2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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質問者5:お話、ありがとうございます。小林さんは前職でぜんぜん違う業界におられたと思うんですけど、さっきの動線の話とか、すごく考え込まれているという関連で、「エンジニアとしてこういう経験をしていたのが、今の仕事で活きているな」などがあれば教えてください。
小林せかい氏(以下、小林):「エンジニアとして……」というのはけっこう聞かれることが多いです。エンジニアと言えどいろんな分野があり、結局のところ「ものを作っている」わけですよね。決して混乱させてやろうと思って、なにかものを作ったりとか解説を作るわけじゃないじゃないですか。
例えば、ボタンを押すとき、「OK」と書いてあるのにキャンセルになったら大変ですよね。そういうところで「じゃあ、OKという文字が必ず見えるようにしよう」など、エンジニアはよく考えているんですよね。使っている人がわかりやすいかどうか。iPhoneなどがわかりやすい例ですよね。操作性がいいから、ここまで流行りました。
誰が見ても同じように操作できるというのは、ものすごく意識していましたし、今もそれが培われて活用できていると思いますね。
よくこの話をするときに、「そうはいっても、私は理系じゃないから」と言う方が多いんです。そこで、ピンクの袋の話をするんですよ。
未来食堂は「まかない」というかたちでいろんな人が参加しています。そこでは、エプロンを貸すんですよ。そのエプロンを使い終わったら洗わなきゃいけないんですよね。洗うために、持って帰らなきゃいけない。だから袋に入れてもらうんですよ。私が家に帰って洗濯するから。その袋が、すごく目立つショッキングピンクの袋なんです。
最初は、どこにでもある黒色の袋を使っていたんです。でも、黒色のバッグや袋は、わりと多くの方が使っていたりしますよね。「黒色の袋に入れてね」と言ったとたん、「え、どの黒色の袋?」となっちゃうんですよ。ピンクの袋を持ってお店に来る人あまりいない。……って、ピンク好きですよ。ピンク好きですけど、まずいないですね。
「ピンクの袋に入れて帰ってね」と言うと、みんな迷わずに袋に入れて「おつかれさまでーす」と言って帰っていけるんですよ。すごく単純だけど、大事ですよね。OKボタンが押しやすいところにあるのとまったく同じです。
出口治明氏(以下、出口):これ、会社でもちょっと考えます。ピンクの袋。
小林:(笑)。
質問者5:ありがとうございます。
出口:ほかにいかがですか?
質問者6:私、最近ものすごく人工知能に興味を持っていまして。今年になってとくに、人工知能が囲碁のチャンピオンを破るとか、いろんなことがあって、いろんな我々の生活のなかにどんどん入ってきていますよね。
「10年、20年先は一体どうなるんだろう?」と、ものすごく関心を持っているんですけど、出口さんと小林さんは10年20年先、人工知能が我々人類にどういった影響を与えると思っているかを聞きたいです。
出口:2つのお答えをしていいですか? 1つは、僕はわからないことを考えるのはあまり好きじゃないんですよ。
小林:(笑)。
出口:それから、今AIがブームになっているのは……あ、ここは本屋さんだからちょっとまずいかもしれないんですが(笑)。やっぱり、テーマになっている本が売れるからですよね。AIの本を書いている人のほとんどは、ちょっとお金儲けしたいという理由で書いているんでしょう?
(会場笑)
それから2つ目は、例えばAlphaGoでDeep Learningをやったんですけれど、あれの原理は、ものすごく簡単なんです。囲碁のルールや、過去の囲碁の対戦図を全部コンピュータに教えたら、コンピュータがそのなかで無限にゲームをくり返して経験を積んでいく。だから、Run and testの回数が人間に比べて桁違いなので強くなるというだけですよね。数秒でAlphaGo同士が名人戦を行うわけですから。
でも、このことを前提にすれば、「シンギュラリティ」などと言っているおじさんがいっぱいいますけれど、その前提は脳に入っている情緒を全部コンピュータにまずインプットするというところから始まるべきですよね。
人間とコンピュータの関係で、一番遅れているのがアクセスですよね。いまだにキーボードでやっていて、今やっと音声そして画像くらいですよね。どれも、意識できる情報しか入れられないんです。脳の活動で意識できる部分はせいぜい2〜3割です。そんな2〜3割の情報を入れてDeep Learningをしたところで、ろくなものができない。僕はそのように、前提から疑っています。
AIは、「ブームになっているので、ちょうど出版業界のお金儲けの格好のテーマになっているんじゃないか?」くらいのことを僕は考えているんですけど。
(会場笑)
この前、おもしろかったのは、確か東大にチャレンジしていたAIがやめましたよね。「入試問題を解けないくらいで、なにがシンギュラリティや」とか思いません?(笑)。
(会場笑)
出口:僕は文化系で憲法専攻ですから、素人なので(笑)。プロから見られていかがですか?
