2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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——最近(2016年2月)のランサーズの事業概況について教えていただけますか?
秋好陽介氏(以下、秋好):前回、藤岡(清高)さんからインタビューされたのはちょうど3年ぐらい前(2013年2月)ですが、それからかなり大きく変わりました。
当時は「ランサーズ」というクラウドソーシングのWebサービスをやっているという状況だったのですが、そこからいろいろ派生しまして、事業開発面ではKDDIさんやインテリジェンスさんといった事業会社と組んで、異業種と連携した、KDDI×クラウドソーシングみたいなサービスを始めたり、僕たち自身もコンサルタントを抱えて、企業に直接おうかがいに行って、企業の仕事をクラウドソーシング化したりコンサルタントが代行してお仕事をディレクションする「Lancers for ビジネス」というサービスを始めました。
社内のディレクター陣がランサーさんと一緒にクライアント企業の課題解決を行うソリューション事業は現在急成長しています。また、ランサーズフィリピンという子会社作って海外事業も始めました。
以前インタビューされたときよりも、かなり多角的に事業展開しています。クラウドソーシングという軸は変えずに、周辺領域を始めたというのは大きな違いです。3年前に比べたら社員規模もはるかに大きくなっていると思います。
地方創生というかたちで自治体との提携も始めています。この取り組みはクラウドソーシングを活用して東京の仕事を地方の人にしてもらうというかたちです。
上図がクライアントの分類です。使っていただいているクライアントはやはり半分以上東京で、逆に働いている方は75パーセントが東京以外、つまり地方です。
この辺を行政の方から注目いただいて、横須賀市や奄美市等と提携しました。そのほかにも3~5自治体とは提携のお話をいただいています、そのほかに全国の自治体・地域から150程度のお問い合わせをいただいています。自治体との取組みを始めたことも大きな変化です。
——ランサーズ上でやりとりされる仕事の内容は、以前はロゴデザイン作成などが主流でしたが今はどうですか?
秋好:そこも大きく変わりましたね。前はデザインが中心でしたけど、今はデザインの仕事だけではなくてエンジニアの仕事も、Webの仕事も、あとはライティングの仕事も、翻訳の仕事もやっています。
中には「Airbnbの家の掃除をやってください」とかリアルの仕事を含めて、かなり幅広くなってきましたね。オンライン上で完結する仕事だけを扱うわけではなくなってきていています。
ランサーズが扱っている仕事の幅が広がったというよりは、利用していただいているクライアントの幅が広がったというイメージです。
当時はインターネットが得意な一部の人だけが発注していましたが、今では、普通の中小企業や自治体まで利用していただけるようになってきたので、自然と発注の質の幅もカテゴリーの幅も広がってきました。
——クラウドソーシングが流行りで、カテゴリーキラーのクラウドソーシング事業者が出てきています。その中でランサーズの立ち位置はどうなっていくのでしょうか?
秋好:クラウドソーシングを一番最初からずっとやっているというのもありますが、立ち位置という意味ではこの3年で変化がないです。
僕らは国内では総合型の一番大きな巨人としてのプラットフォーマーです。確かにカテゴリーキラーはいるのですが、僕らとしてもカテゴリーに対して最適化しています。
例えばライティング専用のクラウドソーシング会社はあるのですが、僕らのライティングカテゴリーはかなりチューニングしていて、十分カテゴリーキラーと戦えています。ですから総合型を目指しています。
人材業界でいうとリクルートさんのような立ち位置でやらしていただいています。 最大の強みは規模が一番大きいことだと思います。ランサーさん(仕事をする個人)もすごくいい人がいますし、案件の数も一番多いです。そういった立ち位置でやらせてもらっています。
——僕もランサーズを依頼者として利用していますが、安心・安全・信頼というのは利用者としては大事ですね。ランサーズさんがユーザーに提供している、安心・安全・信頼についても教えていただけますか?
