2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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玉木諒氏(以下、玉木):人事面のお話が続いたので、テーマを変えたいなと思うんですけど、渡邉さんの(最大の失敗は)「見切り発車」ということなんですが、見切り発車ってなんですかね?
渡邉拓氏(以下、渡邉):前の会社を辞めた後に、「何をやろう?」というのをあまり準備せずに辞めてしまって、なんとかなるだろうというか、前の会社でも新規事業を担当していたので、自信があったというか、できるんじゃないかなと思ってたんですけど。
辞めた後に、2週間ぐらいネットサーフィンして本を読んで……何も出てこないんですよね(笑)。それで、「これはヤベえな」と思って、2週間経って焦るわけですよね。なんか意味ないアポとか入れちゃって、入れてる間も1週間ぐらいラグがあるので、「どうしようかな」と思って。
そういうのがけっこう続いて、1ヶ月ぐらい経った後に、学生時代一緒に事業をやってた、原田という人間の家に行って、「俺、会社辞めたんだけど、ちょっとやることない?」って居座って、「どうすっかな」みたいな。初めは高円寺で4畳半のところに住んでたんですけど、原田の家が新宿だったんで、そこから自転車で通ってました。
会社を辞める時に、「3種の神器があれば大丈夫だ」と思ったんですよね。印刷機と自転車と、あとはiPadがあれば、とりあえずなんかできそうじゃないですか。iPadに資料とか映して、印刷できなくてもいいし、印刷機があればなんとかなるし。
自転車があれば、都内はわりと行けるんじゃないかみたいなのがあって。とりあえず、原田のもとに高円寺から自転車で20分ぐらいかけて行って、原田が働いてる間、ケンタッキーに100円コーヒーとかクーポンでずっと居座って……そんな感じでやってたんです。
それが半年ぐらい続いて。原田がシステムを作れるんで、「動画のサービスを作ろうよ」と言って、「Bizcast」という動画のメディアを作ったんです。会社を辞めてから、最終的に会社を立ち上げるまで1年ぐらいあったんですが、それまでは本当にニートみたいな感じでしたね。
ただ良かったのは、Bizcastのメディアを作ってたってこともあって、今、投資いただいているEast Venturesの松山太河さんに会えました。当時は本当に死にそうというか、藁にもすがる思いで……。
タイムラインに、「渋谷にEast Venturesが運営するシェアオフィスができます」みたいなのが流れてきたんです。その時にEast Venturesをネットで調べて書いてあったのが、「エンジニアに特化したアクセラレータ」って書いてあって。
僕は純粋なWebエンジニアじゃないんですよね(笑)。1回閉じてやめようと思ったんですけど、「このままじゃ死ぬ」と思って、コンタクトを取ったら、(松山)太河が連絡をくれて、「会おうよ」と。それで「実はWebサイトを作ったんですけど」「君(コード)書けんの?」「まあ書けないです」みたいな。
「でも1ヶ月あれば、なんとかなりますよ」「なんならアプリも作りますよ」みたいな感じで言ってたら、やってることわけわかんないし、経歴も変な感じなんで、それが面白採用になって、シェアオフィスを使えることになりました。
ある意味、見切り発車でそういうものを作ってたから、太河さんに会えたり次につながっていったのかなというのはあるかなと思います。
玉木:秋山さんにおうかがいしたいんですけど、たくさん事業やられてきて、社会の流れを考えた時に、「時期が早すぎたな」とか、「ちょっとこれは遅かったな」みたいなことはありますか?
