2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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デビッド・コービン氏(以下、デビッド):おはようございます。
山田進太郎氏(以下、山田):おはようございます。
デビッド:お忙しいなかお時間をいただいて、本当にありがとうございます。
山田:いえいえ。
デビッド:最近けっこう海外に行ったり来たりしているんですね。例えば、1ヵ月間で、どのぐらい海外に行ってらっしゃいますか? 1週間、3週間?
山田:月によってぜんぜん違うんですけど、平均するとたぶん半分強ぐらいだと思います。
デビッド:半分強というと、けっこう飛行機のなかにいらっしゃるということで。すごく映画が大好きだそうですが、どのようなタイプですか? 飛行機のなかで映画を見るタイプですか? 仕事をするタイプですか?
山田:僕は最近、たぶん年に10回ぐらい海外に行ってるんですけど、最近はもう映画は見ないです。
デビッド:見ないんですか。
山田:映画も見ないし、お酒も飲まないし……。
デビッド:お酒まで。
山田:ご飯も最小限にしていて。時差ボケを無くすのにけっこう集中してますね。
デビッド:まじめですね。僕もそういうことをすればよかったですね。勉強になりました。ありがとうございます。
それで、けっこう海外に行ったり来たりしている理由としては、最近メルカリさんがアメリカで急成長しているそうですが、それについて話したいと思います。例えば、3月頃、大型資金調達で、700万ダウンロードを突破したと思うんですが、それはもう6ヵ月前の話ですよね。この6ヵ月間のなかでどのぐらい成長されてますか?
山田:今、ちょうど1,900万ダウンロード(2016年9月6日時点)くらいまできています。
デビッド:1,900万!
山田:なので、2.5倍ぐらいになっているという感じですかね。
デビッド:あと、アメリカのApp Storeで3位に入ったそうですね。
山田:そうですね。ランキングが7月末に急上昇したという件があって。実際は僕らがなにか仕掛けたというよりは、インフルエンサーみたいな人が……これ実はどこで発生したかもわかってなくて、見えないということからしておそらくSnapchatだと思われるんですけど、そこでメルカリについてポストをした。
その人が90人ぐらいの人をメルカリに招待して、その招待した人がまた招待して、というかたちで、最大20連鎖以上したんです。そのなかで40人以上が1,000人以上招待したみたいなことがあって。
それで、ランキングが上がって、上がったことによってさらにそこから流入が増えて、ということが起こって、全米のランキングで3位までいきました。今は60位ぐらいまで落ち着いてるんですけど、以前に比べると高い水準ですね。
デビッド:そのインフルエンサーを獲得するため、なにをしましたか? 例えば、インフルエンサーが「これはいいですよ!」と拡散してくれるようなことをしたんですか?
山田:実はなにもやってなくて、本当に。感覚としては山火事みたいなかたちです。ここ1年ぐらいですかね、かなりUSにフォーカスしてどんどん改良をしていて。
それで、例えて言うと、山の木が乾燥した状態になっていたところに、火がちょっと点いたら、バーっと燃え広がった感じかなと思っています。なにか特別にインフルエンサーにコンタクトしてなにかやったということはないですね。
デビッド:なるほど。でも、たぶんほかの日本企業さんがアメリカに上陸しようとする時は、インフルエンサーにコンタクトをとろうとするかなと思うんですが、そういう時にアドバイスはありますでしょうか?
山田:そのバズが起こったあとに、僕たちも「インフルエンサーマーケティングがいいんじゃないか?」と考えて、コンタクトをとったりしたんですけど、やっぱりインフルエンサーが自然に「いい」と思って押してくれるものとはだいぶ違う気がしています。
やっぱり、「結局サービス自体がよくないとダメだよね」という感じなのかなと思っていますね。あまり参考にならないかもしれないですけど。
デビッド:わりと自然な伸びとおっしゃったんですが、このあいだApp Annieが出した記事によると、この急成長の1つの理由は、アプリの名前を変更したことが影響していると書かれていましたが……。
山田:そうですね。それも1つの理由にはなってると思います。
ランキングが上昇した時に、もともとのアプリ名は「Mercari」というタイトルのあとに「Any one can buy and sell」と続くかたちだったんですけど、そのキャッチコピーが総花的なんじゃないかということで、今は「Mercari : The best shopping marketplace to buy and sell」に変えました。それを見て、「あ、ここがマーケットプレイスなんだな」というふうにわかりやすくなったというのがあると思うんですね。
それでランキングが上がって、レーティングも4.5以上あるので評価もいいということで、「ちょっとおもしろそうだからインストールしてみようかな」という人が多かったんじゃないかというのはあります。
もしかしたら、バズには関係ないかもしれないけど、そのあとのランキング維持という意味では役に立ったかもしれないですね。
デビッド:そのキャッチコピーを創造した社員に、どのぐらいボーナスをあげますか?
