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今再び盛り上がる 大学発・技術系ベンチャー(全4記事)

約半数の大学発ベンチャーが黒字化「大学発=儲からない」が変わりつつある現状と可能性

「時間がかかる」「儲からない」と言われてきた大学発・技術系ベンチャーですが、ここ数年で変わりつつあります。「IVS 2016 Spring Miyazaki」で行われたセッション「今再び盛り上がる 大学発・技術系ベンチャー」では、そういった大学発・技術系ベンチャーの育成に力を入れているイノベーション・イニシアティブの山岸広太郎氏、ウルシステムズ・漆原茂氏、TomyK Ltd.の鎌田富久氏、リバネスの丸幸弘氏が登壇。過去に比べ、今どういった変化が起こりつつあるのかを語りました。

スタートアップの約半数が大学発

山岸広太郎氏(以下、山岸):みなさんこんにちは。山岸です。よろしくお願いします。

(会場拍手)

今回のテーマ「今再び盛り上がる 大学発・技術系ベンチャー」ですが、「スタートアップといえば、インターネット」と考えられている方が多いと思います。

私自身もグリーを創業からやっていたので、そうしたコミュニティにいたのですが、ここ2〜3年で状況がとても変わっていると思っています。今、スタートアップの半分くらいが、大学発ベンチャーになってきています。

そうした状況をみなさんにお伝えして、この分野に興味を持ってもらい、参加したり支援したりしてもらえるといいなと思っております。

今日のパネラーの方のご紹介をしたいと思います。

では、ウルシステムズの漆原さん、よろしくお願いいたします。

漆原茂氏(以下、漆原):みなさん、こんにちは! ウルシステムズ株式会社、代表取締役の漆原でございます。エンタープライズのソフトウェア会社をやっていますが、今回は個人で支援している大好きなことをお披露目させていただければと思います。

ふだんは代表取締役として紹介するのですが、本当は、私は身も心もエンジニアでございまして。大学のころも工学部にいて、女子にモテるかどうかはどうでもいいんですけど、円周率の50ケタを暗唱できるということだけが自慢でした。そういう人間です。

最近はベンチャー……特に大学発、あるいはテック系のベンチャーの支援をやっております。いくつか名前を挙げさせていただくと、エージックさんやモフさん、サイアメントさん、ニコゴリーさん、オリジナルスティッチさんなど。私は大学発、あるいは卒業してまもない若手の方々への支援が大好きなんです。

東京大学が「東大ベンチャースクエア」というプロジェクトで、「東大からもっとアントレプレナーを出そう」という活動をしています。「すでに起業している人たちをたくさん呼んで、なにかしよう」ということで、その発起人をやらせていただいたりしています。

また、最近は東京大学の学生のなかでも起業熱が高まっているので、「そういった学生を一堂に会して大きなセミナーをやったら、なにか起きるんじゃないか」ということで、「東大ベンチャーサミット」という会合を年1回で開催しています。

ふだん会えないような、大学発・テック系ベンチャー、あるいは研究系、変なギーク系のやばさ・おもしろさを、今日はぜひ感じていただければと思っております。よろしくお願いします。

(会場拍手)

テック系ベンチャーのエコシステムを作りたい

山岸:ありがとうございます。よろしくお願いします。ではTomyKの鎌田さん、お願いします。

鎌田富久氏(以下、鎌田):みなさん、こんにちは。私は学生のときに、アクセスというソフトウェアの会社を荒川(亨)さんと2人で始めまして、就職もせずにケータイ向けのブラウザやメールソフトなどをガラケー時代に手広くやっておりました。

2001年に上場して、上場企業の経営を10年間して、4年前の2012年に次の経営陣に任せて、TomyKという会社を作りました。私とボランティアのメンバーで「テクノロジーベンチャーを世界で成功させる」「世界で成功するテクノロジーベンチャーを10社くらい作る」という思いでやっています。

必要であれば投資もしますし、大企業をくっつけたり、海外に行く場合に必要な人材を集めたり、「必要なことはなんでもやろう」ということでやっています。

特に好きな分野がわがままなんで決まっていまして(笑)、ロボットや人間拡張、話題になったものではGoogleが買収したヒューマノイドの「SCHAFT」を一緒にやっていました。

また、宇宙・人工衛星のベンチャーのアクセルスペース、そのほかにもゲノムやライフサイエンスなど。ロボット・宇宙・ゲノムは「三大好きなテーマ」なので(笑)。その立ち上げの支援をやっています。

なぜそんなことやっているかといいますと、半分は「自分が好きな領域で、世界で成功するベンチャーを作りたい」という気持ちから。もう半分は、私もいろんな方に助けていただいて成功できたので、今の若い人たちを成功させて、またその人たちが次を育てていくような、テック系ベンチャーのエコシステムを作っていきたい思いでやっています。

山岸:ありがとうございます。じゃあリバネスの丸さん、よろしくお願いします。

丸幸弘氏(以下、丸):みなさんこんにちは。リバネスの丸です。修士2年のとき、研究者の知を人類発展のために役立たせるにはどうしたらいいかを考えていて、同じ志を持つ仲間の研究者15人とともに、リバネスという会社を作りました。

とにかく自分がやりたい研究を続け、地球貢献につながる研究を生み出す仕組みを作りたかったんです。変な研究者たちを見ると興奮するんですが、そういう人たちは、だいたいパッションを心に秘めながら大学のなかで悶々としているんですよね。

その3年後、また「ミドリムシをやろう」という変な人たちと会って、おもしろそうなのでやろうと。10年で上場したのですが、その人たちと今、リアルテックファンドという尖った研究者、アントレプレナーたちを支援するファンドをやっています。

