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爆速経営の今(全2記事)

社員の意識を変えるには「ティーチング」より「コーチング」--ヤフー爆速経営のいま

ヤフーはどのように社内文化を変えていったのか。一人一人の社員はどこでハートに火がついたのか。その答えはティーチングとコーチングにありました。「爆速経営」の現在を同社副社長兼COOの川邊健太郎氏が語っています。

「爆速」のお手本は小泉政権のワンフレーズポリティクス

岡島:(爆速という)理念の再定義もそうだし、それから行動規範みたいなキーワードも、すごい言葉にこだわっているじゃないですか。

川邊:それは、みんなの政治をやっていたときに、小泉政権とシンクロしていた時期だったので、小泉政権を見ていたんですよね。そうしたら、やっぱり小泉政権というのは言葉の使い方ものすごい上手だったんです。

岡島:上手、確かに。

川邊:ワンフレーズポリティクスと言われていましたからね。

岡島:そうですよね。

川邊:だけれども、やっぱり多くの人に何かを伝えて行動変えてもらう……。

岡島:だって当時社員が何人ですか?

川邊:当時4,000人ぐらいですよね。

岡島:ですよね。その人たちにやっぱり本当に変わってもらわなくちゃという。

川邊:そうそう。行動を変えてもらわなくてはいけないんで、その場合はもうワンフレーズポリティクスのやり方でやるしかないだろうと。わかりやすい言葉を繰り返し言うと。

岡島:爆速Tシャツもつくり。

川邊:そうそう。それで爆速Tシャツつくって、ワイルドとか爆速とかフォーカスとか課題解決とか、そういう短い言葉を繰り返し言っていたんですね。そうしたら、あるとき、それだけじゃだめなんだよと言われたんですよ。

それはフェイスブックに行った児玉というのと森岡というが、これはヤフー出身ですから、彼らと飯を食っていたんですよ。そうしたら、それだけじゃだめなんだよと、定着させるのにはその言っている言葉を評価の軸にしなきゃだめなんだと、そうしないと人は変わらないんだと、フェイスブックはそうやっているんだと言うので、何かいい話だなと思って。

岡島:(笑)。

「楽しんでいるか」を評価の軸に

川邊:我々も多面評価みたいのをやっていたんですけれども、それはどこかのコンサルト会社がつくった50個くらいある項目でお互いを評価し合っていたんですけれども、正直、みんな忙しい中だとその50個のやつも、ちょっといいかげんになっていたんですね。

岡島:しかもハロー効果じゃないけれども、直近のところしか覚えていないみたいな感じになりますよね。

川邊:そうそう。だから、それをバコッと変えて、フォーカスを楽しんでいるか、課題解決を楽しんでいるか、爆速を楽しんでいるか、ワイルドを楽しんでいるかみたいな、四つの軸に評価をシンプルにしちゃったんですね。そうするとみんな、それをやればいいんだと。

岡島:やることが明確になったという感じなのかな。

川邊:そうそう。それをやれば褒められるのねと、そういう方向に変わりたいのねというのが、初めてその評価になって伝わって、あと最後、その四つのキーワードに「~って楽しい」というふうにつけたんですよ。だから楽しむのが今のところこの会社の、要するに振る舞い方なんだな、だから楽しんでいこうというふうに楽しむ人がだんだんとふえてきたと。

岡島:この楽しむみたいなことがやっぱりすごく上手なんじゃないかなと思っていて、なんか変革するときってちょっとネガティブな感じだし、今までのものを捨てるみたいなことも出てくるし、そうするとどうしても抵抗したくなる、既存勢力の人は抵抗したくなるし、でもそこをうまく、祭り感というか、ポジティブな言葉とかすごくその辺をうまくやっていらっしゃるなって。

川邊:そうですね。物心ともにというか、言葉は心を踊らせるものだし、スマデバシフトだ! といったときに皆そんなにスマデバ持っていなかったんですよね。

岡島:なるほど(笑)。

川邊:だから最新のiPhoneと最新のiPadを全社員に配布して、これ持っていたら楽しいだろみたいなのでやって、物心ともに盛り上がるように、いろいろやっていったと。

