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ゲーム産業の今後(全2記事)

「モンハンが出ても、スマホゲームユーザーは減らない」 スマホによる"エンタメ消費"の特殊性とは?

ディー・エヌ・エー小林賢治氏とグリー青柳直樹氏による対談。各社の事業戦略について意見を交換しつつ、ゲーム業界全体の行方について語り合った。(IVS 2013 Fallより)

モンハンが出ても、スマホゲームユーザーが減らないワケ

司会:それでは、次のセッションは、ゲーム産業の今後ということで。まず簡単に、自己紹介と取り組んでおられることを説明していただけますでしょうか?

小林賢治氏(以下、小林):ディー・エヌ・エー取締役の小林と言います。自身でゲームを作って、売上にコミットしています。

青柳直樹氏(以下、青柳):グリーの青柳です。グリーの中でもいろいろやることは変わってきたんですが、今は、ネイティブゲームの担当ということで、国内、海外を飛び回る生活をさせていただいています。よろしくお願いします。

司会:テーマとしてはゲーム産業の今後ということで、まだまだ可能性はあるぞという認識なんでしょうか?

小林:僕は100%そう思ってますけどね。前にIVSでもお話させていただいて、今日も(セガサミーの)里見さんが引用してくれたんですけど。エンタメ産業って、なかなか広がりきらない1番の要因は、可処分時間を取り合うからなんですね。時間を要するエンタメって、絶対に何かを犠牲にして何かをやらないといけなくて、映画を観ていたらゲームはできんし、ってなっちゃうので。

しかもエンタメ消費時間って、少なくとも日中ではなくて家帰ってからでしょとか、土日でしょみたいな、それを誰がとりますかっていう勝負をしてるんですけど。このスマートフォンデバイスでやるエンタメって、そうじゃない時間をとったっていう感覚があって。多分グリーさんも一緒だと思うんですけど、来てるトラフィックが、朝と、昼休みと、18時以降になだらかに増えるっていう。

例えば昼休みに、映画を観てる人はいないじゃないですか? テレビも観ないじゃないですか? マンガもあまり読んでなくって。そこで、たばこ吸ってるときとか電車待ってるときに何かやろうとかって、そこはエンタメが入りこんでなかったとこなんで、単純に僕は広がってるっていう感じです。だから、里見さんが感じられたみたいに、モンハン出ても別にスマホゲームのユーザー減らないよみたいな。

青柳:あれ面白かったですね。

小林:ああいう感じはまさに、違うニーズにそれぞれ対応してるので、両方やれちゃうっていう感じなんですよ。僕もモンハンやってるときも、モバゲーもやるし。スマホの市場はゼロサムゾーンでは全くないっていう感じですね。単純に、デバイスの数も増えていくので、ますます機会はあるっていう気はしていますね。

エンタメ市場は過小評価されている

青柳:市場が伸び続けているっていうことが、あまり注目されていないのがおかしいなと思ってて。例えば、据え置きのハード機も売れてるし、明らかにこれから3年ぐらいで市場が伸びるっていうのが、業界のコンセンサスなんだけれども、なぜか漂う悲観ブーム、カニバルんじゃないかみたいな。それでゲーム業界への投資も減っているし、なんでだろうなと思っていて、不思議なんですよね。

小林:僕は、スーパーセルの買収のとき、安! と思いましたからね。

青柳:あれは安い。

小林:あー、そうなんだ、と思って。これから伸びるタイミングでこれなのかって。

青柳:しかも、これ言っちゃうと、お前らまだスーパーセル買ってないのにって言われちゃうんですけど、あのゲームまだまだやれることいっぱいありますよね。

小林:いっぱいありますね。

青柳:グリーがFunzioって会社を買収させてもらって、もともとちゃんとトップ・ゲームを作ってたんですけど、我々が入ってってやれることたくさんあって。最初、その会社を見させてもらったときに、日本とのいろんなKPIの違いに愕然としたんですよ。

僕の仮説は、これは3倍にできると。同じユーザー数でも売上を3倍にできるって思ってやったら、実際にそうなったんですよね。もし本当にスーパーセル、ソフトバンク買われたけれども、ちょっとやったらまだまだ伸びるし、それで世の中変わっちゃうんじゃないかなと思って。すごいあれおいしいですよね。

スマホゲームの設計は「テンポ感」で考える

司会:ゲームを実際に見られる中で、どういう切り口で、いつもゲームを発案されたり検討されてるんでしょうか?