ちなみに、今回のセッションでは私、ほぼ知り合いがいなくて、「グロース」「IPO」などの用語もわからないので、アウェイ感が漂っています。「勝つ」と言われると、「なにに勝つのかわからない」「勝つんじゃなくて人類を変えるんじゃなかったっけ、勝ち負けじゃないよね」みたいな。

自分がここで宇宙人のように感じているので、今度は、みなさんがアウェイになるような大学発ベンチャーの話をします。大学発ベンチャーの世界は際どくておもしろいので、今日はそのなかを見せていきたいと思います。

山岸:ありがとうございます。よろしくお願いします。

55パーセントの大学発ベンチャーが黒字化

では今日のテーマ「大学発・技術系ベンチャー」の概況説明ですが、経産省が大学発ベンチャーを分類して、「この分野にこのくらいの社数があるよ」というマップを作ってまして。そのなかから、今日のパネリストの方々の支援先を並べてみました。

大学発ベンチャーで一番多いのは、ITのなかでもアプリケーションやソフトウェアの領域です。次にバイオ、ヘルスケア、医療機器の領域。これらが500社ずつくらいあります。

今日のパネリストでは、漆原さんと鎌田さんは、ものづくり系とITのハードとソフトウェアの領域。丸さんが右側のバイオ、ヘルスケアの領域と、それから……。

:あと、ウンコですね。

山岸:リバネスが支援しているメタジェンは、腸内環境を構築するウンコを分析する会社で、「茶色い宝石」と呼ばれて……。

:腸内細菌、きわどいやつね(笑)。

山岸:ちょっとマッドサイエンス的な。一番危ない領域という感じでしょうか。そうした分類になっております。

今、また大学発ベンチャーが盛り上がってきています。数字でいうと、2000年代に、当時、経済産業大臣だった平沼赳夫さんの「大学発ベンチャー千社構想」によって、大学発ベンチャーがゴゴゴゴッと増えていき、平成15〜16年あたりに1,000社を超えるまで、毎年100社、200社ペースで大学発ベンチャーが増えていた時期がありました。

その後、リーマンショックなど、いろいろなことがあって下火になりまして、急速に新しい会社の数が減っていきましたが、平成22年あたりを底辺にして、ちょこちょこ設立される社数が増えつつある状況です。

会社が潰れていたころは「大学発ベンチャーは儲からない」と言われていたのですが……。経産省のデータによると、平成20年には8割の大学発ベンチャーは赤字ですが、直近の平成27年の調査では55パーセントの大学発ベンチャーが黒字化しています。「大学発ベンチャーは儲からない」なんて話も、すでに昔のことになってきているかと思います。

先ほどの黒字の話はP/Lのレベルの話で、投資家の方にとっては「IPOしたらどうなるか」が気になるところだと思うのですが……そこで、こちらの画像をご覧ください。これが、先ほどお話した「スタートアップの世界は半分が大学発ベンチャーです」というポイントです。

上が、東証マザーズの時価総額ランキングトップ20のなかから大学発・技術系ベンチャーを抜き出したものです。10社あります。20社のうち10社が大学発・技術系ベンチャーということになります。ミクシィは笠原さんが東大在学中に起業したので、東大のほうでは「東大発ベンチャーだ」と言ってますが、それを除いても9社あります。

サイバーダインさんはロボットスーツを作っている会社ですね。アキュセラさんは目薬を作っている会社です。モルフォさんは画像解析系ですが、それ以外はすべてバイオ系ベンチャーになっています。

その下がマザーズから東証一部に上場した会社で、ペプチドリームさんとユーグレナさんがあります。時価総額は4月末の終値でそれぞれ3,500億円や1,280億円です。

IT系のベンチャーでも3,500億という大きな値がつくのはめずらしいことで、ミクシィさんでも3,180億なので、まさしくスタートアップの世界の半分くらいが大学発ベンチャーと言っていいんじゃないかと思います。

大学発ベンチャーは多岐にわたる

この背景として、ファンドが増えたので「盛り上がってきている」という理由もありますし、盛り上がっているために、ファンドが増えるなどの理由もあります。これは鶏と卵なんですけど。

これは2013年以降に設立された大学発・技術系ベンチャーに特化したVCファンドのリストです。これをすべて合わせると、だいたい1,000億円くらいになります。今運用されているファンドが1,000億くらいあるということですね。

私も、去年12月に慶應義塾大学と野村ホールディングスが出資した「慶應イノベーション・イニシアティブ」というベンチャーキャピタルを作りまして、今ファンドレイズ中です。7月から投資できるかなと思っています。それから、丸さんがさっき仰っていた「リアルテックファンド」は75億まで組成されていまして、実際に投資活動中です。

数字の話の最後に、去年の未上場企業の大型調達のランキングトップ10。これもトップ10のうち5社が大学発ベンチャーになっています。

例えば、スパイバーという会社は慶応大学から出てきたベンチャー企業で、遺伝子操作した微生物を使って、タンパク質材料を……「クモの糸」と象徴的に言われてますが、微生物を遺伝子操作して、作りたいタンパク質材料を作っていく、ということをやっています。これも広義のバイオベンチャーと言えます。

それから、メガカリオンという会社は、人工血小板を作っている会社です。クオンタムバイオシステムズは、次世代DNAシークエンサーを、プリファードインフラストラクチャーになるとおそらくご存知の方も多いかと思うのですが、ビッグデータやAIの会社として有名です。あと鎌田さんも支援されているアクセルスペースは、小型人工衛星を作っている会社です。

Googleなどのように、シリコンバレーのIT業界の方はこうしたところに目をつけ、興味を持っています。ご説明のとおり、「大学発ベンチャーの種類はかなり多岐にわたってますので、IT業界の方にも興味を持っていただきたい」が、今回のセッションの狙いです。

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