山田:それは考えてなかったですね(笑)。
デビッド:考えてなかったですか。寂しいですね。そのようなすばらしいキャッチコピー作ったのに(笑)。
山田:ただこれだけじゃなくいろんなことをやってるんですよ。それが本当に1つのきっかけかもしれないし、そうじゃないかもしれないし。
我々は日本に開発のほとんどのリソースがあるんですけど、本当にここ1年、もうほとんど9割ぐらいはアメリカのことを優先してやっているという事実があって。
で、アメリカでよかった機能を日本にも取り入れるというかたちです。基本的には同じサービスなので日本版もどんどんよくなってるんですけど、A/Bテストとかそういうものも全部アメリカで行って、それがよければ反映させるというかたちでやっています。
そのなかで、「これがよかったかもしれないし、あれもよかったかもしれない」という。ASO(App Store Optimization)とかタイトルを変えるとか、そういうのも1つの要因かもしれないし、結局本当になにがよかったのかというのは、正直わからないところがあるんですよ。
デビッド:なるほど。その社員さん、すいません、今回ボーナスはなしということですが(笑)。
山田:(笑)。
デビッド:そうすると、気になったところがあって。今、「先にアメリカで試して、そして成功だったら日本に反映する」とおっしゃいましたが、これは珍しくないですか? だいたい日本企業さんは「日本でイケてるから、じゃあそのままで海外に持っていこう」というかたちが多いじゃないですか。
もちろん、Zyngaでの経験もあったと思うんですが、なぜ今回アメリカを先に、という判断をしたんですか?
山田:もともと個人的に、海外で成功したいというか、海外で使われるようなサービスを作りたいという思いがあって。
今回メルカリを起業する時に、CtoCというマーケットを選んだんですけど、CtoCってすごくいろんな可能性があって。
ヤフオク!とeBayの流通額(GMV)を比べると、eBayのほうが10倍以上でかいんですね。やっぱり日本だけでやってると、その大きな市場を取り逃しちゃうというのがありました。CtoCでやる以上、やっぱりアメリカでやってヨーロッパやって、欧米をまず押さえていかないと、結局欧米で成功した会社がまた日本に進出して来る可能性もあるし。
それだけの収益力を持った会社が来たら、逆に負けてしまうだろうというのもあるので、攻撃は最大の防御じゃないですけど、先に自分たちで打って出るというやり方でやろうと考えてるという感じですね。
デビッド:なるほど。今、9割ぐらいリソースをアメリカに入れてるとおっしゃったんですが、日本も黒字になってるし、なぜもうちょっと、2割、3割ぐらい日本に力を入れないんですか?
山田:タイミング的なものもあるかなとは思っています。今アメリカって実はダイレクトなコンペティター(競合)がいないんですね。
デビッド:え、いないんですか? eBayとかは?
山田:eBayはもちろんPCのプレイヤーとしてすごく巨大なんですけど、モバイルのCtoCで総合型という意味でいうと専業の会社はなくて。verticalなカテゴリーで、ファッションとかに特化してるものというのはあるんですけど、ダイレクトなコンペティターがいないので、ここをまずとにかく押さえたいと思っていて。
日本は当然重要なマーケットなんですけど、やっぱりアメリカとヨーロッパを押さえられれば、10倍以上という市場が見えてるなかで、合理的にはそのチャンスを逃すのは非常にもったいないかなと思っているということですね。
デビッド:なるほど。今、アプリはそこまでないとおっしゃったんですが、確かにeBayはもともとPCサービスからモバイル化したということはけっこう知られています。
プロダクト自体、どういうふうに違うんですか? メルカリさんのほうが評判は相当高くて、先ほど私が確認した時で、eBayなどのアプリの評判はそんなに高くはなかったんです。なぜでしょうか? プロダクト自体が使いやすいとか、どんなこだわりがあったんですか?
