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アントレプレナー人生論(全5記事)

「目標達成ジャンキーは、あの快感が忘れられない」経営者を支える“喜怒哀楽”の原動力

2015年12月10日、「IVS 2015 Fall Kyoto」が開催されました。Session9A「アントレプレナー人生論」では、モデレーターを務めるライフネット生命・岩瀬大輔氏の進行のもと、クラウドワークス・吉田浩一郎氏、KLab・真田哲弥氏、メルカリ・山田進太郎氏の3名が、会社のビジョンを実現するためのモチベーションについて語りました。

「メルカリ使ってます」の言葉が一番うれしい

岩瀬大輔氏(以下、岩瀬):ありがとうございました。では、残り15分ありますので、会場から質問をいただきたいと思います。

質問者1:エウレカの赤坂です。みなさん、それぞれの起業家人生があると思うんですけど。一番のモチベーションの源泉を知りたくて。「夢にたどり着きたい」というのはもちろんだと思うんですけど、並大抵の努力ではなかなかいけないと思うんですよ。

例えば、それにコンプレックスがあるとか、喜怒哀楽でいうと「怒」が源泉ですとか、いろんな人がいると思うんですけど。モチベーションの源泉がなんなのかというのをすごく知りたいなと思いました。

岩瀬:じゃあ、山田さんからどうぞ。

山田進太郎氏(以下、山田):僕はアメリカに行ったときに、「自分にできることってなんだろうな?」と思って、サービスをどんどん作って、それを世の中のできる限り多くの人に使ってもらうという。僕は自分のことを「プロデューサーだな」と思っていて。

それをやるために今の会社を作って、自分が作ったものをなんとかしてできる限り多くの人に、便利だったり楽しいというところで使ってもらうと思ってやっています。

モチベーションという意味でいうと、よく最近「メルカリ使ってます!」とか「この服メルカリで買いました!」とか、リアルでそうやって言われることがやっぱりすごいうれしくて。いろんな褒め言葉はあるんですけど、「今着てるこれ買いました!」とか言われるとすごいうれしいですね。

生きる意味はわからないけど、死ねなかった

岩瀬:ありがとうございます。吉田さんはどうですか?

吉田:答えだけ言えば、ユーザーあるいは関わってくれた人から「ありがとう」と感謝を言われることがモチベーションだと答えています。それは本心だけど、たぶんそれだと意味が伝わりにくいと思うんです。

私は10代の頃、なんで生きてるのかよくわからなくて、非常に耽美主義に走って。太宰治とか谷崎潤一郎とか、そういうものをすごく読んで、内的世界をずっと探求して、それに明け暮れるような毎日をやってて。寺山修司とか好きでした。

そのときに、大学の同級生が自殺をしたんですね。親に結婚を反対された2人が大学で2人で自殺したというのがあって。

そのときに、2人が自殺した場所がビルの上だったんですけど、酔っ払ってその上まで行って、こう見てですね、「俺もやることないから死のうかな」みたいな。「生きる意味なんだろう?」とか思ったんですけど、死ねなかったんですよね。

そのときに、消去法的に「死ぬ」という選択肢がない。その後生きてるなかでひねくれて……。赤坂さんもご存知だと思いますけど、ちょっとひねくれてるところがあったので(笑)。いろいろツンケンやってたら、結局1回目の起業の最後は仲間が全員離れていきました。

ドリコムのときも役員を降ろされて、営業部隊のみんなから人望を失って、本当に「吉田さん、いなくなってほしい」みたいな感じでずっと人に拒否されて。でも、「俺は正しい」みたいな感じでツンケンやってたんですよね。

最近よくインタビューでも答えてますけど、36歳の最後の2010年に、マンションのオフィスに1人ぼっちで。前の会社はZOOEE(ゾーイ)という、それはそれでなにをやってるかわからない会社名で。

「これでIVSに行ったら、またみんなに痛い感じで触られるのかな?」とか思って、「生きていく術あるのかな?」というなかで、アクセルマークさんからお歳暮をいただいたんですよね。