秋山勝氏(以下、秋山):社内では「事業は半歩先行くくらいがちょうどいい」とよく言ってるんですね。というのは、一番の理想は「君のサービスってどういうやつなの?」と聞かれたときに、「かくかくじかじか……そうなんです」って説明して「確かに、言われてみればそうだよね」くらいのものがやっぱりいいんです。
「これが専門的にこうでああで」という理屈だけで固めて、相手がピンと来ないものに関しては、事業化に時間がかかる。
そういうのもダメじゃないんですけど、できればそういうのを見つけたいんです。僕が苦戦したのは、社内の協力を得られないということですね。
今で言うと、まとめサイトって当然のようにあるじゃないですか。NAVERまとめが来る2年、3年ぐらい前かな? 実は、いろんなインダストリーで、まとめサイトを作ってたんですね。構想を練って、全社員を集めて、こういうことをやると言って。
やっぱり人間のイメージというのは、すでにあるものと合致するかどうか。心理学で言うと「心像」というやつですかね。心の像って書くんですけど。
例えば今、みなさんに「リンゴ」と言ったら、リンゴのイメージってそんなにズレないじゃないですか。ずれないんですけれども、それって過去に経験してるものがあるから、そこで合致できるんです。
今で言うまとめサイトと、当時で言うまとめサイトはぜんぜん意味が違うんですね。意味というか、捉え方が違っていて、どんなに社員に説明しても、「それは雑誌の編集と何が違うんですか?」と言われちゃうんですよ。
「編集は1つの文章として成り立ってるものでしょ」「いわゆる特集ページとかそういうものでしょう」と。
「まとめはもっとかいつまんで、ある目的においてちょうどいい。今の時代には、編集されたものとリンク集のちょうど間ぐらいの情報を整理した状態のものがいいんじゃないかな」みたいな話をして。
「でもそれ、編集ページですよね?」という話になっちゃうんですよ。そうすると、「しょうがないんで、秋山さんの言う通りにやってみよう」となるんですけど、結局編集ページで上がってきちゃうという問題がありました。
あとは当時、2006年ぐらいにバーチャルメディアを立ち上げたんです。いろんなポータルサイトにある情報をマージして、リアルメディアで、日本でそれをやってる会社がほとんどいなくて。
世の中的に、お客さんに言っても、「いや、その情報うちにあるからいいよ」とか言われちゃうんです。提供したかったのは、マージすることによってユーザーに与える利益。見るべきはそこなんです。
例えば、リクナビさんにある情報とか、マイナビさんにある情報、派遣ネットさんにある情報、そういうのが1個1個あるのはわかってるんだけど、求職者の立場に立ってみれば、それをまとまることによって得られるメリットと、結果的には媒体側に提供できる価値というのは最大化されるはずだから、そういうのをやりましょうよと言うんですけど。
担当者さんは、「うちは、ほかより多く情報があるからいいよ」と言うわけですよ。「だから、そこじゃないんです」と。概念的な部分で理解してもらえなくて前に進まなかったというのは、言い出したら今日一晩中語れるぐらいあります。
なので、僕がいつも苦戦するのは、お客さんもそうですし、社内にいるメンバーと共有できないことなんです。言ってたつもりなんですけど、言語化できない難しさはありますね。
玉木:杉山さんにもおうかがいしたいんですけど、今やられてるソーシャルレンディング事業は、そもそもあまりない事業じゃないですか。日本にもないし。
今でこそFinTechがすごいバズワードになって、注目されていると思うんですけど、杉山さんが始められた当時は「スタートアップが金融業なんて」みたいな感じだったと思うんですよ。
杉山智行氏(以下、杉山):そうですね。「スタートアップが金融業なんて」と言うよりは、「ペルーに投資とか怪しすぎる」みたいな。
ベンチャーやってる人だと、「シード期は怪しいとかよく言われましたよ」と話されるんですけど、僕はその中でも(とくに)言われたほうじゃないかなと。
玉木:メンバーとかお金の調達先に、まだない概念をどう話されるんですか?
