2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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岡島悦子氏(以下、岡島):札幌で開催中のIVS 2014 Spring インタビュールームにゲストをお招きしてお送りしていきます。今回お越しいただいたのは……。
川邊健太郎氏(以下、川邊):ヤフーの副社長の川邊でございます。よろしくお願いします。
岡島:自己紹介、何かちょっとあるんじゃないですか(笑)。
川邊:何でしょうね。ヤフーに今、おりまして、COOをやっております。もともと「電脳隊」という学生ベンチャーをやっていて、それを5年くらいやりまして、それがヤフーと2000年に合併しまして、その後、Yahoo!モバイルの責任者を長くやっていたんですけれども、その間にちょっと時間もあったもので、Yahoo!みんなの政治というのを立ち上げたりですとか……。
岡島:そうですよね。
川邊:何かそんなことをやって過ごしておりました。2007年にYahoo!ニュースの責任者になりまして、メディアとか既存メディアとインターネットみたいのが結構おもしろいなと、マニアックになっておもしろいなと思ってやっていたところ、Yahoo!ニュースをやりながら、GyaOの社長もやれというふうに言われまして、その既存のテレビとか映画とかとインターネットというテーマで、GyaOの建て直しみたいなことをやりました。建て直すのはむちゃくちゃ大変だったんですけれども、2年くらいかけて黒字にして、さあ、これからGyaOでどんどんやっていくぞ! と思った矢先の2012年にですね。
岡島:Xデイ(笑)。
岡島:ありがとうございます。
川邊:はい。
岡島:いろいろ伺っていきたいと思います。
川邊:はい。
岡島:岡島悦子です。プロノバという会社をやっています。「プロの場」という意味なんですが、経営のプロの人たちを集めて経営チームをつくるというような……。
川邊:「プロの場」の。
岡島:「プロの場」というね。
川邊:そういう意味なのですね。
岡島:すごいベタな名前の会社だったんです。意外にみんな知らない。おっさん達にはすごい評判がいいんですけど。2002年から、グロービスの経営人材紹介の会社の子会社の社長やっていまして、グロービスのVC、グロービス・キャピタル・パートナーズの投資先の経営チームをつくるみたいなことをずっとやってきていて、だからもう12年くらいですね。ヒューマンキャピタルアドバイザーというのをやっているので、このIVSはNILS(ニルス)の頃からだから第1回から……。
川邊:出た、NILS。
岡島:きょう20回ということなんですが、そこからずっとモデレーター等々やらせていただいています。
川邊:すばらしい。
岡島:いえいえ(笑)。なので、本当、ベンチャー業界の母みたいな感じで皆さんをずっと見守ってくるというようなことをやっている感じです。きょうは、ということで、「爆速経営の今」ということで、川邊さんに、爆速経営どうなっているの? みたいな話と、何でやったの? みたいなことをちょっと伺いたいなというふうに思います。
川邊:はい。
この後改革の話をたくさんしていただくのですけれども、私たちプロから見ていると、組織軸をつくるプロみたいな人たちから見ていると、やっぱり何かだめになっちゃった会社が入れかえるみたいなこととかは、比較的危機感もつくりやすいしやりやすい。でもヤフーさんは、そうはいっても17期連続増収増益で、はたから見るとすごい、「雄」という感じじゃないですか、ベンチャー業界の「雄」。
そこでやっぱり改革をするってすごく難しいことじゃないかなと思うんですけれども、何で爆速経営をまずやったのかっていうところからちょっとお話しください。
川邊:はい、わかりました。これカメラ目線でしたっけ。違う、対面で。なぜはね、詳しくはこの「爆速経営」というのが日経BPから出ていて……。これに詳しく出ているのでお読みいただければなと思いますけれども。
岡島:いい本ですね、とてもいい本だと思います。
川邊:はい。すべては、スマートデバイスシフトと、この一言で説明がつくかなと思っています。それは、ヤフーはパソコンではもう大成功した収益性の高いサービスかもしれないですけれども、スマートデバイスの世界でそれと同じことができるのかといったら、そんなことはないわけですよ。事実、不思議なんですけれども、iPhoneというのは、孫さんが日本に持ってきたはずなのですけれども。
岡島:そうですよね。
