2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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小泉文明氏(以下、小泉):次の質問なんですけれども。サービススタートしていくなかで、「これ、きたな」というタイミングがくると思うんですよね。「これ、サービスがかなりヒットし始めてるんじゃないか」みたいなポイントがあると思うんです。
エブリーとかやっていて、「DELISH KITCHEN」でいいと思うんですけど、「これ、きたな」と思ったタイミングとか、なにか仕掛けをしてそれがハマったみたいな、なにかあるんですか?
吉田大成氏(以下、吉田):今、1分ぐらいの動画を配信しているんですけれども、実は一番最初は30分間ぐらいの動画を作っていたんですよね。本当に細かに手順がわかるようなかたちで、テレビ番組の料理教室みたいな。
小泉:誰も見ないですね。
吉田:見ない(笑)。
小泉:(笑)。
吉田:YouTubeで配信したら、1日経っても再生回数3とか4で、社内の人間しか見てないみたいな状態でけっこうずっとやっていて(笑)。「これ、違くない?」みたいな話になって、「じゃあ、やっぱり撮り方とか長さも全部変えよう」みたいなことをやっていったんですけれども。
でも、やっぱり検索なんじゃないかと思って、9月に立ち上げて、10月がハロウィンとかあったので、ハロウィンの料理ばっかり作ったりしたら、確かにユーザーちょっと伸びたんですよね。そしたら、再生回数100とかで「やったー!」みたいな(笑)。
小泉:(笑)。
吉田:「ぜんぜんお金入ってこないから、これまずいんじゃない?」みたいな話になり、「これ、絶対違くない?」という話になって、短いやつにして。ちょうどその当時、Facebookが動画に対して力を入れるということがあったので、そのなかで最適になるところまでとにかく切り詰めて作った1本が、たまたま100万回再生されるぐらい一気にシェアされまくって。
なにが起こっているのか僕らもわからないけれども、すごく再生されて、フォロワー数もすごく増えていったというのが、そのきっかけです。
それまでは、僕らはまだ「YouTubeすごいがんばろう」とか、「長いコンテンツを作ってみよう」とかけっこうがんばったんですけれども、これは違うんじゃないかと思ったタイミングで、「DELISH KITCHEN」だけは一気に短い尺の動画に切り替えるという感じになりましたね。
小泉:最初から1分だったの? それとも5分とかきざんでいったの?
吉田:徐々に短くなりながら、撮り方も全部変えていって、みたいな感じですね。動画をやられる方は知っているかと思うんですけれども、管理側のツールでYouTubeもFacebookも視聴完了率とよばれる、「最初に100(パーセント)から始まって、どこまで見たか」というグラフが全部見られるんですよね。
30分の動画は、ものの見事に、出て5秒ぐらい経つと、もう5パーセントぐらいしか見ていないみたい状態だったので、なるべくどんどん短く短くしていって。
今度、短すぎるとそれはそれで見てすぐ終わっちゃうので、やっぱり適切な長さで共感を生めるようなものを作っていくと、そこからシェアが生まれるみたいなかたちでした。視聴完了率というのとエンゲージメント、両方とも見ながらチューニングしていったところが大きいです。
小泉:今、4つのジャンル全部、基本は1分? 変えている?
吉田:時間バラバラです。「DELISH KITCHEN」も必ず1分というわけではなくて、料理行程に応じて、40秒ぐらいのやつもあれば、1分30秒ぐらいのやつもありますし。ニュース系だと2分とか3分というのもあったりします。
小泉:メドレーは、どの事業でもいいんですけれども、ガーッときたみたいなことは?
石崎洋輔氏(以下、石崎):正直、あんまりない……(笑)。けっこうどれも順調に伸びてきたというか、少し伸びてきて数がたまっていって今がある、みたいなところがあります。
例えば、「介護のほんね」になると、子会社を一昨年の4月に作ったのですが、新規事業のルールで「翌年の1月までにこのぐらいのUUいかなければ終了」という目標があったんですね。
私はもともとSEOをやっていたこともあって、「介護のほんね」は口コミサイトとして、「食べログ」などの口コミサイトの老人ホーム版をやろうとしていました。口コミがキーだと思っていたので、口コミ監査も全部自分で数万件ぐらい見ていました。
最初リリース時点はそれほどPVは当然なかったのですが、口コミの数が溜まっていくごとに少しずつ増えてきて、無事目標達成し、存続することができています。
小泉:なにか工夫したわけじゃなかったの?
石崎:工夫はいっぱいありますね。
小泉:「これだ」というのは、なにかある?
石崎:本当にすごい細かい工夫の繰り返しなんですが、例えば、口コミ投稿画面は300文字以上書かなきゃそもそも投稿できない仕組みにしているんですが、あえて書きづらくするというか、長く書かなきゃいけないような見た目にして、一言だけ悪口書いてやろうと思った人は、そこで離脱するようにしていたりいます。
あとは、「300文字まであと○文字」みたいなものを表示しているんですが、それをあえてスクロールしないと見えないようにする。技術的には常時表示しておくことはできるのですが、あえて、下までいってようやくその制限文字が見える。だから、300文字ピッタリでやめようとする人もそこでふるい落とす、というようなことをやったりしていますね。
口コミ監査も、40~50ページほどの口コミ承認マニュアルがあります。「この場合はダメ」というのを全部書いて、それどおりに承認していくという工夫をしていますね。
吉田:口コミは何件ぐらいあるんですか?
石崎:今、表に出てるのが3万弱ぐらいですね。
吉田:リリースして2~3ヵ月あまりで、どのぐらいたまったんですか?
