2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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長沼真太郎氏(以下、長沼):そんななか、大学時代からの友人がEC(E-Commerce)で大成功を収めていることを知りました。
次は自分で一から違うものを創りたいと思っていた私は、店舗の何倍もの売上を達成する可能性のあるECへの関心が止まらなくなり、デコレーションケーキをネットで販売するというECサイト“Click On Cake”を始めることになりました。
“Click On Cake”は、凝ったデコレーションケーキをネット配送するというコンセプトで始めたサービスで、「きのとや」社内に株式会社COCという会社を立ち上げて開始しました。
しかし、サービス開始当初から、配送途中に多くのケーキが崩れたことでクレームが相次ぎ、謝罪を繰り返す毎日でした。
ECの可能性は捨てきれず、今度はチョコレートをオンラインでカスタマイズできるサービスを立ち上げることにしました。
しかし、ECサイトは「きのとや」の社内で行っていたため、素早いサービス展開は見込まれず、スピードに限界を覚えていました。
ECにのめり込んでいるうちに、もともと学生時代から自分はITスタートアップをやりたいという気持ちがあることを思い出しました。
「学生時代の友人の多くは渋谷界隈でスタートアップビジネスをすごいスピード感で展開している、北海道内にいてはダメだ、より早いスピード感で展開している東京に行こう」と思い、2013年から裏原宿で家賃14万円のオフィスを借りて住み始めました。
そして、父から借りた資金を元手に、株式会社BAKEを立ちあげました。
東京に住んだことで得られたことはかなり大きかったです。得られる情報・得られる人脈が断然違いました。我々がIT系ベンチャー/スタートアップの経営手法をBAKEに取り入れられたのも、東京に拠点を移したのが大きかったと思います。
──東京に移り住んだ後のビジネス展開について教えてください。
長沼:はじめは“Click On Cake”を運営しながら、「原宿発・チョコレートのスタートアップカンパニー」というキャッチコピーを掲げて、チョコレートの試作品を作っていました。
そして、試作品が完成しサービスを発表しようとしたところで、知り合いのコンサルタントから「やっていることがぶれている」と歯止めをかけられました。サービス展開を中止し、“Click On Cake”の路線を継続することにしました。
クラウドファンディングに挑んで失敗するなど、“Click On Cake”のサービス自体は不調のままでした。
会社の状況は悪くなる一方で、資金の減少が続いていました。そこで、事務所として使っていたマンションのうち余っていた1室を、Airbnbを利用してバックパッカーに貸し出すことにしました。
すると、マックという21歳のアメリカ人がやってきました。彼はニューヨークやシリコンバレーでIT系スタートアップのエンジニアとして働いていた経歴を持つ人物です。少しだけお小遣いを与えると、彼は「何か手伝えることある?」と言ってくれました。
私は当時からアイデアとして持っていた「iPhoneアプリで写真をアップし、加工し、注文まで至るサービスの制作」をマックに提案すると、彼は「1週間で作れるよ!」と回答してくれました。
そして、彼は本当に1週間で私が提案したサービスを形にしてしまいました。これが今の「PICTCAKE」です。2013年10月のことです。
これまでもケーキに写真プリントするケーキ屋はありましたが、パティシエと直接やり取りする必要があり、注文するには相当な手間と時間を要するものでした。
それが「PICTCAKE」ではスマホで写真をアップするだけで注文ができるようになったため、写真ケーキのニーズが大幅に増加しました。
その結果、「PICTCAKE」には大量の注文が入るようになり、現在は年間5万件のオーダーを受注するサービスになっています。
しかし、残念なことに、開発者のマックはわずか21歳という若い年齡であること、大学を出ていないこと、就労経験が少なかったことなどが障壁となり、就業ビザがおりませんでした。
そのため日本を去らなければならならずタイのバンコクに居住してしまいました。ただ、彼とのつながりは継続していて、リモート作業で今でも我々のサービスを手伝ってくれています。
2014年2月には「焼きたてチーズタルト専門店 BAKE by kinotoya」を新宿ルミネESTにオープンさせました。
小さい店舗でしたが500万円くらいで店を出し、幸いにも繁盛することができたため、この実績で1億円を調達することに成功しました。
ただ、その後売上がやや低迷し、お金がないわけではないものの事業戦略に苦しんでいた時期がありました。
当時のメンバー3、4人で何やってんだと思いながら、毎日パスタを作っていたりカップラーメンを作っていたりしていたのをよく覚えています。
しかしそうこうしているうちに、「PICTCAKE」が軌道にのり、自由が丘や大宮の店舗、新たなブランドである「クロッカンシュー ザクザク」が成功してうまくいくことができました。