川邊:何かやっぱり既存のPC組の資産が大き過ぎたため、そんなに積極的に……。
岡島:まさにイノベーションのジレンマじゃないけれども。
川邊:そうそう、できなかったんですよね。それで、井上さんという神みたいな前の経営者がいて、その方が今回体制変更になるときの記者会見で、孫さんと井上さんと新しい社長の宮坂さんと3人が出てきた記者会見がありましたけれども、あのとき奇しくも、「おれはかばんの中にスマートフォン入れっ放しで使っていなかったからな」と、「だから交代したほうがいいと思いました」と。
岡島:だってPC時代は、井上さんは本当にサービスのバグを見つけたりしてましたよね。
川邊:そうです。一番のヤフーユーザーだったわけですよ。
岡島:ですよね。
川邊:それがスマートフォンになって、自分は余り使っていないから、やっぱり潮時だなと思ったって……。だから本当に正直な話だったと思うんですよね。
岡島:でも、偉いですよね。なんか偉いとか、すごい上から目線ですけれども、そうすっぱり言える井上さんというのも、またすばらしい……。
川邊:そう! 飾らない人ですから。本当にそう思ったんだと思うんですよ。だからそうするとテーマはスマデバシフトだということで、我々はいちベンチャーに戻ったつもりで、ここからどうやっていくと。
岡島:緑色っぽい。
川邊:そう! のぞき込んだらみんなLINEやっているんですよ。
岡島:みんな緑っぽい。
川邊:そう、何だこれは! みたいなになって。ちょうどそういう場も変更になるし、すごく強力な競合も出てくる中で、PCの大物でございとやっている場合じゃないと。それがこの爆速経営をやるきっかけというか、原動力というか。そういうことです。
岡島:あれですよね。一石を投じる形になったのは、本にも出てきますけれども、村上さんとかがアカデミアでちょっとつまらない会社みたいなと言っちゃったくだりもちょっとだけ。
川邊:そうですね。そういうことでPCでは正直その盤石の構えでやっていて、だんだんその新しいもの、一番最初に先駆けてつくろうとか、もっと成長しようみたいな雰囲気がなくなってきちゃったんですよね。
その中でちょっと数年前に組織変更行われて、現場のその権限が、現場の権限がないというか、いろいろな現場がやるときにいろいろな関所みたいなものが設けられてしまって、何かを論地するのもすごい時間かかったりするような体制になってしまったんですよね。他方、ソフトバンクアカデミアというのがソフトバンクの中で立ち上がって、孫さんの後継者つくるんだ! とかいって。
岡島:華々しくね。
川邊:はい。今どうなっているか知らないですけれども。
岡島:(笑)。
岡島:なるほど。
川邊:そのとき、もうやめてしまっていたのかな。やめてしまっていた今のうちのCMOの村上が「MOTTAINAI」というなんか国のキャンペーンがありましたよね。
岡島:アフリカの。
川邊:そうそう。ローマ字で「MOTTAINAI」と。あれとヤフーは一緒だと。いろんな資産があるのに、それをうまく生かせていないと。もったいないと。社員は停滞しているみたいな、一席彼はぶって。
岡島:しかも1回出てしまっている人が言うというのがまた、ちょっとすごいですよね。
川邊:そうですね。アナーキーな組織なのでね、ソフトバンクグループっていうのは、無茶苦茶ですから。これと同時に、この本と同時に、何だっけ? 「キレるソフトバンク」という本が同じく日経BPから出て、会議が動物園状態という何か帯が書いてあって、ゲラゲラ笑ったんですけれども。
岡島:すごい。
川邊:本当にそうなんですよ。
岡島:帯、上手ですよね。
川邊:本当にあそこは動物園状態で、元気がよいのであの規模で。ヤフーって、それなりにちゃんとしていて、会議もだれがしゃべったとか、じゃあこっちの人がしゃべったとか、一応、何かパス回しでやるわけなんですよ、会議も。ソフトバンクは5人同時にしゃべりますからね 。
岡島:(笑)。
川邊:すごいんですよ。
岡島:でも、それができているのはすごいですよね、あの大きさで。
川邊:そうですね。それは、やっぱり創業オーナー社長がいる会社の特徴ではないですか。
岡島:しかも現存しているというところが……。
川邊:そうそう、特徴じゃないですかね。
岡島:やっぱり大きいのかな。なるほど。
川邊:とにかくそういうことで何かヤフーもっと元気になるべきだとなって、そういうのも含めて、組織的なある種の停滞感も含めて、変わろうという機運になっていったと、そういうことだと思います。
川邊:とにかく変ろうということでやって、宮坂新社長と僕と、何か2人で飲みに行ったんですよね。
岡島:宮坂さんと川邊さんは一緒にずっと働いてた?