石崎:サービスリリース前から口コミ投稿だけのアルファ版みたいのを作っていて、そこに投稿をうながしていてたので、数千件ぐらいあったはずです。
小泉:投稿するモチベーションはなんなの?
石崎:介護業界はたまに労働環境が「3K」=「汚い」とか「きつい」とか「給料が安い」とか呼ばれてしまっていることがあるんですが、こういった世間のイメージを変えていきたいと思っている介護業界の若者というのがけっこういて、初期は、その方たちにどんどん「一緒にこの業界を変えていきたいと思っているから、一緒にやっていこうよ」ということで、その人たち自身が書いてくれたり、その人たちの周りの方々が書いてくれるというのがけっこうあったりしました。
また、介護施設に入居してみて、思っていたのと違ったとか。最近も事件が多かったりしますけど、ネガティブな思いで「やっぱり、ここの内情はこうなんだ」みたいなことを書いてくださる方もいます。もちろん単なる誹謗中傷でしかないものはガイドラインに則って落としますが、ちゃんと客観的な事実と自分が感じたことを両方書いてくれているものは承認しています。
小泉:伊豫さんに変わりますけど、メルカリの場合、USで今、スパイクしていると。そのあたりはけっこう、伊豫さんがやっていると思います。
一時期、僕らはUSのApp Storeの無料総合ランキングで3位までいっていて、その後もずっと1ヵ月ぐらい上のほうにいたと思うんですけども。あの時、なにが起こったかというのを……。当然、僕は知っているんですけど(笑)。せっかくなので、そこのところをみなさんに。
伊豫健夫氏(以下、伊豫):もしかしたら、各種メディアで読まれた方もいるかもしれないですけども、僕、ちょうど担当している関係でよくインストール数だとか、そういうものを常々ウォッチしているんですけれども、7月27日にいきなりオーガニックのインストール数が前日の10倍ぐらいにグラフが増えたということがあって。
最初、「これ完全にデータがバグってる」という話になるじゃないですか(笑)。
小泉:そうそう(笑)。
伊豫:ふつう、そんなことにならないので(笑)。それで、マーケチームにも確認して、「これ、絶対データバグってるよね」とか言ったら、どうやらそうじゃない。データも正しいし、なんかどうやら本物っぽい、みたいな。
ただ、1個ものすごく跳ねてる数字があって、それはなにかというと招待。
メルカリには招待プログラムというのがありまして、ユーザーが友達を招待して、その友達がメルカリに会員登録すると、日本だと「300円分のポイントをプレゼント」という仕組みがあるんですが、アメリカでも同じものがあって、「2ドル分のポイントをプレゼントします」というのがあるんです。
どうやらこれを使う人が一晩にしていきなり増えたというのが、事の発端です。どれぐらい増えたかというと、さっき言ったぐらいの数字、いきなり増えました。それでもう、てんやわんやで。
友達招待プログラムというのは不正に利用されてしまうこともあるので、いろいろな可能性を疑ったんです。
メルカリのBI(Business Inteligence)チームの知恵を駆使して、いろんな分析をしまくったんですけれども、「結局、これは偶発的に起こったバズである」という結論になって。
それで、どうやらこれはバズで、何人かバズの親になっている人たち、我々は特定できているんですけれども、その人たちが広げてくれた。そういう「神プログラム」ですよね。友達招待プログラムというのは我々日本人にとっては古くからある仕組みだったりするんですけど、向こうの人にとっては意外と真新しいのかなと。
しかも、なにもアクションしなくても会員登録するだけで2ドルもらえますというのは、向こうのサービスとしてはハードルが低いというのがあって。それで一気にユーザーが増えたというのが8月の、僕らは社内で「スパイク」とか「爆発」とか「招待爆発」とか、呼んでいるんですけども(笑)。そういうことですね。
なので、「本当は、なにか仕掛けたんじゃないのか?」と言われるんですけども、本当に僕ら自身が一番おどろいたというできごとでしたね。
小泉:僕、夏休みだったんですけど、朝起きて(ランキングを見たら)3位だったんですよ。絶対ウソだと思って。1日、メルカリ社内全員これウソだと思っていて、ずっとBIチームに「これは絶対バグだから、ちゃんとチェックしろ」と言いまくるという。誰も信じてないという(笑)。ランク外から3位にくると、人間疑いますよね(笑)。
(会場笑)
伊豫:普通、疑います。(ランキングの)2位には『Pokémon GO』があって。当時『Pokémon GO』、USでも絶頂です。もう1つはSnapchatが買収した絵文字系のアプリがあってそれが1位で、3位に我々だったんですよね。
なので、六本木ヒルズ18階にある会社の2つが全米でトップ3にいるとかいって(注:メルカリと株式会社ポケモンは同じ六本木ヒルズ森タワー18Fにオフィスを構える)、勝手にわき上がっていたという。
小泉:でも、なんかあれで思ったことは、普通のアドじゃランキング上位はいかないなということですね。アドだと、あそこまでみんなダウンロードしないので。
やっぱり、バズというかソーシャルで、アメリカ人のフォロワーが10万、20万いる人たちが震源になっていて、ある程度楽しんでやってくれたというのがけっこう大きかったかなと。
伊豫:まさにそうですね。なので今、うちのマーケチームにも話しているのは、いわゆるアドによるパワーというのは、全米レベルで考えると、限界があって。それだけじゃなくて、ソーシャルのバズであるとか、そういうものをもっと科学して、なにかもう1回再帰的に……。
小泉:再現性あるバズだよね。
伊豫:それを発生させるにはどうしたらいいのかみたいなことは今、社内でもいろいろと研究しています。
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