目標は「201X年までに利益倍」、ほかのネット企業を全部買収すれば可能

岡島:一方では数字の目標がすごいきつい目標だと思うんですけれども。

川邊:そうなんですよ。

岡島:これだけ利益出ていて、201X年、ペケ年。

川邊:ペケ年までに利益を倍にすると。

岡島:(笑)。半端ないですよね。

川邊:そうなんです、宣言しちゃったから、宮坂さんが。だから、やるしかないだろうと、宣言したからには。何でも物事やるときは逆算でやったほうがリアリティが出るので。

岡島:そうですよね。

川邊:じゃあ利益倍だと。そのためにはどうやってどこでどう利益を積んでいかなきゃいけないとか、どうやったら積めるんだとか、考えられるようになりましたね。だけれども、利益倍宣言をして、改めて、一応ちゃんと宣言したのは新体制発足して2カ月後の新しい株主総会でやったので6月くらいだったのですけれども、その株主総会の夜にもう一回改めて自分で計算してみたんですよ。当時だから利益が1,860億円かなんかあったのかな。それを倍にするというのは、例えば日本のほかのネット企業をどれほど買収したら、例えば…。

岡島:吸い上げて(笑)。

川邊:そう、できるのかなと思ったら、全部買収しないと積み上がらないという……。

岡島:相当な野望ですよね、やっぱり。

川邊:これは大変なこと言っちゃったなと。

岡島:しかも今までのものを粛々と伸ばしているのでは、そうは絶対行かないですものね。

川邊:そう。だから、ある程度戦い方を絞っていかないとできないので、だけれども、登る山は高いほうが、創造性が働いて楽しいんじゃないかなと。苦しいけど楽しいみたいな。

岡島:なるほどね。だから組織のメカニズムとしてすごくうまくいきましたという話だと思うのですけれども。

川邊:そうですね、はい。

最初のころは「川邊さんたちしか盛り上がっていないですよ」

岡島:でも一人一人の社員は、どこでハートに火がついたのかな?

川邊:まず、やっぱり徐々にですよね。全員が一気に変わったということはなくて、今でも熱心にヤフーに入らない? と誘っている人がいるんですけれども、その人と、かれこれ三、四回誘っていて、その人などは結構ヤフーの社員のいろんな人と話したりとかしょっちゅうしていて、最初の頃は、川邊さんたちしか盛り上がっていないですよとかって。

岡島:そうそう、皆そんなこと言っていましたよね。

川邊:そうそう、結構冷静に言っていて、この間ちょっと話したら、結構みんな盛り上がってきましたねと、徐々に変わって。

岡島:フォロアーがだんだん、やっぱり裸踊りの男じゃないけれども。

川邊:そう。それはね、やっぱり一つは権限委譲を進めたと。やっぱり自分が主体的にその舞台で踊れるんだ、踊ったら楽しかったとか、そういうことがわかったというのと、あとコーチングを取り入れたんですよね、全管理職に。今まで典型的ティーチング会社だったんですよ。時間がないので……。

岡島:やっておけ! みたいな。

川邊:そう。こうやって、ああやって、そうやって、こうやれ! とかいって、卓越したリーダーたちがいて、その人たちが全部戦い方わかっていて、こうやって戦うんだって教えて、ははあといってやっていたのを、お前だったらどうやるんだ? どうやって戦うんだ? 楽しいかそれは? というふうに、質問ばかりしようと、上司は部下に。それもやっぱりすぐはできなかったんですけれども。

岡島:上司が大変ですよね。だってすごいマインドセット変えないといけないし。

川邊:そうそう。だから、これに2年くらいかけて、そのティーチングからコーチングに変えたことによって、ますます現場の社員たちは自分たちで頑張ろうというふうに変わってきているのではないかなと。

岡島:でも切りかえるのはすごく大変で、ちょっとやっぱり任せると業績落ちたりするじゃないですか。自分でやっちゃったほうが早かったりして。

川邊:そうそう、そういうことです。

岡島:そこをみんなわりと我慢して任せて、ちょっと成功体験積んでもらってという感じにしていく一方で数字を上げなきゃいけないという、大変ですよね。

「1カンパニー、1革命」で、部署ごとに競い合う

川邊:大変なんですよ。今でももちろん大変なわけですけれども。何とか我慢しながらやっていったり、いろんなまたそういう手法をいろいろ開発したり。その中で結構利益、昨年度は上げられたなと、いい感じで来たときに、eコマース革命やろうというので盛り上がっちゃって。だから400億円くらい売り上げを今度放棄することになっちゃって、この分どうするんだみたいな。

岡島:あれ? ポケットに穴あくぞみたいな。

川邊:そうそう(笑)。チャレンジが重層的で、骨の折れることでした。

岡島:でもそれをやっておかないと次へのという。

川邊:やっぱり、より勝つためにはどうしたらいいんだろうというのを常日頃から考えているわけですけれども、ショッピングというか、全体的にビッグデータの時代になってきて、データドリブンの会社が恐らくは最終的に勝つだろうねと。そのときに、コマースのビックデータはとても重要で、今このままやっていても、中途半端な状態になるので、よりそこで勝負するにはどうしたらいいんだということで、あれを考えて。それでうってつけの人物がいたので、小澤氏にそれを。