小林:発案は、何から出てもいいと思っていて。僕個人でゲームを考えるときは、実は時間のテンポ感から考えるんですよ。集中する時間と、はあ、っていう時間をどのくらいのサイクルで作りたいかっていうのがあって。

例えば釣りスタって、ずーっと集中しているわけじゃないですよね。タイミング合わせて押すときに、集中しているんですよ。あれ、5分同じことずっとやらされてたら、もういいわってなるんですよ。3秒だと、え、もう終わり?ってなるんですよね。

何秒だと面白いのか? っていうので、実はゲームの面白さって変わって。スキマ時間でやるときに、人は何分ぐらいでもしくは何秒ぐらいだったら気合い入れられて、何秒ぐらいだとだらけるかっていうのを、いろいろ試してるんですね。CSR Racingを見ていて、ナイスだなって思ったのは、レーシングゲームを2分もやる気にならなくない? みたいなのを、10秒でいいじゃん、と。ゼロヨンレース、10秒ですよ。10秒だったら、気合い入れて、たばこ吸うのを止めてでもやるんですよ。

リアルレーシングは、リッチさでは勝ったかもしれないですけど、2分間鈴鹿まわる気にならないんですよ。集中力がもたないんですよ。1回コースアウトしたら、もうええわって感じになって。多分、デバイスとしてのユーザーの期待値にそぐわなかったというのがあって。どのくらいのテンポ感のゲームを作るかっていうのを最初に考えて、それだったら何スタイルかなみたいな順番で考えることが多いです。

青柳:面白いですね。特にスマートフォン上の、ウェブでもネイティブでも、普遍的に通用する話ですよね。タブレットとかハード機になると、また変わっちゃうかもしれないですね。

小林:そうなんですよ。そのデバイスに相対するときの距離とか、どういう文脈で入ってきたかとか。一連のストーリーを考えたときに、ユーザーがめっちゃ自然であるパターンってどういうオケージョンで、どんなぐらいのこと期待して、どんな程度のフィードバックを与えればいいのかみたいな。毎回スマートデバイスを、よし、たばこも消して(背筋を伸ばして)、よしっていうほど、気合いは入ってないだろうっていうのに対して、今、いろいろみんな発明をしていると。

LINEさんは、あるいはカカオは、ひとつの発明をしたんですよ、このぐらいでもいいよ、と。あれは見事な発明だと思っていて。今までもあったような遊びかもしれないけど、それを一工夫して、スマホデバイスに合ったスタイルで提供した。例えば、CSR Racingでは、ひとつの解釈のしかたでグラフィックもリッチに見えるけれども、実際、集中している時間って一瞬だよねみたいな。切り口はどこから入っても別にいいかな、と思ってるんですよね。

α版までいっても、ダメだと思ったらすぐにやめる

司会:その中で、αバージョンのときでももう開発を止めるとさっきおっしゃったんですけど、そのときの基準っていうのはどこになるんですか?

小林:αは、作りこむよりももうちょい手前なんですけど。テンポ感っていろんな要素の複合要因なんで、単純にパラメーターさえイジれば変わるものは別に気にしないんですけど、いろんな操作感とかでも演出されるところがあって。

例えばテンプルランってあるじゃないですか? テンプルランがもし、ジャイロを傾けてもなかなか人が動かなかったら、相当イライラすると思うんですよね。え?って思うのは、直すのにセンスが関わっていて、時間かけてもしょうがない場合があるんですよ。特に、早い段階で見切るのは、チームのケーパビリティ、もしくは相性、セカンドパーティの場合は得意不得意とか。

もっというと、一番ひどい場合はデベロッパーのスキル不足ということもありますけど。時間かけてもあんまり限界効用が上がらんなっていうのは、その辺のセンスに出てくるんです。で、細かい部分なんですよ、実は。

逆にセンスがいい会社って、その辺を、ぽーんってミートしてくるんですよ。内製だろうがセカンドパーティだろうが。もっとよくできるのに、っていう感覚を、ポジティブなほうにもたらしてくれるところと、まずいところどうやって消していこうかな、時間かかりそうだなっていうのと、実はそんなに悩まないですね。

青柳:確かに今おっしゃったなかで、これこのままやってもどうにもならんなっていうのを、早くやめさせてあげるのは、お互いにとってハッピーですよね。要は相性が悪い、こいつとこいつ一緒に働いてて、どうもだめだみたいなのは、お互いのためにも変えてあげたほうがいいし。

得意なことだけじゃなくても、明らかにこれじゃこのデベロッパーさんじゃ厳しいでしょ、あと半年続けてまた同じ議論しているんじゃないの、みたいなときに早くやるの、重要ですよね。それもやってみないとわからないし。

小林:そうなんですよ。結構、やってみないとわからないんですよ。

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