杉山:本業のクラウドファンディングで言いますと、日本はけっこう投資に保守的と言われますけど、ベンチャー企業が運営するクラウドファンディングはいきなり1兆円集めるわけでもないので。
意外と尖った個人投資家の方は、ブラジルレアルの投資とか、トルコリラ、南アフリカの社債とか、大手の証券会社さんが売ってらっしゃったんで。そこはそんなに。
どちらかと言うと、弁護士さんに「当社の顧問弁護士になってください」と依頼したら、「詐欺かもしれないから、お前のチェックからだ」みたいなことを言われて断られちゃうとか。
(会場笑)
サービスとしては、ピンと来なさすぎて(メンバーが)ポカーンとしたとかいう感じではなかったです。ただ、エクイティファイナンスのほうは、やっぱり「そんな会社に(お金)出すとかヤバ過ぎる」みたいな感じで。
なので当社が創業期からお世話になっている株主の方のように、いい意味で突き抜けていらっしゃる方にコンセプトベースで、「日本の銀行さんって国内でお金回してるだけだけど、これからの日本には世界でお金を還流させる金融ベンチャーも必要です」とお話をさせていただきました。
玉木:スタートアップでお金がなくなって、死にそうになるというのは、よく聞く話だとは思うんですけど。みなさん、お金の面での失敗はありますか?
杉山:うちの会社は、自分の貯金から500万円を出して創ったんですけど、クラウドファンディングの仕組み作りをしていて「これ、けっこうできるんじゃないか?」みたいになってきたところで、知人に「こういうのって税務意見書をもらうのにだいたい300万円ぐらいかかるよ」と言われて、「ゲゲゲ」って思いました。
それでお世話になってる税理士さんに、「100万円で受けてください」と言って、駆け込みました。
向こうもいきなり言われて「よくわからないけど、わかった」みたいな感じで顧問になっていただいたら、実は確認することって、ほとんど日本じゃなくてペルーのほうばっかりで、日本はそれほど聞くことがなかったということですかね。「なんかあまり聞いてないけど、資本金の5分の1がなくなった」みたいな。
(会場笑)
そこがたぶん、当社で心に残ってる失敗の一番最初じゃなかったかなという気がしております。
玉木:秋山さんはなにかありますか?
秋山:幸いにも、資金繰りに困るという機会は、本当に最初の創業から半年もないぐらいの時だったんですね。これは本当にラッキーなんですけど、僕が一番最初に始めたのが引っ越しの一括見積もりのサービスなんです。引っ越し会社は幸いなことに現金商売で、支払いサイクルがすごい短いんです。
末締めの翌20日とかに支払ってくれるんですよ。実質3週間ぐらいじゃないですか。なので、例えば外注を使った時に、支払いが最短でも30日だと、入金が先に来ちゃうんですね。すごい単純な足し算、引き算だけで、会社にいくら残るとか、そういうやりくりができました。
かつ創業の事業が半年経って当たってくれたというところもあり、そういう意味では、幸いにもお金というところでは困らなかったんですよ。
玉木:それは最初から狙ってたんですか? まずばキャッシュフローがいい事業を立ち上げようみたいな。
秋山:比較サイトでやるというのはもう決めてたんですけれども、当時は世の中的に、ほとんどの事業者がポータル志向だったんですね。ちょうど僕が創業すると決めたのが2003年だったので、gooとかLycosもあったし。昔、ポータルサイトがまだYahoo1強になる前ですけれども。
みんながこぞってポータルサイトをやるみたいな方向だったんで、2002年の時にリスティングが動き始めて、タイティングの意味とか、タイティングの重要性に気付いて。
これはもう、インダストリー毎に比較サイトを立ち上げていくことが世の中的に求められていくんじゃないかなというのが、その時の読みとしては正直ありました。
そのなかで、多くの人がイベントとして経験するライフイベント系、要はマーケットとしてもある程度成立しそうで、かつ比較サイトに合ってるもの。僕の中では引っ越しがベストだなと思ったんですね。
なので、引っ越しというところから始めたら、さっきの話で、(支払いが)20日か25日だったんですよね。
玉木:それは業界の慣習なんですね。
秋山:慣習ですね。一番大口のお客さん、アートさんとかサカイさんとか、そういったところがだいたい20日、25日だったので、すごく安心してできました。
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