山田:やっぱりパソコンってみんなあまり使わないと思うんですよね。スマートフォンならみんな使っていて。どうしてもパソコン向けに機能をどんどん付け加えていくと、複雑になってしまう傾向があるなと思っています。
仕事で使っている人も多いので、プロみたいな人も多い。そういうなかで、例えば「出品」ひとつとっても、eBay・ヤフオク!のように個人がなにか出品して売るということをプロと一緒の場所でやると「プロのようなクオリティが保てない」とみんな思って、出品することをやめてしまう。
だからモバイルでメルカリって普通のユーザーさんが一番使いやすいように作ってるつもりで、これだったら簡単に出品できる。本当に、写真を撮って、タイトル決めて、本文入れて、カテゴリーとかいくつか選んで、値段を設定すれば、もう出品できてしまうと。
その出品の気軽さみたいなものと、購入も簡単にできるというところで、個人により近いというか、モバイルというデバイスに合っているということなんだなと考えてますね。
デビッド:ユーザーさんがけっこう増えてると思うんですが、どのようなユーザーが増えてるんですか? 例えば、けっこう西海岸で増えているとか、東海岸が増えているとか。
山田:だいたいインターネットのサービスって、GoogleにしてもFacebookにしても、アーリーアダプターみたいな人たちや大学生が使い始めて、徐々にふつうの人たちが使い始めていくという流れを持っていると思うんですけど、メルカリ自体はすごく普通の人がいきなり使い始めてます。
日本でも、当然東京は新しいもの好きの人も多いので、東京の人、大阪の人、大都会の人も使いますけど、ぜんぜんそれと遜色ないレベルで、地方の若いお母さん、小さい子供のいるようなお母さんが使い始めたという経緯があって。
アメリカもまったく同じです。カリフォルニアは当然1位なんですけど、その次が実はテキサスで。中西部の人とかも、すごく使っています。
売れているアイテムでいうと、女性向けのファッションアイテム、あるいは子供向けのおもちゃとか、そういうものが売れていますね。
デビッド:つまり、アメリカのほうは、まだ男性はそこまで使っていないということですか?
山田:相対的にはそうですね。日本ははじめはそういう状態だったんですけど、今はかなり多様化してるので、メンズファッションもすごい売れてきています。ガジェットはもともと人気はあったんですけど、今だと車の売買もやっていて、それもけっこう成立しています。
それに比べるとアメリカは、やはり日本よりはアーリーな状態で、若い女性が多いというかたちですね。
デビッド:なるほど。その若い女性は、どのような商品をよく販売されてますか?
山田:メイクアップ系のものとか、ファッションならバッグとか、ブランドでいうとNikeとか人気ですし、普通にルイ・ヴィトンみたいな高級ブランドもあるし。
アメリカで特徴的なのは、Victoria's Secretという下着のメーカーなんかはけっこう人気が高くて。やっぱり女性が好むようなものがカテゴリーとしてはやっぱり人気が高いですね。ほかに唯一入っているのでいうと、携帯電話やタブレットですね。
デビッド:Victoria's Secretというと、Victoria's Secret Angelがインフルエンサーになれますか? もうなってますか?
山田:それは難しいかもしれないです(笑)。
デビッド:お願いします。頼みます。ぜひぜひ。
山田:はい(笑)。
デビッド:それで、アメリカのユーザーは相当増えていて、売上も増えているかと思うんですけれども、GMV(Gross Merchandise Volume)的にはいかがでしょうか?
山田:GMVというのは流通額のことなんですけど、去年の8月と今年の8月の比較でいうと、6倍ぐらいにはなっています。
デビッド:6!
山田:ただそれ自体はこのあいだのバズがあったからすごい増えたというよりは、基本的には常に増加はしています。ここ1ヵ月ぐらいが異常値という感じですかね。
デビッド:6倍とすると、数字はどのぐらいでしょうか? 金額は? 聞かせてください(笑)。
山田:数字は教えられないですね(笑)。
デビッド:え~、教えられないんですか。みなさん知りたいですよね。残念ですね。
次の質問も繰り返しかもしれないんですけれども、ダウンロード数はどのぐらい? MAUはどうなってるんですか?
山田:MAUは……まあMAUもDAUも基本的には公開してないんですけど、ダウンロードが1,900万です。そのうち、どうなんですかね、3分の1とか4分の1ぐらいは使い続けてくれてるかなという感じ。
デビッド:それはすばらしいですね。続きまして、日本について聞かせていただきたいと思います。これも普通に伸びていると思います。
この週末、けっこう大きなニュースが出たんですが、楽天がフリルを買収した。日経新聞によると、GMVは30億円/月間になってるんです。ラクマとフリル合わせて。
トータルだったら、メルカリさんはもう100億円となっています。買収しても、3分の1にならないですね。それで、メルカリさんは1割の力を日本に入れてるんです。おもしろいですね(笑)。
山田:たぶんその30億円というのは、30億を目指すという話だと思うので、実際はもっと小さいかなと思ってますけど。
ただ、当然いろいろと手は打ってくるとは思っています。だからといって、こっちですごく対抗できるわけでもないんですけど、愚直に日本向けの提携とか改善をこれからも進めていくという感じですね。
デビッド:そうですね。おそらく、その戦いが熱くなりつつあるから、1割だけでは足りないかもしれない(笑)。
山田:そうですね。まあでも、アメリカでよかったものは全部日本でも導入されてるので、そこまで日本ぜんぜんやってないということでもないですし。
あと、日本の場合はヤマトさんと一緒に配送部分で新しい取り組みをさせていただいたり、アプリ自体のUI・UXみたいなものだけじゃない、全体としてのUX、エクスペリエンスをけっこう改善できているんじゃないかなとは思っています。
ここ1年でもかなり改善してきたつもりではあるので、そういうところが今、日本も成長してる1つ理由になっているのかなと思ってますけどね。
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