岡島:祭男が(笑)。

川邊:そうそう。

岡島:だから、やっぱりそういう意味では、小澤さんが入ったり、村上さんが戻ったりという、何か経営陣見ているだけでもドリームチーム的だし、本当に社員の人たちも、だんだん誇りをもって働いていることについて、つまんない会社と言われてしまったところから、がっと来たという感じなのですけれども、今、足元で、爆速どうなっているの? というところ、手がけていらっしゃるところも少し教えてください。

川邊:そうですね。今、そんなのでeコマース革命というのをやったものですから。

岡島:業界激震ですよ(笑)。

川邊:おもしろかったですね。1カンパニー、1革命だ! みたいに今なっていて、それぞれ革命を競い合おう! とかなっていて。

岡島:なるほどね。

川邊:ショッピング系はeコマース革命ですよね。広告はアド革命というか、マーケティングオートメーションみたいな言い方をしているのですけれども、徹底的にデータでやるマーケティングっていうのを、DMP、DSP等々提供していると。もう一つは決済金融カンパニーというのがあるのですけれども、ここも金融革命だ! といって、先日ジャパンネット銀行と連結化を発表させてもらって、ここは、ここからネット屋がやる金融というのをやろうと。

それでオークションは、これは革命というか、もっとより課題解決度を上げようということで、リアルですよね。ブックオフさんと、これも将来的には連結化を目指して、ブックオフで買い取ってもらったものが出品されるみたいな、この連動をやることを発表して……。

岡島:異業種最強タッグ。

川邊:異業種最強タッグみたいな。

岡島:だから、どこかの帝国主義の会社さんとちょっと、こういうこと言っちゃいけない(笑)。

川邊:いや、どこもそれぞれの戦略の中でやられているのだと思うんですけれども、我々はそういうパートナーとやっていくと。ポイントはTポイントで全然他社さんですから。あとはより新しい分野をやろうということで通信事業ですね。ワイモバイルもこの間発表して、ちょっといろいろあってスキームの変更が行われましたけれども。

岡島:それ触れてよかったんだ(笑)。

川邊:全然大丈夫です。通信事業もやって、そこの分野にもどんどん出ていこうというのが最近の爆速経営の具体的な中身ですね。

岡島:だからシームレス、とにかくスピード早く、しかもわりとオープンに組めるところと組んでいく。一方でデータをどんどん貯めるという意味ではヤフーさんのところにぐっと溜まっていく。

川邊:そうですね。データドリブンな会社になっていこうと。そこはやっぱりコアだよね。

「ヤフーはデータで食っていく会社になる」

岡島:比較優位性がそこにあるという形がちょっと本当によく見えてきているという。

川邊:そうですね。マルチビックデータという言い方をしているんですけれども、どの会社さんもやっぱりある分野での最強なサービスじゃないですか。だからそのビックデータ的に言うと、ある分野でのビックデータというかデータなのですよね。だけれども、ヤフーの場合は、幸いまだ検索からショッピングからオークションからニュースから動画から、幅広いラインナップがあって、それを一つのヤフーIDというものでお客さんが使ってくれているので、まさにマルチビックデータ。

それで、データというのは掛け合わせが多いほど価値が高いので、それを目指せる会社というのは世界でも少ないので、やっぱりそれを目指すべきだろうと。

岡島:安宅さんみたいなああいう頭脳の人もいて、ビックデータをすごくうまく料理してという。

川邊:そうそう。だからデータサイエンティストも、当然日本では少なくても一位、一番いっぱいいるという会社に、今も多分なっていると思いますけど、もっとなるし、データで食っていく会社になるんだと。

岡島:なんだか死角がなくてちょっとつまんない(笑)。

川邊:死角だらけですよ。

岡島:いやいや。きょうは、お時間のようなので、死角の話は後ほど。

川邊:そうですね。

岡島:本編で。じゃあ一言、最後にメッセージお願いします。

川邊:はい。本当に今ヤフーというのは生まれ変わっている途中でして、皆さんもまずいちユーザーとしてぜひそれを体験して、ヤフーを使って体験していただきたいなと思いますし、何かここから自分のチームを変えなきゃいけないとか、会社全体を変えなきゃいけないとか、サービスを変えなきゃいけないというときは、「爆速経営」という本を読んでいただいて参考にしてもらえばなというように思います。これからも頑張ります。よろしくお願いします。

岡島:はい、札幌で開催中のIVS 2014 Spring インタビュールームに川邊さんをお迎えしてお送りしておりました。ここまでということでありがとうございます。

川邊:どうもありがとうございます。(拍手)

爆速経営 新生ヤフーの500日

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