そのときにアクセルマークさんだけ、当時ちょっとお付き合いがあって取り引きがあって。2010年の年末にお歳暮をいただいたときに、「俺に構ってくれる人がいる」と思って(笑)。「みんな離れていったけど、アクセルマークさんだけは覚えてくれてる」と。

みたいな感じのなかで、1人でも仕事を通して覚えてもらっていて、「ありがとう」が届くってこんなうれしいんだなということがきっかけで、そこでようやく素直になれたんですよね。

自分のちょっと斜に構えてるものが全部取れて、素直に「俺はさみしいんだ」と。「俺は自分がちっちゃくても、『インターネットに詳しくない』と言われてもいい」と。「とにかく人のために頑張って、人から『ありがとう』と言われたいんだ」ということの腹決めが、あの時点でできたのが大きいですね。

岩瀬:今日、吉田さんすごいカミングアウトというか。なんかいいですね(笑)。

吉田:でもね、「インターネットに詳しくない」というのはけんすう(古川健介氏) が言ってくれたんですけど、あれを言ってくれてずいぶん楽になったんですよね(笑)。「インターネット詳しくなくていいんだ」みたいな。

起業家は目標達成ジャンキーである

岩瀬:真田さんのモチベーションは?

真田:僕、ほとんどの人は目標達成ジャンキーになってるんじゃないかなと思うんですよ。「これをやりたい、これを実現したい」って決めて、それを達成したときの快感が忘れられなくて。「人生こんなに気持ちいいことあるんだ」みたいな。それをもう1回やりたくて、次の目標設定をして、「ああ気持ちいい、次の目標探そう」って。

それで、目標がなくなってきたら、走るとか馬に乗るとか、そういう人があのへんにいますけど。それ以外にないんじゃないかと(笑)。

吉田:走るとか馬に乗るって1人じゃないですか(笑)。

真田:あ、そうか。目標達成の気持ちよさが中毒になって。次の目標をめがけたくなってるんじゃないですかね。

岩瀬:真田さんもそうだと?

真田:僕もそれ。あと、僕は負けん気が強いので、やっぱり悔しい系のエンジンになってますね。「くっそー!!」って。なにか失敗したり、うまくいかなかったこととか……。

岩瀬:公演中止になったりとか?

吉田:あれは実際なんなんですか?

真田:アリアナ・グランデね。(注:2015年12月、KLab Entertainmentが開催を予定していたアリアナ・グランデの日本公演が突如中止になった。)

吉田:あれちょっと知りたいんですけど。

真田:普通に突然「病気になりました」と。病気の場合だと保険の扱いとかいろいろあるんですけども。「病気で……」って。

保険会社と交渉してる最中にアリアナ・グランデのInstagramに、パーティで「yeah!」っていう写真がアップされて(笑)。びっくりしましたけどね。

岩瀬:この話、冒頭ですればよかったですね(笑)。ほかに質問ある方いらっしゃいますか?

起業するときにイグジットは考える?

質問者2:楽天の安武といいます。

真田:ご無沙汰してます。

質問者2:最近アメリカの友達のシリアルアントレプレナーから、「会社をやるときは最初に出口を考えろ」って言われたんですね。イグジット戦略ですね。会社の寿命は平均で考えると、人間の寿命より短いんですけれども、会社の出口というのはどうあるべきか、どうお考えでしょうか?

岩瀬:おもしろいのは、アメリカはバンバン売って次へ行くという感じですけど、日本はどちらかというと、ずっと長くやられる会社が多いじゃないですか。みなさんはイグジットについてはどういうお考えをお持ちですか?