おかげ様で前期は1億円だった売上を、今期は10億円まで拡大することができました。来期は30億円、その次は90億円を目指しています。
──店舗・ECでさまざまなブランド展開をするなかで、BAKEさんが追及していきたいことは何でしょうか。
長沼:我々がやりたいことは「お菓子の本質を追求する会社にしたい」というものです。 これまでの有名洋菓子店は、有名なパティシェがいてその人がスターになることによって流行っています。
しかし、有名パティシェの店というのは、その人自身が作っているのではなく、店が雇った職人が作っているのが現状です。有名パティシェ自身は、店にとってのシンボリックな存在にすぎません。
私は本当のお菓子を追求するには、経営者であるパティシェが有名になることではないと考えています。
本当のお菓子を追求するなら、お菓子を作るオペレーションの改善、原材料の改善、作る過程の手間かけ、の3つのポイントがあると考えています。我々はこの3つのポイントに注力し、お菓子の本質を追求する会社にしたいと考えています。
では、どうやってお菓子の本質を追求するのか。その参考になるのが、現在米国など海外で次々と登場している食のスタートアップです。
例えば、米国ではチョコレートのスタートアップが数多く出ていますが、彼らに共通していえるのが「エンジニアリングの考え方で食を改善していく」という考え方を持っている点です。
私たちも同じ感覚を持っており、ABテストやCo-CreationといったITスタートアップの考え方を日々のお菓子作りに取り入れています。
例えば、シュークリームを焼く型番には100枚以上型番があるのですが、1回ごとに使う型番を次々と変えてみて、膨らみ方を調べて最も売上を伸ばせる型番を使うという改善の方法を取り入れています。
また、新しいお菓子のベータ版を出した際にお客様からWeb上でフィードバックを得られるプラットフォームを現在開発中で、これにより毎週(あるいは毎月)1回アップデートしていくという製品開発手法をとろうと考えています。
また、ブルーボトルコーヒーの考え方も参考にしています。彼らはシングルオリジン(産地を国単位でなく農園単位で捉え、栽培品種や収穫時期・精算処理・などより細かい情報を付随して安心・安全を追求した生産者の顔が見えるコーヒー)にしたことと抽出法の改善を繰り返したことに、イノベーションの源泉があります。
我々も原材料についての考えを参考にしており、例えば牛乳の生産者と関わってお菓子の種類にあわせた牛乳を開発しようと考えています。
──エンジニアリング手法以外でもBAKEが取り入れているスタートアップ的手法について教えてください。
長沼:PRに関してはユニークな運営をしています。私たちは2015年5月からしおたん(塩谷舞さん)というネット上で影響力のある女の子に参画してもらい、「BAKE MAGAZINE」というWebマガジンを運営しています。
入社してくる人材もだいぶ異なります。有名パティシェ店では製菓の専門学校を卒業した人が入るケースが多いですが、私たちの場合IT系スタートアップに入りたい人が多く入っています。──洋菓子スタートアップとしてベンチマークしている企業はありますか?
長沼:同じ業界ではなかなかありませんが、中国のスマホメーカー・Xiaomiは参考にしています。
お客様とのコミュニティを作り、ベータ版を出して、Co-Creationの考え方でアップデートする。中間業者を通さず基本的にはネット上で販売する。彼らのビジネスモデルは我々も参考にしています。
──BAKEさんが求めている人材像について教えてください。
長沼:ガッツがあって、リアルもWebもわかる人がいいなと感じています。経験という意味ではマネジメント経験ある人に来てほしいです。
何十人ものメンバーをマネジメントしてきた方や、ある程度の規模のあるベンチャー企業でKPI管理をしてきた人のニーズは高いです。
マインド面としては、「短期間でインパクトを与える、急成長する企業」というスタートアップのマインドを共感できる人がいいですね。あとは、コミュニケーションをしっかり取れて、メンバーを盛り上げてくれる人が望ましいです。
一分野において私よりも能力の高いプロフェッショナルを取りたいという考えを貫いています。前職がお菓子企業でないというのも明確な採用基準です。例えばI、Tのメディア系にいた人や外資系のマーケティングにいたような製菓業にまったく関係のない人たちに参画して欲しいと考えています。
──最後に長沼社長の夢を教えていただけますか?
長沼:「日本を代表する製菓企業をつくる」というものです。日本に売上高1000億円を超える製菓企業は、江崎グリコ、森永製菓、明治、カルビーのわずか4社しかありません。
この巨大企業4社に匹敵する企業を、シンプルかつ新しいプロセスを用いて実現したいというのが私の夢です。社内でも「日本を代表するメーカーをつくろう」と社員一丸となってがんばっています。
──長沼社長、本日は貴重なお話をありがとうございました。
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