秋好:いろいろしておりますが最近のおもしろい取り組みとしては、“補償”というものを始めました。
要は、ランサーズで取引して万一トラブル、賠償、裁判などあれば、ランサーズが補償しますという制度です。
クライアントとしても安心できますし、個人の人も万が一、何かあればランサーズが補償してくれるというのは、安心安全のひとつです。それ以外にもこの業界を7年やっているからできることですが、我々自身が良いランサーさんの統計を取って認定ランサーというのをやっています。
この人は信頼できるというランサーさんを数千人認定しました。これによりランサーズで頑張れば、認定バッジがもらえて、さらに仕事ももらえるという仕組みです。
——海外展開も始められましたね。
秋好:はい、昨年の12月にフィリピンで事業を始めました。僕らは近い未来1000万人がオンラインで働く、仕事のインフラになるというものを中期ビジョンにしていて、日本だけだとなかなかそれが……。
日本でも徐々に広がってきてはいますが、1000万人はなかなか厳しいんですよね。そもそも日本の労働人口は6000万人しかいないという現状もあります。それらを踏まえると海外にいかないという選択肢がありませんでした。そしてようやく去年進出できました。
——前々から海外進出という話はされていましたが念願叶いましたね。
秋好:ずっと一緒に働いている社員からも「4年越しですね」と言われました(笑)。海外ではまずランサーの獲得に取りかかり、日本の仕事を渡して取り組んでもらいました。そのために社員も現地に出向しています。
——なぜフィリピンを選ばれたのですか?
秋好:クラウドソーシングのマーケットで一番利用されているのは北米なのですが、2番目はフィリピンです。
アメリカ人の次にクラウドソーシングを使っているのはフィリピン人なのです。その理由は、やはりまだ給与が低いというのもありますし、英語圏というのも大きいと思います。
フィリピンは、日本とも近く、時差も1時間しかありません。海外進出の最初の足がかりとしてはいいなと思いました。もともと北米よりはアジアに行きたいと思っていたのもあります。
——フィリピン人ランサーのスキル的な部分はどうでしょうか?
秋好:優秀なランサーの方が多いです。とくにデザイナーがフィリピンはすごく多いです。スキル的な強みは国によって違っていて、ベトナムはエンジニアが多かったり、シンガポールはヘッドクウォーター的で、専門職の方が多かったりしますが、フィリピンはデザイナーが多く、そういった学校も多いです。
といってもデザインの感性が日本とはまた違うので、そこは特徴としてあるのですが、いい仕事をしてくれます。 あとはデザインクルーという会社を去年買収しました。
もともと日本の案件を翻訳してアジアに流す、というプラットフォームをやっている会社で、フィリピンのユーザーさんもそのデザインクルーに1000人位登録していますし、アジアの登録者で数千人います。そういったところが繋がってのフィリピン進出ですね。規模はまだ小さいですけどすでに回っていて、手応えを感じています。
——クラウドソーシングビジネスは日本よりもアジアのほうが成長ポテンシャルはあるのではないでしょうか?
秋好:あるんです。そもそもフィリピンは若い人が多いです。人口ピラミッドの形は日本とぜんぜん違います。もしかしたら若い人だけなら日本人より多いかもしれません。しかもITリテラシーも高いです。向こうではみんなスマホを使っています。
そして平均月収3万円(2014年時点で世帯月収37,00円)なので、ランサーズで1個ロゴコンペに勝つだけで、1ヶ月暮らすことができます。安定的に10万円とか稼いじゃったら、もうRICH MAN!!です。
——3年前に比べて会社の成長とともに秋好さん自身変わったことはありますか?
秋好:当時まだ資金調達はしていませんでした。資金面では、自分たちの自己資金でやるというよりも、外部VCや事業会社と提携してレバレッジをかけていくということを学びました。それによって、確実に事業のスピードアップはしています。
まず使える資金が当時と比べると圧倒的に違います。当時は1000万、2000万円が月で考えた時のアッパーでした。
それが3億とか10億まで膨らんだのでそこは大きく違います。人間の脳ミソはおもしろくて、1000万円しか使えないとなると、1000万円の打ち手しか出てきません。
しかしこれが10億使えるとなると、今までに想像できなかったことがいろいろ浮かんでくるようになりました。
中には1円しか持ってなくても、100億のことを考える孫(正義)さんみたいな方もいますけど(笑)。誰しもが可能なのは持つことで考える、なので僕は持つことは大事だなと思っていて、持つことで可能性が出てくると思っています。
孫さんのようになにもないところから戦い方を考える人は稀で、武器を持って初めて戦い方覚える人のほうが多いようにも感じています。
——資金調達で得た資金は何に使ったのですか?