真田:僕はね、結果論、企業の寿命とか考えるとイグジットを考えておくのは正しいのかもわからないんですけど。

そういうことを考えながら起業して、本当にそれが社員を求心して、社員に夢を持たせて、あるいは自分自身のモチベーションとして「やるぞ」っていう気に僕はなれないですね。起業するタイミングって、もっと大きな夢を持ってやってるわけですよ。そのときにイグジットの計算とか考えて……。

夢って非理性的じゃないですか? 第三者から客観的に見たら、「そんな夢なんて達成できる確率はものすごい低くて、バカバカしい」という。でも、夢を持って、熱を持ってるときって、理性的じゃないから人を求心するし、人を吸引するわけです。

それを理性的に、「現実的に言うとこのへんがアッパーだから、このへんでイグジットして……」みたいな計画を言ってたら、僕は自分自身で熱くなれないし、熱く人に語れないから、あんまりそういう考えで起業は……。逆にできる人が不思議ですね。

吉田:本当に真田さんがおっしゃるように、今のは現実の話だと思います。

『ビジョナリー・カンパニー2飛躍の法則』 に繰り返し出てくるのは、相反する2つの事象、矛盾するものを両方同時に追い続ける会社というのは、ビジョナリー・カンパニーの共通要素としてありますと。夢と現実だったり、リーダーシップとフォロワーシップ、個人とチームとか、そういった相反するものを追っていくと。

夢が非常に重要である一方、イグジットの話というのは現実なので、それを両立させないといけない。

「株式会社ってなんなんだ?」というところでいくと、やっぱり歴史を紐解くと東インド会社なわけですね。東インド会社というのは1人のお金じゃできないから、株式会社という形式を作って、インドまで行って、紅茶とか香辛料をとってくるから、みんなでお金出してねと。それが、嵐を乗り越えてとってこれたあかつきには、みんなで分配しようというものですので。

株式会社を選択してる以上は、当然イグジットってあるべきなんですよね。それはゲームのルールで。サッカーで、「ここで手を使いたい」と言ってるのと同じぐらい、自明の理というか、当然イグジットはあるわけですよね。

最近のいい風潮として、さっき質問いただいた赤坂さんもそうですけど、イグジットをして、また再度チャレンジしていくというようなロールができ始めてきているので。非常に健全な状態だなと思ってます。

ただ、どっちのイグジットを目指すかというのはやっぱり明確にあって。私は1回目の起業はオーナーシップを維持して、自分自身でいろんなチャレンジをして、いろんな勉強をするという1つの冒頭の意義がある。それがある意味、事業が失敗して、役員が逃げていった。まあ勉強できたという、ある意味、当初の目的は果たしたわけですね。

2回目の起業というのは明確にIPO。いろんな人の力を借りて、世界を変えて、世界の役に立って、世界のいろんな人から「ありがとう」と言われたいというチャレンジですので。

IPOのあともどれだけ社会のインフラとなって、より多くの人たちに役に立てるかということだと思っています。

それとは別に、バイアウト目的での起業というのは当然あるなと思っていて。それは別に会社というゲームのルールなので、それはそれぞれあっていいんじゃないかと思ってます。

ただ、オーナーシップ100パーセントというのは株式会社の、さっきのできた由来からすると、あんまり合ってないというか。なので、株式会社である以上は、株式のレバレッジを効かせるというのは非常に重要なことかなと思ってますね。

ミッションが必要とされる限り、会社は続けていく

岩瀬:山田さんはいかがですか?

山田:僕自身は、まず会社は会社のミッションがありますと。そのなかで、インターネットサービスを作って、今はとりあえずアメリカやっていて。それからヨーロッパやって、途上国、最終的にはアフリカまでやるというのを目標にしています。

その過程で、結局上場するとかいうのはどこかでイベントとして起こると。それをミッションとする会社が上場していて。それを僕がやりたい限り、かつ「僕がやっていいですよ」という信任がある限りはやり続けるイメージですね。

でも結局、世界で見たら、コカ・コーラだってディズニーだって別に創業者はいないわけです。それでもどんどん自分たちのミッションをやり続けるために存続しているわけなので。

ある意味買ってくれる人さえいれば、イグジットというのはいつでも持ってる株式を売ることが原理的にはできるので。

逆にいうと、そのミッションが世界で「もうあなたは必要ないですよ」と。僕らでいうと「マーケットプレイスは必要ないんですよ」という話になったら、もしかしたら会社としての使命を終えるということがあるかもしれないですけど。

