2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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──幼少時代からの長沼社長の生い立ちについて教えていただけますか?
長沼真太郎氏(以下、長沼):私は札幌市で生まれ育ちました。父は地元で洋菓子店「きのとや」を営んでいます。「きのとや」は母方の父が営んでいた事業の一部門として産まれ、私は実質3代目にあたります。
家族構成は、両親のほか姉が2人おり私が長男です。幼い頃から跡継ぎとして育てられ、私もお菓子屋を継ぐために幼い頃から人生設計を行っていました。父から教わった「お菓子を作るためには3つの原則がある。
1.フレッシュで
2.手間をかけて
3.原材料はいいものを作れば絶対にいいものができる。それ以外は考えるな」
という考えは、BAKEの経営スタイルにもつながっています。
子供の頃から夢中になっていたのは、お菓子作りではなく野球でした。小学校・中学校・高校と野球を続け、すべてのチームでキャプテンを務めました。
なかでも、高校は甲子園出場経験もある札幌南高校に入学し、100名を超える部員をまとめていました。
当時は甲子園連覇を果たしていた時代の駒沢苫小牧高校とも練習試合を行っており、現在ヤンキースの田中将大投手とも対戦したことがあります。三振してしまいましたが(笑)。
高校時代にキャプテンをつとめた経験は大きかったと思います。当時いろいろ問題があり、監督不在になったこともありました。
さまざまなストレスから胃潰瘍になりながらも、野球部を引っ張った経験は、今でも貴重な経験となっています。
人前でしゃべったりすることができるようになったのは、このときの経験が活きているのではないかと思います。そのほか、声が大きいことも野球をやっていた影響だと思います(笑)。
──長沼さんの大学生活について教えてください。大学でも野球部を続けたのですか?
長沼:慶應義塾大学商学部に進学しました。はじめは大学でも野球をするつもりでしたが、体育会野球部に入った高校の先輩から「勉強したほうがいい。野球部に入ったら何もできない。もっといろいろ将来のためにやれよ」と言われ、すんなりと野球を辞める決断をしました。
そして、起業や株式投資を始めとするビジネス系のサークルに入り、いわゆる“意識高い系”と言われるような学生たちと一緒に活動をしていました。自分で営業の会社を立ち上げて経営していたりもしていました。
──大学卒業後はどんなキャリアを歩もうと思ったのでしょうか?
長沼:「将来、自分でお菓子屋を立ち上げたい」という目標を持っており、それが達成できるような会社を選んで受けました。
もともとお菓子屋を継ぐように育てられたため、自分もお菓子屋を経営するという前提で人生を設計していました。
そして、年商30〜40億円の父の会社に入るより、自分がゼロから立ちあげたほうが成功するまでの前段階を知れていいと思ったため、起業を前提として考えられる企業を受けることにしました。具体的には、DeNAやIT系のベンチャー企業を受けて、内定もいくつか得ていました。 しかし、自分がお菓子屋を継ぐという目標に対し、「この内定先で働いてもいいのか?」と疑問に思いながら残りの学生生活を送っていました。
そんななか、たまたまネット上で勝間和代さんの記事を見つけました。その記事には、彼女のメールアドレスが掲載されておりました。
そこで、「私はお菓子屋を将来やりたいと考えている就活生です。お菓子屋を立ち上げるという目標達成のために選ぶべき就職先で迷っています。候補として、大手商社・ITベンチャー・お菓子屋の3つをあげています。この3つのうちどこに就職すべきだと思いますか?」と尋ねてみました。
すると勝間さんは、「お菓子屋を将来開業するつもりであれば、就職先はお菓子屋をおすすめします。ほかで修行する必要性はありません」と単刀直入に返信してきました。
この話に納得した私は、「寄り道をせずにお菓子業界へ行こう」と思い、再び就職活動に乗り出しました。
そして内定を得たのが丸紅でした。丸紅は、総合商社のなかでも、製菓流通や製菓業者の海外支援といった製菓ビジネスのシェアが商社の中で一番高く、そのなかでお菓子に関わるビジネスができればいいと思い志望し、縁あって入社することが叶いました。
運良く、1年目から菓子業界を専門に扱う菓子食品課に入ることができました。
──丸紅からスタートした社会人生活について教えて下さい。
長沼:最初に配属された菓子食品課では、イギリスから輸入したキャンディや韓国から輸入したビールを日本のスーパーに卸すなど、海外から輸入した菓子・食品を日本に輸入する事業に関わっていました。
また、日本の中小製菓業者が海外進出を支援する事業にも携わっていました。しかし、丸紅は1年で辞めました。
──新卒で入社した丸紅を1年で退職。理由は何ですか?
