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新卒エースの裁量の実際(全3記事)

会社選びの基準はどこに置く? リスクと目線の高さで選んだ、新卒エースの就活事情

2016年5月14日、社会人&大学生のためのベンチャーの祭典「Start Venture Festival 2016 Spring」が開催されました。パネルディスカッション「新卒エースの裁量の実際」では、モデレーターを務めるリクルートホールディングス・麻生要一氏、スピーカーとしてDeNA・大見周平氏、Speee・松尾拓哉氏、ZUU・財部優一氏の4名が登壇。本パートでは、「会社選びの基準」についてそれぞれの就活体験を振り返りました。

DeNAが自動車領域に踏み出した経緯

麻生要一氏(以下、麻生):例えば、「自動車(領域)で大きく仕掛けていきたい」ということを言うじゃないですか。「どうしてもこれで未来を作るんだ」って経営陣に言ったときに、「いや、だってうちはゲームの会社だからさ……」みたいに言われたとしたら、どうしてたんですかね?

大見周平氏(以下、大見):どうしてたかな? ただ、うちの会社のアジェンダ設定と僕の目線が引き上げられた部分があるんですけど、当時から「ネットに近い領域じゃないところを選べ」というのが社長からのオーダーだったんです。

麻生:もともと?

大見:はい。「ネット化してないところを5年、10年かけてネット化していけ」みたいな話だったので。

そういう意味だと、「もともとそういう大きいことしないと、会社としてバコッと成長しないよね」という感覚はあったので。そこのずれはあんまりなかったです。まあ、細かい、自動車なのか、医療なのか、介護なのかというのは、ロジックの積み方ではあると思うので。そこは意外に合ってました。

麻生:じゃあ、事業を、例えば自動車みたいに非連続にやるところにおいて、ゲームをもともと生業としていたDeNAさんで目線を設定すると、超えちゃうよねって話ですよね?

大見:そうですね。

麻生:領域とか地形とか、考えなきゃいけないこととか。

大見:あと「外部のこういう会社と組まないと絶対無理じゃないですか?」とか。なかなか今までの立ち上げ方・手法だけだと、文脈的に合わないことが徐々に出てきているなという感じはあります。

松尾拓哉氏(以下、松尾):会社の枠を超えるという話があったと思うんですけれども。DeNAさんとかリクルートさんとかもそうだと思うんですけど。

これから会社の未来を担っていく事業を作ろうとすると、既存の枠に囚われては絶対無理というか。今のサービスの模倣でもダメだし。今までのアプローチでもダメだしってレベルになってきてると思うんですよね。

僕らも最近そのような感触があって。やっぱり、これから作るものはいかにゼロベースで未来を作っていけるかという、構想を描くことの重要性をすごく感じてます。

そこに関していうと、会社の枠というのはもうあってないようなものなので、けっこう自由にやらせてもらえるかなと。そういう意味で、自由度という裁量の大きさはあるんじゃないかなと思っていますね。

日々の業務をこなしながら、新規事業は生み出せるか

麻生:会社の目線・枠組みを超えた高い目線を設定して、未来を構想して、みたいなことって、今お三方から聞くと「そうですね」ってなると思うんですけど。

普通はそう簡単にできないというか、やりにくいと思うんですね。自社の事業があって、この中で、例えば営業として「広告を販売してこい」みたいな仕事を日々やってるわけですよ。

というなかで、「お前新規事業担当だから、非連続なことを考えろ」ってミッション振ってくれたらできるけど。

そうじゃないなかで目線を高く持ち続けて、日々の業務でも成果を出してやられてきたんだと思うんですけど、そういうのってどういうメンタルモデルになってるんですか?

松尾:僕も本当に自分1人で、新卒社員として普通に仕事をしてたら、たぶん絶対できてないと思います。やっぱりそういうのを考えてる人が社内にも社外にもいるわけで、自分の近くでいうと役員とか、代表の大塚(英樹)とか。

そういう会社の未来を考えている人と、いかに共通言語を持って目線をすり合わせていくかというのが、少なくとも最初の段階としては重要だと思います。

いかにそこと話せる機会を作るかというのは、わりとあざとく考えていく必要があるんじゃないかなと思いますね。

麻生:松尾さんの場合は、新規事業提案制度に出すことが1つだったんですね。

松尾:それがすごくでかかったです。そこに出ると、必ず数時間議論する時間が得られますし。その前後でもわりと自由に話しかけていい近さではあるので、ふだんからわりと仲良くしていただいてます。