個人的には、このミッションが一番おもしろいじゃないかと思ってやっていて。いつまでもやり続ける気ではいるという感じですかね。

岩瀬:ありがとうございます。では、最後の質問どうぞ。

ナンバー2、ナンバー3の口説き方

質問者3:これから起業していくなかで、ナンバー2、ナンバー3ってすごい大事なポジションだと思うんですね。

社長が一番前に出てくると思うんですけど、そのナンバー2、ナンバー3の重要な方々をどう見つけて選んで巻き込んでいくのか。そこについてなにかコツがあったら教えてください。

山田:コツはわからないんですけど、自分がどうやったかという話で言えば、「こういうことをやりたい」というのがまずあって。それに対して、「こういうことをやるんだけど、本当にあなたがやりたいことと合っているんであれば、ぜひ一緒にやりたいから来てください」みたいな口説き方をしています。

例えば、創業者の1人に石塚亮というのがいて、今アメリカのCEOをやっているんですけど。彼はアメリカでRockYouという会社を創業して、日本に進出してたんですけど。その会社をもう辞めますというところで、「どうしたいの?」という話をしたら、アメリカで起業するという話をしていて。

「だったら僕もアメリカで起業するというか、ビジネスをやりたいと思ってるから、そのときに君みたいな日米バイリンガルで、エンジニアリング経験もある人が必要だから、一緒にやりたい、あなたのやりたいことと合っているんだったら、一緒にやりたい」みたいな感じでした。それは小泉さんもそうだし、ほかの人もそういうかたちで口説いていったという感じですかね。

クラウドワークスの働き方革命

岩瀬:ありがとうございます。ちょうど時間になりましたので、会場のみなさんにひと言ずつ激励の言葉をいただければと思います。

山田:僕も正直、こんな語るような立場の人間じゃないと思ってるので、あんまりないんですけど。ともに頑張りましょうという感じですかね(笑)。ありがとうございました。

吉田:まだまだやらないといけないと思っていて。マザーズ上場217社あって、純利益10億以上の会社は10社しかないわけですね。そうすると、そのなかで4パーセントとか5パーセントぐらいしか純利益10億以上出してない。時価総額1000億でいくと、マザーズ上場のなかでいくと4社しかないわけですね。そうすると2パーセントという。

だから、上場を選択する理由というのは、やっぱり利益を通して時価総額を上げて。資金調達をして大きくチャレンジをするという、サイクルを活用するというのが上場する意義だと思ってます。

まず今の立場でいくと、マザーズ上場のなかで、やっぱり1つ突き抜けていかないといけない。さらに3465社あるうちの時価総額1兆円以上は117社。これは3パーセントぐらいですので、やっぱりそのなかでも、3パーセントの仕事をしていかないといけないわけですね。

ベンチャーであっても上場であっても、常に0からのスタートで、どれだけトップ1パーセント、2パーセントの仕事をし続けるかだと思ってます。

それを通して、我々としては働き方革命を実現させて、営業利益1兆円を20年でやって。「“働く”を通して人々に笑顔を」というミッションを実現すると。

そういうふうに頑張ってますので、ぜひまたみなさん次会ったときに「やべえな」という感じで、お互いが切磋琢磨できるように、またIVSで会えればなと思ってます。ありがとうございました。

真田:IVS夜の部、裏セッションを最後までお聞きくださいまして、ありがとうございました。ほとんど居酒屋のグダグダ話みたいなものだったんですけれども(笑)。

一応公開セッションということになってましたが、ちょっと喋りすぎました。今日あったことは全部嘘ですから、忘れてください(笑)。全部口からでまかせ、嘘ですから。

山田:メールでやり取りしたときに、僕らが「オフレコにしましょうよ」とか言ってたら、真田さんが「いや、こんな大勢の場で言うんだったら、もう公開してるのと一緒だから、オンレコにしましょうよ」と言って、「わかりました」ってみんな言ってたのに(笑)。

真田:そうだったんですけど、喋りすぎました。

岩瀬:以上で本セッションを終わります。みなさんありがとうございました。

(会場拍手)

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