長沼:「きのとや」を訪問していた香港の財閥の方が、お菓子屋を上海で展開する話を進めており、私に声がかかりました。良いお話だと思って、勢いでお話を受けることにしました。
そして、1年目の終わりの3月31日に丸紅を退職し、その5日後くらいに上海に渡りました。それ以降は上海に家も借りて、日本と中国を行ったり来たりしていました。
ただ、このプロジェクトは半年くらいで中止になりました。財閥の方は私が北海道のお菓子の息子だということで菓子を作ることができると考えていたようですが、実際は作れません。方針が合わなくなり、私が未熟すぎた故、失敗しました。
長沼:もう一度、製菓業を一から勉強したいと思い、「きのとや」に入社しました。もう戻るところがなくなったというのも入社理由にはなりますが。
入社後、父から新しい業態の「KINOTOYA 2」の立て直しを任され、店長として赴任することになりました。
「KINOTOYA 2」は外部の経営コンサルタントのアドバイスを受け、今までの「きのとや」の商品を売らないというコンセプトのもと、新千歳空港にて開業した店でした。
当時は、冷凍チーズケーキなどの北海道の酪農菓子を主力商品として手広く販売する店でした。しかし、初日からまったく売れず、私が店長として赴任した当初は1日5万円しか売れていない惨状でした。
──1日売上5万円の店舗がどのように立て直ったのですか?
長沼:最初のうちはひたすら試食をしたりして、再建の方法を考えていました。しかし、ブランド再建のきっかけとなったのは、従業員へのアンケートでした。
従業員に「どの商品が好きか」「何をお客様に薦めたいのか」「自分だったら何を買うのか」と尋ねたところ、圧倒的な指示を得たのが、当時ショーケースの中に冷蔵状態で売っていた大きなチーズタルトでした。
この結果を受け、我々として一番売りたい商品をチーズタルト1つに絞り込んで、その価値を上げていくことで売上を伸ばしていこうという方針が決まりました。
しばらくの間、チーズタルトの売上を伸ばす戦略を考えていましたが、答えが出たのは、店長を兼務しながら出向くことになった、シンガポールでの北海道物産展でした。
そこに「きのとや」が出店し、焼きたてのチーズタルトを出品することになりました。焼きたてと言っても焼きたてのものを箱に入れて販売していたため、つめ込まれたものが焼きたてとはわからない状態での販売でした。
以前、日本でもたまに出していたものの、あまり売れない方式でした。案の定、シンガポールでも最初は苦戦しました。
しかし、催事期間中たまたま箱がなくなってしまい、仕方なく焼いた鉄板ごとタルトを並べて販売することにしました。
すると、それを見たお客さんが長い行列を作り瞬く間に売れていきました。焼いた鉄板ごと商品を並べることで“焼きたて”ということがうまく伝わったのでしょう。
私はタルトを鉄板に載せたまま出すという方法こそが成功する秘訣だという感触を経て、帰国の途につきました。
北海道に帰った後、すぐに店舗を10万円かけて改造し、タルトを鉄板のまま出せるようにしました。
すると、テレビ番組に出演するなどかなり注目されるようになり、1日何千個も売れるという日も出るようになりました。
また、チーズケーキについては、焼きたて感が伝わるようにタルトを小さくする、ムースにするなど、よりお客様から支持される商品作りを目指すようになりました。
形の異なる商品を2種類作って、ABテストを行うなど、お客様のフィードバックをもとに改良し続けました。
これらの工夫の結果、当初1日50個くらいしか売れなかった店は、私が店長として在職した8ヶ月間で毎日1500個以上売れる店となりました。
この成功体験で、私は大きな自信をつけました。続いて札幌駅にチーズタルト専門店を出店し、ここでも成功を収めました。
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