小林:ちょっと変化球の回答になるかもしれないんですけど、こういうのよくあるんですよ。まったく……だって定食屋ですよ(笑)。定食屋で、毎日日替わりで「今日はシチュー」とかやっている人間に、人工知能とか……。
こういった人工知能じゃなくても、思ってもみなかったことを聞かれることがあるんですよ。「女性のキャリアについてどう思いますか?」「シェアの文化についてどう思いますか?」とか。
では、聞かれるときにいつもどう返しているかというと、実はすごく気をつけていることがあって。今もそれをすごく気をつけているんですけど、想像するんですよ。といっても勝手な想像じゃなくて、聞くんです。
例えば今、人工知能のことを聞かれたじゃないですか。でも、本当に知らないので、「それって売っているんですか?」「家電でもう売っているんですか?」と聞くと、違うんですよね、「まだ人の手には届かない、専門の研究のものなのかな?」とか、そういうのを教えてくれるんですよ。そうすると、「まだ売ってないということは、まだめずらしいのかな?」とかだんだんわかってくる。わかると、答えられる。
でも、普通のインタビューのように質問されると、なんとなくのイメージで返すことがとっても多いと思うんですね。そのほうがスムーズに時間内に終わるから。
例えば、キャリアもそうです。「女性のキャリアについて、見事な転身を遂げた小林さん、ひと言お願いします」と聞かれたときも、「え、じゃあどういう人? 例えばAさんは大企業で働いていて、そういうAさんに向けたひと言?」「Aさん、夜疲れきっているときに向けたひと言なの? それとも新しい仕事やりたくてモチベーションあるときへのひと言なの?」とか、すごく細かく聞き返すんですよ。
そうするとぜんぜん違うじゃないですか。「いや、そのAさんには『ちょっと待った』を言いたいな」「ちょっと疲れてそうだけど、あえて励ましたいな」とか。そこまでいかないと回答って、なにもおもしろくないんですよね。
出口:関係性を理解しないと答えられませんね。
小林:そのことに気づいてからは、ものすごくちゃんと一緒に想像して答えるように気をつけていますね。そうしないと「がんばれって言いたいです」とか、すごくペラペラな言葉になってしまって。結局、誰にも響かない。
「なんでそんなことを聞かれるんだろう?」と怪訝な顔をする方でも、一緒に考えていくうちに、「でも、実は子育て中の方に対するイメージがなんとなくありました」とか、気づいてくるんですよ。「あ、私考えてなかった」とか。そこまでいってのひと言なのかなと思うので。
早く進むって大事ですけどね、たまにはそうやって一緒にイメージするということも大事なのかなとも思います。
出口:「ゆっくり急げ」ですよね。
小林:そうですね。ちょっと抽象的な答えになってしまいました。
質問者7:お話、ありがとうございました。会社を始められた際にいろいろと苦労があったかと思うんですけれども、そういったときに……。あ、2人におうかがいしたんですけど(笑)。
(会場笑)
小林:釣り合っていますか?(笑)。
質問者7:いろいろ苦労があったと思うんですけど、そういった時の心の支えというのはなんだったのかというところと、あと私も会社を作りたいと思って、来年から立ち上げる予定なんですけれども、そういったところでもしなにかアドバイスいただけたら、大変ありがたいです。お願いいたします。
小林:私が出口さんを見ていて思うのは、すごくいいパートナーと一緒にやれたのかなと思いましたね。
出口:まあ、1人で仕事はできないので。僕、会社でなにかをやるということは、極端に言えば、結婚や同棲と同じだと思っているんですよ。やっぱり、相性がすごく大事。いい仲間と仕事ができるということがすごく大事だと思いますよね。
心の支えは、困ったりしんどかったりするときにどうするかという質問だと思いますが、睡眠ですね。食べて寝ることに尽きると思います。人間は動物なので。
小林:(笑)。
質問者7:ええっと……。
小林:もうちょっと……(笑)。
(会場笑)
出口:あれですよね。あとは、来年から起業されるんだったら……。よく言われるんですけれど、本当にプランどおりにいかないんですよ。だから、あえて言うならば、できるだけ小さく始めて、最初から「これ、当たるはずやで」と思ってお金を使わないことですよね。それは大事なことだと思います。わからないので。
これも実際、「インターネットでこういうふうにしたら売れるやろ」と思って、頭で考えて当たったことはほとんどないんですよ。「こんなんあかんやろ」と思ったことがものすごく当たったりするんです。本当にそんなもんなので、できるだけお金を使わないことですよね。これでもあまり……もうちょっと言ったほうがいいですか?
(会場笑)
小林:なんか社長さんのひと言だとは思えない。おもしろい(笑)。でも、そういうアドバイスって、よく求められるんじゃないですか?
出口:だいたい同じように答えているんですけれど(笑)。
小林:(笑)。
出口:でも、本当に不真面目とかではなくて……。理不尽なことって、世のなかに山ほどあるんですよ。考えても考えても解決しないんですよ。なぜ解決しないのかというと、理不尽なことだからですよ。理不尽でないことは解決しますけれど、理不尽なことっていっぱいあるんですよ。
そういうときにはやっぱり、人間が一番頼りになるのは自分の心身の健康なんだと思うんですよね。変に疲れていたり、睡眠不足で「大変だ、大変だ」っていうのをわ~っと思っていたりしても、かえって事態は悪くなるだけです。
世のなかには、ある確率で理不尽なこともいっぱい起こると、すでにわかっているはずです。そんな社会でいろんなことをやっていくために一番大事なことは、自分の心身をコントロールすることだと思うんですよね。
それには、おいしいものを食べて、たっぷり寝て、仲のいい友達と理不尽な人への悪口を目一杯言う。それが一番大事なことだと、本当にそう思うんですよね。……だ、だめですか?
(会場笑)
小林:いやいや(笑)。
質問者7:ありがとうございます。
小林:なかなか難しいですよね。たぶん。
出口:ええ、状況が違いますからね。
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