フットサルにもよく行きますし、山登りに行ったりもするので、距離は近いんですけれども、山登ってもなかなか事業の話とか一緒にしないので。

やっぱりあえて一緒に事業を考える時間を取ろうと。そのチャンスが1個公開されてるのが「Entre」という仕組みだったので、それに出続けたというような感じですかね。

大企業では「2つ上の目線で仕事しろ」

大見:感覚的にSpeeeさんとかZUUさんの規模感だと、創業者がめちゃめちゃ近くにいるから、そのパターンはけっこうあると思うんですけど。たぶんリクルートとか、うちもそうですけど、一兵卒はなかなか社長とは……。まあ、話しても……。

麻生:そうですね。ほっといたら話す機会なんてないですよね。

大見:ないですし、数1,000億円の時価総額考えてる人と、「来月100万円儲けるんです」みたいな(人では)、ギャップがでかすぎて、話が合わないときもありますよね。

松尾:どうされるんですか?

大見:僕はだいたい1年ぐらいの単位でキャリアが上がってる感覚がたまたまあって。

やっぱり1年目のときは一兵卒だったんですけど、韓国オフィスとかに行って、現地のマーケティングチームの立ち上げで、半分マネージャーみたいな役割をやってみたりとか。

それで、2年目に「ゲーム作るぞ!」となって、新規プロジェクトのプロデューサーになったりとか。

そこはチャンスと、僕がやりたいところがうまく合わさったので、1年ごとにうまく回ったのは運がよかったなと思っています。

現場で成果を出しつつ、しっかり普段から……。うちの会社は「2ランクアップ」ってよく言ってて。一兵卒だったら、チームリーダーが直上司だと思うんですけど、その1個上の人の目線に常になろうというのが、大きい会社だとたぶんちょうどいい。

麻生:そうですね。「2つ上の目線で仕事しろ」って言われますよね。

大見:それがたぶんすごいきいてたような気がしますね。

麻生:僕でいうと、リクルートもけっこう大きいので、ほっとくと役員と話す機会とかないんですけど。僕の場合幸せだったのは、自分で提案した事業で子会社を作ったので、子会社社長になったんですよね。30歳になるちょっと前ぐらいに。

子会社経営をやってると、大小、その子会社の規模というよりはやっぱり会社経営において株主たるホールディングスと会話しなきゃいけないとしてたんで、強引に会話するミーティングとかがあったので、そのおかげでコミュニケーションの機会が増えたというのはたぶんありますね。

大見:そういうちょっとしたことで変わったりしますよね。

麻生:変わりますよね。

大見:そこから飲み会に飲まれるようになり、とか(笑)。

麻生:ちょっと話を聞かれたりとか。

大見:「最近のトレンドどうなってるの?」みたいな。

麻生:そうですね。そういうのでつながってくるのってけっこう多いですよね。

身のほど知らずの目標を掲げている会社がおもしろい

じゃあ、最後の質問にしたいなと思います。たぶんこれから就職先を選ぶ方も多いと思うので、お三方が会社選びのときにどんな軸を持ってて、なんでいまの会社に入ったのか。

そして入ってよかったと思ってるかどうかを聞かせてもらえればなと思ってます。どなたでもいいですけど。

財部優一氏(以下、財部):会社選びの軸としては、まず身のほど知らずの高い目標を設定しているような会社に入ったほうがいいなと思ってます。

最近いろんな人と面接でお話をして、採用にも関わっているんですけれども、ほとんどの人があんまり自分に自信が持ちきれていない印象です。

例えば僕らでいうと、時価総額100兆円の世界一の企業を作るとか、いつまでに上場するとか、いろんな高い目標を設定してるんですけれども。

そういう目標に対して「どうせ自分なんて無理だろう」みたいに思ってる人が、世の中のほとんどなんだなと。

僕自身も、自分の会社に入る前はぜんぜんそういう自信は持ちきれてなかったんですけれども。最近すごく思うことは、今「2つ上の目線」という話も出ましたけれども、「目指せば道は開ける」と最近は確信を持って思っています。

なんでそのように思えているかというと、今の会社も2年前に僕が入ったときには非常に小さい会社で、もうなにもなかったんです。

オフィスが2回移転したり、どんどん景色が変わっていくなかで、僕自身も「高い目標を本気で目指せば、いま自分の身のほどはまだまだなんだけれども、もっともっとでかい目標を達成できるんじゃないか」という、確固たる自信がある状況です。

みなさんが就活で選ぶ軸としては、今の自分が「絶対にできないだろうな」という目標を将来できるようになれる環境。そいういう自分を信じられる自信を身につけられる環境を見つけてほしくて。

そういう環境というのは、身のほど知らずの目標を本気で掲げていて、それをどんどん達成しているような企業なんじゃないかなと思うので。そういう軸で見てもらえるとおもしろいんじゃないかなと思ってます。