川邊:あのね、途中から一緒に働いていて、「Yahoo!モバイル」の責任者やっていた頃は違う人と僕はやっていたんですけども、Yahoo!ニュースの責任者やらない? と誘われたんですよ。
岡島:そうか。なるほど。
川邊:それで、どうして? と聞いたら、「だってお前暇そうじゃん」とか……。
岡島:(笑)。
川邊:「何か持て余してそうだからさ」とか言って。
岡島:まだ余力あるみたいな。
川邊:そうそう。実際、結構持て余していた時期だったのですよ。
岡島:なるほど。
川邊:ボーダフォン買って、ソフトバンクが。それで何かある程度やって僕は異動になって、みんなの政治だけやっていて、結構暇だったんですね。その時期に、何か暇そうじゃんといって声かけてくれて、それでYahoo!ニュースの責任者やろうよと言われて、もちろん、Yahoo!ニュースはいっぱい使っていますから、おもしろそうだからやりますと言ったら、とんでもない事態にそのときなっていて、Yahoo!ニュースが。
共同通信さんがいろんな地方新聞さんを引き連れてYahoo!ニュースから離脱しちゃったという直後。かつ何か、今ではUGCみたいのは当たり前なんですけれども、当時、Yahoo!ニュースの記事に何か、コメントでもないんですよ、何かレーダーチャートみたいので感想みたいのを入れられる機能を、また情報提供元さんに無断でそれをローンチしちゃって、もう怒り狂っているみたいな。そういう状況で、行ったら、そういう状況なんですよ。
川邊:そう。何か宮坂さん、大変なことになっているんですけれどもとか言ったら、ごめんごめん、何か大変なんだよ、お前何とかしてくれよとかいって、ええっ! とか言いながらも、まあそういう情報提供元さんと共存共営のモデルを宮坂さんと考えて、それでやったと。それが一個と、あと、だからGyaOも最初は宮坂さんが社長やるはずだったんですよ。
岡島:そうなんですか。
川邊:そうなんですよ。宮坂さんがYahoo!動画の責任者やっていたんですね。僕はYahoo!ニュースの責任者で、一生懸命収益をつくって、全然もうからないYahoo!動画にどんどん献金していたんですよ。何かもういいかげん、もうちょっとYahoo!動画を何とかしてくれと僕は思っていた。そうしたら、GyaOを買うという噂を聞いて、USENから。僕なんかは、やめたほうがいいよ、そんなの。赤字のサービスと赤字のサービスくっつけて、何が起こるんだろうと。
岡島:どうなるの? みたいな(笑)。
川邊:でも宮坂さんがやるというのなら別にいいけどさ、みたいな感じで、完全に傍観者だったんですよ。そしたら、その2009年なんですけれども、2009年の4月に組織改編が行われて、宮坂さんがそのメディア系の執行役員みたいなやつからショッピング系に移っちゃったんですよ。やる人がいなくなっちゃって、これどうするんだろうなと思っていたら、「川邊、あれ大変そうだからさ、お前しかできないからさ、お前やってきてよ、ギャハハハ」とかいって……。
岡島:修羅場にやっぱり強いと思われている。
川邊:いや、とんでもないですけれども。そういう無茶ぶりをされる仲が2007年ぐらいからずっと続いていたと。
川邊:そうですね。これは大変大きい重い課題だから、一緒にやろうよと。それで何をやったかというと、2人でいろいろ飲んで最初に話して、2人とも奇跡的に本が好きなんですよ。全く読まなさそうな2人なんですけれども。読書マニアでね、2009年に部署が別れちゃってからも月に1回2人で飯を食っていて、昼飯食っていて、そのときに読んだ本の感想言い合うみたいな。
岡島:へえ。ちょっと気持ち悪い? (笑)。
川邊:乙女チックなことをやっていて。
岡島:すばらしい。
川邊:そうそう。それで何か経営本とかもいっぱい読んでいて、共通の話題も多くて、どうするとなったときに、やっぱりここはビジョナリー・カンパニーの教えのように、「バスにだれを乗せるか」からでしょう! とか言って。結構最初のその新体制の執行役員を決めるところから始めたり、CFOが全然いないということなって、当時完全にヤフーから離れちゃって、ヤフーの子会社のクレオというところの社長やっていた大矢さんとかに言って、クレオの社長になって1年でやっといろいろ直して、グループ経営みたいなのを始めたばっかりだったんですよ、クレオ。
宮坂さんと行って、どうですか最近? とか言って、クレオ何かいい感じになってきて今楽しいですとか言うんですよ、大矢さんが。いや、楽しいところ恐縮なんですけれども……。
岡島:自分もやられたから(笑)。
川邊:そうそう。ヤフーのちょっとCFOになってくれませんかとかいって。そうやって仲間を探してやっていったというのが最初ですね。その後に部署割をまず考えて、それ自体暫定的なものだよねと話していたので、周りでばっと決めて。その後にもう一度企業理念、まあビジョナリー・カンパニーの教えどおりなのですけれども(笑)。企業理念をつくり直そうと。やっぱり何を一番自分達はしたいのかというのを、バスに乗っけようと決めた人たちでカラオケボックスで語り合って。
岡島:ほかに聞こえないしね、いい場所ですよね。
川邊:そうそう。まだ会社の中ではその話はできなかったんですよ。カラオケボックスでみんなで話して、やっぱり我々がやりたいのは課題解決だろうと。だから改めて自分たちのサービスコンセプトを課題解決エンジンというのに定めて、我々は情報技術を通じて課題解決を行う会社であるというのをもう一回決めて、それをやるための、何というか、ツールというか、やり方として、今この時点で一番重要視するのは何かといったらスピードだろうと。
すごくスピードが落ちてしまったので、スピードを重視しようということで、「爆速」という言葉を考えて、まず爆速でやるぞ! という宣言をして、それを評価の軸にもしたんです。それが大きかったですね。
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