秋好:人材採用と組織・企業文化開発です。とにかく仲間にお金をかけました。現在140人くらいいますから、藤岡さんとお会いした時からすると考えられないですね。
初めてお会いした時は鎌倉のオフィスで社員が2、3人とかでしたもんね(笑)。あの時はこの部屋2個分ぐらいの広さでした。それが今は140人です(笑)。
人が増えたことで環境もガラッと変わりました。採用に力を入れる過程で出てきた問題や壁からいろいろ学びましたね。
30人の壁、50人の壁とよく言いますが、ランサーズでもそういった時期はありました。スタートアップではよくある話なのですが、従業員が10人、20人くらいの規模ですと「よし、いくぞ」の掛け声ひとつで、まとまりができて1人でやっている時とテンションを変えずに業務ができます。
しかしその時は、お互いに理解できていたことが、40人くらい、50人くらいになると急に「社長の言ってることがわからない」という人が出始め、社員との距離ができ始めてきます。
社員からするとコミュニケーションが1/5となるので、情報の量が薄くなり、僕が何を考えているのか当然、過去と比較すると薄くなります。
前まですぐ答えてくれていたことが、1週間後に返事が来る。「私のこと大事にされてないんじゃないか」とも思い始めたりするようです。
そういった小さなことが積み重なって距離ができると、言っていたことが伝わらなくなるんです。「いくぞ!」と100言って100伝わっていたのが、100言って5伝わればいいくらいになってきます。しかもそういった伝わっていない状態になっている、と気づくのに3ヶ月くらいかかりました。ある日「あ、5しか伝わっていない」となる。
その3ヶ月はけっこう致命的で、3ヶ月も距離が離れると、人はだんだんと疑心暗鬼になっていきます。それでなにが起きるかというと、辞めていく社員がいたり、事業スピードが遅くなる、等いろいろな症状が出てきます。
症状が出てくると、経営者は、病気なんだと気付くのです。そこで対処できるかが大事で「いやこれは社員が悪い」と言って同じやり方を続けると更に症状が進んで、末期になります。
僕は運よく、周りにいた経営者達もそれを経験していたので、「それは病気だよ」と教えてもらえました。なので処方箋をもらって対処できました。
まず行ったのは社員と話すことです。一人ひとりと話すこともあれば、グループで話すことも、飲みながらフランクに話すこともありました。合宿も行いました。そういった場で話していくと「そんなこと思ってたんだ」ということがたくさん出てきます。
「話す機会が減った」ということが積み重なると大きな方向のミスに繋がってくるんだと実感しました。その時にもう50人や100人といった全員と毎週1on1するのは無理だと思いましたね。
今まで自分が担っていた役割を分身として、経営幹部(マネージャーや役員)にしていきました。 組織マネジメントの仕方はいろいろあると思うのですが、ランサーズはビジョンの強い会社なので丁寧に「自社のビジョン」を全メンバーに伝えていきました。ほとんどのメンバーはビジョンの実現に共感して、入社してくれていますから改めて「ビジョンを実現したい」という思いを共有できました。
なので、50人の壁という意味ではビジョンを明確に定め、ランサーズの価値観、社長の考え方の分身を経営幹部にして、僕らの会社がどこに行くかを明確にしたんです。ビジョンを明確にするという体制にして2年くらい(100人くらい)の組織まで持続的に成長しました。
100人くらいになるとまた第2の壁がありました。50人の壁は「人」で乗り切れました。自分が「この人だったら信頼できる」という人を3人くらい経営幹部に任命して彼らに過去の自分と同じ動きをやってもらう。
その人たちがいると、1人で30人くらいはマネジメントできるので、90人、100人くらいまでは行けるようになります。それでうまく来ていたので100人になった時にマネージャーを横に広げようと思いました。3人だったところを8人とか、数を増やせばいいと。
でもおもしろいもので、それだとうまくいきませんでした。100人を超える段階では、人で担っていたことを仕組みにする必要があります。社員一人ひとりにランサーズの価値観を共有し、会社としてのフェアウェイを明確にする必要があります。
そのために僕らはランサーズウェイというのを作りました。ランサーズのビジョン、ビジョン実現のための行動指針です。
これを作れば良い、というのではなくて社員と一緒になって作っていくことと実際に作ったあとの運用が重要でした。
このようなプロセスでマネージャー層を育成してくことにまさに取り組み中です。今のところ順調に拡大していると考えています。
ランサーズウェイを作った時に苦労したのは写真ですね。写真は絶対に撮っておいたほうがいいです。あとで本当に困ります。
うちで言うと、ずっと仕事ばかりしていた2008年はぜんぜん写真がありません。クックパッドの穐田(あきた)元社長に4年前にお会いした時に、「このステージだと何が一番大事ですか?」と聞いたら、「思い出だ。写真を撮れ」と言われました。
今それを実感しています(笑)。あの時は「思い出が一番大事だ。お金も人もなんとでもなる。でも思い出は取り返せない」と言われました。
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