俺とこいつは似てる」と思っていた男が逝ってしまったんですね。
彼が逝ったとき、私、すぐに駆けつけました。彼の死に顔を見て、その瞬間、スイッチが入ったんですよ。自分の中でカチンっと。
「俺、近江商人やったやんけ」「なに苦手なことやってんねん」「俺は商売やりたいと思って、商売こそが起業やと思って、それに憧れてこの世界入ってきたんや」「俺は近江商人。商売をやるんや」と、自分の中でスイッチが入りました。
そう、みんな言う。「世界を変える」と。素敵なことですよ。プロダクトで、テクノロジーで世界を変える。素敵なことだけど、自分はそれよりも、社会に求められること、世の中や世間さまに認めていただけることを、しっかりとお届けしていくというプロフェッショナルになるんや。
社会に価値を届けて、しっかりと利益を作るところまで持っていって、企業を永続させていくこと。社会にバリューを出す。ちゃんと対価を返していただいて、きちんとした経営をやって、利益を生んでいく。
その利益がまた、翌年の社員の昇給原資になって、メンバーのキャリアができたら、また次に社会価値を生んでいく。そういう商売・経営をやっていくんやと、思い出しました。
利益が、社会からの通信簿だと。世界を変えるのもええ。しかし、社会に求められることをご提供して、ちゃんと利益を作る。その利益こそが、自分たちが社会に価値を生んでいるということの証明、通信簿なんだと。この考えで、ものごとを進め始めました。
得意な「商売」に徹すると決心したら、たくさんの仲間が集まってきました。すっごく素敵な仲間たちが。お客さんも喜んでくれるようになってきました。業績も、会社も劇的に成長して、自分がもともと作りたかった「100年成長する会社」が、こうして目の前に開けていったんですね。
ここから、この10年間やってきたことの学び、少しだけ加えます。
まず「好きで得意なことをやれ」です。好きなこと、そして得意なことです。あなたが今やっているお仕事、その事業は、もてはやされるかもしれん。だけど、本当に得意か? 世の中や世間さまが、本当にあなたがやることを求めているのだろうか?
自分に問いかけて、本当に好きで得意なものを見つけて、それをやっていくのが、なにより一番あなたの生まれた価値を世の中に出すことになる。
そして、起業はすべからく商売です。今ここにいる方々、多くの人たちがVCの論理で踊らされていませんか?
VCの人たちは……というより私たちは競走馬なんですよ。10頭立てで、「よーいドン! ダーン!」と。馬券全員にダーっと張ってくれるVCさんがいて、僕たちはただひたすらに1マイル、2マイルと走る。
ですが、実際のところ、経営は1マイル、2マイルで済まないわけですよ。100キロマラソンなわけですよ。
VCの論理に踊らされて、プロダクトのスケールだけを追って、社会価値が利益になって、利益がまた次のメンバーのキャリア作って、次なる経営に回っていく。そういった、社会価値が利益になって回っていくところを見失っていないですか。
利益は、社会からの通信簿なんです。そこに必ず、この起業というものは行き着くんです。そこから目を逸らさないで。VCの論理ではなくて、あなたが志したその事業が社会の価値になっていく。そこまで持っていくためには、利益が社会からの通信簿だから。
いいですか。「商売とは世のため人のための奉仕にして、利益はその当然の報酬なり」です。
最後にもう1つだけ、「友達を大切に」。みんな孤独だと思います。起業している人もみな孤独ですよ。自分だけが孤独なんじゃないです。
あなたが孤独なように、あなたの仲間、起業仲間、同じように孤独だから、その友達を大切に。一緒に突き抜けて成功できるように。そんな友達を大切にしてください。
私からは以上です。ありがとうございました。
(会場拍手)
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