麻生:じゃあ、あと5分なので、会社選びの話とメッセージと合わせて、順番に話して終われればなと思います。

ベンチャーで出会える人の魅力

松尾:就活のときの話ですね。僕は事業を作るということにすごく魅力を感じていて。なにもなかったところに対して、1個補助線みたいなものを引くと、そこに価値が生まれ、雇用が生まれ、世の中がよりよくなるという「事業を作る」という仕事にすごい惹かれていました。

端的にいうと、それが連続的に作れている会社。かつ、その事業をちゃんと育てる力がある会社というのを見て、ベンチャーを選んでみました。いろんな素晴らしい会社さんがあるんですけれども、最終的には代表の大塚という存在に惹かれて入社したというのが正直なところですね。

今、大塚はけっこういろんなインターンとかセミナーとか出てるので、就活してるとわりと会う機会はあると思うんですけれども、けっこう年齢が若いんですよね。今年で31歳ぐらいなので、僕の年齢3つか4つ上ぐらいなんですけれども。

非常に、手前味噌というか、自分のところを褒めるのはあれなんですけど、すごい考え抜かれた経営をしている人。この人が3つ上かと思うと、自分も言い訳できないんですよね。やらざるを得ないみたいな。

まあ、そういう存在がいて、この経営者とだったら素晴らしい会社を一緒に作っていけるなと思ったというのが会社選んだ軸になってました。

最後にメッセージをということなんですけれども。今日も登壇させていただいて、すごく周りの方々と話していて思ったんですけど、やっぱり熱い思いを持って、でかいことをやろうと考えていて、すごいいいやつが多いというのがベンチャーの特徴かなと思っています。

一緒に話していて気持ちいいし、仕事してて楽しいというのがすごくあるので。大変だけど楽しい。そういう感じですかね、ベンチャーというのは。なので、そういうところに魅力を思っていただけたらうれしいかなと思います。

自分が許容できるリスクで、一番厳しいリスクを取る

大見:当時の会社選びでいうと、ちょうど2011年ぐらいに動いていたので、Facebookが日本で流行って、『ソーシャル・ネットワーク』という、ザッカーバーグを中心にした映画が出たりしてて。

Web2.0の波が一気に来て、「ネットってドエライかもしれないね」というのがあらためてみんな実感として湧いた時期でした。

僕はけっこうロジックで考えつつ、最後は直感で決めるタイプなんですけど。どうロジカルに考えても、事業会社で「Webに絡んでない」ってビハインドが多いし、絡んでることのメリットはめちゃめちゃ大きいなと思っていて。

今、インターネットって歴史的に20〜30年だと思うんですけど。たぶんまだ70年とか100年分ぐらいずっとインターネットを中心に急成長する領域なのかなと思ってて。

そこにフルコミットできる人って、やっぱりインターネット業界で常に最前線でイノベーションに真正面から向き合ってる人材だろうなと漠然と思ってたんですけど。今入ってみてもやっぱりそういう感じで、シリコンバレーを中心に日々新しいサービスができてたり。僕は外資系コンサルも受けていて、内定をもらったりしてるなかでDeNAに入ったんですけど。メッセージという意味だと、南場(智子)さんがいた頃のマッキンゼーってベンチャーだったと思うんですよ。すごいリスキーなチョイスだし。でも、今マッキンゼー行くのってリスキーかというとリスキーじゃない。

どういうリスクをとるべきかというのは人それぞれだと思うんですけど。なんか「自分が許容できそうだな」というリスクの中で、一番厳しいリスクを取るというのを、自分の指針として常に持っています。

そうすると、当然自分に負荷もかかりますし、その分成長もするしという感じで、世界がどんどん広がってる感覚があります。ぜひ1歩踏み込む、「自分のリスクってなんなんだろう?」というのを考えてもらえたらおもしろいかなと思います。

麻生:ありがとうございます。最後に僕からなんですが、僕がリクルート選んだ理由は、就活生のときに30歳で社長になりたくて、「30歳で社長になるための力が最速で身につく会社はどこだろう?」と思って選んだというのが公式発言なんですけど。

(会場笑)

本当はOB訪問してて、各社の若手の人たちとしゃべったときに、リクルートの人たちとしゃべっていたときが一番楽しかったので。この人たちと働く人生が楽しそうだなと思って、最後はフィーリングで選んでるんですね。

それが、結論として正しかったと思ってるので。なにかいろいろ軸を決めたりとか、会社を比較したりすると思うんですけど。

最後は、みなさんがその会社で働いている人としゃべって気が合うかどうかみたいなところが、実は一番大きい変数なのかもしれないということをメッセージとして伝えて終われればなと思います。じゃあお三方、今日登壇いただいてありがとうございました。拍手をお願いします。

(会場拍手)

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